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第十章 Grand Galaxy Grand prix [Action!〕
会場では……
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会場では、レイとリオンドの実況が、行われている最中だ。
ちなみに今回、G3レースの会場となっているのは、オーシャンポリスではなく、その周囲の停泊している複数の大型船である。
その訳は……。
〈さてと、大部分はサファイアを飛び立ったわね、リオンド〉
〈ああ、なかなか順調な走り出しじゃないか?〉
〈ええそうね! それと、そろそろお客さんは移動の時間かしら。もう幾つかの船はエメラルドに、出発しているみたいだしね〉
ミオもレースが始まってから、オーシャンポリスの格納庫から指定された大型船の会場へと移り、そこでレースの観戦をしていた。
ちなみに彼女の乗る船は、確か『ブルーホエール』と呼ばれる、スリースター・インダストリー所有の大型船だ。
この船も、他の船と同じく飛び立ち、サファイアへと向かう最中だった。
現在、彼女は少し席を外し、会場近くのレストラン街へと来ていた。
丁度昼時と言うのもあり、そこ昼食を食べに来ている人間も多くいた。
そしてミオも、その一人。売店を歩きながら何を食べようか、考えている最中だった。
――うーん、何がいいかな? ラーメンも良さそうだけど、中華料理も捨てがたいな。あっ、でもハンバーガーなんかのジャンクフードもいいよね?――
そんな、色々と彼女が目移りしていた時、突然誰かから声を掛けられた。
「ねぇ君、良かったらあそこの定食屋なんて……オススメだよ」
そこには、自分と同じ年頃の、銀髪のやや内気そうな少年がいた。
「えっと、初めまして。……君は、誰かな?」
「僕はアイン。ここには良く来ているから、味はちゃんと保証するよ。もし和食だとか、嫌いじゃなければいいけど」
ミオは、それはいい考えと思った。
「――なかなか、悪くないかも!」
「それは良かった。……あと、もし嫌じゃなかったら、一緒について行っていいかな? 一人だと、なんか寂しくて」
そうアインは、彼女を食事に誘った。
これにはミオも悩んだが、いい場所を教えてくれたのに、断るのも少し悪い気がした。
それに、彼は悪人や、変な人間には見えない。安心しても良いと考える。
「食事くらいだったら、大丈夫かな。……私はミオ、よろしくね、アインくん」
「こちらこそ、宜しくお願いします、ミオさん」
アインの言った通り、そこの定食屋の料理は、とても美味しそうだった。
「ここでの人気メニュー、月見うどん、気に入ってくれた?」
二人の前に置かれているのは、深いどんぶりに入った白いうどんが、いい匂いと暖かいゆげを立てている。
カマボコにネギ、天かすがうどんと、出汁のきいたツユに乗っかり、真ん中に乗っかる半熟玉子が、食欲をそそる。
ミオは彼に頷く。
「とても美味しいね。ツユもよく出汁が利いてて、うどんもコシが良くて食べ応えがある感じ! 今まで食べた麺類の中では、一番のお気に入りかな?」
「ふふっ、ミオさんは……麺類が好きなのですね」
「うん! 美味しいものは何でも大好きだよ! うどんだって、何回か食べたこともあるしね」
月見うどんを食べながら、二人は談笑している。
「……そう言えば、このG3レースを観に来たって言うことは、レースが好きなのかな? 応援している選手とか、いたりとか」
ミオは頷く。
「幼馴染のフウマが、レースに出ているの。何だかんだ子供っぽいけど、とても……とても大好きな、大切な人なの。私だって、フウマの為なら、いくらだって頑張れちゃう」
こんな彼女の答えに、アインは少し寂しくも、良い笑顔を見せた。
「……うん、ちょっと残念かな。もうそんなに、素敵な相手がいるなんてね。
でも――ミオさんは、僕と同じかな。僕も、兄さんがレースに出ているんだ。格好良くて、優しくて、自慢の兄さんなんだ」
そして、こんな事を続ける。
「それにしても、フウマさんとはね。世間は……狭いものだよ。
よく話していました、まだ少し未熟だけど、意外に頑張り屋で良いレーサーだって。……兄さんの名前は、シロノ・ルーナ、もしかして聞いたことがあるんじゃないかな」
ミオはその事実に、驚いた様子だった。
「えっ! あのシロノさんの……弟さんだったんだ。そう言えば、フウマも、シロノさんについて話してたっけ。ちょっといけ好かない所もあるけど、親切な所もあって、腕も良くて――憧れの人だって」
自分の兄さんを褒められて、アインは嬉しそうだ。
「そう言ってくれていたなんて、兄さんが知ったら、喜ぶだろうな」
「はっ、ハハハッ!」
「……えっ?」
「ほう? ずいぶんと楽しそうな話じゃないか、お二人さん?」
すると近くの席から、そんな風に声を掛けられた。
そこにいたのは、高級なコートを羽織った、長身で紫髪の美女。サングラスをかけ、つばの長い立派な帽子を、頭に被っている。
いかにもセレブのような恰好をした女性だが、定食屋としての雰囲気と、何より彼女のテーブルに置かれている熱々のうどん、そして右手で慣れた手つきで持つ割りばしが、あまりにミスマッチすぎた。
「ええと……どなたでしょうか?」
アインは謎の美女に、そう尋ねた。
「私はしがない、レース好きのビジネスウーマンさ。まぁやっている事は、マイナーなビジネスなのだがね。
話は聞かせてもらったが、シロノも、そしてフウマも、とても素晴らしいレーサーだ。特にフウマなど、まだ技術や腕はシロノ程ではないが、伸びしろはまだまだあるし……それに可愛いからな。
彼の機体、テイルウィンドも実にいい。何しろフウマの実力を、あんなに引き出せているんだ、性能はもちろん、きっと優れたメカニックによる、最高の整備も行われているのだろう」
――あれ? この声と雰囲気、どこかで覚えがある感じ――
彼女の様子に、ミオは少し反応した。それに雰囲気や容姿なども覚えがあった。そう……レースに向かう途中に襲撃して来た海賊、サイクロプスによく似ている。
――まさかね、いくら何でも、それはないか――
幾ら何でも、あのサイクロプスがこんな所に来るなんて、考えられなかった。増してや、定食屋で月見うどんをこうして食しているなんて……想像すらつかない。
まぁ――それについては、とりあえず置いていて、良い気もする。
それに、今はこの女性がフウマと自分について、そしてテイルウィンドをここまで褒めてくれた事が、とても嬉しかった。
「……そこまで言ってくれるなんて、私も感激です。本当に、レースがお好きなのですね」
「ふっ、当たり前だとも! 何しろ……私自身も、ある『レーサー達』のスポンサーになり、支援するくらいなのだから!」
得意げに、女性は拳をグッと握り、熱く語り出す。
「確かに優れたレーサも多く、彼らの事も大好きだし、応援もしているよ。しかし――ビジネス関係の私の性とも言うべきか、応援したくなると同時に……私のレーサーと機体が彼らを打ち負してみたいとも。思ってしまってな。
そこで、私は素質を持つ双子の少女を見つけ、プロの宇宙レーサーとして育てたのだよ。我ながら、なかなかの実力者さ。シロノ、そしてフウマにも引けを取らないと、自負しているとも」
「双子の少女って、もしかして……」
女性の口元に、笑みが浮かぶ。
「そう、『トゥインクルスター・シスターズ』のティナとフィナさ。……もしかすると、G3レースの優勝も、彼女達が手にするかもな」
会場では、レイとリオンドの実況が、行われている最中だ。
ちなみに今回、G3レースの会場となっているのは、オーシャンポリスではなく、その周囲の停泊している複数の大型船である。
その訳は……。
〈さてと、大部分はサファイアを飛び立ったわね、リオンド〉
〈ああ、なかなか順調な走り出しじゃないか?〉
〈ええそうね! それと、そろそろお客さんは移動の時間かしら。もう幾つかの船はエメラルドに、出発しているみたいだしね〉
ミオもレースが始まってから、オーシャンポリスの格納庫から指定された大型船の会場へと移り、そこでレースの観戦をしていた。
ちなみに彼女の乗る船は、確か『ブルーホエール』と呼ばれる、スリースター・インダストリー所有の大型船だ。
この船も、他の船と同じく飛び立ち、サファイアへと向かう最中だった。
現在、彼女は少し席を外し、会場近くのレストラン街へと来ていた。
丁度昼時と言うのもあり、そこ昼食を食べに来ている人間も多くいた。
そしてミオも、その一人。売店を歩きながら何を食べようか、考えている最中だった。
――うーん、何がいいかな? ラーメンも良さそうだけど、中華料理も捨てがたいな。あっ、でもハンバーガーなんかのジャンクフードもいいよね?――
そんな、色々と彼女が目移りしていた時、突然誰かから声を掛けられた。
「ねぇ君、良かったらあそこの定食屋なんて……オススメだよ」
そこには、自分と同じ年頃の、銀髪のやや内気そうな少年がいた。
「えっと、初めまして。……君は、誰かな?」
「僕はアイン。ここには良く来ているから、味はちゃんと保証するよ。もし和食だとか、嫌いじゃなければいいけど」
ミオは、それはいい考えと思った。
「――なかなか、悪くないかも!」
「それは良かった。……あと、もし嫌じゃなかったら、一緒について行っていいかな? 一人だと、なんか寂しくて」
そうアインは、彼女を食事に誘った。
これにはミオも悩んだが、いい場所を教えてくれたのに、断るのも少し悪い気がした。
それに、彼は悪人や、変な人間には見えない。安心しても良いと考える。
「食事くらいだったら、大丈夫かな。……私はミオ、よろしくね、アインくん」
「こちらこそ、宜しくお願いします、ミオさん」
アインの言った通り、そこの定食屋の料理は、とても美味しそうだった。
「ここでの人気メニュー、月見うどん、気に入ってくれた?」
二人の前に置かれているのは、深いどんぶりに入った白いうどんが、いい匂いと暖かいゆげを立てている。
カマボコにネギ、天かすがうどんと、出汁のきいたツユに乗っかり、真ん中に乗っかる半熟玉子が、食欲をそそる。
ミオは彼に頷く。
「とても美味しいね。ツユもよく出汁が利いてて、うどんもコシが良くて食べ応えがある感じ! 今まで食べた麺類の中では、一番のお気に入りかな?」
「ふふっ、ミオさんは……麺類が好きなのですね」
「うん! 美味しいものは何でも大好きだよ! うどんだって、何回か食べたこともあるしね」
月見うどんを食べながら、二人は談笑している。
「……そう言えば、このG3レースを観に来たって言うことは、レースが好きなのかな? 応援している選手とか、いたりとか」
ミオは頷く。
「幼馴染のフウマが、レースに出ているの。何だかんだ子供っぽいけど、とても……とても大好きな、大切な人なの。私だって、フウマの為なら、いくらだって頑張れちゃう」
こんな彼女の答えに、アインは少し寂しくも、良い笑顔を見せた。
「……うん、ちょっと残念かな。もうそんなに、素敵な相手がいるなんてね。
でも――ミオさんは、僕と同じかな。僕も、兄さんがレースに出ているんだ。格好良くて、優しくて、自慢の兄さんなんだ」
そして、こんな事を続ける。
「それにしても、フウマさんとはね。世間は……狭いものだよ。
よく話していました、まだ少し未熟だけど、意外に頑張り屋で良いレーサーだって。……兄さんの名前は、シロノ・ルーナ、もしかして聞いたことがあるんじゃないかな」
ミオはその事実に、驚いた様子だった。
「えっ! あのシロノさんの……弟さんだったんだ。そう言えば、フウマも、シロノさんについて話してたっけ。ちょっといけ好かない所もあるけど、親切な所もあって、腕も良くて――憧れの人だって」
自分の兄さんを褒められて、アインは嬉しそうだ。
「そう言ってくれていたなんて、兄さんが知ったら、喜ぶだろうな」
「はっ、ハハハッ!」
「……えっ?」
「ほう? ずいぶんと楽しそうな話じゃないか、お二人さん?」
すると近くの席から、そんな風に声を掛けられた。
そこにいたのは、高級なコートを羽織った、長身で紫髪の美女。サングラスをかけ、つばの長い立派な帽子を、頭に被っている。
いかにもセレブのような恰好をした女性だが、定食屋としての雰囲気と、何より彼女のテーブルに置かれている熱々のうどん、そして右手で慣れた手つきで持つ割りばしが、あまりにミスマッチすぎた。
「ええと……どなたでしょうか?」
アインは謎の美女に、そう尋ねた。
「私はしがない、レース好きのビジネスウーマンさ。まぁやっている事は、マイナーなビジネスなのだがね。
話は聞かせてもらったが、シロノも、そしてフウマも、とても素晴らしいレーサーだ。特にフウマなど、まだ技術や腕はシロノ程ではないが、伸びしろはまだまだあるし……それに可愛いからな。
彼の機体、テイルウィンドも実にいい。何しろフウマの実力を、あんなに引き出せているんだ、性能はもちろん、きっと優れたメカニックによる、最高の整備も行われているのだろう」
――あれ? この声と雰囲気、どこかで覚えがある感じ――
彼女の様子に、ミオは少し反応した。それに雰囲気や容姿なども覚えがあった。そう……レースに向かう途中に襲撃して来た海賊、サイクロプスによく似ている。
――まさかね、いくら何でも、それはないか――
幾ら何でも、あのサイクロプスがこんな所に来るなんて、考えられなかった。増してや、定食屋で月見うどんをこうして食しているなんて……想像すらつかない。
まぁ――それについては、とりあえず置いていて、良い気もする。
それに、今はこの女性がフウマと自分について、そしてテイルウィンドをここまで褒めてくれた事が、とても嬉しかった。
「……そこまで言ってくれるなんて、私も感激です。本当に、レースがお好きなのですね」
「ふっ、当たり前だとも! 何しろ……私自身も、ある『レーサー達』のスポンサーになり、支援するくらいなのだから!」
得意げに、女性は拳をグッと握り、熱く語り出す。
「確かに優れたレーサも多く、彼らの事も大好きだし、応援もしているよ。しかし――ビジネス関係の私の性とも言うべきか、応援したくなると同時に……私のレーサーと機体が彼らを打ち負してみたいとも。思ってしまってな。
そこで、私は素質を持つ双子の少女を見つけ、プロの宇宙レーサーとして育てたのだよ。我ながら、なかなかの実力者さ。シロノ、そしてフウマにも引けを取らないと、自負しているとも」
「双子の少女って、もしかして……」
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