256 / 502
YAMAHA TR1
しおりを挟む
Naomiは、ロッカールームで着替えて、シャワー代わりに
地下の温泉に入ってくると言う。
「めぐも来る?」と
誘われたけど
「あたしはいいわ」と
のぼせためぐは、断る。
「そうよね」と
Naomiは笑い、ちょっと待ってて、と
小走りに、駆けてゆく。
その、後ろ姿は
学生の頃と、何も変わらない。
めぐの方は、まるっきり学生のまんま
なんだけど。
Naomiは、さっぱりといた顔で
5分くらいで戻ってきた。
「早い!」とめぐは驚く。
Naomiはにっこり笑う。
「めぐはのんびりさんだから」と
その笑顔には、若干疲れが見える。
「疲れてんじゃない?」と
めぐが言うと
おばさんみたいに言わないでよ、と
Naomiは笑って、郵便局の地下駐車場に向かって、階段を下りる。
めぐも、付いていくと
重厚な石段の果て、なーんとなく埃っぽいのは
手紙や小包が、一杯出入りするからだろうか。
それと、インクの匂い。
みんなのために、働く人達の
人間の息吹を感じるような、そんな地下の突き当たりにロッカールーム。
左手に、大浴場。
まだ、3時半くらいだから
配達員は帰って来ない。
「夜にはね、男湯も一杯よ、覗く?」と
Naomiは、いたずらっぽく笑う。
コツコツと、靴音がびびきそうな地下パーキングには
いっぱいの自転車、配達のバイク。
それと、小さなトラック。
壁極には、長靴、
それと、小部屋があって
そこには、レインコートが沢山吊されていて。
乾燥機。
配達って、雨の日もあるからなんだろう。
それで、お風呂もあるんだな。
そういう人々の苦労があって
手紙が運ばれる。
気にしなければ、気にならない。
そんなものだけど、いろんな人々の
おかげで
世の中が動いていると
実感できるひとこま。
電車もそうだけど。
と、めぐは、リサの事を思い出した。
電車を運転するのは
おじいちゃんへの贖罪の思い?
そんな、リサは
でも、世の中のために。
早起きしたり、夜遅くまで働いたり。
素敵だなぁ、と
感心しているめぐの前を歩くNaomiは
一台のオートバイの前で歩みを止めた。
銀色に輝くオートバイ。
それは、Vの形にエンジンがそびえ
まっすぐの排気管は、メタリック。
「かっこいー」と、めぐは手をはたいた。
そのオートバイは、銀色のガソリンタンクが
鈍く光る、シックなスタイル。
黒いシート、大きなヘッドライトは丸く。
Naomiは、エンジンを掛ける。
低い音が、地下のパーキング全体を揺するように響く。
「リサんとこ、いこ?」Naomiは、にっこり。
白いヘルメット、普段着の可愛らしい服なので
かえってそれが、個性的に見える。
めぐは、オートバイのエンブレムを見た。
金色に光るそれは、YAMAHA、と読め
シートの下にあるサイドカバーにはTR1.と書かれていた。
「鳥?」とめぐは読んだので
エンジンの響きに混じり、Naomiは笑う。
「あはは!ティーアールワン、よ。」と。
Naomiは、オートバイの左に立って、センタースタンドを外す。
柔らかいサスペンションは、ふんわり、と
猫の足のようにオートバイを沈ませた。
「乗って」と、Naomiが言うので
めぐは、オートバイの後ろに乗る。
エンジンの排気音は断続的に、低い太鼓のようだ。
Naomiの背中につかまる。
ライダー、ナオミは
クラッチレバーを握り、ギアを1速に入れた。
そのままクラッチレバーを離し、アクセルを捻る。
滑り易くてつるつるの地下駐車場のコンクリートの上で、TR1は
後輪を回転させた。
前には進んでいないので、斜めに後輪が流れながら。
アクセルを少し戻し、ライダー・ナオミは
カウンター・ハンドルを切りながら
前に進んだ。
朝、見かけた郵便配達の青年たちが、日焼けの顔で
口笛を鳴らす。
TR1は、斜めに滑りながら
地上へのスロープを昇る。
暗い地下から地上へ昇ると、目映くて
天に昇るってこんな気持かな、なんて
めぐは思った。
地下の温泉に入ってくると言う。
「めぐも来る?」と
誘われたけど
「あたしはいいわ」と
のぼせためぐは、断る。
「そうよね」と
Naomiは笑い、ちょっと待ってて、と
小走りに、駆けてゆく。
その、後ろ姿は
学生の頃と、何も変わらない。
めぐの方は、まるっきり学生のまんま
なんだけど。
Naomiは、さっぱりといた顔で
5分くらいで戻ってきた。
「早い!」とめぐは驚く。
Naomiはにっこり笑う。
「めぐはのんびりさんだから」と
その笑顔には、若干疲れが見える。
「疲れてんじゃない?」と
めぐが言うと
おばさんみたいに言わないでよ、と
Naomiは笑って、郵便局の地下駐車場に向かって、階段を下りる。
めぐも、付いていくと
重厚な石段の果て、なーんとなく埃っぽいのは
手紙や小包が、一杯出入りするからだろうか。
それと、インクの匂い。
みんなのために、働く人達の
人間の息吹を感じるような、そんな地下の突き当たりにロッカールーム。
左手に、大浴場。
まだ、3時半くらいだから
配達員は帰って来ない。
「夜にはね、男湯も一杯よ、覗く?」と
Naomiは、いたずらっぽく笑う。
コツコツと、靴音がびびきそうな地下パーキングには
いっぱいの自転車、配達のバイク。
それと、小さなトラック。
壁極には、長靴、
それと、小部屋があって
そこには、レインコートが沢山吊されていて。
乾燥機。
配達って、雨の日もあるからなんだろう。
それで、お風呂もあるんだな。
そういう人々の苦労があって
手紙が運ばれる。
気にしなければ、気にならない。
そんなものだけど、いろんな人々の
おかげで
世の中が動いていると
実感できるひとこま。
電車もそうだけど。
と、めぐは、リサの事を思い出した。
電車を運転するのは
おじいちゃんへの贖罪の思い?
そんな、リサは
でも、世の中のために。
早起きしたり、夜遅くまで働いたり。
素敵だなぁ、と
感心しているめぐの前を歩くNaomiは
一台のオートバイの前で歩みを止めた。
銀色に輝くオートバイ。
それは、Vの形にエンジンがそびえ
まっすぐの排気管は、メタリック。
「かっこいー」と、めぐは手をはたいた。
そのオートバイは、銀色のガソリンタンクが
鈍く光る、シックなスタイル。
黒いシート、大きなヘッドライトは丸く。
Naomiは、エンジンを掛ける。
低い音が、地下のパーキング全体を揺するように響く。
「リサんとこ、いこ?」Naomiは、にっこり。
白いヘルメット、普段着の可愛らしい服なので
かえってそれが、個性的に見える。
めぐは、オートバイのエンブレムを見た。
金色に光るそれは、YAMAHA、と読め
シートの下にあるサイドカバーにはTR1.と書かれていた。
「鳥?」とめぐは読んだので
エンジンの響きに混じり、Naomiは笑う。
「あはは!ティーアールワン、よ。」と。
Naomiは、オートバイの左に立って、センタースタンドを外す。
柔らかいサスペンションは、ふんわり、と
猫の足のようにオートバイを沈ませた。
「乗って」と、Naomiが言うので
めぐは、オートバイの後ろに乗る。
エンジンの排気音は断続的に、低い太鼓のようだ。
Naomiの背中につかまる。
ライダー、ナオミは
クラッチレバーを握り、ギアを1速に入れた。
そのままクラッチレバーを離し、アクセルを捻る。
滑り易くてつるつるの地下駐車場のコンクリートの上で、TR1は
後輪を回転させた。
前には進んでいないので、斜めに後輪が流れながら。
アクセルを少し戻し、ライダー・ナオミは
カウンター・ハンドルを切りながら
前に進んだ。
朝、見かけた郵便配達の青年たちが、日焼けの顔で
口笛を鳴らす。
TR1は、斜めに滑りながら
地上へのスロープを昇る。
暗い地下から地上へ昇ると、目映くて
天に昇るってこんな気持かな、なんて
めぐは思った。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~
枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。
同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。
仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。
─────────────
※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。
※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。
※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
『召喚ニートの異世界草原記』
KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。
ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。
剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。
――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。
面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。
そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。
「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。
昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。
……だから、今度は俺が――。
現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。
少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。
引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。
※こんな物も召喚して欲しいなって
言うのがあればリクエストして下さい。
出せるか分かりませんがやってみます。
【完結】ある二人の皇女
つくも茄子
ファンタジー
美しき姉妹の皇女がいた。
姉は物静か淑やかな美女、妹は勝気で闊達な美女。
成長した二人は同じ夫・皇太子に嫁ぐ。
最初に嫁いだ姉であったが、皇后になったのは妹。
何故か?
それは夫が皇帝に即位する前に姉が亡くなったからである。
皇后には息子が一人いた。
ライバルは亡き姉の忘れ形見の皇子。
不穏な空気が漂う中で謀反が起こる。
我が子に隠された秘密を皇后が知るのは全てが終わった時であった。
他のサイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる