関東電力殺人事件

深町珠

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ある推論

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もとより、確証を求めたら
本人か否かは全て疑わしい。

真智子の母親を名乗る人物ですら
自称である。

いささか、SF的な話になれば
輝彦の兄だと信じていた電話口の人物も
本人との確証はない(笑)。

無論、冗談であるが

輝彦自身が、そう認識する事を
認知、と精神医学ではそう言う。

それが怪しくなる事を認知障害と言うのであり
精神分析学的なマニュアル、米国精神医学会発行の
司法判断の際使用する手引書、DSM-4などにも
記載されているくらいである。

それは冗談にしても、組織犯罪として
世界規模で行うなら、そのくらいの事は出来ると
言う事だ。

極めて大胆な組織犯罪だと考えれば
現状の推理は、こうだ。

輝彦は、露天風呂から
月明かりの由布岳を眺めつつ、白滝川のせせらぎに
心地よく旅情を覚えつつ、考えをまとめた。


過去、勝又がまだ中間管理職だった頃に
国策である原発依存に批判的な部下が居た。

勝又自身は、東大出の技術者であり
オタクなので(笑)人の気持ちが分からず
傲慢である。

その女性部下と、宜しくない関係になる。
それは、その反原発闘士、父親譲りの彼女の
自爆テロだった。
彼を失脚させる為の罠である。

こういう事はよくある。この会社に限らず。
ソニックのような会社にすらあった事だ。

それが、明るみに出てはまずいので
何者かが、処理をした。

外国人の犯行と言う事にして
事実隠蔽をした。

警察も政治判断で、それに協力をさせられた。

が。


原発事故が起き、当時の左翼政権が
関東電力の解体を実行し、利権が無くなった。

そうなれば、事実隠蔽に異論が起こる。

冤罪事件として、外国人が釈放されるので
関東電力は、志水・勝又を切り捨てる。

同時に、過去の事件への
組織的関与を隠蔽したいが為に
口封じの為、彼らを消した事にして
海外へ逃がす。


そうして、国家賠償法の適用として
彼らの私財を没収、として
世論の目を誤魔化す。

実際には、本物の彼らは

国外に逃がす。

計画的に、原発事故直後から
替え玉とすり替えておく。
会長は、公式の場に出ず
社長も入院。

その間に、である。



そう考えると、全てが一本の線につながる。


左翼政権、当時のそれですら
支持母体に関東電力や、その労働組合が
名を連ねているが

ただ、政府で政権を握っていた人たちは
利権とは割と距離のある人達だったので

結局、利権側は我慢ならずに
政権転覆を企み、領土問題を紛争化。

隣国から、政権転覆を計る。

それは成功した。

そして、右翼系の政治家は
利権の回復を計る。


それで、上手く行く筈だったが.....。


海外に逃れていた、志水・勝又(あるいは、替え玉?)
が、暗殺される。


そう推理すると、国内の事件は反政府勢力の意図だと
考えられる。

原発利権に関わりの深かった、かつての右派与党である。

あるいは、組織ではなく思想犯たちが
個々に起こした事件なのかもしれない。


だが、国外の事件は....。

余波として起こった、反日過激派の仕業であるかもしれないし

その、国内の組織的事件を知った者の義憤に駆られた
強行事件であるかもしれない。


ただ、真智子事件だけは宙に浮いたまま、だ。

輝彦は、そんな空想をしながら
温泉に浸かりすぎてしまった(笑)


ディナータイムである。


グランド・フロアの緑深いレストランで
豊後牛ステーキ、である。

放牧で有名なこの地のそれは、この上なく美味である。

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