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第五章 クリスマス
おまけ(朱音視点)
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◇◇◇
おまけ
「こんばんはー。みんな来てるー?」
朱音はいつものようにパソコンアプリの音声通話で弘樹の部屋へ呼びかけた。
最近、有名なゲーム実況アイドルたちと友達になったばかり。
今日も一緒にネットゲームだ。
通話相手の画像欄には、さっきから寝落ちして机に突っ伏す弘樹が映っていたが、その隣にこちらをのぞき込むように金髪の女性が映る。
『あー、こんばんは、朱音! 昨日のクリスマスパーティは楽しかったね』
綺麗な金髪を頭の上でお団子にして、顔の両側だけフェイスラインに沿うように髪を垂らした胡桃アリスが笑顔で答えた。
アリスは超人気のゲーム実況アイドルだ。
『弘樹はいつも通り、横で寝とるよー』
アリスは状況を説明しながら、机に突っ伏して寝落ちする弘樹の右腕に勢いよく組み付いた。
その拍子で彼女の大きな胸が彼の腕に押し当る。
『あのアリスさん! そこは私の席なんですー。代わって欲しいですー』
アリスの横から割り込むように画面に映ったのは、艶やかな黒髪が腰まで伸びる、大川せせらぎだ。
ゲーム実況アイドルのせせらぎは、朱音にとってアクションゲームを教えてくれる師匠でもある。
『ちょっとせせらぎちゃん、狭いよー。座るならこっちにして。弘樹の隣は私だもんねー』
『アリスさんズルいですー。それじゃ弘樹さんの匂いが嗅げな……いえ、私も弘樹さんの横がいいです!』
朱音は微妙な顔をした。
自分の師匠がよく知る友人の匂いを嗅ぎたがるからだ。
だが、性嗜好は人それぞれだと思い直して黙って見守る。
『うるせぇなぁ、お前らは。え? 何? あ、間違えた。騒がしいですわよ。弘樹さんの隣ならそちら側も空いていますわ。椅子はありませんけど』
立ち上がったのか、弘樹を取り囲むみんなの後ろに椿理沙の姿が見えた。
理沙もゲーム実況アイドルでセクシー系だ。
彼女はモニターに付けられたカメラを見ながら、クセのある赤く長い髪をかき上げる。
それからネイルが塗られた人差し指で弘樹の首筋に触れると、ニマニマしながらカメラに向かってウインクした。
ほかの二人は冬用の可愛らしいパジャマだが、理沙だけいつもTシャツに短パンだ。
真冬だが部屋の暖房が効いているのと、今日も酒を飲んで酔っ払っているので寒くないのだろう。
『あ、じゃあそっち側は私がもらいます!』
机に突っ伏して寝落ちする弘樹の反対側に田中里美が場所をとったのか、画面から姿が見切れている。
里美はセミロングの眼鏡娘で、弘樹と一緒に働くバイト仲間。
最近はゲーム実況アイドルたちから弘樹を奪われまいと、この時間になると弘樹の部屋に押しかけているのだ。
今度は弘樹の左腕をつまむ里美を引き剥がそうと、せせらぎが反対側へ移動した。
『ああ、里美さんズルいですー。せめてそちら側は私にください。里美さんは私たちが召喚される前から、いるじゃないですかぁ』
『ほんの数分だからズルくないです。そもそも私だけただの一般人なんですから、それくらいハンデです』
せせらぎがアリスと里美を弘樹から引き剥がそうと頑張り、そうはさせるかと二人が必死に弘樹に引っ付いている。
この様子を朱音はモニター越しに黙って見ていた。
なんで朱音は毎回毎回、こんな羨ましい状況を見せつけられてるの?
朱音だって本当はヒロを触ったりしたいのに!
でもヒロも大変よね。
こんな可愛い女子たちが部屋に詰めかける天国状態なのに、自分が寝落ちしないと始まらないんだから。
朱音の心境は弘樹に同情するというより、安心するものに近かった。
なぜなら自分の好きな相手が女性に手を出すことはないからだ。
でも最近、ヒロには寝落ちが睡眠麻痺になるという特殊効果が増えたのよね。
彼女たちの過激アプローチを見たり聞いたり感じたりできるらしいし。
それでも彼は身体を一切動かせないし、彼女たちが何をしても返事もできない。
目覚めて会話できるようになると、今度は彼女たちの召喚が解除されて転移で帰っちゃう。
里ミンだけは普通に部屋へ来てるけど、アイドルたちと正々堂々戦うとかで、ヒロが目覚めると一目散に帰るし。
朱音は彼女たちが落ち着いてから声をかける。
「えと、じゃあ、今日は何のゲームをする?」
きゃいきゃいと楽しそうに騒ぐ彼女たちへ朱音が呼びかけると、ゲーム好きの彼女たちから一斉に回答があった。
『MMORPGでもよい?』
『バトロワを希望しますー!』
『麻雀ですわよね、麻雀!』
『れ、恋愛シミュレーションでもいいですか?』
弘樹がいつも寝ているので、部屋に来た彼女たちは手を出せても会話はできない。
一方朱音は回線越しとはいえ、彼女たちが来る前と帰った後に弘樹との会話を独占できる。
大人気ゲーム実況アイドルたちを差し置いて、弘樹を独り占めして一緒に盛り上がれるのだ。
朱音は、自分とアリスたちのどっちがいいかなんて、考え方次第で変わると分かっている。
だが、どうしても譲れないことがあった。
あのアイドルたちが恋のライバルなのは、正直かなり厳しいよ。
でも、いくら彼女たちが魅力的でも、朱音はヒロを譲れない、譲れないんだから!
ヒロの初めては絶対に私がもらうわよ!
想いをよせる弘樹のことを絶対に諦めたくない、まだ十分希望がある、彼女はそう自分を奮い立たせた。
それでも今日もこれから繰り広げられる、彼女たちの過激アプローチを想像すると、回線越しで弘樹に手出しできない自分が悔しくて羨ましくて、静かに唇を嚙むのだった。
おまけおしまい
最後までお読みいただき、感謝いたします。
どうか朱音にも、頑張れって応援をお願いします。
あと感想で、どの娘推しか教えていただけると嬉しいです!
おまけ
「こんばんはー。みんな来てるー?」
朱音はいつものようにパソコンアプリの音声通話で弘樹の部屋へ呼びかけた。
最近、有名なゲーム実況アイドルたちと友達になったばかり。
今日も一緒にネットゲームだ。
通話相手の画像欄には、さっきから寝落ちして机に突っ伏す弘樹が映っていたが、その隣にこちらをのぞき込むように金髪の女性が映る。
『あー、こんばんは、朱音! 昨日のクリスマスパーティは楽しかったね』
綺麗な金髪を頭の上でお団子にして、顔の両側だけフェイスラインに沿うように髪を垂らした胡桃アリスが笑顔で答えた。
アリスは超人気のゲーム実況アイドルだ。
『弘樹はいつも通り、横で寝とるよー』
アリスは状況を説明しながら、机に突っ伏して寝落ちする弘樹の右腕に勢いよく組み付いた。
その拍子で彼女の大きな胸が彼の腕に押し当る。
『あのアリスさん! そこは私の席なんですー。代わって欲しいですー』
アリスの横から割り込むように画面に映ったのは、艶やかな黒髪が腰まで伸びる、大川せせらぎだ。
ゲーム実況アイドルのせせらぎは、朱音にとってアクションゲームを教えてくれる師匠でもある。
『ちょっとせせらぎちゃん、狭いよー。座るならこっちにして。弘樹の隣は私だもんねー』
『アリスさんズルいですー。それじゃ弘樹さんの匂いが嗅げな……いえ、私も弘樹さんの横がいいです!』
朱音は微妙な顔をした。
自分の師匠がよく知る友人の匂いを嗅ぎたがるからだ。
だが、性嗜好は人それぞれだと思い直して黙って見守る。
『うるせぇなぁ、お前らは。え? 何? あ、間違えた。騒がしいですわよ。弘樹さんの隣ならそちら側も空いていますわ。椅子はありませんけど』
立ち上がったのか、弘樹を取り囲むみんなの後ろに椿理沙の姿が見えた。
理沙もゲーム実況アイドルでセクシー系だ。
彼女はモニターに付けられたカメラを見ながら、クセのある赤く長い髪をかき上げる。
それからネイルが塗られた人差し指で弘樹の首筋に触れると、ニマニマしながらカメラに向かってウインクした。
ほかの二人は冬用の可愛らしいパジャマだが、理沙だけいつもTシャツに短パンだ。
真冬だが部屋の暖房が効いているのと、今日も酒を飲んで酔っ払っているので寒くないのだろう。
『あ、じゃあそっち側は私がもらいます!』
机に突っ伏して寝落ちする弘樹の反対側に田中里美が場所をとったのか、画面から姿が見切れている。
里美はセミロングの眼鏡娘で、弘樹と一緒に働くバイト仲間。
最近はゲーム実況アイドルたちから弘樹を奪われまいと、この時間になると弘樹の部屋に押しかけているのだ。
今度は弘樹の左腕をつまむ里美を引き剥がそうと、せせらぎが反対側へ移動した。
『ああ、里美さんズルいですー。せめてそちら側は私にください。里美さんは私たちが召喚される前から、いるじゃないですかぁ』
『ほんの数分だからズルくないです。そもそも私だけただの一般人なんですから、それくらいハンデです』
せせらぎがアリスと里美を弘樹から引き剥がそうと頑張り、そうはさせるかと二人が必死に弘樹に引っ付いている。
この様子を朱音はモニター越しに黙って見ていた。
なんで朱音は毎回毎回、こんな羨ましい状況を見せつけられてるの?
朱音だって本当はヒロを触ったりしたいのに!
でもヒロも大変よね。
こんな可愛い女子たちが部屋に詰めかける天国状態なのに、自分が寝落ちしないと始まらないんだから。
朱音の心境は弘樹に同情するというより、安心するものに近かった。
なぜなら自分の好きな相手が女性に手を出すことはないからだ。
でも最近、ヒロには寝落ちが睡眠麻痺になるという特殊効果が増えたのよね。
彼女たちの過激アプローチを見たり聞いたり感じたりできるらしいし。
それでも彼は身体を一切動かせないし、彼女たちが何をしても返事もできない。
目覚めて会話できるようになると、今度は彼女たちの召喚が解除されて転移で帰っちゃう。
里ミンだけは普通に部屋へ来てるけど、アイドルたちと正々堂々戦うとかで、ヒロが目覚めると一目散に帰るし。
朱音は彼女たちが落ち着いてから声をかける。
「えと、じゃあ、今日は何のゲームをする?」
きゃいきゃいと楽しそうに騒ぐ彼女たちへ朱音が呼びかけると、ゲーム好きの彼女たちから一斉に回答があった。
『MMORPGでもよい?』
『バトロワを希望しますー!』
『麻雀ですわよね、麻雀!』
『れ、恋愛シミュレーションでもいいですか?』
弘樹がいつも寝ているので、部屋に来た彼女たちは手を出せても会話はできない。
一方朱音は回線越しとはいえ、彼女たちが来る前と帰った後に弘樹との会話を独占できる。
大人気ゲーム実況アイドルたちを差し置いて、弘樹を独り占めして一緒に盛り上がれるのだ。
朱音は、自分とアリスたちのどっちがいいかなんて、考え方次第で変わると分かっている。
だが、どうしても譲れないことがあった。
あのアイドルたちが恋のライバルなのは、正直かなり厳しいよ。
でも、いくら彼女たちが魅力的でも、朱音はヒロを譲れない、譲れないんだから!
ヒロの初めては絶対に私がもらうわよ!
想いをよせる弘樹のことを絶対に諦めたくない、まだ十分希望がある、彼女はそう自分を奮い立たせた。
それでも今日もこれから繰り広げられる、彼女たちの過激アプローチを想像すると、回線越しで弘樹に手出しできない自分が悔しくて羨ましくて、静かに唇を嚙むのだった。
おまけおしまい
最後までお読みいただき、感謝いたします。
どうか朱音にも、頑張れって応援をお願いします。
あと感想で、どの娘推しか教えていただけると嬉しいです!
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