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第五章 クリスマス
最終話 希望
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「やっと動けるよ……」
床に寝かされていた弘樹が身体を起こす。
「ああ、起きたのねヒロ」
「弘樹さん目が覚めましたね!」
朱音も里美も着替えをすませている。
「パーティ、終わったな」
「盛り上がったわよ」
「じゃあ、私は帰りますんで。また明日お仕事で!」
弘樹が起きるや、里美が早々に帰宅したいと言う。
彼が駅まで送ろうとしたが、丁重に断られた。
時刻は夕暮れ、慌てて帰るほど遅い時間ではない。
「なんだろ里美さん。急に慌てて」
「召喚で来てるアリスちゃんたちと同じにするため、仕事以外でヒロに会わないようにするんだって」
弘樹は里美の律義さに驚きながらも、パーティの間中、意識だけはあったことを朱音に打ち明けた。
それを聞いた朱音は恥ずかしそうにする。
「つまりよ? 朱音はヒロに生のトナカイコスプレを見られたってことなの??」
「え? うん。可愛かったよ」
「きゃあー!!」
二人してしばらく盛り上がってから、朱音が真面目な顔で話を切り出す。
「聞こえてたってことは、ヒロの『寝落ちスキル』が限界突破して11レベルになったことも、称号『人間の限界を超える者』を習得したのも知ってるの?」
「ああ。そのおかしな称号を聞く限り、ここまで『寝落ちスキル』を極めた人間なんていないんだろう」
「そしてあの裏面よ……」
「俺もマジで驚いた。特殊効果が増えてるとは」
弘樹がローテーブルに置かれたスキル診断のプリントを確認する。
すぐに朱音がのぞき込んできた。
・熟練度10レベル到達で特殊効果付与。
『寝落ちスキル』特殊効果:『小人の靴屋』
(やりかけたことを助けてくれる高い実力があり、かつスキル所持者の理想の存在を、寝落ちしている間だけ召喚可能。寝落ちから状態回復すると召喚は解除される)
・熟練度11レベル到達で特殊効果付与。
『寝落ちスキル』の寝落ちが睡眠麻痺になる。
「ヒロの特殊効果、いつのまに増えたのよ!」
「睡眠麻痺が何かを里美さんが調べてたよな。金縛りの病名だっけか」
みんな、俺の睡眠麻痺を心配してた。
たぶん、意識があるのに身体が動かないあの状態がそうなんだ。
里美さんが調べた話だと、睡眠麻痺は夢を見てる状態らしい。
でも、俺には意識があった。
目も見えたし音も聞こえた。
身体は動かなかったけど。
金縛りって目が見える場合もあるのか?
「それよりもよ! 下に書かれているグレーの文字の方が大切でしょ?」
・熟練度20レベル到達で特殊効果付与。
『寝落ちスキル』特殊効果:『限定解除』
寝落ちから状態回復しても、やりかけたことが続いていれば召喚は解除されない。
朱音がこれを読み上げて、どういうことか説明したら、アリスちゃん泣いてたな。
「うそ!? 私、弘樹を諦めなくていいの?」
せせらぎちゃんは笑ってた。
「弘樹さんと腕を組んで嗅ぎながら外を歩けます!」
理沙さんも笑顔だった。
「お洒落なバーへ酒飲みに連れて行こうっと」
三人の様子を見てた里美さんも朱音も本当に嬉しそうだった。
どうにか、五人を悲しませなくてすんだんだ。
「今夜は彼女らが仕事だから、召喚はなしよ」
「ああ。三人同時召喚は明日から再開する」
朱音が今後のことを確認してから弘樹に釘を刺す。
「ヒロ! あ、朱音のことは気にしないでいいんだからね! NPC扱いでも怒らないから」
「? 馬鹿だな。俺にとって朱音は親友以上の存在なんだ。大切に思ってるんだからそんなこと言うな」
返事を聞いた朱音は驚いて表情が固まった後、とても嬉しそうに笑った。
彼女の瞳が潤んだ、弘樹がそう思った直後だった。
すっと距離を詰めた朱音は、両手で弘樹の頬を挟むと唇を重ねたのだ。
急に訪れた朱音の小さくて柔らかい唇。
いきなりの不意打ち。
弘樹は身動きできずにされるがまま……。
そして頬を染めた朱音はゆっくりと離れながら、視線を合わせてじっと弘樹を見つめて。
そこから彼女はコロッと表情を変えて楽しそうに笑った。
彼のおでこに軽いデコピンを当てて帰っていった。
あ、あ、朱音!?
い、今のは一体……。
か、からかった!?
いや、ふざけてキスなんかしないよな?
ま、まさか、朱音が俺のことを!?
……か、可愛かったな、朱音。
不意打ちに呆然とした弘樹は、自分を取り戻すのにたっぷり三十分を要した。
ようやく再起動した弘樹は、考えをまとめるためにベッドで横になる。
いや、さっきの朱音には驚いた……。
彼女の真意は分からないけど、からかわれたにしても男として見てもらえてるには違いない。
うーん、考えることが増えたぞ。
朱音も可愛いが、ゲーム実況アイドルたちのことだ。
弘樹はもう一度スキル診断のプリントを手に取る。
『寝落ちスキル』はレベル11。
彼女たちを呼び続けてレベルを上げ続ければ、いずれは20レベルに到達するかもしれない。
そのときこそ彼女たちをこっちの世界へとどまらせる!
とどまらせて、デートに誘うんだ!
それまでのレベル上げは、睡眠麻痺の状態で彼女たちの過激アプローチを堪能するしかない……よな?
今日の召喚をしないと弘樹は決めていた。
クリスマスまでに彼女を作る、立てた目標の最終日。
もうクリスマス当日は終わろうとしている。
ついに弘樹には彼女ができなかった。
だが彼は悲観していない。
彼女たちと『寝落ちスキル』の召喚が切っかけで出会い、そして関係が深まった。
むしろ、これから始まる生活は期待しかない。
そしてその先に待つ彼女たちとのデート。
弘樹は、寝ている自分にさんざん過激アプローチをしてきたアリス、せせらぎ、理沙、里美、そしてさっき帰った朱音のそれぞれに想いをはせるのだった。
了
※次話にオマケで朱音視点があるのでまだ完結設定にしません。
床に寝かされていた弘樹が身体を起こす。
「ああ、起きたのねヒロ」
「弘樹さん目が覚めましたね!」
朱音も里美も着替えをすませている。
「パーティ、終わったな」
「盛り上がったわよ」
「じゃあ、私は帰りますんで。また明日お仕事で!」
弘樹が起きるや、里美が早々に帰宅したいと言う。
彼が駅まで送ろうとしたが、丁重に断られた。
時刻は夕暮れ、慌てて帰るほど遅い時間ではない。
「なんだろ里美さん。急に慌てて」
「召喚で来てるアリスちゃんたちと同じにするため、仕事以外でヒロに会わないようにするんだって」
弘樹は里美の律義さに驚きながらも、パーティの間中、意識だけはあったことを朱音に打ち明けた。
それを聞いた朱音は恥ずかしそうにする。
「つまりよ? 朱音はヒロに生のトナカイコスプレを見られたってことなの??」
「え? うん。可愛かったよ」
「きゃあー!!」
二人してしばらく盛り上がってから、朱音が真面目な顔で話を切り出す。
「聞こえてたってことは、ヒロの『寝落ちスキル』が限界突破して11レベルになったことも、称号『人間の限界を超える者』を習得したのも知ってるの?」
「ああ。そのおかしな称号を聞く限り、ここまで『寝落ちスキル』を極めた人間なんていないんだろう」
「そしてあの裏面よ……」
「俺もマジで驚いた。特殊効果が増えてるとは」
弘樹がローテーブルに置かれたスキル診断のプリントを確認する。
すぐに朱音がのぞき込んできた。
・熟練度10レベル到達で特殊効果付与。
『寝落ちスキル』特殊効果:『小人の靴屋』
(やりかけたことを助けてくれる高い実力があり、かつスキル所持者の理想の存在を、寝落ちしている間だけ召喚可能。寝落ちから状態回復すると召喚は解除される)
・熟練度11レベル到達で特殊効果付与。
『寝落ちスキル』の寝落ちが睡眠麻痺になる。
「ヒロの特殊効果、いつのまに増えたのよ!」
「睡眠麻痺が何かを里美さんが調べてたよな。金縛りの病名だっけか」
みんな、俺の睡眠麻痺を心配してた。
たぶん、意識があるのに身体が動かないあの状態がそうなんだ。
里美さんが調べた話だと、睡眠麻痺は夢を見てる状態らしい。
でも、俺には意識があった。
目も見えたし音も聞こえた。
身体は動かなかったけど。
金縛りって目が見える場合もあるのか?
「それよりもよ! 下に書かれているグレーの文字の方が大切でしょ?」
・熟練度20レベル到達で特殊効果付与。
『寝落ちスキル』特殊効果:『限定解除』
寝落ちから状態回復しても、やりかけたことが続いていれば召喚は解除されない。
朱音がこれを読み上げて、どういうことか説明したら、アリスちゃん泣いてたな。
「うそ!? 私、弘樹を諦めなくていいの?」
せせらぎちゃんは笑ってた。
「弘樹さんと腕を組んで嗅ぎながら外を歩けます!」
理沙さんも笑顔だった。
「お洒落なバーへ酒飲みに連れて行こうっと」
三人の様子を見てた里美さんも朱音も本当に嬉しそうだった。
どうにか、五人を悲しませなくてすんだんだ。
「今夜は彼女らが仕事だから、召喚はなしよ」
「ああ。三人同時召喚は明日から再開する」
朱音が今後のことを確認してから弘樹に釘を刺す。
「ヒロ! あ、朱音のことは気にしないでいいんだからね! NPC扱いでも怒らないから」
「? 馬鹿だな。俺にとって朱音は親友以上の存在なんだ。大切に思ってるんだからそんなこと言うな」
返事を聞いた朱音は驚いて表情が固まった後、とても嬉しそうに笑った。
彼女の瞳が潤んだ、弘樹がそう思った直後だった。
すっと距離を詰めた朱音は、両手で弘樹の頬を挟むと唇を重ねたのだ。
急に訪れた朱音の小さくて柔らかい唇。
いきなりの不意打ち。
弘樹は身動きできずにされるがまま……。
そして頬を染めた朱音はゆっくりと離れながら、視線を合わせてじっと弘樹を見つめて。
そこから彼女はコロッと表情を変えて楽しそうに笑った。
彼のおでこに軽いデコピンを当てて帰っていった。
あ、あ、朱音!?
い、今のは一体……。
か、からかった!?
いや、ふざけてキスなんかしないよな?
ま、まさか、朱音が俺のことを!?
……か、可愛かったな、朱音。
不意打ちに呆然とした弘樹は、自分を取り戻すのにたっぷり三十分を要した。
ようやく再起動した弘樹は、考えをまとめるためにベッドで横になる。
いや、さっきの朱音には驚いた……。
彼女の真意は分からないけど、からかわれたにしても男として見てもらえてるには違いない。
うーん、考えることが増えたぞ。
朱音も可愛いが、ゲーム実況アイドルたちのことだ。
弘樹はもう一度スキル診断のプリントを手に取る。
『寝落ちスキル』はレベル11。
彼女たちを呼び続けてレベルを上げ続ければ、いずれは20レベルに到達するかもしれない。
そのときこそ彼女たちをこっちの世界へとどまらせる!
とどまらせて、デートに誘うんだ!
それまでのレベル上げは、睡眠麻痺の状態で彼女たちの過激アプローチを堪能するしかない……よな?
今日の召喚をしないと弘樹は決めていた。
クリスマスまでに彼女を作る、立てた目標の最終日。
もうクリスマス当日は終わろうとしている。
ついに弘樹には彼女ができなかった。
だが彼は悲観していない。
彼女たちと『寝落ちスキル』の召喚が切っかけで出会い、そして関係が深まった。
むしろ、これから始まる生活は期待しかない。
そしてその先に待つ彼女たちとのデート。
弘樹は、寝ている自分にさんざん過激アプローチをしてきたアリス、せせらぎ、理沙、里美、そしてさっき帰った朱音のそれぞれに想いをはせるのだった。
了
※次話にオマケで朱音視点があるのでまだ完結設定にしません。
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