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深町珠

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納屋

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「いつもは、どうしてるの?お買い物。」と、珠子。
見渡すところ、お店は無さそう。
隣の家も・・・遠くにあるだけ。

町に生まれ育った珠子としては、誰もいない場所と言うのは
来た事がない。
修学旅行でも、サマースクールでも。ウィンタースクールでも。
人の居ない場所はなかった。

ナーヴは「はい。私は電力ですから。いつもは神流が、仕事の帰りに
何かを買ってくるくらいで。時々、お休みの日に自動車で買い物に行ったり。」と。

珠子は、びっくり。「神流ちゃん、車持ってるの?」

ナーヴは「はい。何か、ここの家にあったものを借りているそうです。」


すごく、おおらかな場所だ。 珠子は、そんな風に思う。

こんなに広々としていれば、私でも運転ができそう。そんな風にも思ったり。

「ね、ナーヴちゃん。その車ってどこ?」珠子は興味を覚える。

住んでいた商店街では、車に乗ろうとは思わなかった。
道も狭いし、ひとがたくさん。
危ないなと思ったから、免許も取っていない。

「あ、そっか。免許ないんだ。」と、珠子は諦めたけど
車は見てみたくなった。

ナーヴは「納屋にあります。農機具小屋と言うか・・・。」
猫に絡まれると危険なので、ナーヴ自身は表には出ず、場所を伝えた。
縁側から外に出て、裏手に回った辺りに離れがあって、そこが納屋だそう。

珠子は、縁側から外に出た。
下駄のようなサンダルのような履物があり、それをつっかけて。

縁側の上がりかまちに、四角い石がある。玄武岩だろうか。
その上に履物が揃えてあって。
綺麗に磨かれた硝子戸を、からから・・・と引いて。
硝子戸は、木格子に、透明な硝子。
懐かしい感触。そういえば、お母さんの生家も・・・。と。
珠子は思い出す。

「お母さんは、あの町の外で生まれたんだね。」
古都の郊外に生まれたお母さんは、高校が偶然
珠子の父と同じになって。

そこで、知り合ったのだった。


・・・・そうなら、お母さんは、どこかの世界から飛んできたのでは
ないのかな・・・・。

などと、少し楽観的に考える珠子だった。


下駄らしき履物は、何故か歯が無いのか、磨り減っているのか。
地面に降りると、砂を踏む感触が
なんとなく懐かしい、学校のグラウンドを思わせた。


「普段、土の道を歩く事ないもの。」


そういえば、昨夜の駅からの道も土だったような気がする。
柔らかな感触が、優しく感じられたっけ。

そう、珠子は思いながら歩いて、納屋へ。


納屋の扉は開き戸になっていて、開けてみると
ベージュの、丸みを帯びた小さな車が一台。
丸いヘッドライトがふたつ。
小さなタイヤが四隅に。

ドアがふたつ。小柄な人なら4人は乗れそうだけど・・・と言うくらい。

銀に光る金属のバンパーが、横一文字に走る。
よこから見ると、可愛らしい動物のような。
屋根は丸みを帯び、後ろへ流れている。

「かわいい。」と、珠子は微笑む。

そのとなりに、同じくらいの大きさのトラックも止めてあった。

「二台あるんだ。」と、荷台を見ると農機具らしきものが幾つか載せてあったので
最近、使われていたようだった。


「これで、畑に行っていたのかな」なんて思う珠子。


乗用車の方の、運転席の窓から見ると
細い丸いハンドルは、真ん中に丸いボタンがある。

大きな計器がひとつ。細い針が斜めに傾いて止まっていて。0の位置。

「これは、スピードかな。」バスに乗ったときに見た事があった。
速度を知る計器だそう。


「新幹線は300キロって、詩織ちゃんが言ってたっけ。」


この車は、0、20、40、60、80。だった。


その文字も長四角で、なんとなく懐かしい雰囲気。

昨夜、見かけた古いラジオに少し似ていた。


なんとなく、趣を感じて珠子は「運転免許取ろうかな」なんて思う (笑)。


ひととき、悩みを忘れていた。
旅は、やっぱりいい。
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