思い出を探して

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ビール

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5か月後
二人で生活するというのは慣れてきた。
「嬉しい」
「怜さん、誕生日おめでとう」
「ありがとう、わぁケーキまで」
「手作りやねん」
こじんまりとしたケーキがちょこんと置いてある。
「食べても良い?」
「もちろん」
食後のデザートがこんなに嬉しかったことは久しぶりだ。怜はケーキを食べる。
「ケーキと日本酒って合うん?」
「うん、美味しいものと美味しいものを組み合わせて不味くなるわけないでしょ」
怜は一口一口本当に味わって食べる。賢太郎にとっては不気味な組み合わせだが本人が満足しているのであれば良い。
ケーキを食べ終わると、二人はソファに腰を掛けて映画を見る。
「なんだか、部屋の中なのにデートをしているみたい」
怜がボソッと言った一言を逃さなかった。
「デート?怜さん、今、デートって言ったやんな!」
怜は、賢太郎と同じ家に住むことを同居、外に出て二人で何かすることを、記憶探し。そう言っていた。
「気のせいです」
赤くなっているのは、酔っているのか、思わず口走った言葉が恥ずかしかったのか、微妙だ。口調は何時ものごとく、冷静だった。
「はは、そうやんな」
乾いた笑いが部屋にこだまする。テレビ画面では、恐竜たちがこっそりと主人公を追い詰めている。
「この映画、面白い。有名で、見てみたかったんだけど、なかなか見れなくて」
怜は食い入るように画面を見る。
「僕が好きな映画やねん。気に入って貰えて良かったわ」
賢太郎は、ビールに手を伸ばす。思わず、グラスに入ったビールを倒してしまう。暗くして、映画館の雰囲気を出そうとした部屋が仇となった。それに、季節は、冬。二人は、掛け布団をそれぞれ自室から持ってきて、ぬくぬくと自分の掛け布団をかけて見ていた。(ソファーの下に座って、ソファー座面の側面を背もたれにしています。そして、おへその辺りまで布団を引っ張って足まで布団が被っているという状態です。)想像はつくだろう。こぼれたビールは瞬く間に賢太郎の布団に広がる。
「わ!」
「どうしたの?」
「布団にビールこぼした!」
賢太郎は布団カバーを外す。不幸にも、中までしっかりしみている。
「布団、洗ってくるわ」
布団を持って、洗面所へ。急いで洗う。ビールの臭いが、色が、ついた布団では寝たくない。賢太郎は、手際よく、布団を洗うと、洗濯機に入れる。
「あ、映画、止めてたん?」
「布団は大丈夫だった?」
「多分、はやく洗ったし、大丈夫。問題は、今晩やなさすがに、濡れた布団では寝れへんからな」
賢太郎は、苦笑いを浮かべる。
「厚着して寝よ」
怜の部屋には暖房があるが、賢太郎の部屋にはない。
怜は、トントンと床を叩く。
「えっと?」
怜は、布団を横向きにして、賢太郎が座っていた方向の布団を半分ほどめくりあげる。視線は、賢太郎を見つめる感じだ。
「し、失礼します。」
賢太郎は怜の布団にスルスルと足を滑り込ませる。
2分後
「い、嫌じゃないですか?」←緊張で敬語



「嫌、、じゃないです。」←緊張で敬語

照れ臭いやら、恥ずかしいやら、気をまぎらわすために映画をガン見。
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