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第九章 Grand Galaxy Grand prix [Ready?〕
一時の別れ
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――――
フウマ達三人も、それぞれの機体の所へと戻る最中、レース開始までは、機体で待機だ。
「さてと、いよいよ本番だ! 二人ともワクワクしないか?」
「はぁ? さっきはあんな事言っていたのに、今度はそれか? さすがリッキーは気持ちの切り替えが早いな」
明るい様子のリッキーに、フウマは嫌味っぽく言った。
「何だ? フウマは不満か?」
頷くフウマ。
「だってそうだろ? あんな事が続けて起こっているんだ、この先本番どうなるか心配じゃないのかよ」
対するリッキーは、それを笑い飛ばす
「――確かに! だが、色々と心配はあるが、俺たちはレーサーだ。とにかくレースに励むしかないだろ? それくらいしか出来ることは無いからな」
リッキーは不安をかき消すように、陽気にそう言ってみせる。
今歩く通路は複数に分かれ、更にエレベーターも数多い。
それぞれが各位置、各階層の格納区画への道となり、他のレーサーも自らの機体のある、区画へと向かう。
「ですね。だからこそ、出来る限りはしなければ。相手の目的は恐らく、レースの妨害。であれば……それこそ私達が相手になし得る、最大の抵抗とも言えますしね。
せいぜい、こんな無粋な真似をしてきた存在を、『ギャフン』と言わせてやりましょう!」
シロノの言う通り、その点で言うならレーサーは皆、仲間と言うだろう。
例えレースでは競い合い、蹴落とすライバル、敵だとしても、同時に目的を同じにし、同じく目指すものに手を伸ばす、同志でもある。
「ふっ! 言うじゃないかシロノ! さすが『白の貴公子』、言うことが違うな。……おっと!」
歩いている通路脇に、別の分かれ道が見える。リッキーの行く先はそっちのようだ。
「じゃあな、二人とも。ライバル同士だが、せいぜい頑張ろうな!」
「……ああ! 確かに、せっかくのレースだもんな。何があろうと、僕だって何とかしてみるさ!」
「ふっ! その意気だ、フウマ! それじゃ、サヨナラだ!」
こうしてリッキーとは、そこで別れた。
フウマ、シロノはそれからしばらく、道中を共にした。
リッキーがいた時と違い、話すことが特に思いつかない二人は、互いに沈黙したままだ。
そして今、フウマとシロノはエレベーターに乗り合わせていた。
沈黙は相変わらず。
……が、そんな時に、とつぜんシロノが口を開いた。
「そろそろ、フウマとは一旦、お別れですね」
フウマは一瞬戸惑うも、返答を返す。
「まぁね」
それはそっけない返答だった。
「ふふっ、悲しいですね。せっかくこうして、二人きりになれたのに」
そう言っている割には、シロノは嬉しそうな様子を見せる。
「……何だよ? 少し気持ち悪いぞ」
シロノは可笑しそうに笑う。
「クハハハハッ! 心配しなくても、そんな趣味はありませんよ!」
「ならどう言う意味さ」
すると、彼は笑うのを止めて、優しい瞳をフウマに向ける
「――これでも私は、ライバルとしてあなたを見ているのですよ? 今回のような大舞台で貴方と対峙するのは、これで初めてです。だから……一つ伝えておきたいことが、ありましてね」
シロノは、フウマの瞳を覗く。そして……。
「貴方の事、いつも応援していますよ、フウマ」
思いがけない、シロノの心からの、激励の言葉だった。
と、同時に、エレベーターの扉が開く。
「私は、ここで降ります。貴方にこの事を伝えられて、とても良かった」
「――あっ」
フウマの横を通りすぎる時、その肩をポンとたたく。
「当然勝たせるつもりはありませんし、本気で行きますよ? でも、どうか今回も――心からの健闘を」
エレベーターを降り、扉は閉まってゆく。
返事を返そうとしたが、とっさに思いつかず、扉は閉まった。
狭いエレベータの中でただ一人、フウマはしばらく、閉じた扉を見つめる。
――そんな事、当然だろ! そっちだって、僕以外の相手に、負けないでよね。……ありがとう、シロノ!――
この心の中で呟いたその言葉は、本当ならシロノに直接伝えたかったメッセージ、それそのものだった。
フウマ達三人も、それぞれの機体の所へと戻る最中、レース開始までは、機体で待機だ。
「さてと、いよいよ本番だ! 二人ともワクワクしないか?」
「はぁ? さっきはあんな事言っていたのに、今度はそれか? さすがリッキーは気持ちの切り替えが早いな」
明るい様子のリッキーに、フウマは嫌味っぽく言った。
「何だ? フウマは不満か?」
頷くフウマ。
「だってそうだろ? あんな事が続けて起こっているんだ、この先本番どうなるか心配じゃないのかよ」
対するリッキーは、それを笑い飛ばす
「――確かに! だが、色々と心配はあるが、俺たちはレーサーだ。とにかくレースに励むしかないだろ? それくらいしか出来ることは無いからな」
リッキーは不安をかき消すように、陽気にそう言ってみせる。
今歩く通路は複数に分かれ、更にエレベーターも数多い。
それぞれが各位置、各階層の格納区画への道となり、他のレーサーも自らの機体のある、区画へと向かう。
「ですね。だからこそ、出来る限りはしなければ。相手の目的は恐らく、レースの妨害。であれば……それこそ私達が相手になし得る、最大の抵抗とも言えますしね。
せいぜい、こんな無粋な真似をしてきた存在を、『ギャフン』と言わせてやりましょう!」
シロノの言う通り、その点で言うならレーサーは皆、仲間と言うだろう。
例えレースでは競い合い、蹴落とすライバル、敵だとしても、同時に目的を同じにし、同じく目指すものに手を伸ばす、同志でもある。
「ふっ! 言うじゃないかシロノ! さすが『白の貴公子』、言うことが違うな。……おっと!」
歩いている通路脇に、別の分かれ道が見える。リッキーの行く先はそっちのようだ。
「じゃあな、二人とも。ライバル同士だが、せいぜい頑張ろうな!」
「……ああ! 確かに、せっかくのレースだもんな。何があろうと、僕だって何とかしてみるさ!」
「ふっ! その意気だ、フウマ! それじゃ、サヨナラだ!」
こうしてリッキーとは、そこで別れた。
フウマ、シロノはそれからしばらく、道中を共にした。
リッキーがいた時と違い、話すことが特に思いつかない二人は、互いに沈黙したままだ。
そして今、フウマとシロノはエレベーターに乗り合わせていた。
沈黙は相変わらず。
……が、そんな時に、とつぜんシロノが口を開いた。
「そろそろ、フウマとは一旦、お別れですね」
フウマは一瞬戸惑うも、返答を返す。
「まぁね」
それはそっけない返答だった。
「ふふっ、悲しいですね。せっかくこうして、二人きりになれたのに」
そう言っている割には、シロノは嬉しそうな様子を見せる。
「……何だよ? 少し気持ち悪いぞ」
シロノは可笑しそうに笑う。
「クハハハハッ! 心配しなくても、そんな趣味はありませんよ!」
「ならどう言う意味さ」
すると、彼は笑うのを止めて、優しい瞳をフウマに向ける
「――これでも私は、ライバルとしてあなたを見ているのですよ? 今回のような大舞台で貴方と対峙するのは、これで初めてです。だから……一つ伝えておきたいことが、ありましてね」
シロノは、フウマの瞳を覗く。そして……。
「貴方の事、いつも応援していますよ、フウマ」
思いがけない、シロノの心からの、激励の言葉だった。
と、同時に、エレベーターの扉が開く。
「私は、ここで降ります。貴方にこの事を伝えられて、とても良かった」
「――あっ」
フウマの横を通りすぎる時、その肩をポンとたたく。
「当然勝たせるつもりはありませんし、本気で行きますよ? でも、どうか今回も――心からの健闘を」
エレベーターを降り、扉は閉まってゆく。
返事を返そうとしたが、とっさに思いつかず、扉は閉まった。
狭いエレベータの中でただ一人、フウマはしばらく、閉じた扉を見つめる。
――そんな事、当然だろ! そっちだって、僕以外の相手に、負けないでよね。……ありがとう、シロノ!――
この心の中で呟いたその言葉は、本当ならシロノに直接伝えたかったメッセージ、それそのものだった。
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