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幕間 遭遇
目指す先には
しおりを挟む無事、テイルウィンドは海賊から逃れることが出来た。
フウマは安堵の様子を見せる。
「……はぁ、一時はどうなるかと思ったよ」
「でも、何とか助かったから、良かったね」
ミオの言葉には、フウマも同意だった。
もしあの時、ジンジャーブレッドが助けに来なければ、どうなっていたか分からない。
本当に、これには感謝しなければならない。
するとディスプレイに、そのジンジャーブレッドの機体、ブラッククラッカーが接近して来るのが見える。
ブラッククラッカーはテイルウィンドに並ぶと、通信をこちらに送る。
フウマが通信を許可すると、そこにジンジャーブレッドの音声のみが流れる。
〈どうやら無事みたいだな……何よりだ〉
そんな彼に、フウマは礼を伝える。
「ありがとう、ジンジャーブレッド、助かったよ」
ジンジャーブレッドの声をこうして聞くのは、初めてだ。そして、こうして会話しているのも……半ば信じられない出来事だ。
「でも、まさか貴方と……こうして話せるなんて。伝説のレーサー、ジンジャーブレッド。あなたはは僕の憧れなんだ」
感激の言葉に、ジンジャーブレッドは笑い声をあげる。
〈そう言われると私も嬉しい、少年よ。見たところ……君も、レーサーみたいだが?〉
「ああ! 僕はフウマ・オイカゼ、この機体テイルウィンドと、今からG3レースに参加する所さ!」
これには驚いたのか、向こうは言葉を失う。
〈君が……レーサーだと?〉
〈くっ、ハーッハハハハハ!〉
……が、突然ジンジャーブレッドは、大爆笑した。
「……何ですか、ジンジャーブレッドさん」
怪訝に思ったフウマは、そう彼に言った。
〈お前のような子供が、レーサーだとはな。それを笑えずして、何だって言うのだ〉
やはりと言うべきか、フウマがその言葉にどう反応したか……言う必要もないだろう。
「いくらジンジャーブレッドさんでも、失礼だと思いますよ。これでも僕は……」
〈だが、海賊相手に、ああもなっていてはな。腕のいいレーサーなら、あれくらいなら逃げられるだろう?〉
「それは……機体の、不具合が起こったから……」
フウマは何とか、弁明を試みる。
〈だとしても、まだまだ経験が足りない顔をしているな。本当に一流のレーサーとなるには、何年かは必要だろう〉
「むっ……!」
これには、本気で悔しがるフウマ。
〈ふっ、同じく若いレーサーでも、この前の親善試合のシロノは、凄いレーサーだったよ。悪いことは言わない、まずは彼を目標にするといい〉
「……分かっています! 僕だって!」
しかしジンジャーブレッドは、ふいに優しく、こんな事を伝える。
〈――まだまだ未熟、だが、それはまだ伸びしろがあると言うことだ。もしG3レースで競う中で、上手く成長が出来たなら……もしかすると、良い試合が出来るかもしれないな。
ではな。君の活躍も、私は期待しよう。――フウマ、フウマ・オイカゼ、か。これもまた縁だ、その名前も覚えておく。だから……失望させないでくれたまえ〉
通信は終わり、ジンジャーブレッドの乗るブラッククラッカーは彼方へと去った。
「あの人、何だか格好良かったわね」
「それは……やっぱりジンジャーブレッドだしね」
フウマは続ける。
「期待している――か。憧れの人から言われると、やっぱり嬉しいな」
そんな彼の様子は、とても嬉しそうであった。
「くすっ、良かったね、フウマ」
「まぁね。まぁ経験が足りないって言われたのには、正直グサッと来たけれど」
ちょっと苦笑いを見せるけれど、それでも嬉しそうなのは、変わらない。
「でも、だからこそ頑張らないとね! 僕の実力を、思い知らせてやるさ!」
テイルウィンドは、G3レースの開催地へと急ぐ。
そこではシロノやリッキーを含めた凄腕のレーサー、そしてジンジャーブレッドとの、決選が待っている。
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