ふたなり悪役令嬢と〇ルチートの騎士

柿崎まつる

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第二話 ヒーロー雌イキ※

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 ――どうしてこうなったんだ!?

 王太子の乳兄弟にして、護衛騎士のアロイス。

 彼の前世は何を隠そう、現代日本のサラリーマンだ。玉本誠一、享年三十歳。不運にも大型トラックにひかれ、同棲中の彼女に勧められるままハマっていた18禁乙女ゲーム『白豚ちゃんだってかわいいもん! ~ゆるいままで愛されたい~』の世界に転生してしまった。

 メインヒロインは、平民上がりのロッタ男爵令嬢・フィオナ。ちょいおデブだけど頑張り屋な彼女が貴族のための学園に入学し、テアヌス侯爵令嬢ルイーザ達に虐められながらも、多くのイケメンに溺愛されるストーリーだ。
 アロイスはその攻略キャラの一人で、誰とでも打ち解けられる明るい性格のモテ男だが、本命にはヤンデレ化するという困った性癖の持ち主だった。
 
 玉本誠一の最推しはフィオナではなく、ブレナン王太子の婚約者である悪役令嬢ルイーザだった。ちょいポチャのフィオナと対照的に、彼女はとにかく美しくあることにこだわっていた。悲壮なまでに。しかし、王太子妃毒殺未遂で国外追放された挙句盗賊に攫われ、最後は売春宿に売られてしまう。見事な悪役ざまぁである。
 
 現世ではルイーザはフィオナと熱い友情を築き、婚約破棄はされたもののどうやら国外追放は免れたようだ。なのに、この展開は何だろう? 本来の筋書きなら、アロイスはフィオナ愛しさにルイーザを断罪に追い込む天敵だ。なぜ、そんな自分を婿に選んだのか?
 
 アロイスが嬉しくなかったと言えば嘘になる。いいや、正直飛び上がるほど嬉しかった。しかしどんなに嬉しくとも、彼にはこの提案を受け入れられない深い事情があった。
 
 中庭のガゼボは満月の光と王宮からの灯りで、意外なほど明るい。
 アロイスは、月光を浴びたルイーザの美しい背中に嘆願した。
 
「どうかお考え直し下さい。ルイーザ様ともあろう方が、騎士階級の俺を婿に迎えては恥をかかれます」
「大衆の面前で婚約破棄されて、恥ならとっくにかきましたわ。なのに、アロイス卿はわたくしにこれ以上の苦行を強いるのかしら?」
「とんでもないありません。……テアヌス侯爵家の婿は、俺には荷が重すぎます」

 ルイーザの背中が急に悄然となり、寂しげな声が漏れる。
 
「……あなたも、まだフィオナが忘れられない?」
「それはありません」

 もちろんフィオナは今でも可愛いが、前世の記憶を取り戻すとほっとけない妹みたいな存在になってしまった。玉本誠一の三十年分の知識と経験が加算されたため、ものの感じ方も変わったのだ。しかし、ルイーザが最推しなのは変わらなかった。

「わたくしは、そんなに魅力のない女なのかしら?」
「とんでもないことです! 俺にとってルイーザ様は長年の……と、とにかくお考え直し下さい」
「……長年の、なんですの?」
「いいえっ、何でもないです」

 ――危ない。『長年の想い人』と口を滑らすところだった。
 
 動揺するアロイスを尻目に、ルイーザは埒が明かないとばかりにため息をつく。振り向いて放たれた言葉は、全く想像のつかないものだった。
 
「アロイス卿。今すぐズボンとパンツを下ろしなさい」

 ――はああああ!?
 
「いま、なんと言われました……?」
「二度言われないと分からないかしら? わたくしは『下半身すっぽんぽんになりなさい』と命じたのですわ。それとも、うちの侍女達に力ずくで脱がせましょうか?」

 異論は許さぬとばかりの強い口調。アロイスは三人のマッチョな侍女が呼べばすぐにも駆けつけられる場所に控えていることを思い出し、額に冷や汗が浮かんだ。彼は騎士だから、たとえ相手が屈強でも複数でも女性に手荒な真似はできない。

 ――尻の毛までむしり取られそうだ。
 
 背中がぞわぞわした。
 
「わかりました。自分で脱ぎます」

 真顔で潔く答えたものの、ベルトを外すのに手間取り、心変わりしてくれないものかとルイーザの方をチラチラうかがってしまった。しばらくたっても相手の意思が変わらないことを悟り、アロイスが無言でズボンと下着を下ろす。むきだしの下半身が夜風に嬲られ、スースーした。

 ――ルイーザは何のためにこんなことを? ……まさか、あの事を知っているのか?

 彼は、完璧に隠し通しているのだ。だが、ルイーザは扇子を広げてアロイスのむき出しのフロント部分を直視しないようにして、背後に回ってくる。両手で前張りをしたアロイスの肩が、動揺でガタガタと震えた。

 ――頼むから、俺の秘密を暴かないでくれ!

 無情にも、ルイーザは苦笑を漏らす。

「王太子殿下の騎士が職務中にこんなものをお尻に仕込んで、破廉恥極まりないですわね」

 万事休すだった。
 
「お……お許しを……っ」
「あなたに心酔している女の子たちが、これを知ったら? 女の子だけじゃないわ。『閃光の貴公子』と名高いあなたの剣技に惚れこむ騎士団のメンバーが知ったら、どうなるかしら?」
「ルイーザ様、どうか、許してください……っ」
 
 アロイスの嘆願が、夜の庭園に悲壮に響く。
 その白く引き締まった尻の穴から、真珠のつらなりのようなものが垂れていた。明るいところなら、長い紐に透明のガラス玉を通したものだとはっきり見えただろう。
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