契約婚のはずが、腹黒王太子様に溺愛されているようです

星月りあ

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お出かけ

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「み、見られていますわ」
「ああ、そうだね。でもそれでいいんだよ」
リリカとレイリックは今、手を繋いで街を歩いている。

レイリックは昨日、ロベルトからとある噂を聞いたのだ。
それは、お茶会に全く参加しないリリカを婚約者にしたのは、レイリックが女嫌いで家柄だけで適当に婚約者を選んだ、というものだ。

お茶会に参加しないのは完全に公爵のせいだ。リリカが心配なあまり社交には参加させたくないとのことらしい。

こんな噂が流れるなど心外だと思ったレイリックは早速二人で出かけることを計画したのだ。



**********

そして、現在に至る。

レイリックに「良かったら二人で出かけないかな?」と聞かれたリリカは、久しぶりの外出に「行きます」と即答した。だが、まさか手を繋ぐことになるなんて思ってもみなかった。

仲良しアピールって分かってても恥ずかしいわっ。でも、貴族は政略結婚が普通だけど、仲良しだってところを見せないと、風除けとしての役目が果たせないし。契約を守るためにも、仲良しの演技を頑張らないと。

リリカは気合いを入れ直した。

「僕もこのままじゃダメだと思ったからね」
なるほど。レイリック様は女性嫌いみたいだし、つまりは女性に慣れるためでもあるのね。

頑張るって決めたけど、でも、でもっ緊張するわ!! 距離が近いっ!!

少しだけ離れようと距離を取ったはずが、なぜか先程よりも近付いている気がする。
実に不思議ね……。

それに、家族以外の男性と手を繋いだことなんて前世も含めて初めてよ。私、男性慣れしてないのに、どうすればいいのよ!?

「あ、あの手を繋ぐ必要はないんじゃ……。2人で出かけるだけで充分仲良しアピール出来ていると思いますし」

レイリックはアピールしているつもりではなかったが、勘違いしたリリカは恥ずかしそうに言う。それをレイリックは面白そうに聞いていた。

「迷子にならないためにも、ね」
と笑顔で彼は言う。

「迷子になんてなりませんわ」
「この前、迷子になったって聞いたけど」

「うぐっ……」
その言葉に思わず声を詰まらせる。

「それは、その……」
「というわけで、このまま行くよ」

リリカは周囲の人々に生温かい目で見られていることに気付いた。

もしかして、もしかしなくてもこれってまるでデートなんじゃ!?

そう感じ、心の中ではあたふたとしていた。

「見せたいところがあるんだよ」
そう言って、連れて来られたのはお花畑だった。

「きれいっ!!」

紫、黄、ピンクなど色とりどりの花が、辺り一面に咲き誇っており、上から見ると見事としか言いようのない美しい光景が広がっている。

「気に入った?」
「はいっ。とっても素敵な場所ですね」
リリカは興奮して、目を輝かせている。

そんなリリカを見たレイリックは、まるで子どものようだと思っていた。

「君はよく庭園にいるし、茶葉だけじゃなくて、花も好きなんじゃないかと思ってね」
「ええ、大好きですわっ」
満面の笑みでリリカは答える。

レイリックはその笑顔に、一瞬思考が停止したように感じた。そして、ウィリアムが溺愛するのも今なら分かる気がした。

それから、近くにあったベンチに腰をかけた。

「一つお聞きしてもいいですか?」
リリカは、思い切って気になっていたことを尋ねることにした。

「なんだい?」
「レイリック様は、本当に私が婚約者で良かったのですか?」
「もしかして僕が嫌になった?」
「いえいえっ、とんでもないですっ!!」
レイリックの声のトーンが若干下がったのが分かり、慌てて否定した。

「それならいいけど、どうして急に?」
「契約を持ちかけたのは私ですけれど、正直特技も何もないありませんし、レイリック様にはもっと相応しい方がいらっしゃったのではと」
「……僕が女性嫌いって言われてるのは知ってるでしょ? 僕に近づく人って何かしらの目的があるんだよ。大抵はね」

その言い方では私には目的がなかったみたいだわ。
「でも私にも目的がありましたわ」
「うん。でもそれは目的には入らないかな」
「え?」
意味が分からず、リリカは首を傾げる。

「僕の言う目的っていうのは地位とか財産とかそういう話。そういう人と結婚なんてして、家庭がピリピリするのはごめんだからね」
「なるほど……」
確かに私はそういう目的ではなかったし、そうなる心配はないわね。

「それに君となら心安らげる生活が送れる気がしたんだ。これは直感だけどね。割と当たるんだよ、僕の直感は」
そう言ってレイリックは笑顔を見せた。

本当にそんな生活が送れたらいいなとリリカは思った。



そのままベンチで、しばらくこの美しい景色を眺めていたが、日が暮れ始めたので帰ることになった。

「また来ようか」
「そうですね。楽しかったです。ありがとうございます、レイリック様」
リリカは笑顔でお礼を伝える。

「っ!?」
思わず彼は息を呑んだ。向けられた笑顔に、彼女を手放したくないという今までにない感情が、彼の心には浮かんでいた。

「レイリック様?」
動きが止まったレイリックを不思議に思ったリリカは声をかける。

次の瞬間、自分の感情を抑えきれなくなったレイリックはリリカを抱きしめた。

「なっ!? ななななにを!?」
「ふふっ。これも仲良しアピールの一環だよ」
動揺しているリリカを見て、楽しそうに彼は笑う。

「そうなのですね……って周りには誰もいないじゃないですか!! お戯れも程々にしてくださいっ!!」

リリカはどきどきと胸が高鳴るのを感じた。どうにか言葉を返しはしたが、驚きと恥ずかしさのあまり思考が追いついていない。

「ふふふっ。これだけで赤くなるなんてね」
「ち、近すぎますわっ!!」
リリカはズザザッと後退りした。

「本当に面白いなぁ、リリカ嬢は。さあ、帰ろうか」
「はっ、はい」

帰りの馬車は緊張のあまり、目も合わせることが出来ないまま王宮に到着した。

その後、部屋に戻り、緊張感から解放されたリリカはすぐに眠ってしまった。
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