テイルウィンド

双子烏丸

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最終章 レースの決着

決着――

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「どうだっ! これが今の、僕さ! 悪いけど、今回のG3レース……頂いたよ!」
 得意げなフウマ、そしてシロノは……。
〈これは、してやられましたね。ですがあと少し、まだギリギリ……〉
 と、その時、今度は――
〈さて! ようやく並んだわ!〉
〈――マリンまで!〉
 後方から迫っていた、マリンのクリムゾンフレイムが、今度はホワイトムーンに並ぶ。
〈言ったでしょ? シロノの事を手に入れるって! 悪いけど、勝たせはしないわよ!〉


 シロノ、マリンが一騎打ちを繰り広げる中、そんな二人に迫るフィナとリッキー。
 そして――。


「――さぁ! いよいよ貴方との決着だ。……ジンジャーブレッドさん!」
 テイルウィンドは高速でせまり、ついに再びブラッククラッカーへ――首位に並んだ。
〈さん付けとは……年齢で言うなら。私が年下なのだよ。それに、今のこの姿も、もはや君より――〉
 ジンジャーブレッドは激しい副作用により、激痛と、身体の激しい退行を起こしていた。
 もはや肉体も、フウマよりも幼くなっていたが……それでも、ジンジャーブレッドとしての自我は、保っていた。
「でも貴方は紛れもなく、かつて伝説を残したレーサー、ジンジャーブレッドその人さ! だからこそ、僕はその伝説を今――打ち破ってみせる!」
 


 例えクローンでも、彼はまさしく、もう一人のジンジャーブレッド。
 少なくとも、フウマにとっては、それは間違いなかった。
〈そう言ってくれるか。なら私も、ジンジャーブレッドとして、そして一レーサーとして――勝利を掴んでみせるとも!〉 
 ジンジャーブレッドはそう、決意を示す。そしてフウマも――
「こっちだって、負けられないさ! ここまで来たんだ、G3レース、優勝するのは僕さ」



 ゴールはもう、すぐそこだ。
 眼下に広がる大都市とそして――正面に大きく浮かぶ、ゴールラインである黄金のリング。
 もはや長かったレースも終わり。ゴールまで、あと数秒――。
 シロノのホワイトムーンそして、マリンのクリムゾンフレイム……二機もすぐ背後まで迫る。そしてリッキーとフィナの機体まで、残り数秒だとしても果たして――
 

 ――トップを飛ぶ、テイルウィンドとブラッククラッカー。
 二機もまた互角であるが、もう後一歩――前へと。
 ――ずっと頑張って来たんだ、レーサーとして、レースに……色々な想いをかけて――
 もうすぐゴールに、手が届く。
 まるでそこに手を伸ばす、そんなイメージで、誰よりも先に……それを掴んでみせようと。
 ――自分が純粋にレースが好きだから、そして大切な人のために――。もちろん、シロノ達やジンジャーブレッドさん、みんなのレースに駆ける思いに応えるためにも!――

 
 テイルウィンドは、ゴールに目掛けて、一直線に。
 目一杯に近づく、ゴールライン。フウマは思いっきり、感情を露にして……叫んだ!

 
 「これで――――決まりだあぁぁっ!!」




 ついにゴールインした、レース機。 
 テイルウィンド、ブラッククラッカーの二機が、同時にゴールしたと、そう見えた。


 だが、ほんの僅か、先にゴールラインを潜ったのは――テイルウィンドの先端部だ!
 リングの感知システムはこれを感知し、オーシャンポリスの会場から見えるくらいに巨大な、ホログラム映像を宙に映し出す。
 光り輝くホログラムの文章、それには――こう示されていた。


『Winner! Oikaze Fuuma and――Teilwind!』



 ――――

〈見事優勝したのはフウマ・オイカゼ選手と、その機体――テイルウィンド!〉
 レイはゴールを迎えた、テイルウィンドの映像とともに、こう宣言した。
〈ブラッククラッカーとは僅かの差で一位に! そして続けて、ホワイトムーンとクリムゾンフレイム……こっちの二機は同時にゴールね!〉
 また、リオンドもこう付け足した。
〈その後に、アトリ、ワールウィンドの順でゴールだな。リッキー……よく頑張ったな〉
 最後の言葉は、ほんの小声で。……彼は自分の息子の、奮闘ぶりもしっかり見ていたのだ。
〈さてと! 本当に長かったけど、どうだったかしら?
 G3レース――ついに、完結。この後は表彰式があるから、どうかみんなも祝ってあげてね!〉



 ――――


 会場でも、レースの結果に――大いに湧いた!

「すごいな! まさか、あの小僧が優勝とは――」

「最後の最後まで、迫力満点だわ!」

「それに、ジンジャーブレッドもさすがだった。……他のレーサー達も、また凄い活躍、素晴らしい!」

 誰も彼も、レーサー達の奮闘に、賞賛の声を送る。
 そして――

 
 ミオもまた、G3レースの結末を見届け、息をついた。
 ――本当に、優勝したんだ。シロノさん、ジンジャーブレッドさんにも勝って……フウマは――
 あまりの驚きに、思わず固まっていた彼女。すると――目元から、何かが流れ落ちるような、そんな感覚を覚えた。
 
 
 軽く、指で拭うと、その指先がかすかに濡れていた。
 ――あれ? 私、泣いてるの? 変だな、フウマが優勝して、私もとっても嬉しいはずなのに――
 思わず戸惑う、ミオ。だがその涙が意味するもの……それは、考えればすぐに分かった。
 ――そっか。これって……嬉し涙って、やつなんだ――


 そうと分かれば、涙を手で拭い、改めて満面の笑顔で、笑ってみせた!
 そして――こう一言。

「おめでとう、フウマ! よく頑張ったね!」

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