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幕間 遭遇
意外な助け
しおりを挟むしかし、この様子なら、どうにかなるかもしれない。
時間稼ぎが目的であったが、これなら相手の方が条件をのみ、見逃してくれるかもしれない。
フウマがそう希望を抱いていた。だが、それは突然、打ち砕かれた。
〈静まれ! お前たち! それでもクロスメタル海賊団の一員か!〉
辺りの様子を見かね、我に返ったキャプテン・サイクロプスは強く叱責する。その迫力は最初の印象通り、冷酷な船長のそれに戻っている。
そしてサイクロプスはフウマを見る。
〈悪いな、フウマ。確かに魅力的な提案だが、我々にも体面と言うものがある、一度受けた依頼を放棄するわけにはいかないのだよ。
申し出は拒否、目的通りに君を今から……捕獲させてもらう〉
これにはフウマも戸惑う、今まで上手く行っていたが、急にこれで駄目になってしまった。
まだシステム復旧には、時間が足りない。せめてもう少し、時間を稼がないと。
「そうは言っても……逃げようと思えば逃げられるんだ! この機体は動きが早いし、何よりファンなんだろ? こうして砲門を向けているのもただの脅し、僕に撃てるはずがないじゃないか!?」
どうにかフウマは、抵抗を試みようとする。
が、サイクロプスは残念そうに、首を横に振った。
「残念だが、我々を甘く見すぎているようだな。確かに君の言う通り、君たちには傷つけたくないし、砲門も確かに脅しだ。だが――」
サイクロプスは指をパチンと鳴らした。
すると周囲の海賊船の側面部から、何やら展開される。
それは槍のように尖った、銛型の装置が現れた。
「確かに君たちを傷つけはしないが、悪いがその機体、テイルウィンドは別だ。
もし拒むなら、いますぐこれを打ち込み、無理にでも捕獲させてもらう。大事な機体を、傷つけられるのは嫌だろう?
それに今更、逃げようとしても無駄だ、この距離なら確実に当てる自信があるからな」
「……くっ!」
状況は振り出しに戻り、再び絶体絶命に陥る。
とてもではないが、逃がすつもりには見えない。――どうするべきか、もはや打つ手も分からない。
〈キャプテン! 別方向から新たな機体が!〉
突然、映像の中でクルーの一人が、そう報告するのを聞いた。
〈何だと!?〉
〈規模はレース機と思われる、小型機です! 超光速度で接近して来ます!〉
これを聞いて、フウマはレーダーを確認する。
レーダーに表示されるのは、自機を囲む大きい光点、そしてそこに急接近する、一つの小さい光点が見える。
――と、その瞬間に、海賊船の一隻がレーザービームの類を受け、小規模な爆発が起こる。
そして次々に何処からかレーザーが続けて放たれ、海賊船を襲う。
〈……一隻で相手とは、いい度胸だ! フウマ、少し待っているといい〉
サイクロプスはそう伝え、通信を切った。
海賊船のブリッジでは、戦闘態勢へと入っている。
「あ、あわわ……、大丈夫なのだろうな!?」
腰を抜かし、情けなく怯えている代理人には、誰一人として気にかけようとはしない。
「――情けない奴だ。被害状況はどうなっている?」
サイクロプスの問に、クルーが答える。
「威力そのものは大したことなく、被害も微小。しかし……動きが素早いせいで狙うことはままならず、下手に撃てば仲間の船に当たるかもしれません。
それに、絶えず攻撃を仕掛けるせいで、我々の行動を妨げています。これでは、テイルウィンドの捕獲さえ不可能です」
外の様子は、数隻もの海賊船の間を、黒い影が飛び回っている様子が見て取れた。
あまりに高速で飛行するため、その姿は目視することは不可能だ。
――これは一体、何だ!?――
「アリス! 映像を解析してくれ!」
アリスと呼ばれたオペレーターの一人が、影の映った映像の一部を解析する。
映像はディスプレイの一つに映され、モザイクがかかったように見にくい影の姿が、徐々に解析され明らかになる。
それは、二つの黒い菱形が、十字に重なった飛行物体だった。
この物体を見たゲルベルト重工の代理人は、驚きの表情を見せ、呟いた。
「何故ここに、ブラッククラッカーが……? こんな場所に来るなんて、あり得ないはずだ」
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