タビスルムスメ

深町珠

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おにいさま・・・。

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大分ゆき下り「ゆふ3号」は・・・。友里絵たちを乗せて
快調に下っていく。

三重町は、山の中の小さな駅、と言う感じだけれども
なぜか、特急も止まるし国鉄バスも出ている。


「石仏があるんですね」と、ともちゃん。


愛紗「あ、臼杵でしょ?」


ともちゃん・さかまゆちゃん「ハイ」と、同時に言って
顔を見合わせて「ハハハ」と、笑った。


友里絵は「なんか、だーるまさんみたいなのがあるんでしょ?」

菜由「まあ、そんなもんだけど。崖に彫ってあるのね」


由香「彫るの多いね?」


友里絵「ポルノ?」

由香「それはあんたが好きなの」

友里絵は、ハハハ、と笑い「そんなのみないよーだ。」

さかまゆちゃんははずかしそう(*^^*)。

友里絵のケータイに着信「あ、まゆまゆちゃん。お兄ちゃん、やっぱ、結婚なんて
早いって。特急組の予備に回るかも、って」


さかまゆちゃん「すごいですね」

ともちゃん「ベテランでもなかなか・・・」

パティは「まゆまゆは、淋しくなるね」と。ホントに淋しそうな表情。
やさしい子。


友里絵「なんで淋しいの?」


パティ「ハイ。そうなると・・・あんまり、お家に帰って来れなくなるでしょ」

菜由は「今も、あんまり帰ってないって言うし」


友里絵「ああ、お兄様・・・・」と、ひざまづく仕草。


由香「禁断の愛か」


友里絵「なにそれ、虫刺されのくすり?」

菜由「ムヒ」



ハハハ、とみんな笑う。「そっちかい」



友里絵は「ねーぇ。パティがそのメイドさんルックでやってみて」


パティは「こうですか?」とひざまづいて。首を12度傾けて。

「ああ、おにいさま・・・・。」大きな青い瞳うるうる。ブロンドの髪が掛かって。
かわいい。



さかまゆは「パティはさーぁ、女優になったら」

パティ「ムリムリ」


ともちゃん「マリリン・モンローみたいな」

パティ「ハハハ・・・あ、中判田につきますね」


カーブをいくつか過ぎて・・・。森の中に入って。


♪チャイム♪


ーまもなく、中判田ですーー降り口は左側ですーー。



森から抜け出たカーブの途中、小さな駅で。

回りはなんにもない。



友里絵は「なんでここに停まるんだろ、特急が」


由香「行き違いじゃない?」

島になっているホームの反対側に、赤いディーゼルカー、一両。

ツー、と。電子ブザーが鳴って。ドアが閉じて。

がらがらがら・・・・と、走り出した。


菜由は「大分、もうすぐだね」

愛紗は、帰って来たな、と・・・。旅の感慨に耽った。
いろんな事があったっけ・・・。


旅って、いいな・・・・。










お兄ちゃんは、機関区から直接、寮に帰った。
新幹線口から、歩いてすぐそばで

こちら側は静かな住宅地。


歩きながら、少し思う・・・・。


「真由美が・・・・誰かの嫁になる、って日もあるんだろうけど。」


なんとなく、それを想像すると淋しい。「まあ、兄ってそうなんだろうけど」

妹が、可愛くて。
それだけなんだけどなぁ・・・。

誰かのものになってほしくないなぁ。なんて思ったりもする。


もうちょっと、このままで・・・。


「なんたって、真由美の大事なとこはオレが最初に触った」

なーんて事は思わない(笑)。










まゆまゆちゃんは、制服のままで、人吉行きの急行「球磨川4号」が待つ
ホームへ。


ごーぉ・・・と、エンジンが回っている。煙がたなびく急行ディーゼル・カー。


クリーム色のボディ。窓枠が赤で。
前から見ると、鳥の羽みたいなデザインに見える。



「それにしても、あんなきっかけで。」
恵さんにしよう、なんて・・・・。お母さんもいいかげん。

ちょっと、怒っている(^^)。


ムネさわったくらいで。

あたしなんか、お兄ちゃんに大事なとこを触られてたんだから!


なーんて、思わないけど(笑)。



最後尾の車掌室に行くと・・・。スリム。浅黒く日焼け、さっぱりしたレイヤードカット。
すこし赤い髪。

「ああ、裕子さんだ」と、まゆまゆ。



「こんばんはー」と、まゆまゆ。



裕子は「なに?ああ、添乗か、ドウゾ」と、車掌室のドアを開けて
「待てよ、ここだと丸見えだから、立ってなきゃなんないから・・・業務室行けば?」

急行、この時間はワゴンサービスが無いので、がら空きだ。
すりガラスだから、客室から見えないし。椅子もある。


機転の利く、裕子だ。

「ありがとうございます」と、まゆまゆ。

裕子は「なーに、お互い様だよ。まゆまゆもさーもうじき20歳だね。試験受ける?」


まゆまゆちゃんは「まだ、考えてません」

裕子はにこっ、と笑って「そうだねー。そのままお嫁さんに行った方が幸せかもね。ハハハ



と・・・・「鍵は持ってるでしょ?」


まゆまゆ「ハイ」。車掌室キーと共通である。

それは、乗務の時に携行している。






「それじゃあ、ありがとうございます」と・・・・まゆまゆちゃんは。

2号車の業務室へ、と・・・ホームを歩いた。


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