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第五章 深紅の炎
探偵ジョセフ
しおりを挟む通信を切られ、シロノに置いて行かれたジョセフは、やれやれと言うかのように、一人苦笑いする。
――少し、怒らせたか。これは俺としたことがしくじった、多分、何か知っているとは思ったがな。あーあ、失敗、失敗――
ジョセフの玄武号は、惑星の気流に上手く乗って、空を飛んでいる。
しかし先を行ったシロノを、追おうともしない。
――後を追ってもいいが、あれじゃあもう、相手にしてくれないな。それより今は――
そんな時に、すぐ近くに小型の物体が突然出現し、玄武号に接近して来るのがレーダーで分かる。
ディスプレイの一つには接近する物体が六機ほど映され、その正体は正面に目玉のようなセンサーを一つ備えた、円盤だった。迷彩機能を弱めているため、かろうじて外観は確認出来るが、背景とほぼ同化しているせいで、これ以上に遠ければセンサーでの捕捉は不可能だろう。
――ようやく『子ガメ』達のご帰還か。あっちは情報を、手に入れていればいいが――
ジョセフが『子ガメ』と呼ぶこの円盤は、玄武号に搭載された、無人偵察機。彼はそれを使い、広範囲の偵察を行っていたのだ。
しかし、無人偵察機の使用は、レースで禁じられている。偵察程度ならまだ問題はなかったが、無人機に爆発物を仕掛けて相手の機体の衝突させるなど、色々と妨害工作が可能になるからだ。機体同士の直接的なものならまだしも、無人機まで使用されればレースどころではない。
にも関わらず、彼は無人偵察機を使用している。レース側も違反がないか監視しているが、無人機に対するそれは、妨害工作と思われる行為が主で、ただ偵察のみなら隙は多い。さらに、この『子ガメ』には熱量制御機能と光学迷彩など、隠密行動に特化した機能を有している。よほど警戒が厳重でなければ、存在の気づかれることはないだろう。その上小型で無人、そして単機の推力も高く、捜索の足は速い。
ジョセフはレースが始まる前に子ガメを射出させ、先にツインブルーへと向かわせて
、場所の調査を行わせていた。
しかし、隠れてこんな真似をしていると言うことは、やはり何か、彼にも裏があるかもしれない。
機器を操作して、ジョセフは玄武号下部のハッチを開ける。
六機の子ガメは、そのハッチの中へと、次々と格納されて行く。
全機格納されたことを確認すると、子ガメが得た情報を玄武号と共有、シート横の小型モニターに映し出す。
情報を確認しながら、ジョセフはふむふむと頷く。
――子ガメに惑星を一周させたが、捜索範囲内には、目立つ仕掛けらしいものは無しか。あちこちで破壊工作を行っていたらしいから、もしかしたら今回もかと思ったが、違うみたいだね。しかし――
再び、ジョセフはモニターに目を落とす。そこには、複数の写真が表示され、小さい無人機の影が写っていた。
形状はどれも異なっていることから、無人機を送り込んでいるのは、一個人や一組織のみでなく、複数の人物、組織が別々に送り込んでいると分かる。
――人のことは言えない訳だが、他も無人機を飛ばしているようだ。そのうち一種、銀と青の球体型無人機は、銀河捜査局のものだと分かる。しかし他は……誰が送り込んだものなのか?
……まぁいいか。これが終わった後でゆっくり、映像とデータベースと照らし合わせて、一つ一つ確かめるとするか――
これについては後だ、今は置いておく。ジョセフはモニターを閉じた。
――さてと、それではレーサーごっこを再開しますか。……まだ、今の所はな――
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