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最終章 レースの決着
終焉するレースと、そして……
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レースはもう、終わった。
テイルウィンドは他の機体とともに、オーシャンポリスの滑走路へと降下する。
着陸し、しばらく滑走した後……停止。続けて、ブラッククラッカー、ホワイトムーンなども次々と着陸して、降り立つ。
表彰式の舞台は、滑走路のすぐ近くの、屋外ステージである。
パイロット達は機体を降り、ステージへと。
フウマにシロノ、マリン、リッキーに、フィナ。そして……ジンジャーブレッドもいた。
「……いいのか? 私は、失格となった身だぞ」
今のジンジャーブレッドは、十二、三歳の子供の姿。ダボダボのパイロットスーツを引きずりながら、フウマに手を引かれながら歩く。
……最も、縮んでいてもフウマとの身長は同じくらいで、あるのだが。
「それに……私は、こんな姿だ。これではもう私をジンジャーブレッドだと、誰も認めてくれないさ」
だが、そんなジンジャーブレッドに、フウマは笑いかける。
「大丈夫! 事情はちゃんと、僕が説明するからさ! だってせっかく、ここまでジンジャーブレッドさんが頑張ったんだ。
だから――貴方は貴方として、その頑張りをちゃんと、みんなに認めてもらいたいんだ。……自分勝手な、僕の気持ちなのかもしれないけどさ」
また近くを歩くシロノも、こう言った。
「私たちも、ジンジャーブレッドさんの味方です。あそこまで立派なレースをしたのです、それは当然、評価されるべきですから」
シロノだけではない、共に勝負を繰り広げた、マリン、リッキー、フィナも、その気持ちは同じだ。
「……みんな」
そして最後に、フウマは満面の笑みで、こう言った。
「胸を張ってもいいんだ! だって僕たちが一番知っているんだから――ジンジャーブレッドさんが素晴らしいレーサーだって!」
彼らの言葉と、その笑顔、これにはジンジャーブレッドの――心の救いとなった。
――――
ステージには大勢の観客が、集まっていた。
中央には司会のレイと、実況のリオンド、そして……このG3レースの主催者となる、オーシャンポリス市長、ジルコット氏がいた。
彼らが待っているのは、レースで最高の勝負を繰り広げた、レーサー達。
そして今……その主役達が、ステージへと姿を現した。
「さぁみんな――今回のレースで、立派なレースを繰り広げた六人……彼らの登場よ!」
レイはマイクを片手に、入場とともにそう宣言した。
ステージに入って来るフウマ達、観客は歓声と、拍手で迎えた。
そんななか、彼らは表彰台の横で待つ、ジルコットら三人の元へと……
「皆の者、よく健闘した。実に素晴らしい、戦いであった」
六人のレーサーを前に、彼はそう、賞賛の言葉を贈る。
「さて、本レースの栄えある優勝者は……フウマ・オイカゼ君だ。さぁ……一歩前へ」
ジルコットに促され、フウマは彼の元へと、歩みを進める。
華々しく装飾大型のトロフィーを両手に持ち、ジルコットはそれを、フウマへと……。
「優勝、おめでとう! G3レース優勝者の栄光は、君のものだ!」
彼の賛辞と、そして優勝トロフィーを、フウマは受け取る。
「――ありがとう、ジルコットさん。とても……感激だよ!」
これには相当の、感謝で応えるフウマである。
――そして。
「さて、続いては準優勝者となるが……」
すると今度は、シロノ、そしてマリンに視線を向ける。
「本来なら準優勝は君たち二人、となるのだが」
と、ジルコットはそう言い――ジンジャーブレッドに目を向けた。
「……」
これにはどう反応すれば良いか分からず、沈黙するジンジャーブレッド。
「……誰なんだ? あの子供は?」
「ジンジャーブレッド……ではなかったのか?」
観客はその姿に、騒然とし、困惑
彼の外見は、もはや子供。誰が見てももはや、初代のジンジャーブレッドとは別の存在であることは、一目瞭然だ。
……なのだが、ジルコットはそんなジンジャーブレッドに、ある事を伝える。
「君の事は、既に承知している。確かに君は、数十年もの昔に活躍したジンジャーブレッドとは、違うのだろう。
しかしあの勝負で、君は紛れもなく……立派なレーサーだと分かった。
ゲルベルトの件に関しても、むしろ君は、被害者の立場である。一度は失格も考えたが――それではあまりに、ここまで戦い抜いて来た勇者に、失礼と言うものだろう」
ジルコットは、今度は銀のトロフィーを手にし、ジンジャーブレッドに歩み寄る。
「特に、最後のフウマとの一騎打ち……見事だった。
だからこそ、G3の準優勝の栄光は、君に与えたい。
……シロノくん、マリンさん、君たちには悪いと思うが、構わないかな」
そう彼は申し訳なさそうに言うが、当然、二人の答えは……。
「ええ! 全然、私たちは大丈夫! そうでしょ? シロノ」
マリンはそう言い、シロノも頷く。
「気にすることはありませんよ、ジルコットさん。私たちはレーサーとして全力を出して、そして敗れた。ジンジャーブレッドさんとも、そんな気持ちで……勝負したのですから」
ジルコットも、それを聞いて安堵した。
「ありがとう……そう言ってくれて。
――さぁ、ジンジャーブレッド……と、呼ばせてもらおうか。君の行った、勝負はまさに本物だ。どうか――受け取ってもらえないか?」
ジンジャーブレッドの目の前には、銀のトロフィーが。
彼は僅かに目を閉じ、そして心を決めた。
トロフィーへとその手を伸ばし――ジンジャーブレッドは、その栄光の証を受け取った。
その後は三位――シロノとマリンに銅のトロフィーを渡した。
「生憎、全くの同時にゴールとは、思わなんだ。トロフィーは二人で持っていてくれたまえ」
トロフィーはシロノ、マリンの二人で手に持つ。
「ふふっ! これはある意味、優勝以上のご褒美ね!」
「……あはは。そう喜んでくれると、私も嬉しいです」
そして、リッキーとフィナに対しては……
「君たちには、トロフィー与えこそ出来ないが、その活躍も、また輝かしいものであった。
……きっと、それは皆の心にも、強く残ったであろう」
「ま、そう言ってもらえただけでも、俺には十分嬉しいさ」
「優勝出来なかったのは残念だけど、それでも本気で頑張ったもの、悔いはないよ」
二人もまた、フウマたちと同様、このレースを奮戦した。
例え結果こそ、やや残念であったものの……全力を尽くした。悔いは決して、なかった。
――そして、フウマ達はトロフィーを持ち、表彰台へと。
「では、今度のレースを奮闘した彼らに……盛大な拍手を!」
シロノとマリン、ジンジャーブレッド、そしてフウマ。四人は表彰台に立ち、観客は大いに拍手を送った。
台の一番上に立つのは、フウマ。にこやかに笑みを返し、観客に対して手を振る。
そして――隣のジンジャーブレッドに対し――
「どう? やっぱりレースの最後は、こうでなくっちゃね」
フウマの言葉に、ジンジャーブレッドは。
「ああ。確かにこの感じ……良いものだ」
彼は穏やかに、表情を緩めていた。
そして、こう言葉を続ける。
「――優勝ではない、ジンジャーブレッドとしての不敗神話を果たすことは……叶わなかった。
だが、不思議なものだな。たとえ優勝でないとしても、何故か……満ち足りているのだ」
ジンジャーブレッドの顔には、まさにそんな、笑みが浮かんでいた。
「それは良かった! ジンジャーブレッドさんと勝負が出来て、僕――本当に良かったよ!」
「ああ。……私も、皆と戦えた事を、とても……嬉しく…………」
――すると、ジンジャーブレッドの体が、急に力を失い、ぐらりと揺れた。
トロフィーはその手元から離れ、下へと落下し、音を立てて落ちた。
「……えっ!」
フウマはその異変に、唖然とした。
そしてジンジャーブレッドは、力なくふらつき、倒れようとする。
「マリン、これを持っていて下さい!」
「えっ!? ちょっ!」
「ここは私が――!」
シロノはとっさにトロフィーをマリンに渡し、倒れようとするジンジャーブレッドを、受け止めた。
小さくなった彼の体を、抱き留めるシロノ。
「……! これは、すごい熱です! まさかずっと、こんな身体で……」
彼はずっと、無理を続け。今まで耐えて来た限界が、ついに訪れたのだ。
意識を失った、ジンジャーブレッド。フウマは――叫んだ!
「そんな――――ジンジャーブレッドさんっ!」
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