思い出を探して

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合コン

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3週間後

「孝弘、僕はそういうの興味がないから」
「いやぁ、頭数あわせでいいから来てよ、な」
「うーん、」
「俺とケンの仲でしょ」
今、同期から合コンと呼ばれる飲み会への参加を誘われている。
「まぁ、仕方ないな」
賢太郎は押しに負けて行くことになった。多分、100回は断っている。


合コンにて
「こんばんは」
孝弘、賢太郎、後輩の3人は女性3人に挨拶をする。
「こんばんは」

「お待たせしました」
焼き鳥と、ビールが運ばれてくる。
「かんぱーい」

「消防士ってカッコいいですよね」
「うんうん、分かる!」
「ありがとうございます。」
孝弘は上機嫌だ。
「弁護士ってよくドラマとかにもなっていてすごくカッコいいなって印象が強くて」
孝弘はビール片手にそう言った。
「実際、あんなドラマみたいなこと、まずないですよ。基本は、パソコン、書類と向き合ってそこでのやり取りみたいな感じで、」
「へー、意外だなぁ」
孝弘は初耳のようだが、賢太郎は怜の仕事ぶりを見ているから、それは知っていた。


「ゲームしよう!」
孝弘は結構酔っているのか?
「なんのゲーム?」
「王様ゲーム!」
くじ引きのようにされた紙の先には数字が書かれている。
「王様だぁれ?」
賢太郎は自分のくじを見て数字ではなく文字がかかれていた。
「あ、僕だ!」
「ちょっと待って、もうすぐ高校が同じだった友達が来るから」
電話をかけながら一人行ってしまった。
「先に始めとくよ」
「オッケー」

「じゃぁ、2と3が5秒見つめ合う」
「俺だ、2番」
孝弘が手を挙げる。
「私が3番です」
「よーいどん!」
なんかお互いににやける。

「あ、きたきた」
その瞬間、賢太郎は目を疑った。
「えっ?怜さん?」
「賢太郎さんどうして?」
「いや、僕は単なる頭数あわせで、そういう怜さんこそ」
「暇なら飲まない?って。合コンなんて聞いてない」
「え?怜ちゃんに伝えてなかったの?」
「あ、忘れてた!」
高校の同級生はてへぺろっと舌を出した。

二人ともお互いに愛されている自信があるからこそ浮気とか、そんなことは思い浮かばなかった。別に険悪なムードではない。単純に驚いているだけだ。

「えっと二人はどういう関係で?」
二人の関係など一切知らなかった4人。
「付き合ってて、アハハ」
賢太郎は怜の横に立つ。
なんだ?女性から冷たい視線を感じる。
「あの~、本当にその変なつもりとか、そういうのは一切ないって孝弘が証明しますよ」
「俺が、声かけました!同じ人数の方がいいと思いましたから」
孝弘が言えば場が和む。

「怜さんって綺麗だな」
「やっぱり孝弘が見てもそう思う?凛として、優しくて、まっすぐで、面白くて、賢くて、たしかテコンドーで全国大会に出たことがあって、努力家で」
やっぱり孝弘から見てもそう思う?と返すところがいかにも賢太郎である。どっぷりと、怜から愛されている自信があるからこそ。

「勇元さんって、頼りになるお兄さんて感じがしてよくない?」
怜はちょっと顔を赤らめて、
「でも、好きになったらダメだよ。」
と小さい声で一言。
「怜がそんなことを言うなんて時代は変わったなぁ」
「次、王様だぁれ?」
「俺だ!」
孝弘だ。コイツは何を言い出すか分からない。
「4と5が手を繋ぐ」
「4は僕です。」
「5は、私」
「なんだぁ、慣れてる?」
怜の友達が怜をなじる。
「慣れてるとまでは、、」
なぜか恥ずかしがる賢太郎。
「王様からの命令。従わないと」
怜から手を繋ぐ。
「ケン顔が真っ赤だぞ!」
「ヒュゥー」
「すみません、怜さん」
「なんか恥ずかしい」

合コンでさんざんいじられて、ようやくお開きになった。

「送ろうか?」
「あ、うん、ありがとう」
「今日は驚いたな、怜さんが急に来るんやもん」
「私も驚いて」
「アハハ、お互い様か」
ザッと賢太郎が駅への歩みを進める。キュッと袖を掴まれる。
「あの、もう一杯飲まない?」
「え?珍しいな怜さんが。まぁ、別にいいで」

怜と賢太郎は駅前の小さなバーに入る。
「正直に言って、私はどうなのか教えて欲しくって」
「私はどう?とは」
賢太郎はきょとん顔をする。
「私は、賢太郎さんからみて変わったかな?記憶を失って、私はそれでも良かったのかなって」
「うん、変わったね。でもそれは、悪いことちゃうで、ほんまにそんなん心配せんといてな。前にも言った気がするんやけど、僕はどちらの怜さんも好きやし、きっとこれからもこの気持ちが変わることはないと思うねん」
「賢太郎さんは、優しい」
「誰でもそうやと思うで、簡単に嫌いになったりできひんからさ、結婚したい相手やったらなおさら」
怜の顔が真っ赤になる。
賢太郎は冷静な顔をしてじっと見つめる。
今日は、なんかいつもよりカッコいい賢太郎さん。それと同時に、不安に襲われる。本当に今のままでいいのかと。
「私は私のままでいいかな?賢太郎さんの側に居ていいかなって今でもすごく不安に駆られるときがあって、賢太郎さんを知るほど好きな気持ちと不安な気持ちが大きくなって」
昔と今と、まるで別人が1人の人生を生きている。賢太郎の言葉を疑うわけではないが、時々、昔の私が羨ましく思える。どうやって、出会ったのか、どうして、交際に至ったのか、好きになったのか、初めての会話は何だったのか、賢太郎が私を好きになってくれた理由を持っていたのは、過去の私だったのではないか。全部の初めてを持っている昔の私。誰だって、普通は、「あんなことあったね」「そんなこともしたね」「付き合う前はこうだったね」とかそういう話しは嫌でも出てくるし、明るい思い出として会話をする度に更新されていくはずが、私にはその力が足りない。
「えっ?」
賢太郎にハグをされる。
「幸せな気持ちも、不安な気持ちも、僕に分けて、僕の幸せな気持ちも怜さんに伝えたいねん」
囁かれた言葉は心にスーッと溶けていく。
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