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執務室にて
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リリカは今レイリックの執務室にいる。持ち帰って来た茶葉を使ってレイナにお茶を淹れてもらった。レイナは以前リリカが茶葉を購入した東方から来た商人に、正しい淹れ方を教えてもらっていたのだ。
「どうぞ」
「へえ、これがリュカか」
「美味しいわ」
ほっとする懐かしい味……。緑茶で正解だったようね。
「うん。美味しいね」
「王太子殿下、連れて行ってくださりありがとうございました」
「婚約者だからね。今後は許可を取らずに自由に行ってもいいよ」
グレイスにもまたいつでも来ていいと言ってもらえた。
「ありがとうございます」
「いいよ。それより、そろそろ王太子殿下って呼ぶのやめない? 婚約者なのにいつまでもそう呼んでるのは可笑しいでしょ」
「確かに……」
名前で呼ばないのはリリカとレイリックの本当の関係を知らない人からすれば不自然だ。
「レイリックでも、なんならレイでもいいよ。親しい人にはそう呼ばれているからね」
「いえっ、さすがにそういうわけには……その、レイリック様?」
リリカは呼び慣れないからか何となく気恥ずかしさを感じた。
「うん。まあそれでいいかな(今のところは)」
にこやかに彼は言う。
「あっ、そうだ。さっき、伝え忘れたんだけど、王太子妃教育はフローランス伯爵夫人に任せることになったよ」
「!! あのフローランス伯爵夫人が、ですか!?」
「そうだよ」
フローランス伯爵夫人というのは王妃様の教育係も務めた方で、教師が皆「フローランス伯爵夫人の所作を真似るように」と言うぐらい気品に溢れた方だ。
「まさかフローランス伯爵夫人に教えていただけるなんて思いませんでした……」
「まあ、王太子妃教育だからね。それなりの人じゃないと務まらないよ」
「それはそうかもしれませんが……」
でもそうなのよね。一般的な令嬢への教育とは訳が違うのだから。
「それだけは伝えておこうと思ってね」
「分かりました」
「今日はゆっくり休んで……あっ、まだ部屋の案内してなかったよね?」
「……そういえばそうですね」
二人してすっかり忘れていた。
レイリックが目でロベルトに合図し、それを見たロベルトが侍女を呼ぶ。
「リリカ嬢を部屋まで案内してくれ」
「かしこまりました。お嬢様、ご案内いたします」
「ええ。では、失礼いたします」
「ああ」
リリカとレイナは執務室を出て、用意された王太子妃専用の部屋へと向かった。
**********
「すっかり気に入られたようで何よりです」
「まあ、そうだね。それとロベルト、今は2人きりだからいいんじゃない?」
「ああ、そうだな」
レイリックの言葉を聞き、ロベルトは口調を変えた。ロベルトはレイリックとは幼馴染ではあるが、基本的には侍従長としてレイリックに接するようにしている。だが2人きりのときには、たまにこうして息抜きをさせてもらっているのだ。
「しかし、なかなか変わったご令嬢だな」
「ああ、そうだね。茶葉に夢中になって僕の存在を忘れるぐらいだからね」
リリカは誤魔化せたと思っていたが、全く誤魔化せてなどいなかったのだ。
「マジかよ!?」
「ああ。本当に面白いよ、彼女は」
こんな令嬢初めてだ。正直、女性というものは契約があっても上手いことくぐり抜けて、近付こうとするものだとばかり思っていた。しかし、そのような気配は微塵もない。それどころか、他のものに夢中になって僕のことすら忘れられる始末だ。なぜかリリカ嬢と僕の距離よりグレイスとの距離の方が近かったように思える。
「ふふっ」
「レイ?」
「あんなに興味なさそうにされると、逆に僕の色で染めたくなるよね」
「うわ……程々にしとけよ」
思わず、引き気味に言う。
「ああ。大丈夫だよ」
レイリックは笑顔で言う。
「……」
ロベルトは密かにリリカの無事を祈るのだった
「どうぞ」
「へえ、これがリュカか」
「美味しいわ」
ほっとする懐かしい味……。緑茶で正解だったようね。
「うん。美味しいね」
「王太子殿下、連れて行ってくださりありがとうございました」
「婚約者だからね。今後は許可を取らずに自由に行ってもいいよ」
グレイスにもまたいつでも来ていいと言ってもらえた。
「ありがとうございます」
「いいよ。それより、そろそろ王太子殿下って呼ぶのやめない? 婚約者なのにいつまでもそう呼んでるのは可笑しいでしょ」
「確かに……」
名前で呼ばないのはリリカとレイリックの本当の関係を知らない人からすれば不自然だ。
「レイリックでも、なんならレイでもいいよ。親しい人にはそう呼ばれているからね」
「いえっ、さすがにそういうわけには……その、レイリック様?」
リリカは呼び慣れないからか何となく気恥ずかしさを感じた。
「うん。まあそれでいいかな(今のところは)」
にこやかに彼は言う。
「あっ、そうだ。さっき、伝え忘れたんだけど、王太子妃教育はフローランス伯爵夫人に任せることになったよ」
「!! あのフローランス伯爵夫人が、ですか!?」
「そうだよ」
フローランス伯爵夫人というのは王妃様の教育係も務めた方で、教師が皆「フローランス伯爵夫人の所作を真似るように」と言うぐらい気品に溢れた方だ。
「まさかフローランス伯爵夫人に教えていただけるなんて思いませんでした……」
「まあ、王太子妃教育だからね。それなりの人じゃないと務まらないよ」
「それはそうかもしれませんが……」
でもそうなのよね。一般的な令嬢への教育とは訳が違うのだから。
「それだけは伝えておこうと思ってね」
「分かりました」
「今日はゆっくり休んで……あっ、まだ部屋の案内してなかったよね?」
「……そういえばそうですね」
二人してすっかり忘れていた。
レイリックが目でロベルトに合図し、それを見たロベルトが侍女を呼ぶ。
「リリカ嬢を部屋まで案内してくれ」
「かしこまりました。お嬢様、ご案内いたします」
「ええ。では、失礼いたします」
「ああ」
リリカとレイナは執務室を出て、用意された王太子妃専用の部屋へと向かった。
**********
「すっかり気に入られたようで何よりです」
「まあ、そうだね。それとロベルト、今は2人きりだからいいんじゃない?」
「ああ、そうだな」
レイリックの言葉を聞き、ロベルトは口調を変えた。ロベルトはレイリックとは幼馴染ではあるが、基本的には侍従長としてレイリックに接するようにしている。だが2人きりのときには、たまにこうして息抜きをさせてもらっているのだ。
「しかし、なかなか変わったご令嬢だな」
「ああ、そうだね。茶葉に夢中になって僕の存在を忘れるぐらいだからね」
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「マジかよ!?」
「ああ。本当に面白いよ、彼女は」
こんな令嬢初めてだ。正直、女性というものは契約があっても上手いことくぐり抜けて、近付こうとするものだとばかり思っていた。しかし、そのような気配は微塵もない。それどころか、他のものに夢中になって僕のことすら忘れられる始末だ。なぜかリリカ嬢と僕の距離よりグレイスとの距離の方が近かったように思える。
「ふふっ」
「レイ?」
「あんなに興味なさそうにされると、逆に僕の色で染めたくなるよね」
「うわ……程々にしとけよ」
思わず、引き気味に言う。
「ああ。大丈夫だよ」
レイリックは笑顔で言う。
「……」
ロベルトは密かにリリカの無事を祈るのだった
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