タビスルムスメ

深町珠

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リチャード・キンブル

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部屋に入る。「こんばんはー。」と、友里絵。

「誰もいないって。」と、由香。


「返事したら怖いよ」と、菜由。


「はやく、にんげんになりたーい」と、友里絵。

「おまえはみかんだ、腐ったみかん!」と、由香。

「懐かしいな」と、菜由。



「腐ったまん・・・・」と友里絵。


由香は友里絵の口を塞いで「あ、いいのか、誰もいないから、じゃ、どーぞ」



友里絵「いいたくなーい」


由香「ひねくれボー。」

友里絵「棒はひねくれてた方がいーのよ」


菜由「ははは」


友里絵「石川さんのはひねくれてる?」


菜由「知らないよ、そんなこと」


由香「やーめろって、そういうネタは。追放されるぞ、業界から」

友里絵「何の業界?」


由香「あ、そっか。ははは」



菜由「愛紗、良かったね。道がひとつ拓けて。」

愛紗「うん。でも・・・・九州で就職したらさ。親に見つかっちゃうよ。」


友里絵「そだね。でも、伯母さんも言ってたけど。そのうち諦めるよ。」

由香「元々諦められてるあんたはいいね」


友里絵「ははは」

由香「笑ってていいのか」


友里絵「いいともー!」


由香「だーめだこりゃ」



友里絵「でも、なんかかっこいいかも。追っ手から逃げる正義の人。」


由香「逃亡者かい」


友里絵「リチャード・キンブル。職業、医師。」と、腰を振る。

由香「オマエが振っても金ないだろ」


友里絵「リチャード・無いぶる」


菜由「おーあぶない。何言うかと思った。」

由香「生放送禁止だな」


友里絵「生はいやーん」


由香「それだけなら大丈夫か」



愛紗は、楽しそうに聞いている。


友里絵「あ、引いちゃった?」

愛紗「ううん、いいの。その方が。楽しいもの」



友里絵「そっか、じゃ・・・。」

由香「もいっかい風呂行って寝るかな」


友里絵「あたしもいくー。」

由香「んじゃ、いっしょにいこ」


友里絵「イクときはいっしょよ」


由香「カタカナにすんな!」と、ひっぱたく。


ははは、と。
タオルもって友里絵と由香。305を出て行く。


菜由「明るいな、ほんと」

愛紗「ほんと」と、笑った。


菜由「でもさーぁ、みんな国鉄に入ったとしても、仕事が違えば
たまにしか会えないんじゃない?」


愛紗「そうね。それはバスでも同じだけど。」


菜由「家になんていうか、ね。」


愛紗「そう、それに・・・友里絵ちゃんたちがわたしに気を使って
こっちに越してくれるんじゃ、悪いじゃない。」



菜由「それはそうだけど・・・大岡山だってガイドは契約社員にしちゃうって
話だし。
いつまでも続かないよね。それに、ガイドの仕事だって。
国鉄の方が条件良さそうだよね。
友里絵ちゃんたちだって、大岡山でドライバーになったら
何があるか解らないもの」



愛紗「そう・・・だね。」

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