タビスルムスメ

深町珠

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ひっ!

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恵は、そのころ・・・・。

急行「球磨川2号」熊本ゆきの車中で
のんびり寝ていた。

温かいディーゼルカー。
床下にエンジンがあるから、なんとなく温かいのだ。

夏は暑いが(^^;


通りかかった車掌・・・顔見知りである(^^)。


「あら・・・・めぐちゃん、寝てるわ・・ちょっと、からかってやろう(^^;」


耳の下を、人差し指で、ちょい(^^)。


恵は「ひっ!」と、飛び起きて。


「おのれ!曲者!この紋所が目に入らぬかー!」と、

懐の「鉄道巡査証」 葵ならぬ菊のご紋を出して。立ち上がる。










お兄ちゃんは、EF81-137の運転台で。

鉄道無線を聞いていた。

出発信号は既に、青。
ターミナル側線から、本線への進入信号。


信号現示、よし!。


時計を見ていた。


11時・・・・05分。



「137レ、定時、出発、進行!」と、指差呼称。


機関車単弁を緩め、ゆっくり前進、1ノッチ、すぐに0。
編成ブレーキを緩める。

電磁直通弁ではなく、空気弁。

編成の前から、空気が抜けて
序々にブレーキが緩んで。

すこーしづつ、連結器ばねが緩む。

わずかな連結器隙間が延びるのだ。
こうすると、客車がショックなく進む。

夜行寝台など、人が乗っている深夜などは特に注意である。

空気が、編成全体抜けるまで時間があるので
その間は進まない。

あくまで勘である。


勾配なら、停まる前に連結器ばねを伸ばしておく。

客車牽引の鉄則であるが、芸の類である。




衝撃なく発進できた。


体に感じられるのである。



ノッチを1に戻す。



「速度、20!」


ノッチを2にする。



客車だから、ゆっくり、ゆっくり・・・・。


機関車がポイントを渡る。


足もとで、かたかたこと、かたかたこと・・・。

EF81なので、6つの車輪が渡る。









ふたたび、急行「球磨川2号」・・・。


「おのれ!曲者!この紋所が目に入らぬかー!」と、

飛び起きた恵は


黒いスーツ、赤いワンポイント。
つばめの意匠。

丸い帽子。

タイトスカート。すらり、長身。

日焼けした顔、すこし茶色い髪、セミロング。さらさら。

白い歯を出して、ニカっ、と笑う。


「なんだ、裕子か、おはよう」と恵。


裕子は「おはようじゃなーい。何時だとおもっとる!」と。


恵は座席に座って「非番だよー」


裕子は「みりゃわかるよ。どこ行ってきたの?」


列車は、かたかた・・・かたこん・・軽快に球磨川沿いを下っている。


恵「人吉温泉」


裕子「へー、いいねぇお気楽さん。」と、にっこり。「んじゃ、仕事する」


恵「いっといでー。」と、手を振って。










その頃、豊肥本線・・・宮地駅に
快速「SLあそBOY」は、到着する。

蒸気機関車なので、ゆっくりゆっくり。

シリンダ弁を開き、蒸気弁は閉じ、機関車ブレーキにも出来るが

機関車が大正11年製造と古いので、それを使わない。

クランクピンを保護する為、である。


ゆっくり、ゆっくり減速して、最後に機械ブレーキ。


き・・・・きききき・・・・。


編成は、宮地駅に着く。



「つーいた!」と、友里絵はバッグを持って。

「降りよ」と、廊下をとてとて・・・2号車のさかまゆちゃん、ともちゃんのとこへ。


「んじゃ、リッチモンドで待ってるねー」と、友里絵、にこにこ。

さかまゆ「はい」(^^)。白い頬に掛かる髪が、なんとなく雰囲気がある。

ともちゃんも、にこにこ。笑うととっても可愛らしい。幼い子みたい。



とてとてとて・・・・と。3号車に戻ろうとして。

由香にぶつかった☆(笑)。


「いったーい、なにすんのぉ」
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