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第十章 Grand Galaxy Grand prix [Action!〕
焦燥
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――――
先ほどとは立場も逆転し、今はテイルウィンド、ワールウィンドが防御する側、そしてアトリとヒバリは、攻勢を加える側となった。
――うん、やっぱり前より、連携が取れている感じ――
勝負はヒートアップしているものの、アトリ、ヒバリは惜しいところまで行くも、ギリギリで阻まれている。
フウマのテイルウィンド、もしくはリッキーのワールウィンド、そのどちらかを二機で攻めるものの、残る一方がうまくカバーに現れ、越す事が出来ないでいた。
――くそっ! チームワークで俺たちが、後れを取るなんて!――
自分たちの得意分野で僅かに引けを取り、悔しさを示すティナ。
しかし……実際、フィナとティナのチームワークはフウマ、リッキーに劣っているわけでは決してなく、依然それは二人の方が高いポテンシャルを示している。
……しかし、そのチームワークは攻勢よりもむしろ、後方からの防御で発揮されるものだ。
そしてフウマ、リッキーも、確かに連帯した経験はこれまで無かった。だが、その分宇宙レースの経験は、双子よりも多い。
足りないコンビネーションを、経験でカバーする。現状の結果は、これによるものだった。
気が付けば、あと少しで小惑星群を脱し、惑星エメラルドへのコースへと入る。
そうなれば、本格的に状況は厳しくなる。
――このままだと、俺たちは更に難しくなるぜ――
――そうだね、ティナ――
もう後がない状況なのは、両方とも認知していた。
――ここは一か八か、個別に攻めるのはどうだ? 機動性なら負けてはいないはずだ――
フィナはここに来て、そんな提案をした。
個別なら新しくチャンスは出来るかもしれないが、二人が得意とするチームワークとしての要素は、少なくなる。
――うん。ここはティナの言う通りかも。……分かったよ、それで行きましょう――
が、ここは賭けるしかない。
二人の乗るアトリ、ヒバリは二手に分かれる。
そして――互いに一対一の勝負に出た。
―――
後方の二機は分割し、内フィナのアトリは、テイルウィンドの後方へとつく。
――ここに来て、一対一ってわけだね。向こうもずいぶん、焦っているみたいだけど……残念ながらこれで君たちの負けだよ!――
そう、これもフウマ達の、狙いでもあった。
確かに二人のコンビネーションは、他のレーサーには見ない強さだ。
しかし、それさえなくなれば――後は幾らか腕のいいレーサーにすぎない。
機動性は高いのだろうが、こちらが先を行っているならば、加速性で十分にカバーが可能である。
……しかし、それでも双子の、底力は予想以上だった。
フィナの乗るアトリは、パイロットによりその機動性のポテンシャルを最大にまで発揮して、テイルウィンドと接戦を繰り広げる。
それは、リッキーとティナも、かなりの勝負をしていた。
〈ここに来て、私たちだって引き下がれません!〉
「これは想像以上だね、そう来なくちゃね……『トゥインクルスター・シスターズ』!」
すると、フィナはとてもうれしそうに、ぱあっと笑顔を見せる。
〈……ありがとう、フウマさん! やっぱり私……こうしてリッキーさん、そしてフウマさんと一緒にレースが出来て良かった。
だってとても、ワクワクしますから!〉
フウマは同意するように、笑い返す。
「――ふっ、やっぱり君たちも、立派なレーサーだよ。見どころあるさ!」
〈それは、当然です。そして――最後の最後まで、私たちはあきらめません!〉
――――
そして、小惑星帯の終わりまで、あと少し……。
リッキーはティナを相手に、戦っていた。
〈……はぁ、……はぁ〉
もはや強気でいられる様子もなくなり、さっきから険しい目つきで、息切れしながら、ただ睨むティナ。
ずっと通信は繋いだまま、ここではそんな状態で、互いに話しながらレースで競っていた。四人とも、そっちの方でもモチベーションが上がるタイプだからだ。
……だから、この状況は奇妙なものであった。彼女は精神的にも余裕がなく、かなり消耗しているように思わせた。
しかしそれでも、ティナの駆るヒバリの動きは、鋭さと攻撃性を増している。機動性も徹底的にギリギリを攻め、いくら機動力がよかろうとも……その動きはかなり危険だ。
「――おい、ティナ?」
〈……〉
リッキーもさすがに心配するも、相手から反応はない。
「聞いているか分らんが、こんな飛び方をすると、さすがに危ないぜ。
その頑張りは褒めてやるが……少し、気を付けた方が」
だが……返答はない。いや、厳密には小さく小声で、こう呟いた。
〈……くそっ!〉
――――
ティナの様子を気にかけていたのは、フィナも同じだった。
――お姉ちゃん、大丈夫?――
姉のティナから伝わるのは、激しい焦りと苛立ち、そして悔しさの感情だ。
そして、今はティナの言葉すら、ほとんど届かないようだった。
――俺たちが、ここまでやって……こんなに頑張っているのに。それなのに、どうしてっ!――
二人はフウマとリッキーを相手に、全力を注いでいた。なのに、上手く行っていない……こんな事は今までなかった。
それにティナは、激しく動揺していた。
――負けられない。俺たちが、こんな負け方をするなんて……あり得ないんだ!
俺が……お姉ちゃんがもっと、しっかりしていれば。……ごめんフィナ、不甲斐ないお姉ちゃんでさ――
最後に伝わったのは、妹のフィナへの、罪悪感だった。
――そんな、そこまで私の事を――
対するフィナも、これにはショックを受ける。
確かに『テレパシー』に近い能力を持ち、双子は心を通わせることが出来る。
……だが、それは表面上の、心の動きくらいである。もっと深い部分は、余程の事がなければ、表に出ることはない。
それが今、こうしてティナの思いが表面化している。
フィナさえ、そんな事を思っていたなんて、知りもしなかった。
――大丈夫だから。私は、お姉ちゃんを不甲斐ないなんて――
しかしティナは、それすらも聞きもしなかった。
――けど、もっと頑張れば! フィナも俺の事を認めてくれる! どうか見ていてくれよ!――
ティナの乗る、ヒバリは加速し、ワールウィンドに無理な接近をする。
――だが、それは間違いだった。
先ほどとは立場も逆転し、今はテイルウィンド、ワールウィンドが防御する側、そしてアトリとヒバリは、攻勢を加える側となった。
――うん、やっぱり前より、連携が取れている感じ――
勝負はヒートアップしているものの、アトリ、ヒバリは惜しいところまで行くも、ギリギリで阻まれている。
フウマのテイルウィンド、もしくはリッキーのワールウィンド、そのどちらかを二機で攻めるものの、残る一方がうまくカバーに現れ、越す事が出来ないでいた。
――くそっ! チームワークで俺たちが、後れを取るなんて!――
自分たちの得意分野で僅かに引けを取り、悔しさを示すティナ。
しかし……実際、フィナとティナのチームワークはフウマ、リッキーに劣っているわけでは決してなく、依然それは二人の方が高いポテンシャルを示している。
……しかし、そのチームワークは攻勢よりもむしろ、後方からの防御で発揮されるものだ。
そしてフウマ、リッキーも、確かに連帯した経験はこれまで無かった。だが、その分宇宙レースの経験は、双子よりも多い。
足りないコンビネーションを、経験でカバーする。現状の結果は、これによるものだった。
気が付けば、あと少しで小惑星群を脱し、惑星エメラルドへのコースへと入る。
そうなれば、本格的に状況は厳しくなる。
――このままだと、俺たちは更に難しくなるぜ――
――そうだね、ティナ――
もう後がない状況なのは、両方とも認知していた。
――ここは一か八か、個別に攻めるのはどうだ? 機動性なら負けてはいないはずだ――
フィナはここに来て、そんな提案をした。
個別なら新しくチャンスは出来るかもしれないが、二人が得意とするチームワークとしての要素は、少なくなる。
――うん。ここはティナの言う通りかも。……分かったよ、それで行きましょう――
が、ここは賭けるしかない。
二人の乗るアトリ、ヒバリは二手に分かれる。
そして――互いに一対一の勝負に出た。
―――
後方の二機は分割し、内フィナのアトリは、テイルウィンドの後方へとつく。
――ここに来て、一対一ってわけだね。向こうもずいぶん、焦っているみたいだけど……残念ながらこれで君たちの負けだよ!――
そう、これもフウマ達の、狙いでもあった。
確かに二人のコンビネーションは、他のレーサーには見ない強さだ。
しかし、それさえなくなれば――後は幾らか腕のいいレーサーにすぎない。
機動性は高いのだろうが、こちらが先を行っているならば、加速性で十分にカバーが可能である。
……しかし、それでも双子の、底力は予想以上だった。
フィナの乗るアトリは、パイロットによりその機動性のポテンシャルを最大にまで発揮して、テイルウィンドと接戦を繰り広げる。
それは、リッキーとティナも、かなりの勝負をしていた。
〈ここに来て、私たちだって引き下がれません!〉
「これは想像以上だね、そう来なくちゃね……『トゥインクルスター・シスターズ』!」
すると、フィナはとてもうれしそうに、ぱあっと笑顔を見せる。
〈……ありがとう、フウマさん! やっぱり私……こうしてリッキーさん、そしてフウマさんと一緒にレースが出来て良かった。
だってとても、ワクワクしますから!〉
フウマは同意するように、笑い返す。
「――ふっ、やっぱり君たちも、立派なレーサーだよ。見どころあるさ!」
〈それは、当然です。そして――最後の最後まで、私たちはあきらめません!〉
――――
そして、小惑星帯の終わりまで、あと少し……。
リッキーはティナを相手に、戦っていた。
〈……はぁ、……はぁ〉
もはや強気でいられる様子もなくなり、さっきから険しい目つきで、息切れしながら、ただ睨むティナ。
ずっと通信は繋いだまま、ここではそんな状態で、互いに話しながらレースで競っていた。四人とも、そっちの方でもモチベーションが上がるタイプだからだ。
……だから、この状況は奇妙なものであった。彼女は精神的にも余裕がなく、かなり消耗しているように思わせた。
しかしそれでも、ティナの駆るヒバリの動きは、鋭さと攻撃性を増している。機動性も徹底的にギリギリを攻め、いくら機動力がよかろうとも……その動きはかなり危険だ。
「――おい、ティナ?」
〈……〉
リッキーもさすがに心配するも、相手から反応はない。
「聞いているか分らんが、こんな飛び方をすると、さすがに危ないぜ。
その頑張りは褒めてやるが……少し、気を付けた方が」
だが……返答はない。いや、厳密には小さく小声で、こう呟いた。
〈……くそっ!〉
――――
ティナの様子を気にかけていたのは、フィナも同じだった。
――お姉ちゃん、大丈夫?――
姉のティナから伝わるのは、激しい焦りと苛立ち、そして悔しさの感情だ。
そして、今はティナの言葉すら、ほとんど届かないようだった。
――俺たちが、ここまでやって……こんなに頑張っているのに。それなのに、どうしてっ!――
二人はフウマとリッキーを相手に、全力を注いでいた。なのに、上手く行っていない……こんな事は今までなかった。
それにティナは、激しく動揺していた。
――負けられない。俺たちが、こんな負け方をするなんて……あり得ないんだ!
俺が……お姉ちゃんがもっと、しっかりしていれば。……ごめんフィナ、不甲斐ないお姉ちゃんでさ――
最後に伝わったのは、妹のフィナへの、罪悪感だった。
――そんな、そこまで私の事を――
対するフィナも、これにはショックを受ける。
確かに『テレパシー』に近い能力を持ち、双子は心を通わせることが出来る。
……だが、それは表面上の、心の動きくらいである。もっと深い部分は、余程の事がなければ、表に出ることはない。
それが今、こうしてティナの思いが表面化している。
フィナさえ、そんな事を思っていたなんて、知りもしなかった。
――大丈夫だから。私は、お姉ちゃんを不甲斐ないなんて――
しかしティナは、それすらも聞きもしなかった。
――けど、もっと頑張れば! フィナも俺の事を認めてくれる! どうか見ていてくれよ!――
ティナの乗る、ヒバリは加速し、ワールウィンドに無理な接近をする。
――だが、それは間違いだった。
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