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第四章 前哨戦
開幕
しおりを挟む照明が消え、会場全体が暗くなる。
そして中央の投映機が稼働し、装置全体の十数個ものレンズから、映像を会場の丸天井へと投映した。
すると軽快なBGMとともに、画面一面に桃色髪の際どい衣装の、テンションの高い若い女性が登場した。ルックスもかなり良く、露出の高くピッチリした衣装のせいで、身体のラインが更に強調されている。
〈ハーイ! 会場のみなさん御機嫌よう! 知っている人はこんにちは! お久しぶり、初めての人は初めましてっ! 私はレイ・マリアンナ、
このG3レース親善試合の司会者よ。あっ、もちろん本番の司会も私だから、楽しみにしていてね♪〉
レイはそう言って、ウィンクした。
その後彼女は、隣にいた男性を紹介する。その人物は、フウマはすでに見たことがあった。
〈そして、隣の素敵なオジサマは、元宇宙レーサーの実況者、リオンド・マーティスさんよ〉
〈ふっ、今でも若いレーサーには負けんさ。まぁ、かつてレーサーだった経験もあるから、良い実況が出来る自負はあるさ〉
すると実況者であるリオンドは、少し困ったようにレイを見た。
〈だが……そのテンションと恰好は、どうにかならないものかね〉
〈あら? リオンドおじさまったら、もしかして私の事が気になるのかしら? くすっ、以外と可愛いのね〉
〈いや、さすがにレースの主役である、レーサーよりも目立つのはまずいだろう……〉
これを聞いたレイは、また可笑しそうに笑う。
〈ふふっ、レース前にみんなのテンション上げてくのも、司会としての仕事の一つよ。せっかくだから、最初っから飛ばしていかなきゃね!〉
そんな画面内のやり取りを見ていて、フウマはやや唖然としている。
「……えっ、何……これ? レースの司会って、こんな風なの?」
フウマはレースには数多く参加しているが、観客としてレース観戦は始めてだ。初めて見る、イメージとはかけ離れた実況と司会のやり取りに戸惑っていた。
隣にいるミオは、そんなフウマに教えた。
「そんな事ないわ、むしろ彼女が特別なだけ。あんな感じだけど、それが今人気の司会者、レイ・マリアンナとしての売りなの。
知らなかったみたいだけど、フウマが出場したレースのいくつかも、彼女が司会をしていたのよ」
「ああ、司会としてもそうだし、彼女自身も美人だからな。どうかなフウマ、同じ男として、そう思うだろ?」
そんなジョンの言葉に対しては、フウマは苦笑いで誤魔化す。
〈このレースは文字通り、本番のG3レースの前試合。だけど銀河中から超一流のレーサーが集まるこのレース。きっと他のレースよりも、はるかにエキサイティングで興奮に満ちた、楽しいものになるわ。私の保証付きよ!〉
すると透明な丸天井の向こう、ツインブルーを背にした宇宙空間に、何十機ものレース機体である小型宇宙船が、並列に飛行しながら現れた。
レースの時とは違い、レース機体は速度を全体に揃え、遅い速度で会場であるドームの外を、数十もの光筋の弧を描きながら周回する。
〈さぁ! このレースの主役たちの登場ね! みんなG3レースに参加する資格を持つ強者達よ〉
横のリオンドも、感心したようにつぶやく。
〈これはあくまで親善試合。本番のG3レースにエントリーした選手の内、今出場しているのはその半分にも満たない。にも関わらず、随分な数だな〉
〈ええ……何しろ銀河は広いですもの。さてと、銀河中から集まった、レーサーとその機体の紹介を、始めちゃおうかしら!〉
そう言ってレイは、出場するレーサー、そして機体の紹介を始めた。
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