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深町珠

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旅の夜

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神流は「可愛いの好きですものね、珠ちゃん。」と。丁寧な言葉を使う。
品位のある子である。
職人の子で、お父さんの仕事をいつも見ていて
感動していた。

自然に、敬う気持になる。ものを作れる人を。
故に、言葉遣いも品位を保つ。

趣味でも、研究でも、仕事でも
なんでもそうだけれども、とことん凝ると・・・
自分の前に同じ事をしてくれた人がいるから、自分が楽にできると判る。

物理にしてみても、自然物理の法則があるので
解析が楽だ。


そういう事に気づくと、謙虚になるものである。
そのあたりは、詩織にも少し似ているところがある。


「うん、おいしくできたね」と、珠子。
「はい。珠ちゃんはすごいですね。」神流

「主婦歴長いもん。」と、珠子が言うので

「おばさんみたいですね」と言って笑った。
珠子も笑った。

ナーヴが「珠子さんは主婦さんなのですか?」と聞くので

珠子が「はい。母が幼い頃に居なくなったので・・・。」と言って
思い出した。

なぜ、ここに来たのか。


ちょっと、朗らかでなくなった珠子を見て、ナーヴは
「聞いてはならなかったのですね。すみません。」と。

「いいの。わたしこそ。気を使わせちゃってごめんね。」と。
ここに来た理由を話す。

若く見える事とか、神隠しの事。


ナーヴは、すこし考えて「調べておきましょう。・・・ひょっとすると、珠子さんのご家族が
帝だと言う事はないですか?可能性としては無くは無いと思います。」

珠子も、神流もそうは思わなかった。

女帝で、どこかの世界で「帝」になっていて。
時期が来ると、自分の世界に戻っていく。
珠乃家に再び、末裔が戻り、また帰る・・。


そういう事は考えなかった。

「どこかの世界って、どこにあるの?」と、珠子が聞くと

ナーヴは「今はわかりません。別世界かもしれないし。地球上のどこか
かもしれません。」


地球上のどこかなら、ありそうなお話である。



珠子は切り替えが早く「さ、食べちゃお、冷めちゃうし。ナーヴちゃんありがと。」

お店をしている子だから、そういう所は実務的である。


神流は、ナーヴの発想を面白いと思った。

いろいろなデータを見ていて、客観的に判断すると
そういう帰結になるのか、と。



食べ終わったお皿を、珠子は洗う事にして。

神流は「それは私がやります」と言うので

珠子は「いいの。こういうの好きだから」と。
綺麗にしたりするのは性分である。

食べ物を作っている店に住んでいるから、自然にそうなる。
洋食はそんなに食べないので、油の乗った食器や
フライパンはすこし難儀した。

ナーヴは、それを見ていて「わたしが人型なら、洗うのですけれど」と。

珠子は「いいの。わたしは居候だし」と言うと
ナーヴは「わたしもそうです」


ふたり、笑った。







広いお屋敷なので、珠子はひと部屋を得た。
10畳で、広すぎるほど広い。

古都で、お店の二階の一部屋を、妹とふたりで使っていたような
珠子には、ちょっと淋しいくらい。

そこに、荷物をひとつだけ。

いつまで、ここにいるかは分からないけれど・・・・。と、思いながら

でも、ここにいるのも楽しいな、とも思ったり。


旅って、そういうものだ。
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