テイルウィンド

双子烏丸

文字の大きさ
110 / 204
第九章 Grand Galaxy Grand prix [Ready?〕

トライジュエルの輝き

しおりを挟む

 たどり着いたのは、ある一つの恒星系だった。
「ここが、G3レースの舞台か。……確か、情報によると」
 フウマは端末機器で情報を確認する。


 
 恒星系の名称は、トライジュエル星系。
 星は全て、宝石の名前を冠してつけられており、中心に輝く銀色の輝きを見せる恒星、ダイヤモンドを中心に三つの惑星、サファイア、ルビー、エメラルドが、青、赤、緑の順に、綺麗に一列に並んでいる。
 この星系では三惑星の周回速度の奇跡の調和により、常に惑星直列の状態が保たれた環境にある。そして、G3レースはどうやら、その星系で行われるのが恒例らしい。
 惑星はどれも有人惑星、惑星間の軌道も近く、星系に置ける生命発生が可能な範囲、ハビタブルゾーンに三惑星とも含まれている。
 これらの星はテラフォーミングされているわけでなく、自然にこの環境の中にあった。
 生命が生まれる環境の発生確立は極めて低く、その点を取っても同じ星系に三つもそうした惑星がある事など、奇跡に近い。
 至高な三つの宝石、その名の所以は決して、惑星の色彩によるものだけではない。



 情報によると、恒星ダイヤモンドから一番離れた、惑星サファイアは99%が海で構成された海洋惑星、障害物はほとんどない。だが、一面海に覆われているために上昇、下降気流が発生し雲も発生し、気流の流れが強い。
 また積乱雲による嵐も発生する事もあるが、それは遠くからでも確認出来、回避しようと思えば十分に可能だ。
 ……が、積乱雲の規模によれば回避するにも手間がかかり、遠回りとなる可能性もあり得る。回避するか、危険を承知で突っ込むか、決断が試されるだろう。




 続いて惑星ルビーは自然が少なく、赤色の岩石と砂で形作られた岩と砂漠の惑星。ここからは岩山による山間部に、砂漠では砂嵐が吹き荒れるなど、サファイアとはまた違う環境となる。だがレースを全体的に見ればルビー上空を飛行するのは少なく、レースに影響を及ぼす要素としては、これだけでは大したものとならない。
 だが、惑星ルビーでは惑星の環境以外に、星の広範囲に広がる小惑星の輪が存在し、その範囲はものの見事にコースへと重なる。この点も、注意すべき点の一つとなる。


 そして、恒星の距離が一番近い惑星エメラルドは、一面緑の森に覆われた自然豊かな星であり、あちこちに川や湖さえあるが、それさえ緑に近い色をしているが、やはりここも簡単には行かない。
 エメラルドの気候の変化は激しく、突然の大雨に強風、雷さえ珍しいことではない。
 更に地形においても、確かに一面は森であるが、その場所平地に限らず、深い谷や、幾重にも重なる岸壁、更には機体が通過可能なほどに大きい洞窟さえもがあり、地形のバリエーションも高い。ここの攻略こそ、他との差に大きく繋がると言っても、過言ではない。
 
 
 惑星の大きさはサファイア、エメラルドは惑星にしては格段に大きい部類に入り、ガス惑星のそれに近い規模である。二惑星とも大きさはほぼ同じだが、その真ん中の惑星、ルビーは二つの惑星と比べればその十分の一にも満たないほどに小さい。
 G3レースのコースは、サファイアを起点としてルビーとエメラルド、そして再びルビーを通過してサファイアに戻りゴールを果たすという、三つの惑星を8の字に一周するコースとなる。


 
「トライジュエル星系……ねぇ、恒星の名前って、確か『ダイヤモンド』だよね」
 集合地点は、スタート地点となる惑星サファイアだ。
 惑星へと進路を向ける中、フウマはふと、そんな事を言った。
「情報ではそうあったわ。あんなにキラキラ輝いているから、それがダイヤモンドに見えたのかな? 
 ……ちょっと、ロマンチックかも」
 ディスプレイに映るのは、美しい輝きを見せる恒星ダイヤモンド、ミオはその光景を眺めている。
「せっかくだから、お父さんやリアン、ミリィにも見せたかったな。でも? いきなりどうしたの?」
 ミオの問いに、フウマは少し考えている様子を見せる。
「……恒星ダイヤモンドに、惑星がそれぞれ、サファイア、ルビー、そしてエメラルドの三つ。
なら、宝石の名前を持つ星は、トライ(三つ)ではなくて、四つじゃない?
 トライジュエル星系って名前は……ちょっと違う気がするんだよね」
 これにはちょっと、ミオは苦笑いをした。
「うーん、そこ気になっちゃうかな? 多分恒星は、カウントしてないのかもしれないし、それとも単に、『トライジュエル』って名前が、聞こえが良かったのかも。……考えてみると、ちょっと分からない、かな」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

処理中です...