やさしい気持ち~evergreen~

深町珠

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校庭で

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[evergreen]

昼休みの学校。
ざわめき、賑やかし。
躍動するエネルギィ、とめどなく。
あふれる、「若さ」がそこにある...。

桜、未だ開花せず。

ひとりの少女が、中庭で陽射しのなかに。

目深に断ち切られた髪。
ストレートのロング。

普通の「制服」なのだが、どことなく清楚。
そんな雰囲気が、内面から滲み出るようだ。

少女の側の立ち木に、ひよどりが。
梢で、囀る。


「hi-yo hiyo hhi~yo...」

少女、笑顔に。


「ひーよ、ひよ、ひよ」

鳴きまね。


「hi-yo hiyo hhi~yo...」

小鳥は、さえずりを返す。

「あ。つうじたわ!」




「ひーよ、ひよ、ひよ」
「hi-yo hiyo hhi~yo...」

「ひーよ、ひよ、ひよ」
「hi-yo hiyo hhi~yo...」


そんな事を、繰り返す。




少女は、いつしか回想していた。



怪我をしていた、いたずらカラス。
翼をいため、傷ついていた。
手負い故、防御のために頑なに。
それが、ヒトには「悪戯」と。



そうじゃない、そうじゃない!
あの子は、寂しいだけなんだ。


少女には、よく理解できた。


自身に良く似た、「ひとり」のカラス。


いつしか、「ふたり」はうちとけあって。
気持ちの、伝わる、「ともだち」に。




「...クロ、元気にしてるかな..。」




ひよどりの、小気味よい囀りが失せ、
ふいに、飛び立つ。


「...あ...」
「...いっちゃった...。」



なにげなく、振りむく。
しなやかな髪が、さらり、と揺れる。





少女が、ひとり。



古典的な文学少女、といったタイプ。
髪を両肩のあたりで、リボンで束ねている。
水晶のように、透明。という印象。
歩調は、ゆっくりと、静かに。

歩いて来る。


「....あ....。」


「こんにちは。」


澄み切った秋空のような美声の、彼女。
ペーパーバックを胸に、柔和に微笑む。
眼鏡の奥の視線、嫋やかに。



「鳥と、お話ができるんですね...。」


「ぁ...見ていたんですか...。」



消え入りそうに、つぶやく彼女。

俯く。赤面。
耳まで、赤い。



「素敵、ですね。」


お下げの少女、穏やかに。



「.....ぁ...ぃぇ...。」

言葉が、でない。
未だ、俯いたまま。



いくらか冷たい、春風が。

リボンを揺らし、駆け抜ける。
内気な少女は、俯いたまま。
彼女の髪も、靡いてゆれる。


「もう....。」


「....ぇ....。



Aです、ね...。」


「...........。」
「...........。」





やわらかな光線が、ふたりを包む。
昼下がりの、校庭。


「...ずっと...。」

「..一緒なら..いいのに...。」


「そうです、ね。」




予鈴の鐘が、優しく響く......。










[ふたりのホワイトクリスマス]


今日はクリスマス・イヴ。
僕は、ひとりでパーティーに。

人気の少ない公園通り。
冬枯れのポプラ並木に、電飾。
花が咲いているみたいだ。
街路に、鈴の音が聞こえそう。

でも、僕は....。

なぜか、さびしくなってしまう。
コートの袖から、冷たい風が。


あの娘が転校してからの、歳月。


想い出。



「どうして、泣いているの...?」
「泣いてなんか、ないモン。」








「知ってるか?転校...したんだって。」
「!」



「あ。電話くれるなんて....。」


ちいさくて、赤ちゃんみたいに柔らかい手。
おかっぱの髪型。
ちょっと、甘えたようなわがまま。


ひとつひとつを、思い出す。


革靴の音が、エコーをひいて。
冷えた空気を響かせる....。


コートの裾から、冷気が凍みる。


水銀灯が、冷え冷えと。

こんな気分は何だろう。



空気が、重い。



「・・・。」


誰かに、呼び止められた様な。

振り返る。

気のせいか。

向き直す。

そこに、碧の黒髪の君。

「...。」

「えへ、きちゃった。」
「きちゃったって...。あんな遠くから。」
「あなたに、あいたくて.....。」




話したい、大事なことが。
たくさんあったはずなのに。
じっとこうして、みつめるだけで。
僕のこころは、それだけで...。




「送るよ。こんな夜に、一人じゃ...。」
「あ、だいじょうぶ。駅までで。」
「じゃ、駅まで。」
「....うん。」


二人ならんで、歩く。
久しぶりだな、こうするのも。

不思議と、寒さを感じない。



火照った頬に、さわやかな感触。

「....?。」

空を見上げる。





ブルー・グレイの空が砕けて、
ひらひらひらと、風に舞う。
静かにゆらぐ Snow flakes
free-fall。


まぶしい瞳で僕を見つめる

Lady * elfin....。


Snow flake ....。





僕の Lady elfin。


想い。

僕を見つめる、瞳が揺れる。
ふと、視線がそれる。


「あ!」

「雪.....。」




「えへ。」

「どうしたの?」

「きょうは、ふたりのホワイトクリスマスだね。」

「...ずっと、ずっと一緒なら、いいのに.....。」





駅は、閑散と。
昼間と違う場所のよう。

高架のホームへ、階段を昇る。
ふたりの靴音だけが響く。

発車を示す、チャイム。



「・・・・・。」
「・・・・・。」


もっと、いろんな、いろんなことを。
ずっとこのまま話していたい。
僕と、一緒にいてほしい。
そんな想いが、逡巡している。


何を話せばいいのだろう。
言葉が、なにも、見つからない。



「....!。」


彼女の瞳が、涙で滲む。

あふれそうな、感情。
壊れそうな、こころ。

もしも、時を止められるなら。
この一瞬を、永遠に!

硝子越しに、手のひらをあわせて。


君のちいさな唇が。
「・・・・・。」


なんていったの?

もう届かない。

僕のことばも、とどかない。




ゆっくりと、列車が動く。

僕らの距離が、ひろがってゆく....。

粉雪が舞う。

赤い、テールランプが消えて行く。

夜闇に溶ける。

見えなくなった、列車の影を、

僕は、いつまで見送った。









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