契約婚のはずが、腹黒王太子様に溺愛されているようです

星月りあ

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帝国の目的

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「あの魔物は操られていたんだ……俺たちエスフィート帝国の者の手によってな」
「一体どういう……」
まさか、この前の魔物も。

「以前、この国に突然普段はいない場所に魔物が現れたりしなかったか?」
「ええ。城内に現れましたわ」
「なっ!? そんな!!」
その表情からショックを受けているのが見て取れた。

城内に現れたとなると、国家侵略どころの騒ぎではない。ジュリアンは心の底から自国の未来を憂いているのだ。

「それで、どういうことなのですか?」
「場所までは指定出来ないはずだったんだけどな……。皇帝の目的は一つだ。この国をエスフィート帝国の領土とすることだ」
「ええっ!? ですがそのようなことをすれば」
すでに帝国は充分すぎるほど大きい。それなのに……。

「ああ。必ず国は崩壊する。これ以上大きくなっても治めきれないというのに、それすらも分からないとはな」
ジュリアンは吐き捨てるように言う。

小国ならまだしもアルマーニ王国は大国だ。そのような国も同時に治めるなど不可能だ。無理に統治しようとすれば、国内は確実に荒れるだろう。下手をすれば、エスフィート帝国本土すらも崩れていく。

「現皇帝陛下が即位されてから、前皇帝陛下が行っていた貧民に対する援助も徐々に打ち切られてな。民は困窮しているにも関わらず、毎日のようにパーティー三昧。平民たちの間で不満が溜まっているんだ。俺は幼い頃から容姿だけで差別されてきた。前皇帝陛下は差別などなくすと宣言され、俺のことも差別などせず、普通に関わってくれていたんだ。だから、俺は前皇帝陛下の意思を継ぎたいと思っている」
「立派な方だったのですね」
「ああ、そうだな」
リリカの言葉に彼は微笑む。

「ただ今の俺には味方が少なすぎる。宮殿内にも味方など存在しない。俺に付いて来ていた二人を覚えているか?」
「はい。護衛ですよね」
「まあ、表向きはそうだな。だが実情は俺の監視だ。だから協力者を作るにも奴らにバレないように動かないといけない。さすがに他国の城内では誰と関わるにも常に付き纏うなんて出来ないから、今回ここに来れたのはちょうど良かったんだ」
「なるほどね。話しは聞かせてもらったよ」
どこからかレイリックが姿を見せる。

「えっ!? レイリック様!? いつからそこにっ!!」
「皇帝の目的を話し出したあたりからかな」

かなり前……でも良かった。その前の話しは聞かれてなかったのね
その前の話しとは転生に関する内容である。聞かれても何と答えたらいいのか困る。

それにしても気配を消していたのかしら。全く気が付かなかったわ。
ジュリアンもレイナもいきなり現れたことに驚いている。

「さ、さすがですね……」
ジュリアンは未だ驚きつつも言葉を返す。

「そういう重要な話しをするなら僕を呼びなよ」
「……確かに」
そうよね。仮にジュリアン殿下がお呼びすれば、あの護衛に見つかって問題になるかもしれないけど、私がお呼びすれば良かったのだわ。

「……それと、いくら侍女がそこにいるとはいえ、これ以上ジュリアン皇子と一緒に過ごすことのないように」
「えっ!? どうしてです!?」
「どうしてって……婚約者が他の男性と一緒にいるなんて、僕だって良い気分がしない」
はっきりと告げられた言葉に、リリカは納得した。

そうよね。仮にも婚約者。二人きりでなくとも部屋に異性といるなんて良く思われないわよね。

「分かりました。今後は気をつけます」
「……微妙に分かっていない気がするけど今はいいか」

どういう意味かしら?
リリカは首を傾げた。

「さて、今後のことについて話し合いといこうか」
「協力してくださるのですか?」
「仕方ないでしょ。これ以上勝手なことされても困るし。それでジュリアン皇子はどうしたいの?」
レイリックは肩を竦める。

「俺は正直なところ、皇帝になりたかった訳ではありません。ですが、あいつらを放っておいたことで帝国内の状況は日々悪化している。それに、他国への勝手な侵略行為。これ以上放置することは出来ない」
「……一つ確認しておきたいことがあるんだけど、魔物をどうやって城内に入れたの?」
「転移魔法です」
「一瞬で移動出来る魔法だったね。ただし、大まかな場所しか指定出来ないとか」

そんな魔法が実在してたの!?
リリカは目を丸くする。

「はい。転移魔法は膨大な魔力を必要とします。宮殿には一部多くの魔力が集まっている場所があり、そこで魔法陣を使用し、転移させるのですが、そこに溜まっている魔力が徐々に減少しているようでして、位置が全く調整出来なくなっていると聞いていました」
「ということは偶然か。それなら先程現れたという魔物もか?」
先程、魔物の死体を騎士が回収したらしく、魔物が現れたことも知っていたようだ。

「いえ、先程申し上げた通り、場所の指定は出来ません。二回連続で偶然王宮に現れるなどあり得ない。俺の護衛のどちらかが放ったのでしょう。俺がその場で殺されればそれはそれで良しという考えでしょうね。責任を擦り付けることが出来ますから」
「そんな……」
信じられない。護衛が放ったというなら皇帝陛下の指示? だとしたら、実の息子なのにどうして……。

「……まずは帝国が魔物を放ったという証拠が必要だね」
「証拠ならこちらに」
「これはっ」
差し出されたものに珍しくレイリックが大きく反応する。

「魔導具、映像球です」
映像球とはその名の通り、映像を後で見返せるように残すための物だ。

「ふふっ、なかなかに用意周到なようだ」
レイリックはにやりと笑った。

「よし、作戦はこれで行こうか」
「「!!」」
その内容にリリカとジュリアンは驚いて顔を見合わせる。

「決行はジュリアン皇子が帰還するその日だ」

その言葉に2人は無言で頷いた。
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