タビスルムスメ

深町珠

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湯前線

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逆向きに進むので、運転士さんが来る。

紺色の制服。制帽。
腕章に、運転士、Driverとある。

日光さんは、逆側の車両へ。

友里絵は、ばいばーい、と、手を振って。

名刺を渡して来た。

「営業マン_」友里絵。


「_なんだよ、この間は。見てる人がびっくりするじゃん」と、由香。


「元、営業マン」と、友里絵。


「それは青島くんじゃん」と、由香。


「青島くんはキミじゃん」と、友里絵。

「なつかしいね」と、菜由。



「事件は現場で起こってるんだ!」と、友里絵。


「ははは。管理あるあるね。」と、菜由。



「こっちは、ああいう話はあんまりウケないだろね」と、由香。


菜由「うん、なんかいまいちわかりにくい」


愛紗は「みんないい人ならね」



友里絵「ほんと。こっちに引っ越してもいいかなー、なんて」


由香「それで営業か」

菜由「日光さん、なんだって?]


友里絵「営業は、足です」


由香「まだ青島くんしてるねー。」


友里絵「さっきのCAさんにも渡してきたけど。メアド聞けたし」


由香「まあ、女同士だもんね」




駅が行き止まりなので、坂を下りながらゆっくり、ゆっくり走り出す。




「もうじき終点ね」と、愛紗。


「え、もう終わりかー、もっと乗ってたい」と、友里絵。



愛紗「じゃあ、まだお昼だし。湯前線でも回る?」


友里絵「湯前線って?」


菜由「ここから、東の方へ行く、行き止まりのローカル線。」


由香「そんなのあるんだ」



愛紗「ほんとは宮崎につなぐ予定だったんだけど、途中で止めて」


由香「もったいないね」



菜由「でもまあ、そこに住んでる人は便利だし」



かったん、かったん・・・・と、ディーゼルカーは
エンジンが掛かったまま、クラッチをつながずに下り始めて。

そのうち、クラッチをつなぐと
エンジンの回転が上がる。排気ブレーキを掛けて、ゆっくりゆっくり。


日光さんが、友里絵のところに来て「これ、わたしの連絡先です」


友里絵「ありがとー。お暇な時でもメールして。」

日光さんは「はーい」


由香「真由美ちゃんか。かわいいお名前。」


日光さん、にこにこ。


友里絵は「にこにこだから、にこちゃんね」

日光さんは「ちいさい頃、そんなふうに呼ばれてました」


由香「友里絵は・・・ゆりちゃんか。キモっ」

みんな、笑った。

友里絵も「背中が痒くなった」

ハハハ、と、自分でも笑う。


日光さんは「あ、それでは乗務中なので・・・」と。


車掌室に戻る。


トンネルをくぐると、民家が見えてきて。
だんだん、盆地の風景になってきた。

左側に、線路が見えてきて並走する。


「これ、湯前線ね」と、愛紗。


菜由「詳しいね」

愛紗は「来たことあるし。前は蒸気機関車だった」


友里絵「いいなぁ、汽車乗りたい!」

由香「うちらの方はなかったもんね。遊園地くらいしか」


愛紗「あるわよ。熊本の方へ行くと。」


友里絵「いいね、乗ろう乗ろう!」


愛紗「今からだと・・・帰って来れないから、明日かな。
そうそう、湯前線の終点に、機関車置いてあるよ。
ブルートレインもあったな」


友里絵「よし!出発進行!」


由香「乗るネェ」



友里絵「お昼食べてからね」


みんな、笑う。



チャイムが

♪ぴんぽん♪


日光さんのかわいい声で

ーーー間もなく、終点、人吉に到着致します。
どなたさまも、お忘れ物、落し物ございませんよう
お手回り品ご注意くださいーーー。
お出口は右側です。



「あー、もう着いちゃった」と、友里絵。


街を見下ろすような土手の上に線路が敷いてあり、
小さな鉄橋をひとつ、越えると

大きな駅が見えてくる。

右手には、断崖絶壁のような岩があって。

「なんだろね、あれ」と、由香。



愛紗は「なにか、遺跡だったとか・・・。」




友里絵は「井関?耕運機か。♪だっだっだ♪
よーぉ、小太郎ねー♪」と、どじょうすくいの格好をして」


由香「二郎さんか」


菜由「欣ちゃんはいないの」


友里絵はがにまたのまま、股をさぐって「金ちゃん?ないよ」


由香「ヌードルかい」


友里絵「芸術の為なら、脱ぎます、あたし」肩出して。


由香「それはヌード」



楽しく、肥薩線の旅は小休止。

お昼だ。



スレートの屋根が見えてきた。

人吉駅である。

結構おおきな構内で、肥薩線4線、湯前線2線。


なぜか、蒸気機関車が待機している。
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