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深夜とJazzと
しおりを挟む微かな物音がした。
どうやら、僕は眠ってしまっていたらしい。
............。
音楽は、静かに流れていた。
これは...マリガンかな....。
見ると、横田は静かに。
「お、起きたか...。」微笑んでいる。
僕は、はっきりと状況を思いだした。
「ごめん...寝ちゃった。」
横田は、にんまりと笑い、
「いや、ほんの数分だ....。」
そういい、手元のグラスを傾ける.....。
・
・
・
・
・
しばらく僕らは音楽を聞きながら、茫洋と漂っていた。
LPが終わり、横田はトーン・アームを上げる。
次のレコードをジャケットから出す。
雨音の聞こえるような硝子窓。
窓越しの女。
ソフト・フォーカスの写真。
...エロール・ガーナー、かな。
レコードをターンテーブルに置く。
センター・スピンドルに触れると、レコードは回転しながら
ターン・テーブルに軟着陸する。
トーン・アームを静かに下ろすと
SP盤のようなノイズを伴い、潤いのあるピアノ。
イントロのフレーズ。
saxで吹きなれた。
僕は、地下のクラブの湿った空気の匂いを思い出していた。
横田は、真空管プリ・アンプの精密ヴォリュームを僅か、低めに。
「なあ、シュウさ....。」
背中でつぶやく。
「なに...?。」
「さっきの話しだけどな。」
「ああ、あのこと。」
「やつらは、もう襲ってこないだろう....。」
「.......どうして?」
「変な男に会った、っていってたな、警察で。」
「うん、僕の家に来た暴漢。そいつが、何故か警察にいて....。」
「そいつが『頭』だ。お前の友達を襲った連中の。」
「..........。」
僕は、なんだか分からなくなった。
どうして横田はそういうんだろう。
「おそらく奴等は、何らかの目的でその、
死んだ512の男を追っていたはずだ。
それで....」
「それで?。」
.
「一緒にいた人間をまず、疑った。
事故に見せかけて消そうとした、と。」
「そんな、まさか....。」
「いや、ありえない話じゃない。ちょっと前、日本でも
宗教団体絡みのカルトが、そんな事をやっていたしな。
対抗組織の大物を、事故とか火事に見せかけて殺したりな。」
....僕は、死んだ兄の事を思いだした。
兄も、確か...宗教にのめり込んで。
対抗組織が過激派だった...。
そして、高速で....。
「........。」
僕は、硬直してしまった。
「どうした?。」
横田は、僕の表情に気付き....。
「いや、なんでもない。」
僕は、普通であることに努めた。
横田は、兄のことを知らない。
話すつもりもなかったし。
「...で、おまえらが疑われた、と。『とんび』も出てるしな、あの辺は。」
「......それは分かったけど、なんで『もう襲ってこない』って思うの?。」
僕は、忘れかけてた言葉を。
.
「ちょっと、知ってるんだよ、その組織の事。」
丁度、レコードが終わって。
横田はB面にかけ変えた。
また、アンニュイなピアノが、JBLパラゴンから流れる。
「....で、この間話したブン屋も、まだ行方不明のままだ。」
「....じゃあ......。」
「ひょっとすると、その512の奴も、ブン屋も
何も知らなかったのかもしれない。
しかし.....。」
「......?」
「何かを知ってしまった、とすると....。」
「うむ、その512の男、かなり胡散臭いんだ。
そのブン屋に聞いたんだがな。
で、そのブン屋も音沙汰なし、だ。」
「....でも、あれは事故だった。」
「そうだが、現場にいた奴は一応疑うもんだ。
それに、刑事が家に来た、っていってたろ?」
「うん.....。」
「別の捜査でも、その男を追ってた、ってことだな。」
「........。」
「ま、妙な事には関わらん、というのが無難だろう
だいたい、この一件は危険すぎる。
犯人探しは、やつらに任しとけばいい。」
「そうだね。」
「さて、今日は泊まってけ、..もうじき朝、だがな。」
と、横田は言い、にんまりと笑った。
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