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1.三裏鏡亱はミュラー
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1.三裏鏡亱はミュラー
辛い。
痔の所為でアナニー出来ないのが、何よりも辛い。
15の夜から23歳の今まで、可能な時は毎日、最低でも毎週は欠かさずアナニーを堪能してきた僕は、それまで性病にも痔にも下痢にもなった事が無いのが自慢だった。
プロ意識とでも言おうか、アナニーに並々ならぬ拘りと誇りがあるのだ。
その僕が、尻が切れてアナニーを楽しめないなどあって良いのか。いや、良くない。
故に、僕、三裏鏡亱はついにR 18-VRMMO-RPGの世界にダイブすると決心した。
世界の進歩は目覚ましい。多人数参加型のオンラインゲームは没入型へと進化を遂げ、エロコンテンツもVRの街で隆盛を極めている。
そこへ来て、丁度リリースされる『ネオ・ヴァラニア』はまさに天の恵み。
『ネオ・ヴァラニア』はゲーム内で「新しい理想郷」という意味で、「性とRPGを一度に楽しめる世界」がコンセプトだ。
このゲームの欠点は、ゼロから環境を整えるにはハード機材の値段が高いことと、現在はプレイ出来る人数に制限があり、抽選となること。
だが、僕は痔になる前にベータ版に参加しており、ベータプレイヤーの特典でリリース当日からゲームをプレイ出来る権利を有しているし、機材も揃っている。
そう、デメリットは何も無い。
運営は他にもVRMMORPGの実績があり信頼できるので、諸手を挙げて歓迎する次第だ。
早速、僕は専用の椅子に寝転がった。
ゲームプレイに必要な機材はゲーミングチェア型、ヘルメット型、ヘッドセット型など様々なタイプがあるが、ゲーミングチェア型が一番高価な分、性能が良いと言われている。
ゲーム内は勿論、ゲーム中は無防備になる生身肉体のケアも万全に行ってくれるのだ。
ポジショニング、オッケー。
手足を所定の場所に置いて目を閉じると、機材から各端子が伸び出てきて体に触れる。
そうして僕は『ネオ・ヴァラニア』の世界へと旅立った。
――『ネオ・ヴァラニア』へようこそ。
体が宙に浮いているかのような視界。
ゲームをプレイする時の一人称視点ではなく、世界を神の視点で見るかのようなこの現象は、いわゆるゲームのオープニングムービーだ。
ベータ版には無かった美麗な始まり。ムービーをスキップせずに、僕は『ネオ・ヴァラニア』の世界に没入した。
快晴の青空に緑豊かな草原、妖精が花と戯れる姿。
透き通った水が流れる美しい都、海辺で腰を落ち着けている人魚。
所変わって、火山や雪原といった厳しい土地でモンスターと剣や魔法で戦う人々。
皆、生き生きと輝いていた。
世界も人々も、活気に溢れて美しい。酒場で傾け合うグラスの煌めきは、心身の豊かさの象徴。
そして、日暮れから夜へと変わる幻想的な景色を背に、美しいNPCがプレイヤーへ向けて蠱惑的に手を差し伸べる。
――キャラクターを作成してください。
オープニングムービーだけでも下半身が滾る。
早くあの世界に自分も行きたいと思わせるようなハイクオリティだった。
彼ら、彼女らに負けないようなキャラクターを作成せねば。
僕は逸る気持ちを抑え、キャラクタークリエイトに挑んだ。
キャラクターは年齢、性別、外見問わず、自由に作成する事が出来る。
自由度が高すぎて一から作成するのは困難な為、リアルの肉体を参照するリアルスキャンを活用したり、プリセットから作成すると失敗は少ない。
まぁ、僕はキャラクリが大好きだし、一からでも作成する自信はある。別のゲームで「キャラクリ職人」と呼ばれたのは伊達ではないのだ。
けれど、今回はアナニーが目的。
細部まで作り込むというよりは、操作性や、いかに自分のやる気が出る見た目にするかが重要である。「リアルに似たアバターの方が馴染みやすく、違和感が少ない」というVRMMOの通説に則るならば、今回はリアルとかけ離れ過ぎない程度のキャラメイクにすべきだろう。
性別は男、身長170センチ、体重59キロ。体は細マッチョとまではいかないがバランス良く引き締まった造形美。
リアルより見栄えする体なのはご愛嬌だ。
これなら自分のテンションも上がるし、完璧なコンディションで事に励めること間違いなし。
体の設定を進める流れで、このゲームの醍醐味とも言えるペニスとアナルのデザインも決める。
最初はこんな所までキャラクリ出来る事に驚いたが、今ではこれこそがR18ゲームの醍醐味だとすら思う。
折角だから、色も形もキレイにしよう。
ペニスは大き過ぎず小さ過ぎず、長過ぎず短過ぎず。
丁寧に作り込んでいくと、理想的なディルドのMサイズみたいになった。
アナルは比喩で蕾と称されるが、まさにそれ。
黒ずみも無く、無駄毛も無く、花開く前の繊細でいじらしくも美しい色形。
生身ではお目にかかれない、良い出来になったと思う。
ちなみに、アナルやヴァギナの中はデザイン出来ない。
そういった性感に直結する部分は、レベルを上げて成長するシステムなのだ。
例えば、アナニーをすると経験値が貯まり、[アナル感度]レベルが上がる。
レベルが上がると[アナル絶頂]というパッシブスキルを取得でき、アナルでイキやすくなったり快楽を得やすいという効果が付く。
一般のゲームと同じように、レベルを上げてスキルやステータスを獲得していくのだ。
このゲームでは性的スキルや性的ステータスと換言されるが、大体は同じである。
なので、「締まり具合」といったキャラクターステータスに関わるアナルの中などは、キャラクター作成時点では編集出来ない。
さて、あとは顔の造形をどうするか。
身バレしない程度には弄っておきたいからなぁ。
髪色は、現実では髪の痛みが気になり過ぎて泣く泣く諦めたプラチナホワイトに。
長さは、雰囲気を変えるならハイパーロングでも良い。けれど、長すぎるとアナニーの邪魔なので、無難にマッシュミディアムで。
若手俳優やモデルのようなスタイリッシュさをイメージしながら、顔のパーツを配置していく。
「これは中々……」
自分でも思わず溜息が出るくらいの美青年が出来上がった。
試しに笑顔モーションをさせた所、細めの眉尻が下がり、形の良いアーモンドアイの中に美しいブルーサファイアの瞳が煌めいている。
色付きの良い唇から覗く白い歯。
禁断の果実のような赤い舌がなんとも言えない色気を放っている。
服装をグレーのスーツにした効果もあるだろう。
薄らとストライプの入ったジャケット、ベスト、パンツの3点セットをお洒落に着こなす彼は、主要NPCにも負けない高スペックな容姿だ。
大変満足である。
さて、名前はどうするか。
『ネオ・ヴァラニア』はキャラクター名に特殊読みを適用出来ないので、いつも使用している「@723」という記号数字が使えない。@をaの音に出来ないのだ。
一考したが良い案は浮かばなかったので、ベータ版で使用した「ミュラー」を使い回すことにした。本名の「三裏」に音が近いというだけの安直な名前だ。名前も「鏡亱」だし、鏡つながりということで。
親しみは持てるし、もうこれで良いや。
名前は、「ミュラー」と。
よし。『ネオ・ヴァラニア』に職業選択は無いので、これでキャラクター作成は完了だ。
すると、視界が切り替わった。
僕の視界は、先程作成したキャラの一人称視点。
何も無い空間で、僕の前にはNPCが一人、立っていた。
「はじめまして、ミュラー様。ここはログイン・ログアウトの間、略して『ログ間』です。私は貴方様の案内を担当させていただきます、執事のフェニエ・ログと申します」
そう言って、執事フェニエは45度の御辞儀をした。
漆黒の燕尾服を身に纏い、長い白髪を一つに束ねた姿はまさに絵に描いたような執事。
だが、その肌は仄暗い褐色で、耳は長く尖っており、赤い瞳が印象的。
彼は『ダークエルフ』だと教えてくれた。
人間なら20代後半に見えるが、ダークエルフといえば長寿。見た目通りの年齢ではないのだろう。
「はじめまして、よろしく」
白髪に親近感を覚えた。
僕の髪は影の部分が青みがかった灰色だが、フェニエと名乗った彼は髪の暗所がクリーム色になっている。
「どこ住み? 何歳? いつ会える?」
「ログ間住み、700歳くらい、いつでも会えますよ。ログインとログアウトは、戦闘中と性行為中以外ならいつでも出来ますので」
「おおっ、ノリ良いね」
「お褒めに預かり光栄です。プレイヤーの皆様に『ネオ・ヴァラニア』の世界を末永く楽しんでいただけるよう、ログ間の担当者は親身にご対応いたします」
他社のゲームでは未だに定型分しか話せないNPCが存在する一方で、『ネオ・ヴァラニア』のNPCは生身の人間と遜色ないコミュニケーションがとれると評判だ。
おかげで街にはNPCが従業員をしている風俗店もあり、NPCに相手をしてもらう事も可能。
それを目的に『ネオ・ヴァラニア』をプレイする人も珍しくなく、どちらかと言うと、痔の苦しみから逃れる為に『ネオ・ヴァラニア』でアナニーをしようと意気込んでいる僕の方が少数派だろう。
「お気に召さない場合は、担当を変更する事も出来ます。ログ間の担当を変更しますか?」
「いや、変更しなくていいよ。これも何かの縁だろう、僕の担当はフェニエにお願いするよ」
「畏まりました」
執事のフェニエは再び綺麗に御辞儀をした。
寸分違わぬ礼だが、心なし嬉しそうに見えるのだから『ネオ・ヴァラニア』のNPCは本当に凄い。
次世代汎用型AI技術の成果だと言われているが、巷の噂では、AI技術ではなく外部からもたらされた別の技術だとか、政府主導による電子世界移住の下準備だとか、あることないこと囁かれている。
これに関して、『ネオ・ヴァラニア』の運営は一切コメントしていない。
しかし、『ネオ・ヴァラニア』の中でNPC達は「ニアマン」と称されており、僕達が「日本人」という単語を使うのと同じ感覚で、彼らは「ニアマン」という単語を使う。
僕達PCがニアマンに対して良き隣人として接する。運営はプレイヤーにそんなロールプレイを期待しているのではないだろうか。
などと、妄想したところで真偽は不明だが、丁寧な物腰の執事フェニエを見ていると、掛け値なしに仲良く出来そうだと思った。
「それでは街をご案内致します」
「よろしくお願いしますー!」
街を案内。
謂わばチュートリアルだ。
「ベータ版からの変更点は必ず教えてほしいな」
「承知いたしました。ベータ版では常に非表示になっていたネームタグですが、任意で表示が可能になりました。メニューウィンドウから設定の変更ができます。設定は『常に表示』、『常に非表示』、『指定のアクション時に表示』から選択いただけます」
「なるほど。ベータ版では僕も結構な数の報告を上げたけど、他プレイヤーもたくさん要望を出したんだな。運営は細かい要望まで拾って改良したと見える」
執事フェニエは有用な話から下らない雑談まで、快く僕に付き合ってくれた。
彼は聞けば何でも教えてくれるみたいだ。
チュートリアルのスキップも出来るのだろうが、案内してくれるというのなら是非聞いておこうと、話に花を咲かせる事にした。
ログ間を出ると、街の広場に出た。
オープニングムービーにも映っていた大通りは、人が多く、活気に溢れている。
赤煉瓦敷きの広場の中央には大きな結晶の乗った噴水があり、太陽光を反射してキラキラと輝いて綺麗だ。
「ここは『風と花の街 フロランティア』。広場の中央にある結晶はこの街のポータルです。手を翳すとメニューが表示されますので、転移地点登録が出来たことを確認してください」
言われた通りにすると、メニューのホロウィンドウが表示され、『ポータル一覧』に『風と花の街フロランティア:中央広場』が追加されていた。
「ポータル結晶を見つけたら、このように登録なさるのが良いでしょう。一度登録したポータルへは、戦闘中と性行為中以外であれば、いつでもメニューから転移できます」
これはベータ版から変更ないようだ。
ポータルは他にも街中に数箇所あり、広い街でも移動に困らないようになっている。
今やフルオープンワールドのゲームは当たり前だが、その中でも『ネオ・ヴァラニア』は群を抜いて広大な世界となっているから、移動で時間を取られずに済むのはありがたい。
執事フェニエは丁寧に案内をしてくれた。
風と花の街フロランティアは、俯瞰してみると街が六角形になっており、中央広場から其々の頂点へ向かって6つの大通りが伸びている。
街は6つの大通りを基準に区域分けされており、北は行政地区。
行政地区の両隣にあたる北東と北西は、居住地区。
南東と南西は、商工業地区。
そして、南は、官能地区だ。
上空から見ると、6つの区域が花弁に見えるので、街は「花の形をしている」ともいえる。
『風と花の街 フロランティア』は街中にも花壇が多くあるが、街のデザイン的にも、名に偽りのない作りになっているのだ。
「南東の商工業地区には、プレイヤーの方々のお店が増えております。南西は大手老舗の店舗が大半を占めておりますので、ミュラー様も出店される際は北東から始めるのがよろしいかと」
「南東は生産職の群生地になりつつある、と。気が向いたら露店を出すかもしれないけど、今はまだいいかなぁ」
街の施設や設備はベータ版からあまり変わっていないが、プレイヤーが増えた影響はあるようだ。
辛い。
痔の所為でアナニー出来ないのが、何よりも辛い。
15の夜から23歳の今まで、可能な時は毎日、最低でも毎週は欠かさずアナニーを堪能してきた僕は、それまで性病にも痔にも下痢にもなった事が無いのが自慢だった。
プロ意識とでも言おうか、アナニーに並々ならぬ拘りと誇りがあるのだ。
その僕が、尻が切れてアナニーを楽しめないなどあって良いのか。いや、良くない。
故に、僕、三裏鏡亱はついにR 18-VRMMO-RPGの世界にダイブすると決心した。
世界の進歩は目覚ましい。多人数参加型のオンラインゲームは没入型へと進化を遂げ、エロコンテンツもVRの街で隆盛を極めている。
そこへ来て、丁度リリースされる『ネオ・ヴァラニア』はまさに天の恵み。
『ネオ・ヴァラニア』はゲーム内で「新しい理想郷」という意味で、「性とRPGを一度に楽しめる世界」がコンセプトだ。
このゲームの欠点は、ゼロから環境を整えるにはハード機材の値段が高いことと、現在はプレイ出来る人数に制限があり、抽選となること。
だが、僕は痔になる前にベータ版に参加しており、ベータプレイヤーの特典でリリース当日からゲームをプレイ出来る権利を有しているし、機材も揃っている。
そう、デメリットは何も無い。
運営は他にもVRMMORPGの実績があり信頼できるので、諸手を挙げて歓迎する次第だ。
早速、僕は専用の椅子に寝転がった。
ゲームプレイに必要な機材はゲーミングチェア型、ヘルメット型、ヘッドセット型など様々なタイプがあるが、ゲーミングチェア型が一番高価な分、性能が良いと言われている。
ゲーム内は勿論、ゲーム中は無防備になる生身肉体のケアも万全に行ってくれるのだ。
ポジショニング、オッケー。
手足を所定の場所に置いて目を閉じると、機材から各端子が伸び出てきて体に触れる。
そうして僕は『ネオ・ヴァラニア』の世界へと旅立った。
――『ネオ・ヴァラニア』へようこそ。
体が宙に浮いているかのような視界。
ゲームをプレイする時の一人称視点ではなく、世界を神の視点で見るかのようなこの現象は、いわゆるゲームのオープニングムービーだ。
ベータ版には無かった美麗な始まり。ムービーをスキップせずに、僕は『ネオ・ヴァラニア』の世界に没入した。
快晴の青空に緑豊かな草原、妖精が花と戯れる姿。
透き通った水が流れる美しい都、海辺で腰を落ち着けている人魚。
所変わって、火山や雪原といった厳しい土地でモンスターと剣や魔法で戦う人々。
皆、生き生きと輝いていた。
世界も人々も、活気に溢れて美しい。酒場で傾け合うグラスの煌めきは、心身の豊かさの象徴。
そして、日暮れから夜へと変わる幻想的な景色を背に、美しいNPCがプレイヤーへ向けて蠱惑的に手を差し伸べる。
――キャラクターを作成してください。
オープニングムービーだけでも下半身が滾る。
早くあの世界に自分も行きたいと思わせるようなハイクオリティだった。
彼ら、彼女らに負けないようなキャラクターを作成せねば。
僕は逸る気持ちを抑え、キャラクタークリエイトに挑んだ。
キャラクターは年齢、性別、外見問わず、自由に作成する事が出来る。
自由度が高すぎて一から作成するのは困難な為、リアルの肉体を参照するリアルスキャンを活用したり、プリセットから作成すると失敗は少ない。
まぁ、僕はキャラクリが大好きだし、一からでも作成する自信はある。別のゲームで「キャラクリ職人」と呼ばれたのは伊達ではないのだ。
けれど、今回はアナニーが目的。
細部まで作り込むというよりは、操作性や、いかに自分のやる気が出る見た目にするかが重要である。「リアルに似たアバターの方が馴染みやすく、違和感が少ない」というVRMMOの通説に則るならば、今回はリアルとかけ離れ過ぎない程度のキャラメイクにすべきだろう。
性別は男、身長170センチ、体重59キロ。体は細マッチョとまではいかないがバランス良く引き締まった造形美。
リアルより見栄えする体なのはご愛嬌だ。
これなら自分のテンションも上がるし、完璧なコンディションで事に励めること間違いなし。
体の設定を進める流れで、このゲームの醍醐味とも言えるペニスとアナルのデザインも決める。
最初はこんな所までキャラクリ出来る事に驚いたが、今ではこれこそがR18ゲームの醍醐味だとすら思う。
折角だから、色も形もキレイにしよう。
ペニスは大き過ぎず小さ過ぎず、長過ぎず短過ぎず。
丁寧に作り込んでいくと、理想的なディルドのMサイズみたいになった。
アナルは比喩で蕾と称されるが、まさにそれ。
黒ずみも無く、無駄毛も無く、花開く前の繊細でいじらしくも美しい色形。
生身ではお目にかかれない、良い出来になったと思う。
ちなみに、アナルやヴァギナの中はデザイン出来ない。
そういった性感に直結する部分は、レベルを上げて成長するシステムなのだ。
例えば、アナニーをすると経験値が貯まり、[アナル感度]レベルが上がる。
レベルが上がると[アナル絶頂]というパッシブスキルを取得でき、アナルでイキやすくなったり快楽を得やすいという効果が付く。
一般のゲームと同じように、レベルを上げてスキルやステータスを獲得していくのだ。
このゲームでは性的スキルや性的ステータスと換言されるが、大体は同じである。
なので、「締まり具合」といったキャラクターステータスに関わるアナルの中などは、キャラクター作成時点では編集出来ない。
さて、あとは顔の造形をどうするか。
身バレしない程度には弄っておきたいからなぁ。
髪色は、現実では髪の痛みが気になり過ぎて泣く泣く諦めたプラチナホワイトに。
長さは、雰囲気を変えるならハイパーロングでも良い。けれど、長すぎるとアナニーの邪魔なので、無難にマッシュミディアムで。
若手俳優やモデルのようなスタイリッシュさをイメージしながら、顔のパーツを配置していく。
「これは中々……」
自分でも思わず溜息が出るくらいの美青年が出来上がった。
試しに笑顔モーションをさせた所、細めの眉尻が下がり、形の良いアーモンドアイの中に美しいブルーサファイアの瞳が煌めいている。
色付きの良い唇から覗く白い歯。
禁断の果実のような赤い舌がなんとも言えない色気を放っている。
服装をグレーのスーツにした効果もあるだろう。
薄らとストライプの入ったジャケット、ベスト、パンツの3点セットをお洒落に着こなす彼は、主要NPCにも負けない高スペックな容姿だ。
大変満足である。
さて、名前はどうするか。
『ネオ・ヴァラニア』はキャラクター名に特殊読みを適用出来ないので、いつも使用している「@723」という記号数字が使えない。@をaの音に出来ないのだ。
一考したが良い案は浮かばなかったので、ベータ版で使用した「ミュラー」を使い回すことにした。本名の「三裏」に音が近いというだけの安直な名前だ。名前も「鏡亱」だし、鏡つながりということで。
親しみは持てるし、もうこれで良いや。
名前は、「ミュラー」と。
よし。『ネオ・ヴァラニア』に職業選択は無いので、これでキャラクター作成は完了だ。
すると、視界が切り替わった。
僕の視界は、先程作成したキャラの一人称視点。
何も無い空間で、僕の前にはNPCが一人、立っていた。
「はじめまして、ミュラー様。ここはログイン・ログアウトの間、略して『ログ間』です。私は貴方様の案内を担当させていただきます、執事のフェニエ・ログと申します」
そう言って、執事フェニエは45度の御辞儀をした。
漆黒の燕尾服を身に纏い、長い白髪を一つに束ねた姿はまさに絵に描いたような執事。
だが、その肌は仄暗い褐色で、耳は長く尖っており、赤い瞳が印象的。
彼は『ダークエルフ』だと教えてくれた。
人間なら20代後半に見えるが、ダークエルフといえば長寿。見た目通りの年齢ではないのだろう。
「はじめまして、よろしく」
白髪に親近感を覚えた。
僕の髪は影の部分が青みがかった灰色だが、フェニエと名乗った彼は髪の暗所がクリーム色になっている。
「どこ住み? 何歳? いつ会える?」
「ログ間住み、700歳くらい、いつでも会えますよ。ログインとログアウトは、戦闘中と性行為中以外ならいつでも出来ますので」
「おおっ、ノリ良いね」
「お褒めに預かり光栄です。プレイヤーの皆様に『ネオ・ヴァラニア』の世界を末永く楽しんでいただけるよう、ログ間の担当者は親身にご対応いたします」
他社のゲームでは未だに定型分しか話せないNPCが存在する一方で、『ネオ・ヴァラニア』のNPCは生身の人間と遜色ないコミュニケーションがとれると評判だ。
おかげで街にはNPCが従業員をしている風俗店もあり、NPCに相手をしてもらう事も可能。
それを目的に『ネオ・ヴァラニア』をプレイする人も珍しくなく、どちらかと言うと、痔の苦しみから逃れる為に『ネオ・ヴァラニア』でアナニーをしようと意気込んでいる僕の方が少数派だろう。
「お気に召さない場合は、担当を変更する事も出来ます。ログ間の担当を変更しますか?」
「いや、変更しなくていいよ。これも何かの縁だろう、僕の担当はフェニエにお願いするよ」
「畏まりました」
執事のフェニエは再び綺麗に御辞儀をした。
寸分違わぬ礼だが、心なし嬉しそうに見えるのだから『ネオ・ヴァラニア』のNPCは本当に凄い。
次世代汎用型AI技術の成果だと言われているが、巷の噂では、AI技術ではなく外部からもたらされた別の技術だとか、政府主導による電子世界移住の下準備だとか、あることないこと囁かれている。
これに関して、『ネオ・ヴァラニア』の運営は一切コメントしていない。
しかし、『ネオ・ヴァラニア』の中でNPC達は「ニアマン」と称されており、僕達が「日本人」という単語を使うのと同じ感覚で、彼らは「ニアマン」という単語を使う。
僕達PCがニアマンに対して良き隣人として接する。運営はプレイヤーにそんなロールプレイを期待しているのではないだろうか。
などと、妄想したところで真偽は不明だが、丁寧な物腰の執事フェニエを見ていると、掛け値なしに仲良く出来そうだと思った。
「それでは街をご案内致します」
「よろしくお願いしますー!」
街を案内。
謂わばチュートリアルだ。
「ベータ版からの変更点は必ず教えてほしいな」
「承知いたしました。ベータ版では常に非表示になっていたネームタグですが、任意で表示が可能になりました。メニューウィンドウから設定の変更ができます。設定は『常に表示』、『常に非表示』、『指定のアクション時に表示』から選択いただけます」
「なるほど。ベータ版では僕も結構な数の報告を上げたけど、他プレイヤーもたくさん要望を出したんだな。運営は細かい要望まで拾って改良したと見える」
執事フェニエは有用な話から下らない雑談まで、快く僕に付き合ってくれた。
彼は聞けば何でも教えてくれるみたいだ。
チュートリアルのスキップも出来るのだろうが、案内してくれるというのなら是非聞いておこうと、話に花を咲かせる事にした。
ログ間を出ると、街の広場に出た。
オープニングムービーにも映っていた大通りは、人が多く、活気に溢れている。
赤煉瓦敷きの広場の中央には大きな結晶の乗った噴水があり、太陽光を反射してキラキラと輝いて綺麗だ。
「ここは『風と花の街 フロランティア』。広場の中央にある結晶はこの街のポータルです。手を翳すとメニューが表示されますので、転移地点登録が出来たことを確認してください」
言われた通りにすると、メニューのホロウィンドウが表示され、『ポータル一覧』に『風と花の街フロランティア:中央広場』が追加されていた。
「ポータル結晶を見つけたら、このように登録なさるのが良いでしょう。一度登録したポータルへは、戦闘中と性行為中以外であれば、いつでもメニューから転移できます」
これはベータ版から変更ないようだ。
ポータルは他にも街中に数箇所あり、広い街でも移動に困らないようになっている。
今やフルオープンワールドのゲームは当たり前だが、その中でも『ネオ・ヴァラニア』は群を抜いて広大な世界となっているから、移動で時間を取られずに済むのはありがたい。
執事フェニエは丁寧に案内をしてくれた。
風と花の街フロランティアは、俯瞰してみると街が六角形になっており、中央広場から其々の頂点へ向かって6つの大通りが伸びている。
街は6つの大通りを基準に区域分けされており、北は行政地区。
行政地区の両隣にあたる北東と北西は、居住地区。
南東と南西は、商工業地区。
そして、南は、官能地区だ。
上空から見ると、6つの区域が花弁に見えるので、街は「花の形をしている」ともいえる。
『風と花の街 フロランティア』は街中にも花壇が多くあるが、街のデザイン的にも、名に偽りのない作りになっているのだ。
「南東の商工業地区には、プレイヤーの方々のお店が増えております。南西は大手老舗の店舗が大半を占めておりますので、ミュラー様も出店される際は北東から始めるのがよろしいかと」
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