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旅鉄8 [日豊本線上り第2列車 寝台特急"富士" 〜関門海峡にEF81は臨む〜 ]
[門司駅までは7分..]
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[門司駅までは7分..]
その7分の間に車掌のアナウンスがまた入り、「まもなく門司に到着です」と
丁寧な口調で滑らかに案内が行われる。
かつては、門司で関門トンネル専用の機関車EF30型に付け替え作業があったが
現在では運用変更により、EF81のまま進行して下関でEF66に付け替える様子。
アナウンスは「門司駅にはホームに売店はございません、停車時間短くなっておりますので
ホームにお降りにならないようお願い致します。」と締めた。
(これは1997年当時の話であり、現在では運用によりこの2列車の牽引機は
門司で切り離し、別のEF81と付け替えられている。
EF81にはおおまかに分けて3種類あり、基本番台、300番台、400番台。
300番台はステンレスボディ、400番台は重連統括制御タイプだそうだ。)
編成はゆっくりと減速し、衝動なく門司駅に到着、停止。
意外と閑散としている駅ホームに人影はまばら。
だが、博多方面ゆき普通列車発着ホームには列車待ち通勤客風の人影がちらほら
海風に吹かれている。
狭い関門海峡の向こうには本州が見え、臨海工業地帯の工場の明かり、ゆっくりと通過する
船の灯火、光芒まぶしく集魚船らしき影が遠く、沖にゆらゆらと揺れていた。
高架のホームに停車中の列車からそれを眺めていると、ガクリ、と列車は動きだし
静かに門司駅を後にした。
ほぼ無数に思えるような線路の束の中を緩行し、デッド・セクションを通過するが
この客車編成は自家発電なので、交流/直流の変換を意識する事は無い。
機関車の運転席では機器の切り替え、確認喚呼が行われていることであろう。
列車は関門トンネルに入り、九州を後にする。
ああ、今回の旅も終わりが近づいている...
さよなら、九州、また来る日まで......
と、思っていると、ドアをノックする音。「起きてますか?」
ワンパターンの呼びかけ。(笑)。
「開いてるよ、と言うとS君が入ってきて、「下関でうどん食べますか}(笑)。
下関駅のうどんは来る時に食べたので「いいよ、ありがとう」と言う。
筆者もそうだが、K君、S君とも堂々たる体型であるからもちろん食いしん坊であり
皆に「三役揃い踏み」とからかわれるようによく物を食べる方だから、割と行動パターンは似ている。
さっき、食べたばかりじゃないか、と言うと、「下関のうどんは美味しいんですよ、天ぷら入りで」と。
関東だと駅そばだが、中国地方は関西風なのか、駅ホームにうどんスタンドがある。
もちろんそばもあるが、見ているとよく売れるのはうどんの方。
この下関駅のうどんは、名物のふく天が乗っており、やや甘めのつゆと腰のある麺が
独特の風味を醸していて、確かに美味く、食べたくなるキモチも分かる。
関西ふうの、塩っぽい澄んだ汁とも、讃岐風の出汁の効いた味ともまた違う
コクのある濃厚なだしと甘めの味付けは、なんだろうか、九州風なのだろうか。
九州の味というと、たいていの関東人には甘く感じるように思え、四国へゆくと
味つけは薄くだしの風味が強いという印象があるから、下関駅ホームのうどんの味は
関門ふう、なのかもしれない。
S君はさっさと編成中程に移動、売店のそばのデッキで到着待ち(笑)
乗客が殺到するとうどんが食えないと危惧したらしい。
大丈夫、車掌氏もそれほど不粋ではないだろう、と思う。
以前は、お釣りをもらって売店から駆け出すおばあちゃんを「走らなくてもいいですよ」と
専務氏が声を掛けていたし....。
長距離列車だから、至ってのんびりとしたものである。
多少の遅れは長い道中のうちに取り戻せるし、なにより乗客に怪我があってはいけない、
という判断であろう。
だからと言って皆が発車時刻を守らなければ正常運行は保てないから
このあたりは列車長の裁量がモノを言う場面である。
関門トンネルを抜けると、列車は築堤の上を走り、ガーター橋を越えた。
「ロータリー会館」なんていうパチンコ店が見える。
ロータリエンジンのマツダ、は広島だが(笑)。この看板を見ると下関に戻ってきた、という気になる。
幾度となく同じ路線に乗車していると、そんな旅のひとコマ、が印象に残ることがあるが
今度来た時も同じところにあるのかな?などと思ったりもする。
「まもなく、下関に到着です。お出口は右側..。」と案内放送が再び入り
「下関駅では機関車付け替え作業のため5分ほど停車致します
ホーム売店は8号車付近です。お弁当、等お買い物の方は
発車の際ホームのベルは鳴りませんのでご注意ください。」と注意を促して終了する。
静かにEF81は制動をかけ、来た時と同じホームにゆっくりと停車。
ここでEF81はお疲れさま。
機関車交換だ。
進行方向からみて左手の留置線に、「富士」のヘッド・マークをつけたEF66が
ヘッド・ライトを消したまま待機している。
カメラをもってデッキに立つと、空気作動の折り戸がエアを解放し、バシャン、と
バネ仕掛けのように開いた。
これもずっと伝統のブルー・トレインらしさだが、ふた昔前の路線バスのような古さを感じ
そこがまたとても良い(笑)。
今では路線バスですらゆっくりと開閉するように制御されているが、この編成のそれは
いきなり折り戸がステップに畳まれるので、初めて降車される方は驚いてしまうようだ。
一応、折り戸の部分には黄色と黒の工事用ロープ(俗称、トラロープ笑)が引かれているが
こんな風に保護するようになったのは最近の事ではないかと思う。
昔の客車列車は自動ドアではなかったから、走行中に開いている事などしばし、であったし
固定編成でない客車列車などは最後尾、デッキへでると鎖が一本、
寝ぼけて落ちたらハイ、それまでヨ(笑)なんて列車も多かった。
過保護だなァと思うが、駆け込み乗車でドアに挟まれても損害賠償を請求する世の中だから
いきおい慎重になるのも致し方ないかとも思う。
ステップを下り、コンクリート打ち放しが好ましい下関駅のホームに降り立つ。
駅ホームからは関門海峡は見えないが、微かに潮っぽい風が吹いていた。
緩やかに湾曲しているホームを東京方に向けて歩く、
ふと、振り返ると乗客が多数、うどんスタンドに駆けて行くのが見えた。
ポール・ポジションをS君は確保出来ただろうか(笑)
筆者は機関車の方へ。
編成先端、14号車へ移動して、EF81にお別れの写真を撮った。
外から写真を撮ろうかとも思ったが、作業中、ストロボの光は危険だろうと遠慮した。
続いて、EF66がこんばんは、と連結。衝動も少なく、見事な連結である。
さあ、ここからは直流区間、元世界チャンピオン(笑)EF66型の実力の見せ所。
まだまだ東京は遠く、果てのないように鉄路は続いている....
[門司駅までは7分..]
その7分の間に車掌のアナウンスがまた入り、「まもなく門司に到着です」と
丁寧な口調で滑らかに案内が行われる。
かつては、門司で関門トンネル専用の機関車EF30型に付け替え作業があったが
現在では運用変更により、EF81のまま進行して下関でEF66に付け替える様子。
アナウンスは「門司駅にはホームに売店はございません、停車時間短くなっておりますので
ホームにお降りにならないようお願い致します。」と締めた。
(これは1997年当時の話であり、現在では運用によりこの2列車の牽引機は
門司で切り離し、別のEF81と付け替えられている。
EF81にはおおまかに分けて3種類あり、基本番台、300番台、400番台。
300番台はステンレスボディ、400番台は重連統括制御タイプだそうだ。)
編成はゆっくりと減速し、衝動なく門司駅に到着、停止。
意外と閑散としている駅ホームに人影はまばら。
だが、博多方面ゆき普通列車発着ホームには列車待ち通勤客風の人影がちらほら
海風に吹かれている。
狭い関門海峡の向こうには本州が見え、臨海工業地帯の工場の明かり、ゆっくりと通過する
船の灯火、光芒まぶしく集魚船らしき影が遠く、沖にゆらゆらと揺れていた。
高架のホームに停車中の列車からそれを眺めていると、ガクリ、と列車は動きだし
静かに門司駅を後にした。
ほぼ無数に思えるような線路の束の中を緩行し、デッド・セクションを通過するが
この客車編成は自家発電なので、交流/直流の変換を意識する事は無い。
機関車の運転席では機器の切り替え、確認喚呼が行われていることであろう。
列車は関門トンネルに入り、九州を後にする。
ああ、今回の旅も終わりが近づいている...
さよなら、九州、また来る日まで......
と、思っていると、ドアをノックする音。「起きてますか?」
ワンパターンの呼びかけ。(笑)。
「開いてるよ、と言うとS君が入ってきて、「下関でうどん食べますか}(笑)。
下関駅のうどんは来る時に食べたので「いいよ、ありがとう」と言う。
筆者もそうだが、K君、S君とも堂々たる体型であるからもちろん食いしん坊であり
皆に「三役揃い踏み」とからかわれるようによく物を食べる方だから、割と行動パターンは似ている。
さっき、食べたばかりじゃないか、と言うと、「下関のうどんは美味しいんですよ、天ぷら入りで」と。
関東だと駅そばだが、中国地方は関西風なのか、駅ホームにうどんスタンドがある。
もちろんそばもあるが、見ているとよく売れるのはうどんの方。
この下関駅のうどんは、名物のふく天が乗っており、やや甘めのつゆと腰のある麺が
独特の風味を醸していて、確かに美味く、食べたくなるキモチも分かる。
関西ふうの、塩っぽい澄んだ汁とも、讃岐風の出汁の効いた味ともまた違う
コクのある濃厚なだしと甘めの味付けは、なんだろうか、九州風なのだろうか。
九州の味というと、たいていの関東人には甘く感じるように思え、四国へゆくと
味つけは薄くだしの風味が強いという印象があるから、下関駅ホームのうどんの味は
関門ふう、なのかもしれない。
S君はさっさと編成中程に移動、売店のそばのデッキで到着待ち(笑)
乗客が殺到するとうどんが食えないと危惧したらしい。
大丈夫、車掌氏もそれほど不粋ではないだろう、と思う。
以前は、お釣りをもらって売店から駆け出すおばあちゃんを「走らなくてもいいですよ」と
専務氏が声を掛けていたし....。
長距離列車だから、至ってのんびりとしたものである。
多少の遅れは長い道中のうちに取り戻せるし、なにより乗客に怪我があってはいけない、
という判断であろう。
だからと言って皆が発車時刻を守らなければ正常運行は保てないから
このあたりは列車長の裁量がモノを言う場面である。
関門トンネルを抜けると、列車は築堤の上を走り、ガーター橋を越えた。
「ロータリー会館」なんていうパチンコ店が見える。
ロータリエンジンのマツダ、は広島だが(笑)。この看板を見ると下関に戻ってきた、という気になる。
幾度となく同じ路線に乗車していると、そんな旅のひとコマ、が印象に残ることがあるが
今度来た時も同じところにあるのかな?などと思ったりもする。
「まもなく、下関に到着です。お出口は右側..。」と案内放送が再び入り
「下関駅では機関車付け替え作業のため5分ほど停車致します
ホーム売店は8号車付近です。お弁当、等お買い物の方は
発車の際ホームのベルは鳴りませんのでご注意ください。」と注意を促して終了する。
静かにEF81は制動をかけ、来た時と同じホームにゆっくりと停車。
ここでEF81はお疲れさま。
機関車交換だ。
進行方向からみて左手の留置線に、「富士」のヘッド・マークをつけたEF66が
ヘッド・ライトを消したまま待機している。
カメラをもってデッキに立つと、空気作動の折り戸がエアを解放し、バシャン、と
バネ仕掛けのように開いた。
これもずっと伝統のブルー・トレインらしさだが、ふた昔前の路線バスのような古さを感じ
そこがまたとても良い(笑)。
今では路線バスですらゆっくりと開閉するように制御されているが、この編成のそれは
いきなり折り戸がステップに畳まれるので、初めて降車される方は驚いてしまうようだ。
一応、折り戸の部分には黄色と黒の工事用ロープ(俗称、トラロープ笑)が引かれているが
こんな風に保護するようになったのは最近の事ではないかと思う。
昔の客車列車は自動ドアではなかったから、走行中に開いている事などしばし、であったし
固定編成でない客車列車などは最後尾、デッキへでると鎖が一本、
寝ぼけて落ちたらハイ、それまでヨ(笑)なんて列車も多かった。
過保護だなァと思うが、駆け込み乗車でドアに挟まれても損害賠償を請求する世の中だから
いきおい慎重になるのも致し方ないかとも思う。
ステップを下り、コンクリート打ち放しが好ましい下関駅のホームに降り立つ。
駅ホームからは関門海峡は見えないが、微かに潮っぽい風が吹いていた。
緩やかに湾曲しているホームを東京方に向けて歩く、
ふと、振り返ると乗客が多数、うどんスタンドに駆けて行くのが見えた。
ポール・ポジションをS君は確保出来ただろうか(笑)
筆者は機関車の方へ。
編成先端、14号車へ移動して、EF81にお別れの写真を撮った。
外から写真を撮ろうかとも思ったが、作業中、ストロボの光は危険だろうと遠慮した。
続いて、EF66がこんばんは、と連結。衝動も少なく、見事な連結である。
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