タビスルムスメ

深町珠

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ぶんご おぎ

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豊肥本線特急「あそ」3号は、結構な速度で坂を下って・・森の間の駅に停まる。


友里絵は、ベーコンエピをちぎって食べながら「ぶんごおぎ、だって。
来るとき、ぶんごもり、ってあったよね」

と。
ほんとに森の中、と言う感じ。駅名看板が、木のままで。白いペンキに黒い手書きの字で

ぶんご おぎ。 荻だけ大きいの(^^)。


由香は「そういえば、恵さんも荻だけど、ここの町かなぁ」


友里絵は「じゃ、ゆかは青島だから、あっちに住まなきゃ」

由香は「ハハハ、んなわけ・・・あるのかな。ご先祖様があっちか」


友里絵「都知事と同じ、青島です」と、敬礼。


菜由「古い」

友里絵「なはは」

さかまゆちゃんは、静かだなー。と思ってたら・・・寝てた(^^)。

ともちゃんも。


友里絵は「朝早いのかな」

由香「さぁ・・・でも、そうだよね。SLあそBOYって、9時頃でしょ出発。」

8時頃には準備があるだろう、ワゴンだし。
その前に点呼がある、と・・・なんとなく連想する由香。


それでも遅いほうだな、と
愛紗は思った。

その前の日が何時に終わったにしても、時間が不規則だと
中々・・・「はい、寝ます!」ってわけにもいかなかったり。


「旅する娘ってのも・・・過酷だね」と、菜由。


「寝かせといてあげよ」と、友里絵。

しずかーに、しずかーに。

ひそひそ話すとかえってうるさい(笑)。



すこーし、曇り空の豊後荻駅。
静か。ホームに、にゃんこが2匹・・・とことこ。

ホームからそのまま、外へ出て行って。
お散歩。



友里絵は「たまもお散歩してるかな」


由香は「ああ、高森の?」


友里絵は、こっくり。




そのうちに、大分側から・・・上りの赤いディーゼル・カー。
おなじ特急「あそ」だろうか。
ゆっくりゆっくり走ってきて、停車した。

こちら側、出発信号が、青になる。


車掌さんの笛が吹かれて、ドア、閉!。

バタリ、と。バスのような折り戸が閉まる。


「あ」さかまゆちゃん、目覚める。

ふんわり。眠たそうにしてる。
白い頬に、切り揃えられた髪が掛かって、かわいい。

「寝ちゃいました・・・」(^^;と。


ともちゃんは、まだ寝てる(^^;


でも、さかまゆちゃんが起きたので、「あれ?、ここ?どこ?あれ?」
あたりを見回すともちゃん。

前髪が、ちょっと目深に見えて。
フランスのお人形さんみたいな、すっきり顔。でも、眠たそうだと
なんか、かわいい。
天使さんみたいに。


「あー、寝ちゃってた。あれ?乗務?どうしたんだっけ」


さかまゆちゃん「回送回送」


ともちゃん「あ、そっかー」



列車は、かたこと。動き出した。


窓枠に、バッタが止まっている。


友里絵は「あれー、こんなとこに」


由香は「落っこちないかなぁ」

愛紗は「赤い列車だから、お花と間違えたのかな」


菜由「そうかも」


がらがらがら・・・と、走り出す特急「あそ」3号。
でも、下り坂だから、すぐに直結2段に入れて
エンジンブレーキ。

カーブを、ふんわり回っている。


パティが、ワゴンを押して戻ってきて「くつろいでますか?」

みんな「はーい」と、にこにこ。

パティは「ジュースとか、いる?」


由香は「そうね。ブラックコーヒーとか。冷たいの出来る?」


パティはにっこり。「はい」と。

淹れ立てのコーヒーが、ポットに入っていて。
それを、氷の上から注ぐ。


いい香り。

別に、氷を満たしたカップに。それを入れて。「どーぞ」


友里絵は「いー香りだね」と、わんわんルックのヘア・スタイルで
お鼻をひくひく。(^^)。


愛紗は「かわいいね、その髪」

友里絵「へへ」


由香「昔はこうだったもんねえ」


菜由「あ、なんか想像できる」

幼稚園の青いスモック着て。

ちいさい友里絵。

お花のかたちの名札とか。黄色いかばんもって。
とっとことっとこ。


ドロ団子捏ねたり(笑)。


由香「このまんまだけど」


ハハハ、とみんな笑う。

パティは「かーいーもんね」と、にこにこ。









人吉駅のまゆまゆちゃんは・・・。

上り特急「あそ5号」14:10発に乗務するところ。
下りで着いた編成が、待機線でお掃除されていて。

丁寧に、肘掛を拭いたり。窓を拭いたり。
フロアをお掃除したり。ゴミを出したり。その作業を見ていた。

やがて・・・・編成が入ってきて。

3号車の、業務扉からその、荷物を出したり。
大きなビニール袋のゴミを出したり。
そんな作業を見ていて。

重そうだから。


「ひとつ持ちます」と。

お掃除のおばちゃんは「いいよいいよ。これから乗務だろ」と。にこにこ。


それでも、ひとつだけ。

ホームを走るカートまで乗せてあげた。

お掃除のおばちゃんは「ありがと」と。日焼けした顔でにっこり。
農家のひとかな。


いえいえ・・・と、まゆまゆは
にっこり。

黒いスーツ。この仕業、CAと車掌補業務。
検札、出札があるので少し、緊張。



と言っても、もう慣れてはいるけれど。



お手伝いして、ありがとう、っていわれると
うれしい、まゆまゆだった。(^^)。









EF81-137、車上のお兄ちゃんは
ゆっくり待機中。

鹿児島本線、特急は高速。振り子式車両もあるので
110km/hを超えて走るダイヤもある。

そういう時、客車回送のこの列車は
電車を先行させる。

寝台特急もそうで、大きな駅では
よく、電車に追い抜かれる。


こういう時間は、割と、のんびり気が抜ける。
無線に気をつけていればいいのだ。


乗っていて、転動、と言って
列車が動いてしまう事がなければ大丈夫。



しばらくすると・・・・。


しゃー・・・と言う、車輪がレールの上を滑る音がして。
銀色の特急車両が、風を巻き上げて通過していく。

カーブなので、すこし傾いているのがよく判る。


しゃーん、しゃーん、しゃーん・・・・。新幹線のような音だ。


テールサインだけが赤い。



「すごいスピードだな」と、お兄ちゃんは思った。

130km/hは出ているだろう。



でも・・・やっぱり機関車がいいな、と。
機械に囲まれて。背中で大きな音を立てて回るブロアーと
モータ、トランス。セミコンダクタ。

大きな機械を操る面白さは、機関車だ、と・・・思う。


出発信号機が、青になる。


出発、進行!



信号を指差し。



停止する時に、編成連結器ばねを伸ばしておいたので
そのまま、機関車単弁を解放。ゆっくり1ノッチ。
感覚が微妙で、機関車ブレーキが開いてしまうと「ドン」と出てしまう。
そこが、個体差がある。


137号機は、割と硬いほう。
ゆっくり開いたほうがいい、ようだ。








改札を出る前に、車掌区に寄って、明日の乗務時間を確かめた恵。

「8時か、楽だな」


でも7時には来て居ないと、何か遭ったら困る。


まあ、徒歩通勤だとそんなに困らないけど。
バイクとか車、なんかだと
故障とか事故、なんてあると・・ね。


徒歩で困るのは、痴漢くらいだろうけど。

恵は、カンフーを習っていたりする。


「アチョ!」と、回し蹴り一発!(^^)。


「ブルース・リーになれるかな?」


と、どっかしらコミカルな恵である(^^;

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