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第一章 追い風と白い月
三人の決着
しおりを挟む〈さぁ皆さん! アシュクレイ杯で見事、優勝の栄冠に輝いたのは――――リッキー・マーティスとシュトラーダです! どうか、大きな拍手を!〉
選手達が上る表彰台と、その傍に佇む彼らの機体を囲み、観客達は盛大な拍手を送った。
表彰台のトップに立つリッキーは、その拍手に、笑顔で手を振り応える。
「おめでとうございます、リッキーさん」
「悔しいけど、僕の負けだよ。……流石だね」
フウマとシロノも、今回のレースの優勝者に、賞賛の言葉を送る。
二人は同着で、共に二位となった。リッキーも彼らとほぼ同時にゴールしたが、それは二人より、ほんの僅か先だった。
そして三人がゴールに辿りつき、かなり遅れてから一人の選手がゴールを迎え、三位についた。
そんな二人に対し、リッキーは少し気恥ずかしそうに言う。
「ありがとうよ、二人も最高だったぜ。俺だって、今回は運が良かったから、勝てたようなものだ」
「だから言ったろ、運も実力の内だって」
「ハハハッ! 気に入ったぜ。またいつか勝負しようぜ…………フウマ!」
リッキーは愉快そうに、フウマに言った。
「ふふっ、私は今回、運がありませんでしたね。まぁ、次がありますから」
いまだに余裕そうなシロノに対し、フウマはむっとする。
「運が無かっただって? じゃあ、あれは何だよ」
フウマが指差す先には、ブースターが破損したホワイトムーンの姿があった。
「何も無ければ、シロノが自分の船体に傷をつけたりするかよ。やっぱりあの時、僕を助けた時に出来た傷なんだろ? ……それがなければ勝てたのに」
シロノはクスクスと笑う。
「ただの考えすぎですよ、フウマ君。まぁ良いレースが出来た事ですし、それで良いではありませんか」
何だかフウマは、上手くはぐらかされた気がした。
結局、今回のレースではシロノには勝てず仕舞いであり、それに優勝も、リッキーに持って行かれた。
しかしシロノの言うとおり確かにレースは面白く、最後の最後まで楽しむ事が出来た。
これからだって、僕はレーサーとしてこの宇宙を飛び続ける。
フウマは心の中で決心し、自分の愛機を見つめる。
そう…………テイルウィンドとともに。
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