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第十二章 Grand Galaxy Grand prix [Restart〕
葛藤する二人
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テイルウィンド、ワールウィンド、そしてクリムゾンフレイムのいくらか先――
間もなく惑星エメラルドの成層圏を突破しようとする、トップのジンジャーブレッドと、二位のシロノ。
――やはりやるものです、ジンジャーブレッド――
シロノは目の前を上昇して行く、ブラッククラッカーを見て、改めて思った。
しかし……。
――まともにレースをしても、十分な程に……。なのに、どうして――
シロノにあったのは、レースそのものと、そしてジンジャーブレッドに対する疑惑であった。
――マリンのおかげで、落ち着きはしましたけれど……やはり、未だかつて悩みはあるもの、ですね――
本当に苦しいなら、辞めてもいいと……彼女は言った。
だが、シロノにはやはり『白の貴公子』としての、プライドがあった。――それでも、こうしてレースには参加した。
これ以上、レースに本気を出すか、それとも……言いたくはないが手を抜いて済ませるか、決心はつかないでいた。
下には、惑星エメラルドの、丸く緑色の大地が見える。
二機とも、重力圏から突破し、宇宙空間に到達した。
だが、両者の差は、相変わらずだった。
宇宙の闇を飛翔する中、ホワイトムーンはブラッククラッカーの先を越せない。
……いや、そもそも積極的に、先を越そうとする意志が、シロノにはなかった。
周囲には惑星ルビーを囲む小惑星帯から離れた、幾つもの小惑星が阻み出す。
ブラッククラッカーは上手く小惑星を掻い潜り、先を行く中、ホワイトムーンは差をつけられて行った。
ブラッククラッカーの姿が、段々と遠くなる。
それでもシロノは……。
――結局私は、どうすれば――
――――
ホワイトムーンを引き離し、首位を維持するブラッククラッカー。
だが……。
――私は、こんなレースを、望んでいたのか――
ジンジャーブレッドもまた、心に葛藤を抱いていた。
――先ほどのシロノ……か。前半戦とは全然飛び方が違う、もはや、本気で相手にする価値もないのだろうな――
レーサーとしてシロノの操縦には、以前見た覇気が一切感じられなかった。動きも、本気で勝ちに行く姿勢も見られない。
……やはり、自分に失望したせいだろうか。
そう考えるとジンジャーブレッドの心は、重くなる。
だがそれでも止めることは許されない。彼を突き動かすのは、一位でいなければならないプレッシャーだ。
……だが、それは最早、スポンサーによって強制されたものであった。
本人が望もうが望むまいが、もはやそれしか道はない。
しかし――
――それでも、フウマと……言ったか。せめて彼とはもう一度、レースの場で再び会えれば――
ジンジャーブレッドの脳裏に浮かぶのは、後半戦の開始直前、偶然コックピットに姿を見せた、フウマとの邂逅。
意図せずして、彼の秘密を知ってしまったフウマ。そして、その時に交わした、約束――。
――私にはそれを望む資格は、ないのだろうが……それでも――
やはり今はまだ、負けるわけにはいかない。
フウマがここまでたどり着くまでは……、ジンジャーブレッドもまた、首位で踏みとどまるつもりだ。
間もなく惑星エメラルドの成層圏を突破しようとする、トップのジンジャーブレッドと、二位のシロノ。
――やはりやるものです、ジンジャーブレッド――
シロノは目の前を上昇して行く、ブラッククラッカーを見て、改めて思った。
しかし……。
――まともにレースをしても、十分な程に……。なのに、どうして――
シロノにあったのは、レースそのものと、そしてジンジャーブレッドに対する疑惑であった。
――マリンのおかげで、落ち着きはしましたけれど……やはり、未だかつて悩みはあるもの、ですね――
本当に苦しいなら、辞めてもいいと……彼女は言った。
だが、シロノにはやはり『白の貴公子』としての、プライドがあった。――それでも、こうしてレースには参加した。
これ以上、レースに本気を出すか、それとも……言いたくはないが手を抜いて済ませるか、決心はつかないでいた。
下には、惑星エメラルドの、丸く緑色の大地が見える。
二機とも、重力圏から突破し、宇宙空間に到達した。
だが、両者の差は、相変わらずだった。
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……いや、そもそも積極的に、先を越そうとする意志が、シロノにはなかった。
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ブラッククラッカーは上手く小惑星を掻い潜り、先を行く中、ホワイトムーンは差をつけられて行った。
ブラッククラッカーの姿が、段々と遠くなる。
それでもシロノは……。
――結局私は、どうすれば――
――――
ホワイトムーンを引き離し、首位を維持するブラッククラッカー。
だが……。
――私は、こんなレースを、望んでいたのか――
ジンジャーブレッドもまた、心に葛藤を抱いていた。
――先ほどのシロノ……か。前半戦とは全然飛び方が違う、もはや、本気で相手にする価値もないのだろうな――
レーサーとしてシロノの操縦には、以前見た覇気が一切感じられなかった。動きも、本気で勝ちに行く姿勢も見られない。
……やはり、自分に失望したせいだろうか。
そう考えるとジンジャーブレッドの心は、重くなる。
だがそれでも止めることは許されない。彼を突き動かすのは、一位でいなければならないプレッシャーだ。
……だが、それは最早、スポンサーによって強制されたものであった。
本人が望もうが望むまいが、もはやそれしか道はない。
しかし――
――それでも、フウマと……言ったか。せめて彼とはもう一度、レースの場で再び会えれば――
ジンジャーブレッドの脳裏に浮かぶのは、後半戦の開始直前、偶然コックピットに姿を見せた、フウマとの邂逅。
意図せずして、彼の秘密を知ってしまったフウマ。そして、その時に交わした、約束――。
――私にはそれを望む資格は、ないのだろうが……それでも――
やはり今はまだ、負けるわけにはいかない。
フウマがここまでたどり着くまでは……、ジンジャーブレッドもまた、首位で踏みとどまるつもりだ。
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