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愛すべきもの

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加藤は、なぜか争う事が嫌いだった。
争って勝っても、うれしくもない。

それなので、争う人達の気持ちが
解らなかった。


小学生の頃など、運動会で
クラス対抗で点を争ったりとか


そういう時も、他のクラスにも友達がいるから
敵、なんて気持ちにもなれない。


友達は友達だ、と思って



なぜ、競技、なんて
立場だけでそんなにむきになるのだろう(笑)と


思ってたりした。


とは言え、防御はせざるを得ないから(笑)



そういう理由で法律を覚えたりした。



そんな知識は、誰でも知っていると思っていたけれど
実はそうでもないと、土屋の件で知る事になったりもした。



でも、ニートの息子がセルシオの為に
働くようになるのはいい事だと思う。

どちらかと言うと、クルマよりも
父親に面倒を見て欲しくて悪い事をした
ような、そんな印象でもある(笑)。



そういう気持ちは誰にでもある。





係わり合いの中で、自分のする事が解るし
それがないと、何もできないのだ。



加藤は、シンセサイザで音楽を作る趣味があったけれど


何でもできるシンセサイザでも、音を
自由に作って音楽に、と言っても



やっぱり、約束事の中でないと
音楽に聞こえないし

音、そのものも
何かの楽器や、自然にある音を
元にしないと楽器には聞こえない。



人の思考って、みんな関係性なのだ。



愛だってそうで

対象がないと愛にならない。

自己愛ですら、自分、と言う対象があるのだ。



人間は面倒な生き物である。





「就職、どうしよう」由香が
悩み事っぽいのはめずらしい(笑)



「どうしたの?」と、加藤が尋ねると




「就職口がないんだなー。本当に」と、由香は嘆く。




この年は本当に不景気で、高校卒の
女の子でも、何か芸がないと

就職は難しい、と言う年だった。

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