テイルウィンド

双子烏丸

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第三章 新たな強敵(ライバル)達 

二人の時間(1)

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 フウマ、そしてミオの二人は、いきなり同行者が二人も居なくなったことに戸惑い、しばらくキョトンとする。
「結局……私たち二人だけになっちゃったね、フウマ」
 最初に口を開いたのは、ミオの方からだった。
「……そうだね。でも、まぁ……よくある事だしね。大体、テイルウィンドの修理やメンテなんかも、僕たちでするじゃないか?」
「でも、こんな素敵な場所に二人で来れるなんて、そうないでしょ?
 ……ほら見て! 星が、あんなに大きく見えるなんて」
 ミオが喜々として指さす先には、宇宙に青く輝く二重惑星、ツインブルーの巨大な姿がある。
 ドームにうつる大迫力のこの光景は、まさに絶景の一つだろう。
「へぇ、確かに。こんなの僕も初めてだな」
 フウマも、これには少し感心した。



 ――思えば、レーサーとしてあちこち回ったけど、こうした形では初めてかも。そして――
「ほら。ちょうど席も空いているし、一緒に座ろ?」
 彼女に言われるまま、フウマは会場に並ぶ観客席に座る。
「観客席でレース観戦か。これも……僕には初めての体験だね」
「いつもフウマは、レースをする側だったものね。ウィンドボードをしていた時からずっとそう。『見ているだけなんて退屈だ』ってね。
 でも、私は見ているだけでも良いと思うわ。それだけでもとても楽しいし…………フウマとテイルウィンドの応援だって出来るもの」
「応援って、僕の?」
「ふふっ、他に誰がいるって思ったの?」
 ミオはさらに、こう続けた。
「私に出来るのは、テイルウィンドの修理。レースが始まれば……応援すること。……少しでも、私はフウマの力になりたいから」
 とても真っ直ぐな、初めて聞く彼女の告白。
 フウマ自身、長い付き合いでそうした思いは幾らか察していたつもりだったけれど、それを直接聞くのとでは大違いだ。
「えっ! ミ、ミオってば?」
 そんな風にどぎまぎしているフウマに、ミオは悪戯っぽく言ってみせる。
「もちろんよ。だって、私とフウマの仲じゃない」

 
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