契約婚のはずが、腹黒王太子様に溺愛されているようです

星月りあ

文字の大きさ
19 / 57

帝国皇子との過去

しおりを挟む
「くくっ……。お前からあんな言葉が出てくるなんてな、後ろで吹き出しそうになったぞ」
ロベルトは必死に笑いを堪えながら言う。

先程の会話が聞こえていたらしい。レイリックがジュリアンに対し、リリカのことを「可愛い婚約者」だと言っていたことだ。

「……リリカ嬢も素直に受け取ってくれたらいいのにね」
「なに、お世辞だとでも思われたってことか?」
「お世辞というか別方向の勘違いされてる気がするんだよね」
実際、その予感は当たっていた。リリカは仲良し演技だと勘違いしていたのだ。

「ふーん。にしてもあのお前が可愛いとはね」
「まだそれ言う?」
レイリックは口を尖らせる。

「だって今まで何に関しても無関心だっただろ、レイは」
「まあ、確かにそうだね。本当に不思議だよ。彼女といると知らない感情が溢れてくる。リリカ嬢がジュリアン皇子と一緒にいるのを遠目から見かけたとき、なぜか心がもやもやして、ああ言わずにはいられなかったんだ。……それに、あの笑顔は反則だよね……。ジュリアン皇子にも見られてしまったし」
レイリックはまたあの笑顔を思い出し、頬を赤らめている。

「へぇ~」
ロベルトはにやにやと笑みを浮かべて、レイリックを見ている。

「なんだよ」

ロベルトは段々面白いことになってきたと感じていた。

「嫉妬したんだろ、ジュリアン皇子に」
「……これが嫉妬、か」

良い傾向だとロベルトは思った。

レイリックは次期国王として周囲から常に完璧な王太子という姿を求められ、育てられた結果、同年代の子供相手にも冷めた態度で接していた。ロベルトが初めてレイリックに会ったときもそうだった。何にも興味がないという様子をすぐに感じ取った。そのことを国王陛下も王妃様も心配されていた。だから、幼馴染の俺を異例の10歳で侍従長に任命した。通常は正式に公務が始まる15歳のときに侍従長が決まるのだが。

「まあ、頑張れ」
そう言うと苦笑いしている。

「それはそうと、帝国がまさかジュリアン皇子を送って来るとはね」
「ああ。それに関しては議論になっているな」
「個人的にはジュリアン皇子でもリチャード皇太子でも良いんだけどね」

エスフィート帝国でも悪魔の象徴と言われている黒髪黒目を持つジュリアンが送られて来たことが問題なのだ。ジュリアンは先代王妃の息子で本来皇太子となるべき存在だった。いや、昔は皇太子はジュリアンだったのだ。しかし、前皇帝が亡くなってすぐに、容姿を理由にリチャードを皇太子にと現皇帝が指名したのだ。これはエスフィート帝国民はもちろんのこと、他国民でも誰もが知っている事実だ。

「以前リチャード皇太子とも話したことはあったけれど、ジュリアン皇子の方が優秀だという印象だね。リチャード皇太子は余程甘やかされて育ったのか王族としての自覚がまるでなかった。今は改善されていることを祈っているけどね」

もし、優秀さがゆえにリチャードではなくジュリアンを送ったというのなら、まだ皆も納得出来ただろう。しかし、表舞台に一切出て来ない、国内でも腫れ物扱いされている皇子をこのような場に送り出すなど王国に対する侮辱だ。だからこそ、議論が紛糾している。

「僕としては公務に全く興味がないリチャード皇太子よりジュリアン皇子の方が話しやすい。話して嫌な気持ちになるのなんてあのときが初めてだったよ」



**********

あれは今から7年前、アルマーニ王国とエスフィート帝国との国同士の交流を目的としたパーティーが開かれたときのことだった。レイリックはリチャードと歳が近いこともあり、父王から紹介され、挨拶を交わした後に問題は起こった。

『父上~暇だから外行きたい』
と皇帝の着ていた服の袖を引っ張りながら駄々をこね出したのだ。

内心、は?と思った。王族として交流しに来たのならそれに相応しい立ち居振る舞いをすべきだろうと。周りの大人たちもその様を見て、ぽかんとしていた。そして、皇帝はというとパーティーの場でこのような醜態を晒しているにも関わらず、なぜか顔を綻ばせていた。何が嬉しいのか全く持って分からない。

そして、
『分かった。外に行ってもよい。レイリック王子、息子を頼む』
と言われた。

え……と思ったが帝国との関係を考えると拒否するのは得策ではない。そう思い、引き受けた。庭園まで案内し、この花は何かなど色々と質問されては答え、詳しい説明をしようとしたが、『そういうことは興味がない』とばっさり。
何なんだ、この皇子は……。
正直、もう二度と関わりたくないタイプだった。

「それならある意味ではジュリアン殿下が来てくださったのは良かったってことか」
「それは、そうだね」
そう言って苦笑いを浮かべる。

「何も問題が起きなければいいけど」
思わずそう呟いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

悪役令嬢は死んで生き返ってついでに中身も入れ替えました

蒼黒せい
恋愛
侯爵令嬢ミリアはその性格の悪さと家の権威散らし、散財から学園内では大層嫌われていた。しかし、突如不治の病にかかった彼女は5年という長い年月苦しみ続け、そして治療の甲斐もなく亡くなってしまう。しかし、直後に彼女は息を吹き返す。病を克服して。 だが、その中身は全くの別人であった。かつて『日本人』として生きていた女性は、異世界という新たな世界で二度目の生を謳歌する… ※同名アカウントでなろう・カクヨムにも投稿しています

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

私だけが愛して1度も笑ったことの無い夫が、死んだはずの息子を連れてもどってきた

まつめ
恋愛
夫はただの一度も私に笑いかけたことは無く、穏やかに夫婦の時間をもったこともない。魔法騎士団の、騎士団長を務める彼は、23年間の結婚生活のほとんどを戦地で過ごしている。22歳の息子の戦死の知らせが届く。けれど夫は元気な息子を連れて私の元に戻って来てくれた。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない

ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。 公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。 旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。 そんな私は旦那様に感謝しています。 無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。 そんな二人の日常を書いてみました。 お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m 無事完結しました!

【完結】旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!

たまこ
恋愛
 エミリーの大好きな夫、アランは王宮騎士団の副団長。ある日、栄転の為に辺境へ異動することになり、エミリーはてっきり夫婦で引っ越すものだと思い込み、いそいそと荷造りを始める。  だが、アランの部下に「副団長は単身赴任すると言っていた」と聞き、エミリーは呆然としてしまう。アランが大好きで離れたくないエミリーが取った行動とは。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...