Lotus7&I

深町珠

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深夜とJazzと

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微かな物音がした。
どうやら、僕は眠ってしまっていたらしい。

............。

音楽は、静かに流れていた。
これは...マリガンかな....。

見ると、横田は静かに。

「お、起きたか...。」微笑んでいる。



僕は、はっきりと状況を思いだした。
「ごめん...寝ちゃった。」



横田は、にんまりと笑い、
「いや、ほんの数分だ....。」

そういい、手元のグラスを傾ける.....。







しばらく僕らは音楽を聞きながら、茫洋と漂っていた。
LPが終わり、横田はトーン・アームを上げる。

次のレコードをジャケットから出す。
雨音の聞こえるような硝子窓。
窓越しの女。
ソフト・フォーカスの写真。

...エロール・ガーナー、かな。

レコードをターンテーブルに置く。
センター・スピンドルに触れると、レコードは回転しながら
ターン・テーブルに軟着陸する。
トーン・アームを静かに下ろすと
SP盤のようなノイズを伴い、潤いのあるピアノ。
イントロのフレーズ。
saxで吹きなれた。

僕は、地下のクラブの湿った空気の匂いを思い出していた。


横田は、真空管プリ・アンプの精密ヴォリュームを僅か、低めに。


「なあ、シュウさ....。」

背中でつぶやく。


「なに...?。」


「さっきの話しだけどな。」



「ああ、あのこと。」



「やつらは、もう襲ってこないだろう....。」



「.......どうして?」




「変な男に会った、っていってたな、警察で。」



「うん、僕の家に来た暴漢。そいつが、何故か警察にいて....。」



「そいつが『頭』だ。お前の友達を襲った連中の。」



「..........。」
僕は、なんだか分からなくなった。
どうして横田はそういうんだろう。


「おそらく奴等は、何らかの目的でその、
死んだ512の男を追っていたはずだ。
それで....」


「それで?。」
.


「一緒にいた人間をまず、疑った。
事故に見せかけて消そうとした、と。」



「そんな、まさか....。」



「いや、ありえない話じゃない。ちょっと前、日本でも
宗教団体絡みのカルトが、そんな事をやっていたしな。
対抗組織の大物を、事故とか火事に見せかけて殺したりな。」




....僕は、死んだ兄の事を思いだした。
兄も、確か...宗教にのめり込んで。
対抗組織が過激派だった...。
そして、高速で....。


「........。」
僕は、硬直してしまった。


「どうした?。」
横田は、僕の表情に気付き....。



「いや、なんでもない。」
僕は、普通であることに努めた。
横田は、兄のことを知らない。
話すつもりもなかったし。



「...で、おまえらが疑われた、と。『とんび』も出てるしな、あの辺は。」




「......それは分かったけど、なんで『もう襲ってこない』って思うの?。」
僕は、忘れかけてた言葉を。


.

「ちょっと、知ってるんだよ、その組織の事。」
丁度、レコードが終わって。
横田はB面にかけ変えた。

また、アンニュイなピアノが、JBLパラゴンから流れる。



「....で、この間話したブン屋も、まだ行方不明のままだ。」


「....じゃあ......。」



「ひょっとすると、その512の奴も、ブン屋も
何も知らなかったのかもしれない。
しかし.....。」



「......?」



「何かを知ってしまった、とすると....。」




「うむ、その512の男、かなり胡散臭いんだ。
そのブン屋に聞いたんだがな。
で、そのブン屋も音沙汰なし、だ。」



「....でも、あれは事故だった。」


「そうだが、現場にいた奴は一応疑うもんだ。
それに、刑事が家に来た、っていってたろ?」


「うん.....。」



「別の捜査でも、その男を追ってた、ってことだな。」


「........。」




「ま、妙な事には関わらん、というのが無難だろう
だいたい、この一件は危険すぎる。
犯人探しは、やつらに任しとけばいい。」


「そうだね。」



「さて、今日は泊まってけ、..もうじき朝、だがな。」
と、横田は言い、にんまりと笑った。
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