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スポーツを汚す

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ななは、忘れなかった。

大塚が、サッカーのワールドカップを
会社で応援しようと

夜の10時半に会社に集合と言って来たのだった。


もちろん、ななは
そこで何が起こるのか想像がついたから
行かなかった。


そんな事をしてまで、派遣の仕事を
続けたくなかったからだ。




「俺は、いざとなったら
君を守るつもりだった」と、今は穏やかになった
大塚は言う。



その言葉をななは受け流し「そんな事はどうでもいいの。それなら、私を呼び出したのは何故?断ればいいでしょう」と、ななは
過ぎた事で、忘れかけた事を
いつまでも気にしている大塚が

粘着で嫌だ(笑)と思った。




イジメに関わると、大塚だって
上に逆らえばイジメられる。


そんな事はわかってるけど、もし、なな自身を
心配するなら、呼び出したりせずに
守るのが男だと、ななは思った。

大塚自身が安全で、ななを危険に晒して
何が守るだろう、とも(笑)。



「仕方なかったんだ。派遣から社員にしてやるって課長が言って。」と、大塚は情けない顔になったけれど

ななは、顔もみたくないと思った。

反論もしたくない。


関わりたくないと思ったけど



「誰よ?主犯は」と、ななは
わかっているけれど聞いた。





「杉山」と、大塚は言った。


杉山と言うのは、40くらいの容姿に恵まれない
ふて腐れた女で


イジメグループのボスだった。



ななの容姿を妬んで、そういう悪事を
企んだのだろう。



それらも、皆過去の事だと

ななは思う。



今は、平和な世の中で


そういうイジメ、とかも
みんな貨幣流通経済に投機性があるからだ。


損得があるから、損したくないから

群がって、得したいと思う
憐れな悪者たち。


でも今は、損得はなくなった。


それも、加藤の発明のおかげだ。




ななは、加藤を思い出す。



そんな、杉山や大塚の嫌がらせを
ものともせずに超然と笑顔で過ごしていた。

それなので、派遣先の社員たちが

劣等感に駆られるのだった。


何をしても相手にされず、感情的にもならない
加藤。

正しい事をしている、などと言う
主張もなく


ただ、相手にしないだけの彼。



イジメなどと言うものは、べつに

気にしなければどうと言う事もないものだ。




そう言外に言っているようだ加藤が


イジメに抑圧されている彼ら全員の

愚かさを自認させ、劣等感を刺激するので

(笑)

なお、彼らは加藤を敵視するのだった。



その事を思い出し、ななは
やはり、大塚を嫌いだと思った。



瞬間。




ふわ、と

ななの体が宙に浮いた。




反射的に、ジョナサンの手を取ると



あれ不思議。ジョナサンも宙に浮いた(笑)。
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