8 / 93
失踪
しおりを挟む
珠子はキャンパスを出て
路面電車の停留所に向かった。
大学から、珠子の家までは少し離れているから。
それで、詩織も時々大学に泊まったりするらしい。
「でも・・・。」珠子は整然としない。
お母さんが、私たちを置いて失踪するだろうか?
珠子だったら、自分がどうなっても
子供と一緒に居たい。
そう思うと「何か、訳があるのかもしれないね。」
失踪だったとすると。
或いは、失踪ではなかったのだろうか?
そんな風に、いろいろと思考を巡らせる珠子だったけれど
「ご近所さんに聞いてみよう」と、明るい珠子だった。
路面電車は、ゆっくりとギアの響きを伴って
停留所に近づいてきた。
ドアが、空気の抜ける音と共に
がらり、と開く。
電車の後ろから乗る。のだけれど
慣れていないので、前扉の所に居て
降りる人が居なくなるのを待っていた。
運転手さんがにこにこと「あ、いいよ。こっちからでも」と言われて
本当は後ろ乗りだったと気づく珠子だった。
「すみません」と、恥ずかしげに礼をして
電車に乗った珠子だったけれど
・・・・もしかして、私が幼く見えたから許してくれたのかな。
なんて、空想をしてしまったりもする珠子だった。
「若見え-10歳肌、なんて」
と、少し明るい気持が戻ってきた。
それも、友達のおかげ。
「友達っていいなぁ」
路面電車に揺られて、いつもの町に戻る。
電停で、こんどは間違えないように前扉から降りると
運転士は微笑んで「ありがとうございます」。
それが、-10歳肌(だけではないが)のおかげかどうかは判らないけれど。
今のところ、若く見えると言う程度。
「そういえば・・・。」珠子は気づく。
妹は、そんなに若く見える程でもないけれど
それは、化粧とか、服飾のセンスとか。
そういうものもあるのかな、とも思う。
職業柄、珠子は香水すらつけない。
和菓子に移るからである。
「そういうせいもあるのかな。」と、町外れの小川の畔まで来ると
アーケードのご近所さん、揚げ物を作っているおばちゃんが
お地蔵様のお掃除をして、拝んでいた。
珠子も、時々そうしているけれど
地域の風習なので、気にする事もなかった。
・・・・そういえば、都市にお地蔵様って珍しいのかな。
比較的あちこちにあるような気もする。
「おばちゃーん。」と、珠子はにこにこ、声を掛ける。
婦人は振り返り「おや、珠ちゃんおかえり。」
珠子もお地蔵様を拝んでから、ちょっと聞いてみる。
「ねえ、この町ってお地蔵様多いみたいね。」と言うと
おばちゃんは、すこしぎこちない表情になったけれども
穏やかに「みんなを守ってくれているのよ。」と。
みんなを。
その言葉が、どことなく気になって
「ねえ、うちの家って、どうして女の人がいないの?」と
何気なく聞いてみると、おばちゃんは視線を下げたけど
「そういう家もあるね。ほら、宮様の家でもあるでしょう。
女の子は宮家を出るから、男ばかり残るって。」
・・・・宮家。
そういえば、古都なので
そう言う家柄のところもあった。あちこちに。
元々は都だったのだから。
珠子の家もそうなのだろうか?なんて思うと
面白くなって「ははは。うちは宮様じゃないよー。」
おじいちゃんも、おとうさんも職人で
お父さんなんて結構、乱暴だし。
でも、ふと思い返すと
・・・おじいちゃんって、上品ね。かなり。
怒ったところを見た事ない。
なんて、ちょっと面白い空想に囚われたので
それまでのミステリーっぽい空想は、どこかに飛んでいった。
・・・おばちゃんは、その珠子の様子に安堵した。
路面電車の停留所に向かった。
大学から、珠子の家までは少し離れているから。
それで、詩織も時々大学に泊まったりするらしい。
「でも・・・。」珠子は整然としない。
お母さんが、私たちを置いて失踪するだろうか?
珠子だったら、自分がどうなっても
子供と一緒に居たい。
そう思うと「何か、訳があるのかもしれないね。」
失踪だったとすると。
或いは、失踪ではなかったのだろうか?
そんな風に、いろいろと思考を巡らせる珠子だったけれど
「ご近所さんに聞いてみよう」と、明るい珠子だった。
路面電車は、ゆっくりとギアの響きを伴って
停留所に近づいてきた。
ドアが、空気の抜ける音と共に
がらり、と開く。
電車の後ろから乗る。のだけれど
慣れていないので、前扉の所に居て
降りる人が居なくなるのを待っていた。
運転手さんがにこにこと「あ、いいよ。こっちからでも」と言われて
本当は後ろ乗りだったと気づく珠子だった。
「すみません」と、恥ずかしげに礼をして
電車に乗った珠子だったけれど
・・・・もしかして、私が幼く見えたから許してくれたのかな。
なんて、空想をしてしまったりもする珠子だった。
「若見え-10歳肌、なんて」
と、少し明るい気持が戻ってきた。
それも、友達のおかげ。
「友達っていいなぁ」
路面電車に揺られて、いつもの町に戻る。
電停で、こんどは間違えないように前扉から降りると
運転士は微笑んで「ありがとうございます」。
それが、-10歳肌(だけではないが)のおかげかどうかは判らないけれど。
今のところ、若く見えると言う程度。
「そういえば・・・。」珠子は気づく。
妹は、そんなに若く見える程でもないけれど
それは、化粧とか、服飾のセンスとか。
そういうものもあるのかな、とも思う。
職業柄、珠子は香水すらつけない。
和菓子に移るからである。
「そういうせいもあるのかな。」と、町外れの小川の畔まで来ると
アーケードのご近所さん、揚げ物を作っているおばちゃんが
お地蔵様のお掃除をして、拝んでいた。
珠子も、時々そうしているけれど
地域の風習なので、気にする事もなかった。
・・・・そういえば、都市にお地蔵様って珍しいのかな。
比較的あちこちにあるような気もする。
「おばちゃーん。」と、珠子はにこにこ、声を掛ける。
婦人は振り返り「おや、珠ちゃんおかえり。」
珠子もお地蔵様を拝んでから、ちょっと聞いてみる。
「ねえ、この町ってお地蔵様多いみたいね。」と言うと
おばちゃんは、すこしぎこちない表情になったけれども
穏やかに「みんなを守ってくれているのよ。」と。
みんなを。
その言葉が、どことなく気になって
「ねえ、うちの家って、どうして女の人がいないの?」と
何気なく聞いてみると、おばちゃんは視線を下げたけど
「そういう家もあるね。ほら、宮様の家でもあるでしょう。
女の子は宮家を出るから、男ばかり残るって。」
・・・・宮家。
そういえば、古都なので
そう言う家柄のところもあった。あちこちに。
元々は都だったのだから。
珠子の家もそうなのだろうか?なんて思うと
面白くなって「ははは。うちは宮様じゃないよー。」
おじいちゃんも、おとうさんも職人で
お父さんなんて結構、乱暴だし。
でも、ふと思い返すと
・・・おじいちゃんって、上品ね。かなり。
怒ったところを見た事ない。
なんて、ちょっと面白い空想に囚われたので
それまでのミステリーっぽい空想は、どこかに飛んでいった。
・・・おばちゃんは、その珠子の様子に安堵した。
0
あなたにおすすめの小説
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ローザリンデの第二の人生
梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。
彼には今はもういない想い人がいた。
私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。
けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。
あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。
吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
1/10 HOTランキング1位、小説、恋愛3位ありがとうございます。
さようなら、お別れしましょう
椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。
妻に新しいも古いもありますか?
愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?
私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。
――つまり、別居。
夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。
――あなたにお礼を言いますわ。
【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる!
※他サイトにも掲載しております。
※表紙はお借りしたものです。
今宵、薔薇の園で
天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。
しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。
彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。
キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。
そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。
彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。
その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?
行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。
貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。
元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。
これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。
※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑)
※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。
※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。
あなたが愛人を作るのなら
あんど もあ
ファンタジー
結婚して八年の夫が、愛人を作った。それも私の推しの女優を! 「君と違って彼女には才能がある」と言う。ならば、私も才能のある愛人を持つ事にいたしましょう。愛人の才能を花開かせる事が出来るのはどちら?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる