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6.ミュラーもナンパする
しおりを挟む『ネオ・ヴァラニア』生活5日目の事だった。
ミュラーという名前でダイブしている僕は、『ネオ・ヴァラニア』がMMOである事を忘れるくらい、アナニーとRPGしかしていない。
そんな僕が、唯一の顔見知りPCであるナンパ男(PLは腐女子)を街中で発見したのである。
相変わらず、めげずにナンパしているようだ。
相手は20代半ばくらいの男体で、高身長。
ナンパ男のストライクゾーンから外れているとは思ったが、ナンパしたくなるのが分かるくらいのイケメンさだった。
『ネオ・ヴァラニア』で容姿の整っていないキャラを探す方が大変かもしれないが、彼には他のキャラと違って、どことなく現実味がある。
VRにこそよくある金色と紫色のオッドアイだったが、それが却って取ってつけたように思えるくらい、人間味があるというか、肉感的というか。
そしてそれは、芋蔓式に、濃密なベッドの上を想像させる効果があった。
おそらく本人はそれに気付いていない。
アイコンは「フリーセックス」になっているが、立ち振る舞いが官能区域にいるPC達とは全く違う。アイコンを変更し忘れている初心者か、既に相手がいる待ち合わせだろう。
ナンパ男は、以前と違って紳士的にナンパしているが、押しの強さは筋金入りだ。
見かねた僕は2人の間に割って入り、ナンパされていたイケメン、ジルと、流れで初心者向けフィールドに行く事になった。
僕はチュートリアル未経験者と縁があるのかもしれないなぁ。
マ・ナイタ平野は、風と花の街フロランティアの周囲に広がる平野であり、PCが初めて訪れるフィールドは必ずここになる。
街に近い位置では農作物が育てられているが、虫型や害獣型のモンスターが出現する。
街から離れるにつれてモンスターのレベルは上がり、サイズも大きくなるが、初心者向けには変わりない。モンスターが群れで出現する事は無く、たまたま個体が鉢合わせても2、3体。
僕は引率の先生みたいな気持ちで、ジルの戦闘を見守った。
「良いねジル、凄く筋が良いよ」
「ありがとう」
システムによって多少は動作がサポートされるとはいえ、ジルの動きは無駄が無かった。
上手い人の戦闘は、敵が弱く見える。安定して敵の攻撃を避け、敵の隙を突いて無理なく攻撃出来るからだが、ジルの戦闘は正しくそれ。
マ・ナイタ平野のモンスターは強くはないが、ジルのキャラステータスからすれば適正レベル。
それでも難なく戦闘をこなせるのは、やはりジルの腕が良いからだろう。
「上手いね、何かやってた?」
「別のMMORPGは経験があるので、同じ要領で何とかやれてますね」
「またまた御謙遜を。余裕綽々じゃないですかー」
「それを言うなら、俺よりもミュラーの方が強いでしょう? レベル差を差し引いても、火力が桁違いだ。『ネオ・ヴァラニア』は、魔法職の方が優遇されてるんですか?」
「そういうのは聞かないかな。どの武器も、どのクラスも、格差は無いと思う。けど、僕の火力が高いのは……」
R18部分に興味が無さそうなジルに説明するのは少し憚られる。
だが、チュートリアルを受けたら分かる事だし、『ネオ・ヴァラニア』を遊ぶなら避けては通れない道だろう。
「『ネオ・ヴァラニア』は、R18をしてると、RPGが強くなるんだよね」
ジルがキョトンとした顔をする。
そりゃあ、そうだよなぁ。
僕も『ネオ・ヴァラニア』以外では見たことがない仕様だし。
「ステータス画面を見れる? 『ネオ・ヴァラニア』には、RPGで使う『一般ステータス』と、R18で使う『性ステータス』がある。
けど、これらのステータスは、実は独立しておらず、モンスターに攻撃した時のダメージ計算に、性ステータスの値も使われるわけ」
僕はチュートリアルで説明される内容をジルに伝えた。
アナルは「A」、バストは「B」、ペニスは「P」、タマは「T」と略して表記される事。
Aは魔法攻撃、Bは防御、Pは物理攻撃、Tは魔法防御と相関がある事。
射精や絶頂の回数によってHPの上限値に補正がかかるなど、他のステータスも何かしらの効果がある。アナルを開発すれば魔法攻撃力は高くなるし、魔法攻撃力を強化するとアナルも気持ち良くなるという事など。
説明するにつれて、ジルは「え」とか「あ」とか、理解と動揺を見せた。
心なし顔が赤い。
微笑ましい反応だなぁ。
クール系の高身長イケメンがこの反応をするのは、狡いのでは?
僕なんか、リアルで童貞処女だけど耳年増だし、今更猥談に照れる事なんて無いんだが?
「僕はアナニストだから魔法攻撃が強いんだよね。アナニー目的で『ネオ・ヴァラニア』に居るの」
「あ、アナニー……」
「そう、アナニー。見る?」
「みっ?!」
「ウソウソ、冗談だよ」
ジルが剣を鞘に収めていなかったら、手元が狂って殺傷事件になったかもしれない。
それくらい彼は動揺していた。
けれど、不思議と嫌そうでは無いんだよなぁ。
興味はあるけど、手が出ない。
そんな感じだろうか?
「そういう訳だから、ガチでRPGをやり込むならR18は必須だし、ジルみたいに性ステータスが初期値で狩りに行くと、効率も悪くなるんだよねぇ。……うーん、ちょっとくらいレベル上げとく?」
僕は試しにそう問いかけてみた。
「えっ?! えっと、どうやって……?」
「最初なら何をやっても上がるよ。オナニーでもセックスでも。良かったらフェラとかしようか?」
「え!? いや、お、俺は……」
ジルが感じているのは恐らく嫌悪ではない。
戸惑い、あるいは羞恥心。
これは、もしかしたらもしかするのではないだろうか?
ドキドキした。
どこからこの行動力が湧いてくるのか不思議だが、後先考えずに、自分の口から言葉が出てくるのだ。
ナンパ師の丹波さんもこんな感じだったのだろうか。
ナンパ。……そうか、僕は今、ジルをナンパしているのか。
「NPCのチュートリアルだと思ってくれて良いよ? エロしてる間はモンスターが寄ってこないから安心だし、どう?」
思い切って、僕はジルに近寄った。
視線は彼の顔に向けたまま、軽くジルの股を撫でる。
すると、そこは既に勃起していた。
「わぁお」
これは僕も予想外で、変に顔がにやける。
このクールなイケメンもそういう気になるのだと分かって嬉しかったし、なんだか楽しくなってきた。
ジルが慌てるたび、ジルが反応を示すたびに、未知の何かが僕を大胆にさせる。
「やる気満々だった?」
「違……っ!」
「僕じゃ、嫌?」
「ち、違うんです、そうじゃなくって……」
ジルは弱々しく僕の手を抑えた。
そんなふうにされたら、僕はよりジルの硬さを感じるんだが。
ジルは僕を興奮させたいのか?
「おっ、俺、童貞なんです。経験ないから、何も分からなくって……」
キュン。
いや、キュンって。
不覚にもときめいたわ。
その純情さは狡いだろ、○学生じゃないんだから。
○学生じゃないよな?
弟妹と一緒にダイブしたって言ってたから、ジルお兄ちゃんは絶対に19歳以上じゃん。
ハァ? 狡すぎか?
ジルが顔を真っ赤にして俯く。
何だこれ。何これ、なんて答えればいいんだ。
僕もリアル童貞だから安心して?
阿保か、安心出来んわ。
……この返答は重要だ、間違えるな。
絶対に間違えるなよ、僕。
「……大丈夫。何も分からないままで大丈夫だから、僕に任せて?」
僕に任せられるかなぁ?
僕は自分に不安しかなかったが、どうやらジルの信頼は多少得られたらしい。
僕の手を押さえていたジルの手の力が弱まった。
それに、「×」のアイコンが消えている。
性行為をしませんという意味の「×」アイコンを消したという事は、ジルが合意してくれたという事だ。
思わず鼻息が荒くなった。
これは、正念場だぞ。
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