40 / 57
豊穣祭
しおりを挟む
リリカは公爵邸から王宮に戻って来ていた。
「これでお兄様とスカーレットが上手くいってくれたらいいけど。よしっ、ちょっと街に出掛けようかしら。のんびりぶらぶらしたい気分だし。さあ、レイナ行くわよ」
「はい、お嬢様」
街に着くと屋台の組み立てを行っている様子をちらほら見かけた。
「何かあるのかしら」
「もうすぐ豊穣祭ですからね」
豊穣祭とは植物の神様への日々のお礼と祈りを込めて行われるお祭りである。大昔、この辺りの土地は植物が何も育たない不毛の大地だった。その様子を見た植物の神様がこの土地に恵みを与えた。そして、最後に神様は土地全体に花を咲かせて去って行ったという伝承が残されている。よって、この国では植物の神様が唯一神として崇められているのだ。周辺諸国にもこの伝承は広く伝わっており、植物の神様を信仰する国は多い。
「ああ、そういえばそんな時期なのね。ここ数年は行っていなかったけれど今年は参加したいわね。今年はいつなの?」
「確か明後日かと」
「明後日……特に予定はないし、絶対に行くわよ」
そうリリカは意気込んだ。
「……お嬢様、張り切られているところ申し訳ないのですが、参加されるのでしたら王太子殿下か公爵様とご一緒されてください」
「え? どうして?」
「そういうルールがあるんです。とにかく、この豊穣祭だけは女性同士では行ってはいけませんからね。親子で参加するならセーフですが」
「そうなのね。気を付けるわ」
レイナの迫力に圧されたリリカは素直に頷いた。
「でも折角スカーレットと婚約してもらったのにお兄様と一緒に行くわけにはいかないわ」
「ここは王太子殿下を誘われては?」
「でもお忙しいでしょうし。近づかないって自分から宣言したのに……」
初めの婚約の際の契約でリリカはレイリックに無闇矢鱈に近づかないと誓ったのだ。
「お嬢様はどうされたいのですか? 関わりたくないわけではないのでは?」
「それはっ……」
リリカは自分から言い出した契約の手前、あまり考えないようにしていたが本当はもう分かっていた。
いつも助けてくださって、あんなにお優しくて素敵な方、好きにならないわけないじゃない……。でも、そんなこと絶対にレイリック様にはお伝え出来ない。
だけど
「少しぐらいなら大丈夫かしら」
リリカはボソッと呟く。
「大丈夫ですよ。仕事の邪魔をされない限り、そう簡単には契約違反にはなりませんよ。お祭りのこと、お誘いではなくお願いされてみては?」
「お願い……ええ、そうね。やってみるわ」
**********
「リリカ嬢はいるかい?」
その頃、王宮ではレイリックがリリカを探して、部屋まで来ていた。
「リリカ様でしたら街に出掛けられました」
「えっ? どうして街に?」
「それが、のんびりされたい気分だとかでして」
「そう……ありがとう」
メイドは一礼し、去っていった。
「残念だったな、会えなくて。……レイ?」
「また置いて行かれた……」
レイリックはがくりと肩を落とした。
「どんまい。まっ、今度はちゃんと約束しとけよ。そうすれば置いては行かれないだろ」
「ああ、次はそうするよ」
「にしてもお前変わったよな~」
「そう?」
「ああ、かなり変わっただろ」
かつて見たことのない幼馴染の姿に、未だに驚きが拭えなかった。
「随分とご執心のようで」
「どういう意味? 別に普通だけど」
「いやいやっ、今までの令嬢方への振る舞い、思い返してみろよ!! 近づくどころか追い返してただろ!!」
「確かに……どうしてだろ? 初めからリリカ嬢には興味はあったけど……」
「それ自体が異例なんだ。まっ、自分で考えてみろよ」
「……分かった」
レイリックはそう言いつつ首を傾げていた。
「これでお兄様とスカーレットが上手くいってくれたらいいけど。よしっ、ちょっと街に出掛けようかしら。のんびりぶらぶらしたい気分だし。さあ、レイナ行くわよ」
「はい、お嬢様」
街に着くと屋台の組み立てを行っている様子をちらほら見かけた。
「何かあるのかしら」
「もうすぐ豊穣祭ですからね」
豊穣祭とは植物の神様への日々のお礼と祈りを込めて行われるお祭りである。大昔、この辺りの土地は植物が何も育たない不毛の大地だった。その様子を見た植物の神様がこの土地に恵みを与えた。そして、最後に神様は土地全体に花を咲かせて去って行ったという伝承が残されている。よって、この国では植物の神様が唯一神として崇められているのだ。周辺諸国にもこの伝承は広く伝わっており、植物の神様を信仰する国は多い。
「ああ、そういえばそんな時期なのね。ここ数年は行っていなかったけれど今年は参加したいわね。今年はいつなの?」
「確か明後日かと」
「明後日……特に予定はないし、絶対に行くわよ」
そうリリカは意気込んだ。
「……お嬢様、張り切られているところ申し訳ないのですが、参加されるのでしたら王太子殿下か公爵様とご一緒されてください」
「え? どうして?」
「そういうルールがあるんです。とにかく、この豊穣祭だけは女性同士では行ってはいけませんからね。親子で参加するならセーフですが」
「そうなのね。気を付けるわ」
レイナの迫力に圧されたリリカは素直に頷いた。
「でも折角スカーレットと婚約してもらったのにお兄様と一緒に行くわけにはいかないわ」
「ここは王太子殿下を誘われては?」
「でもお忙しいでしょうし。近づかないって自分から宣言したのに……」
初めの婚約の際の契約でリリカはレイリックに無闇矢鱈に近づかないと誓ったのだ。
「お嬢様はどうされたいのですか? 関わりたくないわけではないのでは?」
「それはっ……」
リリカは自分から言い出した契約の手前、あまり考えないようにしていたが本当はもう分かっていた。
いつも助けてくださって、あんなにお優しくて素敵な方、好きにならないわけないじゃない……。でも、そんなこと絶対にレイリック様にはお伝え出来ない。
だけど
「少しぐらいなら大丈夫かしら」
リリカはボソッと呟く。
「大丈夫ですよ。仕事の邪魔をされない限り、そう簡単には契約違反にはなりませんよ。お祭りのこと、お誘いではなくお願いされてみては?」
「お願い……ええ、そうね。やってみるわ」
**********
「リリカ嬢はいるかい?」
その頃、王宮ではレイリックがリリカを探して、部屋まで来ていた。
「リリカ様でしたら街に出掛けられました」
「えっ? どうして街に?」
「それが、のんびりされたい気分だとかでして」
「そう……ありがとう」
メイドは一礼し、去っていった。
「残念だったな、会えなくて。……レイ?」
「また置いて行かれた……」
レイリックはがくりと肩を落とした。
「どんまい。まっ、今度はちゃんと約束しとけよ。そうすれば置いては行かれないだろ」
「ああ、次はそうするよ」
「にしてもお前変わったよな~」
「そう?」
「ああ、かなり変わっただろ」
かつて見たことのない幼馴染の姿に、未だに驚きが拭えなかった。
「随分とご執心のようで」
「どういう意味? 別に普通だけど」
「いやいやっ、今までの令嬢方への振る舞い、思い返してみろよ!! 近づくどころか追い返してただろ!!」
「確かに……どうしてだろ? 初めからリリカ嬢には興味はあったけど……」
「それ自体が異例なんだ。まっ、自分で考えてみろよ」
「……分かった」
レイリックはそう言いつつ首を傾げていた。
1
あなたにおすすめの小説
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする
夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、
……つもりだった。
夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。
「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」
そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。
「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」
女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。
※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。
ヘンリック(王太子)が主役となります。
また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
悪役令嬢は死んで生き返ってついでに中身も入れ替えました
蒼黒せい
恋愛
侯爵令嬢ミリアはその性格の悪さと家の権威散らし、散財から学園内では大層嫌われていた。しかし、突如不治の病にかかった彼女は5年という長い年月苦しみ続け、そして治療の甲斐もなく亡くなってしまう。しかし、直後に彼女は息を吹き返す。病を克服して。
だが、その中身は全くの別人であった。かつて『日本人』として生きていた女性は、異世界という新たな世界で二度目の生を謳歌する… ※同名アカウントでなろう・カクヨムにも投稿しています
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
悪役だから仕方がないなんて言わせない!
音無砂月
恋愛
マリア・フォン・オレスト
オレスト国の第一王女として生まれた。
王女として政略結婚の為嫁いだのは隣国、シスタミナ帝国
政略結婚でも多少の期待をして嫁いだが夫には既に思い合う人が居た。
見下され、邪険にされ続けるマリアの運命は・・・・・。
婚約者から妾になれと言われた私は、婚約を破棄することにしました
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私エミリーは、婚約者のアシェル王子に「妾になれ」と言われてしまう。
アシェルは子爵令嬢のキアラを好きになったようで、妾になる原因を私のせいにしたいようだ。
もうアシェルと関わりたくない私は、妾にならず婚約破棄しようと決意していた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる