2 / 8
第二話 ヒーロー雌イキ※
しおりを挟む
――どうしてこうなったんだ!?
王太子の乳兄弟にして、護衛騎士のアロイス。
彼の前世は何を隠そう、現代日本のサラリーマンだ。玉本誠一、享年三十歳。不運にも大型トラックにひかれ、同棲中の彼女に勧められるままハマっていた18禁乙女ゲーム『白豚ちゃんだってかわいいもん! ~ゆるいままで愛されたい~』の世界に転生してしまった。
メインヒロインは、平民上がりのロッタ男爵令嬢・フィオナ。ちょいおデブだけど頑張り屋な彼女が貴族のための学園に入学し、テアヌス侯爵令嬢ルイーザ達に虐められながらも、多くのイケメンに溺愛されるストーリーだ。
アロイスはその攻略キャラの一人で、誰とでも打ち解けられる明るい性格のモテ男だが、本命にはヤンデレ化するという困った性癖の持ち主だった。
玉本誠一の最推しはフィオナではなく、ブレナン王太子の婚約者である悪役令嬢ルイーザだった。ちょいポチャのフィオナと対照的に、彼女はとにかく美しくあることにこだわっていた。悲壮なまでに。しかし、王太子妃毒殺未遂で国外追放された挙句盗賊に攫われ、最後は売春宿に売られてしまう。見事な悪役ざまぁである。
現世ではルイーザはフィオナと熱い友情を築き、婚約破棄はされたもののどうやら国外追放は免れたようだ。なのに、この展開は何だろう? 本来の筋書きなら、アロイスはフィオナ愛しさにルイーザを断罪に追い込む天敵だ。なぜ、そんな自分を婿に選んだのか?
アロイスが嬉しくなかったと言えば嘘になる。いいや、正直飛び上がるほど嬉しかった。しかしどんなに嬉しくとも、彼にはこの提案を受け入れられない深い事情があった。
中庭のガゼボは満月の光と王宮からの灯りで、意外なほど明るい。
アロイスは、月光を浴びたルイーザの美しい背中に嘆願した。
「どうかお考え直し下さい。ルイーザ様ともあろう方が、騎士階級の俺を婿に迎えては恥をかかれます」
「大衆の面前で婚約破棄されて、恥ならとっくにかきましたわ。なのに、アロイス卿はわたくしにこれ以上の苦行を強いるのかしら?」
「とんでもないありません。……テアヌス侯爵家の婿は、俺には荷が重すぎます」
ルイーザの背中が急に悄然となり、寂しげな声が漏れる。
「……あなたも、まだフィオナが忘れられない?」
「それはありません」
もちろんフィオナは今でも可愛いが、前世の記憶を取り戻すとほっとけない妹みたいな存在になってしまった。玉本誠一の三十年分の知識と経験が加算されたため、ものの感じ方も変わったのだ。しかし、ルイーザが最推しなのは変わらなかった。
「わたくしは、そんなに魅力のない女なのかしら?」
「とんでもないことです! 俺にとってルイーザ様は長年の……と、とにかくお考え直し下さい」
「……長年の、なんですの?」
「いいえっ、何でもないです」
――危ない。『長年の想い人』と口を滑らすところだった。
動揺するアロイスを尻目に、ルイーザは埒が明かないとばかりにため息をつく。振り向いて放たれた言葉は、全く想像のつかないものだった。
「アロイス卿。今すぐズボンとパンツを下ろしなさい」
――はああああ!?
「いま、なんと言われました……?」
「二度言われないと分からないかしら? わたくしは『下半身すっぽんぽんになりなさい』と命じたのですわ。それとも、うちの侍女達に力ずくで脱がせましょうか?」
異論は許さぬとばかりの強い口調。アロイスは三人のマッチョな侍女が呼べばすぐにも駆けつけられる場所に控えていることを思い出し、額に冷や汗が浮かんだ。彼は騎士だから、たとえ相手が屈強でも複数でも女性に手荒な真似はできない。
――尻の毛までむしり取られそうだ。
背中がぞわぞわした。
「わかりました。自分で脱ぎます」
真顔で潔く答えたものの、ベルトを外すのに手間取り、心変わりしてくれないものかとルイーザの方をチラチラ窺ってしまった。しばらくたっても相手の意思が変わらないことを悟り、アロイスが無言でズボンと下着を下ろす。むきだしの下半身が夜風に嬲られ、スースーした。
――ルイーザは何のためにこんなことを? ……まさか、あの事を知っているのか?
彼は、完璧に隠し通しているのだ。だが、ルイーザは扇子を広げてアロイスのむき出しのフロント部分を直視しないようにして、背後に回ってくる。両手で前張りをしたアロイスの肩が、動揺でガタガタと震えた。
――頼むから、俺の秘密を暴かないでくれ!
無情にも、ルイーザは苦笑を漏らす。
「王太子殿下の騎士が職務中にこんなものをお尻に仕込んで、破廉恥極まりないですわね」
万事休すだった。
「お……お許しを……っ」
「あなたに心酔している女の子たちが、これを知ったら? 女の子だけじゃないわ。『閃光の貴公子』と名高いあなたの剣技に惚れこむ騎士団のメンバーが知ったら、どうなるかしら?」
「ルイーザ様、どうか、許してください……っ」
アロイスの嘆願が、夜の庭園に悲壮に響く。
その白く引き締まった尻の穴から、真珠のつらなりのようなものが垂れていた。明るいところなら、長い紐に透明のガラス玉を通したものだとはっきり見えただろう。
王太子の乳兄弟にして、護衛騎士のアロイス。
彼の前世は何を隠そう、現代日本のサラリーマンだ。玉本誠一、享年三十歳。不運にも大型トラックにひかれ、同棲中の彼女に勧められるままハマっていた18禁乙女ゲーム『白豚ちゃんだってかわいいもん! ~ゆるいままで愛されたい~』の世界に転生してしまった。
メインヒロインは、平民上がりのロッタ男爵令嬢・フィオナ。ちょいおデブだけど頑張り屋な彼女が貴族のための学園に入学し、テアヌス侯爵令嬢ルイーザ達に虐められながらも、多くのイケメンに溺愛されるストーリーだ。
アロイスはその攻略キャラの一人で、誰とでも打ち解けられる明るい性格のモテ男だが、本命にはヤンデレ化するという困った性癖の持ち主だった。
玉本誠一の最推しはフィオナではなく、ブレナン王太子の婚約者である悪役令嬢ルイーザだった。ちょいポチャのフィオナと対照的に、彼女はとにかく美しくあることにこだわっていた。悲壮なまでに。しかし、王太子妃毒殺未遂で国外追放された挙句盗賊に攫われ、最後は売春宿に売られてしまう。見事な悪役ざまぁである。
現世ではルイーザはフィオナと熱い友情を築き、婚約破棄はされたもののどうやら国外追放は免れたようだ。なのに、この展開は何だろう? 本来の筋書きなら、アロイスはフィオナ愛しさにルイーザを断罪に追い込む天敵だ。なぜ、そんな自分を婿に選んだのか?
アロイスが嬉しくなかったと言えば嘘になる。いいや、正直飛び上がるほど嬉しかった。しかしどんなに嬉しくとも、彼にはこの提案を受け入れられない深い事情があった。
中庭のガゼボは満月の光と王宮からの灯りで、意外なほど明るい。
アロイスは、月光を浴びたルイーザの美しい背中に嘆願した。
「どうかお考え直し下さい。ルイーザ様ともあろう方が、騎士階級の俺を婿に迎えては恥をかかれます」
「大衆の面前で婚約破棄されて、恥ならとっくにかきましたわ。なのに、アロイス卿はわたくしにこれ以上の苦行を強いるのかしら?」
「とんでもないありません。……テアヌス侯爵家の婿は、俺には荷が重すぎます」
ルイーザの背中が急に悄然となり、寂しげな声が漏れる。
「……あなたも、まだフィオナが忘れられない?」
「それはありません」
もちろんフィオナは今でも可愛いが、前世の記憶を取り戻すとほっとけない妹みたいな存在になってしまった。玉本誠一の三十年分の知識と経験が加算されたため、ものの感じ方も変わったのだ。しかし、ルイーザが最推しなのは変わらなかった。
「わたくしは、そんなに魅力のない女なのかしら?」
「とんでもないことです! 俺にとってルイーザ様は長年の……と、とにかくお考え直し下さい」
「……長年の、なんですの?」
「いいえっ、何でもないです」
――危ない。『長年の想い人』と口を滑らすところだった。
動揺するアロイスを尻目に、ルイーザは埒が明かないとばかりにため息をつく。振り向いて放たれた言葉は、全く想像のつかないものだった。
「アロイス卿。今すぐズボンとパンツを下ろしなさい」
――はああああ!?
「いま、なんと言われました……?」
「二度言われないと分からないかしら? わたくしは『下半身すっぽんぽんになりなさい』と命じたのですわ。それとも、うちの侍女達に力ずくで脱がせましょうか?」
異論は許さぬとばかりの強い口調。アロイスは三人のマッチョな侍女が呼べばすぐにも駆けつけられる場所に控えていることを思い出し、額に冷や汗が浮かんだ。彼は騎士だから、たとえ相手が屈強でも複数でも女性に手荒な真似はできない。
――尻の毛までむしり取られそうだ。
背中がぞわぞわした。
「わかりました。自分で脱ぎます」
真顔で潔く答えたものの、ベルトを外すのに手間取り、心変わりしてくれないものかとルイーザの方をチラチラ窺ってしまった。しばらくたっても相手の意思が変わらないことを悟り、アロイスが無言でズボンと下着を下ろす。むきだしの下半身が夜風に嬲られ、スースーした。
――ルイーザは何のためにこんなことを? ……まさか、あの事を知っているのか?
彼は、完璧に隠し通しているのだ。だが、ルイーザは扇子を広げてアロイスのむき出しのフロント部分を直視しないようにして、背後に回ってくる。両手で前張りをしたアロイスの肩が、動揺でガタガタと震えた。
――頼むから、俺の秘密を暴かないでくれ!
無情にも、ルイーザは苦笑を漏らす。
「王太子殿下の騎士が職務中にこんなものをお尻に仕込んで、破廉恥極まりないですわね」
万事休すだった。
「お……お許しを……っ」
「あなたに心酔している女の子たちが、これを知ったら? 女の子だけじゃないわ。『閃光の貴公子』と名高いあなたの剣技に惚れこむ騎士団のメンバーが知ったら、どうなるかしら?」
「ルイーザ様、どうか、許してください……っ」
アロイスの嘆願が、夜の庭園に悲壮に響く。
その白く引き締まった尻の穴から、真珠のつらなりのようなものが垂れていた。明るいところなら、長い紐に透明のガラス玉を通したものだとはっきり見えただろう。
20
あなたにおすすめの小説
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる
マチバリ
恋愛
貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。
数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。
書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】ハメられて追放された悪役令嬢ですが、爬虫類好きな私はドラゴンだってサイコーです。
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
やってもいない罪を被せられ、公爵令嬢だったルナティアは断罪される。
王太子であった婚約者も親友であったサーシャに盗られ、家族からも見捨てられてしまった。
教会に生涯幽閉となる手前で、幼馴染である宰相の手腕により獣人の王であるドラゴンの元へ嫁がされることに。
惨めだとあざ笑うサーシャたちを無視し、悲嘆にくれるように見えたルナティアだが、実は大の爬虫類好きだった。
簡単に裏切る人になんてもう未練はない。
むしろ自分の好きなモノたちに囲まれている方が幸せデス。
この結婚に、恋だの愛など要りません!! ~必要なのはアナタの子種だけです。
若松だんご
恋愛
「お前に期待するのは、その背後にある実家からの支援だけだ。それ以上のことを望む気はないし、余に愛されようと思うな」
新婚初夜。政略結婚の相手である、国王リオネルからそう言われたマリアローザ。
持参金目当ての結婚!? そんなの百も承知だ。だから。
「承知しております。ただし、陛下の子種。これだけは、わたくしの腹にお納めくださいませ。子を成すこと。それが、支援の条件でございますゆえ」
金がほしけりゃ子種を出してよ。そもそも愛だの恋だのほしいと思っていないわよ。
出すもの出して、とっとと子どもを授けてくださいな。
お飾りの妃をやめたら、文官様の溺愛が始まりました 【完結】
日下奈緒
恋愛
後宮に入り、妃となって二年。
それなのに一度も皇帝に抱かれぬまま、沈翠蘭は“お飾りの妃”としてひっそりと日々を過ごしていた。
ある日、文部大臣の周景文が現れ、こう告げる。
「このままでは、あなたは後宮から追い出される」
実家に帰れば、出世を望む幼い弟たちに顔向けできない――。
迷いの中で手を差し伸べた彼にすがるように身を預けた翠蘭。
けれど、彼には誰も知らない秘密があった。
冷たい後宮から始まる、甘くて熱い溺愛の物語。
筋書きどおりに婚約破棄したのですが、想定外の事態に巻き込まれています。
一花カナウ
恋愛
第二王子のヨハネスと婚約が決まったとき、私はこの世界が前世で愛読していた物語の世界であることに気づく。
そして、この婚約がのちに解消されることも思い出していた。
ヨハネスは優しくていい人であるが、私にはもったいない人物。
慕ってはいても恋には至らなかった。
やがて、婚約破棄のシーンが訪れる。
私はヨハネスと別れを告げて、新たな人生を歩みだす
――はずだったのに、ちょっと待って、ここはどこですかっ⁉︎
しかも、ベッドに鎖で繋がれているんですけどっ⁉︎
困惑する私の前に現れたのは、意外な人物で……
えっと、あなたは助けにきたわけじゃなくて、犯人ってことですよね?
※ムーンライトノベルズで公開中の同名の作品に加筆修正(微調整?)したものをこちらで掲載しています。
※pixivにも掲載。
8/29 15時台HOTランキング 5位、恋愛カテゴリー3位ありがとうございます( ´ ▽ ` )ノノΞ❤︎{活力注入♪)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる