契約婚のはずが、腹黒王太子様に溺愛されているようです

星月りあ

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帝国からの使者

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コンコンとノックする音が聞こえ、ビクッと肩を揺らす。

レイリックは何かと忙しいようで、リリカはあれ以来一度も会っていない。レイリックが来たのかと思い、身構えたリリカだったが、どうやらその予想は外れたようだ。

「お嬢様、ロベルト様がお見えです」
「えっ。珍しいわね。お通しして」
「かしこまりました」

部屋に来たのはレイリックではなく、レイリックの侍従長ロベルトだった。

「ロベルト様、どういったご要件でしょうか」
「王太子殿下の代理で参りました。実は一週間後隣国エスフィート帝国の第二皇子殿下がお越しになる予定なのですが、リリカ嬢にも王太子殿下の婚約者として、お会いしてほしいのです」
「承知しました」
でも随分急だけど、何かあったのかしら。

エスフィート帝国の第二皇子殿下、確か名前はジュリアン殿下だったわね。滅多に表舞台に出ないって聞いたけど、どんな方なのかしら?



そして、一週間が経った。今日がジュリアン殿下たち御一行をお迎えする日だ。国王陛下と王妃様は現在、外遊中だ。ゆえに王太子レイリックと次期王太子妃であるリリカだけでお迎えする。今日は謁見の間で挨拶を交わすだけだと聞いている。

謁見の間に向かう前、レイリックは部屋まで迎えに来た。

「久しぶりだね」
「お、お久しぶりです」
この前、二人で街に出かけて以来だ。帰り間際、いきなり抱き締められたことが頭をよぎる。

「いきなり襲ったりなんてしないから安心して」
レイリックはそう言って笑っている。

もしや顔に出ていたのだろうか。
気をつけないとっ。

「さあ、行こうか」
「はい。あの、レイリック様は第二皇子殿下とお会いされたことがあるのですか?」
「いや、ないよ。第一皇子になら会ったことはあるけどね」
「第一皇子殿下ですか?」
「ああ、だいぶ前にちょっとね……」
そう言うレイリックはなんだか遠い目をしていた。



**********

予定時刻よりかなり早く、謁見の間に到着した。リリカは初めての公務にとてつもなく緊張していた。しかも他国の王族と会うのは初めてのため、失敗したらどうしよう、と不安で仕方がなかった。

リリカは何度も深呼吸を、繰り返して落ち着きを取り戻そうとする。

「大丈夫だよ。普通にしていれば」
そんなリリカを見たレイリックに優しく声を掛けられる。

「……はい」
そうよ、今更緊張したって何も変わらないもの。なるようになるわ!!



そうこうしているうちに、あっという間に時間になったらしく、「皇子殿下御一行が到着されました」という声が聞こえ、ギイッと音を立て、扉が開く。

皇子殿下らしき豪華な衣装を着た男性と、その男性の後に二人の騎士の格好をした男性が続く。謁見の間の中央付近まで来た一行は礼をした。

随分人数が少ないのね。帝国は大きな国だから、もっとたくさんの人が来るものだと思っていたのに。

「お顔をお上げください」
「はい。エスフィート帝国より参りました第2皇子ジュリアン・ディ・エスフィートと申します」

珍しい……。
ジュリアンの容姿は黒髪黒目だった。この国では全く見かけたことのない色だったため驚いた。

「初めまして。僕はアルマーニ王国王太子レイリック・フォン・アルマーニです。彼女は僕の婚約者で」
「お初にお目にかかります。エバルディ公爵家長女リリカ・エバルディと申します」
「皆様、お疲れでしょう。どうぞ、ごゆっくりお過ごしください」
「はい。ご配慮ありがとうございます」
そう言うと、ジュリアンたちは退出した。

こっ、これで良かったのかしら。
不安に思い、レイリックの方を向くと「ばっちりだよ」と声を掛けられた。リリカはそれを聞き、ほっと安堵した。

そして、「今日はもうゆっくり休んで」とも言われた。正直、緊張のしすぎで疲れ切っていたため、お言葉に甘えさせてもらうことにした。

「ふぅっ……」
部屋に戻って来て、ようやく一息吐くことが出来た。レイナはリリカが戻って来たことを確認すると、リリカが何も言わずともすぐにリュカを用意してくれた。
さすが、出来る侍女。



あとはジュリアンとレイリックの会談が主で、リリカは最終日ジュリアンたちが帰国する際に挨拶するだけでいい。

実際には短い時間だったけど、物凄く長かったような気がするわ。

そのようなことを思いながら、あっという間に眠りに落ちていった。
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