一輪の花

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結果

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 ナハンと酌を交わした日から、今日までおよそ2ヶ月。いよいよ、母の裁判結果が出る。
「いよいよですね」
「そうだな」


裁判所から一人の若いいかにも見習いであるような男が、二人に駆けてきた。
「どうですか?結果は」

「証拠不十分による無罪です」

「そんな…」
イチナが膝から崩れ落ちた。涙も感情も間に合っていない。イチナを支えるみたいに、かがみこんだカフウだってまともな精神状態ではなかった。許すとか、許さないとかそういう次元の話ではないのに。


追い討ちをかけるように男は言った。
「それから、虚偽および脅迫でイチナさんを訴えると述べておりました」
思考が間に合わない。
「どういう意味ですか?」
「そのまま、訴えるという意味だそうです」
「そうではない!もう良い、母に応じるつもりはないし、もう、私たちに関わるなと伝えてくれ」
男は、カフウの気迫に怖じけたのか、逃げ帰るように裁判所へ行く。

「カフウさん…やっぱり、私のせい何ですか?こんな体になってしまったのは。私が…」
「違う。絶対に違う」
イチナを抱き締めるカフウ。全部、俺だ。俺が、あんな人に会わせなければ良かった。もっと、しっかりと縁を切って、それから、イチナに向かい合うべきだったのに。ちゃんと守ってあげられる人であったならば、この思いをすることもなかった。惰性で生きてきたような人生が憎たらしい。

「逃げよう。うーんと遠くまで、一緒に行こうよ。そこで、二人で生きるんだ」

もし、ナハンが言うことが本当だったら、捕まってしまう。

俺は、君を守りたいんだ








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