テイルウィンド

双子烏丸

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第八章 本番へ――

星空の下で(2)

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 場所は再び、フウマの家へと戻る。
 シロノは、先ほどの話をそらす目的もあり、ふとこんな事を呟く。
「それにしても……成長しましたね、フウマも。誰かの為に、レースをするだなんて。
 きっと――いい勝負が出来そうです、今度は晴れて私の、本当のライバルとして」
 今までシロノ、何度も数多くフウマとレースで争って来たけれど、これまでの彼はレースを楽しむ事と、優勝の憧れで宇宙レーサーとして活躍していた。加えてシロノが現れてからは、彼をライバルとした対抗意識も加わった。


 もちろん、それらもレーサーとして活躍するには、十分にまともな理由だ。ただ、シロノに追いつくには、これらの理由だけではあと一歩足りなかった。
 しかし今度は、フウマにも誰かのために勝ちたいと思える、相手がいる。
 そんなシロノに、リッキーはフッと笑った。
「お前こそ、大概だな。やっぱりフウマを贔屓しているじゃないか」
「そう言うリッキーこそ……随分と面倒見がいいみたいですけどね」
「くくっ、これは一本取られたな! そう言われると確かに弱いな!」 
 シロノとリッキー、互いにレーサーでありながら、その性質はまるっきり違うようで、似ている二人は、仲良く笑い合う。




 するとそんな中、話題になっていたフウマ本人もやって来た。
 さっき出て行ったリッキーが気になり、様子を見に訪れたらしい。
「おう! 噂をすれば何とやらだ! フウマも夜空を眺めに来たのか?」
 それに気づいたリッキーは、軽く声をかけた。
「別に、リッキーの事が気になってついて来ただけさ。にしても……シロノもここにいたのか。どうりで見かけなかった訳だ」
「ここの星空は……とても綺麗ですから。こうして星を眺めるのも、大好きですしね」
 シロノはそう言って微笑んでいる。
 しかし、心なしかフウマはどこか、不審そうだ。
「本当に――二人とも星を眺めてただけなのか? 何だか、色々と話しているのが、聞こえた気がするけどさ」
 すると二人は示し合わせたように、悪戯っぽい様子を見せた。
「ふふっ……さて、どうでしょうかね? 何しろ大人同士の会話ですから」
「そうだぜ? まぁ、まだまだお子様のフウマには、早いってことさ。もっと大人になったら、教えてやらなくもないぜ?」


 フウマは頬を膨らませ、ムキになって怒った。
「何だってのさ! 僕はもう十分に大人さ!」
「ハハハッ! そう言う奴ほど、子供だってよく言うじゃないか」
「……ったく、もう! 見てろよ二人とも! G3レースで優勝するのは僕なんだからな! その時泣きを見たって、知らないんだから!」
「おっと! それは聞き捨てなりません。フウマには悪いですけれど、優勝するのは私ですよ。それは譲れませんね」
 ムキになったフウマと、余裕な表情のシロノ。二人は睨み合い、使い古された表現だがその視線が合わさり、バチバチと火花が立っているかのようである。
 争う二人の間に、年長者の特権なのかリッキーが、割って入る。
「互いににらみ合っている中悪いが、俺も忘れてもらっては困るぜ! 何しろ優勝の座は一つだけだ、そんなに争うなら、この俺が優勝を手に入れれば、丸く収まるってものだろ?」
 そんなリッキーに、二人は睨みつけた。
「冗談は顔だけにしてください! リッキー!」
「何言っているのさ! 全く!」
 シロノ、フウマはそろって、そう叫んだ。リッキーはそれを愉快そうに、豪快に笑う。
 そうしている中でも、上に輝く星々は相も変わらず――夜空に爛々と輝いていた。
  
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