異世界に招かれしおっさん、令嬢と世界を回る

いち詩緒

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第一章 王国編

第11話 雑貨屋と教師

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 翌朝、良い夢を見れたなと思いながら、清々しい気分とともに軽やかに体を起こすとソフィアがじっとこちらを見ていたので尋ねた。

「朝からそんなジト目でどうしたんだ? 寝ていたから部屋に運んだんだが、メイドと一緒だったので部屋を間違えてはないと思うんだが?」

「あのね、ライリー。私の見間違いじゃなければエミリアと抱き合っていたように見えたんだけど、どういうこと?」

「ん? そういう夢は見たが……ソフィアも同じ夢でも見たんじゃないのか? あのメイド……エミリアか。今、初めて名前を知ったが、彼女は部屋にいても気配が全く分からないしな。本当に見たのか?」

「怪しいなあ。そもそも私が、ライリーとエミリアが話しているところを見たのは昨日の夜が初めてなんだけど」

「ああ……やっぱり寝たフリだったか」
「運んでいた時に私の耳元ではあはあ言っていたよね。なんで?」

「そりゃあの長い廊下をずっと運んでたら息もあがるってもんだ」
「……エミリアと過ごせるからじゃなくて?」

「いや、ソフィアに手を出してしまいそうで抑えるのに必死だったのもあったな。寝顔も本当に天使のようだったな」

「そ、そうなんだ。じゃあ、今日は朝食の後に仕入れ交渉をしてもらう店に行くよ」

 赤面してはにかんだ顔をしたソフィアと朝食をとった後、支度を済ませて店に向かった。店に着くと見た感じはおしゃれで大きい店舗で客の入りもそれなりにあった。店主が出てきて挨拶をした。

「ソフィアちゃん、今日は仕入れ交渉を担当してくれるって人を連れて来たんだって?」
「うん。紹介するね。ライリーだよ」

 大柄な女性店主に紹介されたのでライリーは自己紹介をした。

「はじめまして。転移してきたライリーだ。魔族相手の交渉をしてほしいと頼まれたのでやってきたんだ。よろしく」
「よろしくね。とりあえずは店の商品を見て回ってくれないかい?」

 そう言われたので店舗内の商品を見て回った。こういうファンタジー世界の店は武器屋とか鍛冶屋とか、薬屋とかに細かく分かれているイメージがあったが、この店は一通り揃った店で、武器、薬草、生活用品に食料と何でも揃っている店だ。

 と言っても、専門性の高い店では無いようだ。品ぞろえについてライリーは店主に尋ねた。

「どうやら広く浅くという感じの品ぞろえだと思うんだが、それで合ってるか? この世界の他の店とか見た事ないからよくわからないんだ」

「ああ。その通り。この町から王都まではそこまで距離があるわけじゃないからあまり需要の無い商品は置いてないんだよ。品質と性能の高い武器とかは王都の武器屋とか鍛冶屋の方がいいし、この町はそこまで良い武器を揃えてないと危ない事はない町だからね。ウチの主な売上は食料品だよ。
 でも、時々は魔族の行商がやってくるんだけど、その時に持ってきた商品の買取をするんだ。その時にウチで買い取って王都の店に卸す事があるからその交渉を一緒にやってほしいってわけだ」

「なるほどなあ。その交渉をする時に偽物をつかまされることがあるってわけか?」

「偽物ってか、品質が極端に悪い商品がある時があるんだよ。検査も大変だってのもあるけど、品質が悪いのを混ぜてくるのもいるし。
 行商の魔族も知らないうちに粗悪品をつかまされてたって事もあるからその辺りの嘘を言っているかどうかも見抜かないといけないし、まあ、交渉は大変だってことだよ」

「わかった。その時が来たら店に来よう。連絡は魔法でするって事でいいんだよな?」
「魔法でもいいし、この携帯端末でもいい。一つ渡しておくから好きに使いな」

「ありがとう」

 そう言うと店主は店の奥に行った。接客の従業員も何人かいるので大丈夫そうだが、この世界でも仕入れの時にこんな交渉をしないといけないとは何とも言えない。
 それこそ、この店の魔道具で嘘か本当かを見極めたら良さそうだが、嘘というのはつかなくても話術で誘導すれば成立してしまう事もある。

 善人が多く住むこの国では悪意に警戒するというのは難しい事なのかもしれない。そんなことを考えていると男性客がやってきた。店員が挨拶すると何か授業で使えるものはないかと探しに来たという。

 どうやら教師のようだ。俺の姿が珍しいようで気が付くとすぐ近づいて来た。

「この辺りでは見ない顔だな。俺は教師をしているルークっていうんだよろしくな」
「よろしく。俺はライリーというんだ。この店では仕入れの交渉を頼まれたんだ」

「へえ、じゃあ、授業で使えるようなもので欲しいものがあったら仕入れてくれるのか?」
「仕入れられるのならリストに入れておくがどうする?」

「じゃあ、授業の時に生徒が集中しているかどうかが分かる魔道具があればいいと思うんだが、仕入れられそうなら仕入れておいてくれないか?」

「わかった。リストに入れておく。それにしても教師か。どんな生徒がいるんだ?」

「俺が担当しているのはみんなやる気はあるが、いつも何かのご褒美がないかって言う子が多いぞ。言いはするが何を用意したらいいのかわらかんし、何が欲しいのか聞いても教えてくれねんだよな」

「それは女生徒じゃないのか?」

「よくわかったな。その通りだ」

「それは付き合ってほしいという事じゃないのか? ルークは見た目もイケメンだし、何というか、年下にモテそうな感じがする」

「そうか。でも卒業しないと付き合えないな」
「付き合ったことないのか?教師の仕事は何年かしているんだろう?」

「してるんだが、言われてみれば卒業後に再開したっていう子はほとんどいないぞ」
「そうなのか。みんな王都にでも行くのか?」

「卒業後は王都に一度は行く子が多いな。王都で色々と経験してからこの町に帰ってくる子もいればずっと向こうにいる子もいるし」

「う~ん。となると、からかわれているのもあるんだろうな。でも若い子といつも話せて教師って良いなって思う」

「そうか? なんか、違う世界から来たみたいな事言ってんな? 過去からタイムスリップしてきたみたいな感じもするな。
 年の差があったら話さないなんてところがあるのか? 魔族領ではそういう事はよくあるって聞いたことがあるけどな」

「そういや言っていなかったな。俺はソフィアの家に転移した異世界からの転移者なんだ」

「なるほどな。この世界だと年の差があってもみんな普通に話すし、友達だったりするし、そういうカップルや夫婦だっているぞ」

「まあ、俺のいた国がそうじゃなかったってだけなんだけどな。向こうでもそういう国はいくらでもあるし、若い時に年寄りと結婚して、相手がいなくなったら自分が年をとっているけど若い子と結婚してって、バランスをとっている国もあったし」

「へえ、こっちだとそういう結婚は普通の事だったりするからやっぱり違うんだな」

 そう話していると仕事に戻るというルークは店を出て行った。後を付ける少女が見えたと思ったが気のせいだったのだろうか?
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