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第十一章 束の間の安寧と、そして――
奪われたブラッククラッカー
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――――
スカイガーデン・ポリスから飛び立った、ブラッククラッカー。
操縦席にはカイルと、そしてシステムの調整を行っていた女性海賊も一人いた。
彼女はもう覆面を脱いでおり、ショートカットの金髪と童顔な顔立ちが露わになっている。
「……さて、クレア。解析はどれくらい進んだかな?」
カイルは外付けで取り付けた簡易操縦装置で機体を動かしながら、そう尋ねる。
「大半は完了したわ。でも、後で確認しないとだけど、このシステムは凄いわね。かなりの情報量よ」
「こっちも、流石に操縦は、難しいか。外付け機器じゃ限界がありすぎるかな」
対するカイルも、ブラッククラッカーの操縦に、現在苦戦していた。
だが、幸い追っ手は未だ来ない。
銀河捜査局が追跡隊を出すのも、まだ時間に余裕がある。
それまで距離を取れれば……そう、カイルは考えていたが。
再び、スカイガーデンポリスから一機の機体が飛び立った。
機体はブラッククラッカーへと迫り、その姿に彼は見覚えがあった。
――ジョセフの奴、まだ追ってくるのか――
それはジョセフの機体、玄武号である。
高速度で飛翔し、ブラッククラッカーへと迫る姿。そして――
機体の下部から、小型のレーザー砲が展開し、一撃を放った。
レーザーの光筋は、ブラッククラッカーのすぐ真横の空間を貫いた。
機体そのものには直撃していないが……。
――これは、威嚇射撃って事か――
「……キャプテン!」
近くにいる女性海賊は、カイルに意見を伺う。
「ふーん、確かに予想外かもしれないけど、まさかここで白旗って、わけにも行かないだろ?」
そう言って彼は、操縦桿を強く握る。
「――それじゃ、しっかり捕まっててよ!」
――――
目の前のブラッククラッカーは、加速をかけて逃走を試みる。
――ふっ、やはり脅しはきかないか――
ジョセフはその行動に、にやっと笑う。
――だがそれでこそカイルだ。面白い――
彼もまた、玄武号の出力を上げ、機体を追う。
高速度で、惑星エメラルドの空をかける、二機の機体。
性能面であるなら、全性能ともにブラッククラッカーが圧倒的に有利だろうが……、玄武号は対等に渡り合っていた。
高速飛行するブラッククラッカーの後ろ姿に、食らいつくジョセフ。
相手の動きは、レースで見せたものよりも、何段も劣っている。
あの時見せた細かい動きと、機動力に比べ、今はぎくしゃくした、単純な機動性しか見せない。
――いくらカイルでも、さすがにすぐブラッククラッカーなど、動かせるものか――
だが、ブラッククラッカーはパイロットであるジンジャーブレッドに合わせて作られた、専用機である。
加えて操縦はパイロットと操縦システムをつなげて動かす、人機一体システムで本来は行う。
それを無理やり、手動で動かしていては、満足に動かすことさえ難しい。
だが、今度はブラッククラッカーは、上空へと急上昇を始める。
埒が明かないと考えたカイルは、このまま宇宙へと向かうつもりなのだろう。
そうなれば、かなり厄介になると考えたジョセフも、急いで決着をつけるべく、機体を上昇させた。
――――
先を飛行するブラッククラッカーと、その後を追う玄武号。
惑星の成層圏を昇り、宇宙空間へと到達するも、追跡戦はは未だに続いていた。
だが、ここまで来ればカイルにも余裕が出来た。
――ずいぶん追って来るじゃないか。だけど、ここまで来て捕まえられないなら――
そう考える一方、彼もまた、楽ではなかった。
――けど、そろそろこの操縦も、疲れて来たな。ジョセフを相手にこの設備じゃ、いくらブラッククラッカーでもさすがにね――
外付けの操作機器で動かしているものの、それは機体を動かす程度が、何とかギリギリのものだった。
それを操縦者のカイルが、どうにかジョセフから逃げているわけだが……それは機器や彼自身ともに、無茶をしているものだ。
――いい加減、諦めてくれないかな――
カイルがそう考えた矢先、再び後方の玄武号が、レーザー砲を展開しているのが目に入る。
フッと、彼は余裕そうに笑う。
――ジョセフにしては、下手な真似をするな。ただの脅しが僕に通じないことくらい、分かるだろうに――
この機体はゲルベルト重工の最新鋭機であり、G3レースの目玉でもある。
誰に雇われているか知らないが、こうしてカイルの強奪を阻止せんとするジョセフ。
そう、いくら彼でも、この機体を傷つける真似はしないだろうと、そう考えていた。
……だが、レーザー砲の砲門は真っすぐ、ブラッククラッカーに狙いを定めていた。
――ただの脅しか、いや、あの様子は――
嫌な予感を覚えたカイルは、とっさに回避行動を取る。……するとその次の瞬間、レーザーの光筋が、さっきまでブラッククラッカーが位置していた空間を貫く。
もし避けなければ、確実に命中していただろう。
――正気か!? 機体を傷つけても、いいって言うのか。……いや――
違う、恐らくジョセフは、カイルが回避するのを分かって見越してだろう。
それを証拠に、ご丁寧にジョセフは頑張れば回避が可能なくらいの精度に、わざわざ調整して撃っていた。
今の状態なら、ジョセフの本気なら確実に撃ちぬける。それをしないと言うことは……。
――回避運動で、消耗させるつもりか。小賢しい手を!――
ただでさえ逃走するための操縦で一杯一杯な上、更に回避のために労力を割かれる……、もう限界だった。
二機の距離は次第に縮まり、そしてブラッククラッカーは先端に強力な電磁石機器を取り付けた機器を射出し、その磁力で機体に接続する。
さらに電磁石と玄武号はワイヤーで繋がり、玄武号はブラッククラッカーの動きを封じる。
そして依然と、レーザー砲は向けられている。
〈さてと、チェックメイトだ、カイル!〉
スカイガーデン・ポリスから飛び立った、ブラッククラッカー。
操縦席にはカイルと、そしてシステムの調整を行っていた女性海賊も一人いた。
彼女はもう覆面を脱いでおり、ショートカットの金髪と童顔な顔立ちが露わになっている。
「……さて、クレア。解析はどれくらい進んだかな?」
カイルは外付けで取り付けた簡易操縦装置で機体を動かしながら、そう尋ねる。
「大半は完了したわ。でも、後で確認しないとだけど、このシステムは凄いわね。かなりの情報量よ」
「こっちも、流石に操縦は、難しいか。外付け機器じゃ限界がありすぎるかな」
対するカイルも、ブラッククラッカーの操縦に、現在苦戦していた。
だが、幸い追っ手は未だ来ない。
銀河捜査局が追跡隊を出すのも、まだ時間に余裕がある。
それまで距離を取れれば……そう、カイルは考えていたが。
再び、スカイガーデンポリスから一機の機体が飛び立った。
機体はブラッククラッカーへと迫り、その姿に彼は見覚えがあった。
――ジョセフの奴、まだ追ってくるのか――
それはジョセフの機体、玄武号である。
高速度で飛翔し、ブラッククラッカーへと迫る姿。そして――
機体の下部から、小型のレーザー砲が展開し、一撃を放った。
レーザーの光筋は、ブラッククラッカーのすぐ真横の空間を貫いた。
機体そのものには直撃していないが……。
――これは、威嚇射撃って事か――
「……キャプテン!」
近くにいる女性海賊は、カイルに意見を伺う。
「ふーん、確かに予想外かもしれないけど、まさかここで白旗って、わけにも行かないだろ?」
そう言って彼は、操縦桿を強く握る。
「――それじゃ、しっかり捕まっててよ!」
――――
目の前のブラッククラッカーは、加速をかけて逃走を試みる。
――ふっ、やはり脅しはきかないか――
ジョセフはその行動に、にやっと笑う。
――だがそれでこそカイルだ。面白い――
彼もまた、玄武号の出力を上げ、機体を追う。
高速度で、惑星エメラルドの空をかける、二機の機体。
性能面であるなら、全性能ともにブラッククラッカーが圧倒的に有利だろうが……、玄武号は対等に渡り合っていた。
高速飛行するブラッククラッカーの後ろ姿に、食らいつくジョセフ。
相手の動きは、レースで見せたものよりも、何段も劣っている。
あの時見せた細かい動きと、機動力に比べ、今はぎくしゃくした、単純な機動性しか見せない。
――いくらカイルでも、さすがにすぐブラッククラッカーなど、動かせるものか――
だが、ブラッククラッカーはパイロットであるジンジャーブレッドに合わせて作られた、専用機である。
加えて操縦はパイロットと操縦システムをつなげて動かす、人機一体システムで本来は行う。
それを無理やり、手動で動かしていては、満足に動かすことさえ難しい。
だが、今度はブラッククラッカーは、上空へと急上昇を始める。
埒が明かないと考えたカイルは、このまま宇宙へと向かうつもりなのだろう。
そうなれば、かなり厄介になると考えたジョセフも、急いで決着をつけるべく、機体を上昇させた。
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先を飛行するブラッククラッカーと、その後を追う玄武号。
惑星の成層圏を昇り、宇宙空間へと到達するも、追跡戦はは未だに続いていた。
だが、ここまで来ればカイルにも余裕が出来た。
――ずいぶん追って来るじゃないか。だけど、ここまで来て捕まえられないなら――
そう考える一方、彼もまた、楽ではなかった。
――けど、そろそろこの操縦も、疲れて来たな。ジョセフを相手にこの設備じゃ、いくらブラッククラッカーでもさすがにね――
外付けの操作機器で動かしているものの、それは機体を動かす程度が、何とかギリギリのものだった。
それを操縦者のカイルが、どうにかジョセフから逃げているわけだが……それは機器や彼自身ともに、無茶をしているものだ。
――いい加減、諦めてくれないかな――
カイルがそう考えた矢先、再び後方の玄武号が、レーザー砲を展開しているのが目に入る。
フッと、彼は余裕そうに笑う。
――ジョセフにしては、下手な真似をするな。ただの脅しが僕に通じないことくらい、分かるだろうに――
この機体はゲルベルト重工の最新鋭機であり、G3レースの目玉でもある。
誰に雇われているか知らないが、こうしてカイルの強奪を阻止せんとするジョセフ。
そう、いくら彼でも、この機体を傷つける真似はしないだろうと、そう考えていた。
……だが、レーザー砲の砲門は真っすぐ、ブラッククラッカーに狙いを定めていた。
――ただの脅しか、いや、あの様子は――
嫌な予感を覚えたカイルは、とっさに回避行動を取る。……するとその次の瞬間、レーザーの光筋が、さっきまでブラッククラッカーが位置していた空間を貫く。
もし避けなければ、確実に命中していただろう。
――正気か!? 機体を傷つけても、いいって言うのか。……いや――
違う、恐らくジョセフは、カイルが回避するのを分かって見越してだろう。
それを証拠に、ご丁寧にジョセフは頑張れば回避が可能なくらいの精度に、わざわざ調整して撃っていた。
今の状態なら、ジョセフの本気なら確実に撃ちぬける。それをしないと言うことは……。
――回避運動で、消耗させるつもりか。小賢しい手を!――
ただでさえ逃走するための操縦で一杯一杯な上、更に回避のために労力を割かれる……、もう限界だった。
二機の距離は次第に縮まり、そしてブラッククラッカーは先端に強力な電磁石機器を取り付けた機器を射出し、その磁力で機体に接続する。
さらに電磁石と玄武号はワイヤーで繋がり、玄武号はブラッククラッカーの動きを封じる。
そして依然と、レーザー砲は向けられている。
〈さてと、チェックメイトだ、カイル!〉
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