テイルウィンド

双子烏丸

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第六章 前哨戦・後半

二対一(2)

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 クリムゾンフレイム、ホワイトムーンの行く手を阻むブラッククラッカー。
 二機は共にそれに対抗している訳であるが、突破はまだ出来ずにいた。
「くっ! やはり……二人でも上手く行かないものですね。まぁ、ジンジャーブレッドを相手にすれば、当然と言えば当然かもしれませんが……」 
〈まぁまぁ、今度は上下からから同時に行くのはどう? いくら相手でも、そうずっと防ぎ続けられる訳ないもの〉
 シロノはマリンと連帯しながら、ブラッククラッカーの攻略を急いでいた。
 ゴールとなるリングは、次第に近づいている。いつまでも時間をかける訳にはいかない。


 何度かは後一歩の所までは行くが、それでもまだ、僅かに足りない。
「そう、ですね。…………ふふっ」
 突然、シロノは一人おかしそうに笑う。
〈ん? どうしたのシロノ?〉
「いえ……、こうしてマリンと共にレースで協力するなんて、つくづく……考えもしなかった事だと、ね……」
 実際、個人競技であるレースで、協力プレイなんて行うことは滅多にない。しかし、今回は相手が相手だ、レーサー同士が協力する事すら、無理もないかもしれないが。
 マリンは嬉しそうに表情を輝かせた。……もしかすると、レースをしている事すら、半分忘れているかもしれない。
〈奇遇ね、私もなの! やっぱりこれも運命なのね、シロノ♪ そして、このまま私がレースで大勝利、ジンジャーブレットを破って、約束通りシロノも私の物……。うん! 我ながら完璧ね!〉
「ははは……ここに来ても、マリンは相変わらずですね」
 シロノはそんな苦笑いを少ししていた、そんな時……、横のディスプレイに映ったクリムゾンフレイムの速度が、一瞬遅れたかのように見えた。


「機体の様子が……少し遅れて……」
〈そろそろもう一度、ジンジャーブレッドに仕掛けるわ、シロノ! 早くしないと、相手が先にゴールしちゃうわよ! ……だから、これが最後のチャンスだと思って、やらないとね〉
 ――マリン、貴方って人は――
 何かを悟った様子を、僅かにシロノは見せる。
「ええ、了解しましたよ、マリン。――どうか、健闘を祈ります」
 しかし、それを表立っては出さない。
〈シロノってば……やっぱり優しい人ね。なら私も、ちゃんとそれに答えなきゃね〉



 シロノに対して、自信満々に答えるマリン。
 だが、内心では軽く、苦笑いをしていた。
 ――うーん、やっぱり気が付いちゃった……かな? 変に気を遣わせて、何だか悪いかも――
 既に残り少ない、尽きかけていたクリムゾンフレイムの燃料。その限界が、とうとう訪れたのだ。
 ただでさえ少ないはずなのに、無理してシロノとジンジャーブレッドを相手にした事が、燃料の消費を早めた。


 もし、ジンジャーブレッドに構わずに、二位を狙っていれば、もしかすると念願のシロノの打倒が叶ったかもしれない。しかし、今更後悔はしていない。
 ――まぁ、どの道少ない燃料では、シロノを相手に出来たかすら怪しいものね。それなら今回は、彼に花を持たせるのも、悪くないわ――
 マリンは操縦桿を握り、最後の勝負に備える。
 ――ちょっと残念だけど、貴方を手に入れるのは、まだ少し先になりそうね。
 ふっ……、けど本番では、そうは行かないんだから――
 クリムゾンフレイムに残る、最後のエネルギーを使う覚悟で、握る操縦桿を彼女は動かす。
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