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第六章 前哨戦・後半
伝説への挑戦
しおりを挟む〈へぇー、透明に澄んだ……綺麗な青空……。それに、こんなに広い空は初めてね、とても素敵じゃない? シロノ?〉
ツインブルーの広大な無風地帯、クリムゾンフレイム、そしてホワイトムーンは、無風地帯の巨大な空を飛行している。
「ええ、それは私だってこの景色は、もちろん素晴らしいと思いますよ?
しかし……、まだこうして、通信を繋げているのですね」
通信ディスプレイには、相も変わらずマリンの顔が映っている。
〈あら? ついて来るように言ったのは、シロノじゃない? ……それとも、私の事が嫌い?〉
「いえ……そんな訳では、ありませんけど……」
〈なら別に問題ないじゃない! それに――――正面を見てみて〉
正面の景色、彼方まで広がる青空に、ぽつんと浮かぶ黒い影……。
それは二機の先を行き、首位に君臨するブラッククラッカーの姿だ。
「あのジンジャーブレッドの新しい機体、――ブラッククラッカー。ようやくここまでたどり着いた、と言う所でしょうか」
彼もレーサーとして、かつて伝説と呼ばれる程の活躍を見せたジンジャーブレッドに、一種の畏敬の念を持っていた。
――それが今、目の前に立ちはだかっている。さすがに私でも、気分の高揚を隠せません――
今こそ、あのジンジャーブレッドを超えられるかもしれない――。それはシロノ、そしてマリンも同じ感情だった。
〈こんなチャンス、逃さないわ! まずは先手必勝よ!〉
クリムゾンフレイムに残る、僅かな燃料。マリンはそれに勝利をかけ、機体を強く加速させる。
――やはり全力で行きますか。なら私も、ここで出し惜しみだなんて、している暇はありませんものね――
シロノは軽く微笑むと、ホワイトムーンの出力を、更に引き上げる。
ジンジャーブレッドの後ろから迫る、二機の機体。
その中の一機は、つい先ほど相手にした機体、クリムゾンフレイムだ。
――あの娘、あれから再び追い上げて来たか。あの時は乱気流に吹き飛ばされたらしいが、随分と立ち直りがいいものだ。やはり彼女には見込みがあるな。それに――
今度は、残りの一機、ホワイトムーンを確認する。
――ホワイトムーン……確か、あのシロノ・ルーナの機体だったな。やはり彼は、口先だけの青年ではなかったと言うことか。
ここまで追い上げたと言うことは、言うほどの実力は、十分にはあるようだ。さてと、残るは、私との決着だけだ。だが、決着の行方はとうに分かっている――
ブラッククラッカーとの神経接続は良好だ。
確かに接続に関しては、人間の感覚を機械につなげ、無理に拡張しているせいで、多少なりの負担がない訳ではない。
しかし、このシステムを使いこなすことでジンジャーブレッドは、現役時代において常勝無敗を誇っていた。
そして今回も……例外ではないはずだ。
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