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楽しい温泉
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操車場だから、線路が沢山敷かれていて。
その、海側の端っこを、4人は歩いて
温泉の、乗務員浴場に向かってる。
いつまでも、一緒にいようね、なんて
話ながら。
学校に戻れば、もう、一緒にいられる
時間も残り少ない事を
再認識
するのであるけれど。
今は、楽しくしていたい。
遥か遠くから、めぐの姿を見かけたミシェルは
胸をときめかせて。
でも、近くに寄っても
話ができるかどうか解らないから
遠くで見てるのが好きな、ミシェルだった。
不条理だけど、そんなもの。
それで結構幸せなのだし。
ひとりで想っているの、は。
やっぱり、ちょっと少女っぽいのかもしれない
なんて、ミシェルも思ったりする。
木造の引き戸を、がらがら、と開けて
海沿いなのに、なぜか温泉のこの
鉄道浴場に、めぐたちは入る。
「こんばんはー」と、言って見ても
ひとの気配はない。
夕方ラッシュの時期だし、女子職員で
夜行乗務員は、食堂車乗務員くらいのものだし
18時に出る列車は、もうホームに向かっている頃だから
ここでお風呂に入っている女子職員は、いない。
そういう訳で、貸し切り浴場になってしまって
「嬉しいね」
「露天風呂はいりたぁい」
「これこれ」
とか、いいながらみんな、さっさと服を脱ぐ。
めぐは、でもなんとなく
ちょっと、恥ずかしかったりする。
別に、誰も見てないけど、そういうものだ。
Naomiなど、スーパーモデルみたいな
プロポーションなので、それは
彫刻のように、鑑賞したい程の裸体である。
それと自分を比較して、控えめな膨らみや
直線的なおなかのあたり(笑)とかを
やや、引け目に感じたりもする。
タオルで包みながら、控えめな胸を押さえて
「なんで、こんなとこについてるんだろ、お肉」と、れーみぃが言うと
それでも、めぐは理系っぽく答える。
「4足だった頃は、お尻がチャームポイントだったんだけど、立ったんでここにお肉がついたんだって」と、どっかで読んだ進化論の話をする(笑)。
赤ちゃんにあげるために、こうなってると
思ってたけどなー。
とか、言って。
「4足歩行だと、お尻、チャーミング?」と
れーみぃは、そのまま、はいはいのポーズ(笑)
「やめなさいね、はしたないから」と、めぐは
れーみぃの丸いお尻をはたいた(笑)。
「いやん、さわっちゃ」と、れーみぃも
楽しそう。
Naomiも笑っている。
リサは、声を上げて。
でも、ちょっと恥ずかしそう。
大胆なお嬢さま、れーみぃ。(笑)。
でも、お尻は確かにチャーミング(笑)。
「コントやってないで、お風呂場で」と
リサ。
「はーい、ママ」れーみぃは明るい。
めぐも、ふふ、と笑って
肩をすくめた。
「お姉さんって、どことなくお母さんみたいね」Naomi。
「ちっちゃい頃から弟がいるから」と、リサは言って、気づく。
って事は、やっぱり弟は居たんだね。
そんなふうに思って、安心したがっている
リサ自身だった。
幼い弟の記憶が薄い事に、どことなく畏怖を
感じて。
自分の記憶が変なら、それでいいのだけど。
その、リサは気づいていないけれど
この世界は、時空間が捩れていたりするから
時折、変な事が起こったりもするのだったり。
少年ミシェルは、もちろん男湯で
さっぱりとしていた。
おじさんは、ミシェルの裸体を見て
「だいぶ、逞しくなってきたの」と
にこにこ。
ミシェルは、そう言われても
あまり、嬉しいとも思わなかったりする。
意外な事だけれど、いくらかは
男らしくない自分のスタイルを、異端者ではあるけれど異形として
好ましく思っているところも、
少しはあったりもした。
女の子たちにステキと言われると
悪い気はしないし
元々、美術館にある美的なものは
女性的な曲線で構成されていたりする。
それは、生き物が生き残るために
そういうものを好み、守るように
できていると言うだけの事、なのだけど。
知らず知らず、そういうものを美しいと
思っても、別に悪い事ではない。
「れーみぃは、わんこ似かしら」って
リサは、さっきのはいはいスタイルを思い出して、そんな事を言う
鉄道浴場。
「ひろっといでー」めぐは、ブーメランを投げる真似(笑)
「あん、あん、あん」れーみぃは、両手で
犬かきの真似(笑)。
Naomiは笑っている。「コミックバンドの方がいいかもね」
「名コンビだわ。ブルース・シスターズ」とかって名前にしたら?と、リサ。
「黒い眼鏡で、スーツで帽子」めぐは、お父さんが持ってたビデオを思い出す。
太ったお兄ちゃんと、痩せたのっぽの弟さん。
ゴスペルを歌うんだったけど。
ちょっと、リチャード・ティーたちの音楽にも
似ていて、好きだった。
映画じゃ、ふたりは孤児で、教会で育てられたんだけど
税金が払えなくて、教会が潰される。
それで、ライブでお金を集めたんだったっけ。
優しい気持ちになれるお話だった。
それも、平和だった頃のアメリカの映画だった。
アメリカンの神様が頑張らなくても、ブルース・ブラザーズみたいに
思いやりのある行動は、そのままだ。
粗雑だけども、ひとを傷つけない
優しいブルース・ブラザーズ。
だから、めぐの気持ちにも残ってるんだろう。
そう、優しい気持ちを持ってると
優しいものが好きだし、連想する。
そういうものを記憶でコレクションするのは
優しい気持ちになるのが好きだから。
リサたちの楽しそうな声が、仕切りの
向こうから聞こえてきて
ミシェルは、なんとなく
めぐの声を、そこから感じ取れて
恋しさを、また、心に思う。
この恋のためなら、命だって投げ出せると
少年らしく決意を秘める。
それは、ミシェル自身が
そう思っているからなのだけれども。
その状態が陶酔だから、なのであって
つまり、苦痛回避のエンドルフィンとか
空想励起のドーパミンとか。
そういうものに似た、ケミカルの効き目なので
それを好むように、人間のプログラムが
作られている(笑元々は種の保存プログラム)と言う事だけれども。
今は。そうではなくて
その気持ちを好むと言う仕組みだけが残った。
遊ぶ、と言う人間らしい行動である。
ホモ・ルーデンス、なんて言うまでもなく
人間は好む行動のために生きるのである。
嫌いな事はしたくない、それでいいので
好きな事をすればいいのである。
もし、(元)魔法使いルーフィと
めぐと、ミシェルとで
争いになったりしたとしたら。
平和な世の中が、神様の意思で
齎されたとしても、愛を巡る争いは起こる。
でも、お互いに思いやる気持があれば
争いと言っても、たぶん、しあわせに収まるだろう。
ミシェルも、ルーフィも
めぐを大切に思ってる。
もちろんミシェルのは、恋愛だし
ルーフィは、どちらかと言うと親愛。
ルーフィの恋人、Megの
3歳下の、異世界の過去。
それがめぐ。
なんだけど、可愛らしくて、懐かれると嬉しい、って言うのも
ルーフィとしては、ちょっと、どうしようもない気持だったりする。
でも、ルーフィには恋人が(自分の世界に)いるし
だから、こっちの異世界の平和を護ろうとして。
それが、ルーフィの愛だった。
ブルース・ブラザースが、ふるさとのために
争ったみたいに。
まわりに、いろんな迷惑は掛かるかも知れないけれど(笑)。
めぐは、お風呂場で
シャボンを付けながら、自分の
ささやかなお乳を持って
「そういえば、お猿さんはあんまり、膨らんでないね」なんて(笑)
となりのれーみぃは、もうすこし立派なので
「お猿さんって、時々立って歩くからかな。
重いでしょ、だって。あんまり大きいと」と(笑)。
Naomiも、そういえば均整はあるけれど
そんなに大きい訳でもない(笑)から
「重いかもね。お母さんなんて
肩凝ってるし」なんて、笑いながら言う。
「チャームポイント、のために
大きくなったなら、どうして隠しちゃんだろね」って、リサは冗談混じりに
湯舟のなかから。
「隠さないと、襲われちゃうからでしょ」と
Naomiが言うと
みんな笑う。
めぐは、でも、夢の中で
ルーフィに抱きしめられた事を思いだして
また、ドキドキしてたりした。
大きいお風呂場だから、声は響く。
そんな話してると、男湯のミシェルに聞かれちゃうぞ(笑)。
「でも、女って不便よね。子供産むために
できているみたい」って、めぐが言うと
確かにその通りで、生き物として生まれて来て種族があんまり増えすぎて、もう死に絶える
事がなくなって。
考える、っていう
生き物としてはそんなに大事じゃない機能が
そういう事を考える。(笑)でも、同じ
女の子としては、確かに同感できるのか
「そうだよねー。あたしなんかも女で機関車乗り目指すって言ったら、たぶん反対されると思うもの、国鉄でだって」と、リサ。
「言ってないんだ」と、Naomi。
それはそうだろう。せっかくの特待生なのに
大学を出たら機関車職場に入られたら(笑)。
と、誰でも官僚ならそう思う。
「高卒で受験したかったんだけどねー。
そうすると誰かが落ちるんだし。わたしは
国鉄家族だし」と、リサ。
学校からの推薦枠は埋まってて。
リサが割り込むと、誰かが外れるから
その、誰かだって国鉄に入りたいんだろうし。
そう、リサは連想していると、ある事を思い出した。
「あのね、寝台のNorthstarね、廃止になるかもしれないの。おじさんは、そうしたら引退するって」
その、生ものとしての女子校会話(笑)は
もちろん、男湯の少年ミシェルにも筒抜けである(笑)。
でも。
ミシェル少年の恋心にある、イメージの
めぐお姉さんは
実態とは違っていていいのである。
そう、もともと人間の恋心は
昔々の恋物語なんかが積み重なっているし
そのひとの経験もある。
なので、そのひとの恋しい気持ちが
イメージになっているだけで
実際の、めぐがどんなひとでもいいのである(笑)。
それを見聞きしても、イメージは変わらない。
変わった時に、恋は終わるのである。
愛になるかもしれないけれど。
「なくなっちゃうんだぁ」と、れーみぃは
寂しそうに言った。
さっきまで、おちゃらけてたのに、
優しい子。
めぐも思う「なんとかならないの?リサは
国鉄一家でしょ」と」無茶な事を言う。
リサも、もちろんそう思うし
おじさんが、田舎に引っ越して来れば
国鉄に入れる、とまで言った理由は
そこにあったらしく
おじさん自身が、リサの就職に
協力したい、そんな意味もあったのだろう。
いま、ミシェルを国鉄に引き寄せたがっているが(笑)。
「無理よ。まだ国鉄に入社してないし。
それに、列車の廃止って、国が決めるんだもの」と、リサは言う。
「国かぁ」めぐは、ちょっと壁に当たったような
そんな感じ。
子供の頃は、自由だと思ってたけど
いつか、どこかでそんな自分たちが
囲われているフィールドの中の自由だったって
思う事もあったりする。
もちろん、そのおかげで
安全を保障されていたりもするのだけど。
いまのめぐは、おじさんたちが愛している
列車が、なくなってしまうのが
淋しい、そんな気持ちで
壁
って気持ちになっている。
「うん、乗る人が減ってるの。SuperExpressがもうじき、ここまで来るでしょ?
元々、夜行列車って
速度が遅い時代のものだから。
昼間じゃ乗りきれないお客さんを、夜運んだのね。
せいぜい80km毎時くらいの列車だったから。
Superexpressなら、240km毎時くらいで
送れるから、3倍の人が乗れるわけ。
」って、リサは言って、付け加えて
「夜の乗務って大変なのね。うちのおじいちゃんだって、それが無ければ長生きできたと思う。
」と、リサが言うと
沈黙。
夜行列車に乗るのは楽しいけれど、運転してたり車掌さんをしてたりする人がいて。
駅にも人がいて。
もちろん、めぐたちみたいに食堂車乗務員も居て。
そういう人たちが、夜、寝ないで働いてるから
夜行列車は走っている。
それは、無くした方がいいって
国の言う事も、もっともな理屈だと
めぐも、納得させられてしまう。
「おじさんが若い頃はね、15往復してたんだって。夜行列車が」と、リサはさすがに良く知っている。
「今は、2往復だっけ」と、めぐ。
リサはうなづき、「でも、もう少し早ければ
おじいちゃんは死ななくても済んだかもしれない」
夜遅く起きたり、朝早く起きたり。
そういう生活は、体に悪いそうで
多くの鉄道職員が、だいたい40歳くらいで
夜行列車の乗務員を控える、らしい。
「でも、誰かが乗らないといけないし、
誇りある1列車にはね、やっぱりベテランが乗る、って不文律があるの」と、リサは続ける。
それも、終わりだけど、とも。
「でも。」めぐは、立ち上がって。
「それで、幸せだったんじゃないかな。だって、鉄道が好きだったんだもの。
あたしだったら、好きな事を一生やり続けて
居られたら、それだけで嬉しいし。
それで死んでもいい、って思う」と、めぐにしては
熱弁を振るった。
リサも、Naomiも、れーみぃも。「そうだよね。好きな事を
仕事に出来るだけでも嬉しいもの」 と
これから先、学校を卒業して
仕事につくだろう、自分の気持ちを
そこに重ねて想像した。
一生
、鉄道職員で居られるのって
それだけでいい。
そんなふうに、若々しさを持って
リサなどは思う。
めぐは、音楽を聞いて感動する自分に重ねて
[好き]って気持ちで、仕事を続けられたら
どんなにステキだろう、って
思ったり。
Naomiは、おじいちゃんの遺したオートバイやレコードを大切にするような子だから
同じように、おじいちゃんの
望む、仕事の後継ぎをしようとする
リサの境遇を理解する。
れーみぃは、お嬢さんだから
とりあえずは家系を守るんだろうけれど。
そういう使命感は理解できた。
親しいひとと一緒に、みんなの為に
働くのは
結構ステキだ。
でもまあ、軍隊みたいに威張るひとがいたりすると嫌(笑)だろうけど。
そういうひとは、ここの世界にはいない。
その、海側の端っこを、4人は歩いて
温泉の、乗務員浴場に向かってる。
いつまでも、一緒にいようね、なんて
話ながら。
学校に戻れば、もう、一緒にいられる
時間も残り少ない事を
再認識
するのであるけれど。
今は、楽しくしていたい。
遥か遠くから、めぐの姿を見かけたミシェルは
胸をときめかせて。
でも、近くに寄っても
話ができるかどうか解らないから
遠くで見てるのが好きな、ミシェルだった。
不条理だけど、そんなもの。
それで結構幸せなのだし。
ひとりで想っているの、は。
やっぱり、ちょっと少女っぽいのかもしれない
なんて、ミシェルも思ったりする。
木造の引き戸を、がらがら、と開けて
海沿いなのに、なぜか温泉のこの
鉄道浴場に、めぐたちは入る。
「こんばんはー」と、言って見ても
ひとの気配はない。
夕方ラッシュの時期だし、女子職員で
夜行乗務員は、食堂車乗務員くらいのものだし
18時に出る列車は、もうホームに向かっている頃だから
ここでお風呂に入っている女子職員は、いない。
そういう訳で、貸し切り浴場になってしまって
「嬉しいね」
「露天風呂はいりたぁい」
「これこれ」
とか、いいながらみんな、さっさと服を脱ぐ。
めぐは、でもなんとなく
ちょっと、恥ずかしかったりする。
別に、誰も見てないけど、そういうものだ。
Naomiなど、スーパーモデルみたいな
プロポーションなので、それは
彫刻のように、鑑賞したい程の裸体である。
それと自分を比較して、控えめな膨らみや
直線的なおなかのあたり(笑)とかを
やや、引け目に感じたりもする。
タオルで包みながら、控えめな胸を押さえて
「なんで、こんなとこについてるんだろ、お肉」と、れーみぃが言うと
それでも、めぐは理系っぽく答える。
「4足だった頃は、お尻がチャームポイントだったんだけど、立ったんでここにお肉がついたんだって」と、どっかで読んだ進化論の話をする(笑)。
赤ちゃんにあげるために、こうなってると
思ってたけどなー。
とか、言って。
「4足歩行だと、お尻、チャーミング?」と
れーみぃは、そのまま、はいはいのポーズ(笑)
「やめなさいね、はしたないから」と、めぐは
れーみぃの丸いお尻をはたいた(笑)。
「いやん、さわっちゃ」と、れーみぃも
楽しそう。
Naomiも笑っている。
リサは、声を上げて。
でも、ちょっと恥ずかしそう。
大胆なお嬢さま、れーみぃ。(笑)。
でも、お尻は確かにチャーミング(笑)。
「コントやってないで、お風呂場で」と
リサ。
「はーい、ママ」れーみぃは明るい。
めぐも、ふふ、と笑って
肩をすくめた。
「お姉さんって、どことなくお母さんみたいね」Naomi。
「ちっちゃい頃から弟がいるから」と、リサは言って、気づく。
って事は、やっぱり弟は居たんだね。
そんなふうに思って、安心したがっている
リサ自身だった。
幼い弟の記憶が薄い事に、どことなく畏怖を
感じて。
自分の記憶が変なら、それでいいのだけど。
その、リサは気づいていないけれど
この世界は、時空間が捩れていたりするから
時折、変な事が起こったりもするのだったり。
少年ミシェルは、もちろん男湯で
さっぱりとしていた。
おじさんは、ミシェルの裸体を見て
「だいぶ、逞しくなってきたの」と
にこにこ。
ミシェルは、そう言われても
あまり、嬉しいとも思わなかったりする。
意外な事だけれど、いくらかは
男らしくない自分のスタイルを、異端者ではあるけれど異形として
好ましく思っているところも、
少しはあったりもした。
女の子たちにステキと言われると
悪い気はしないし
元々、美術館にある美的なものは
女性的な曲線で構成されていたりする。
それは、生き物が生き残るために
そういうものを好み、守るように
できていると言うだけの事、なのだけど。
知らず知らず、そういうものを美しいと
思っても、別に悪い事ではない。
「れーみぃは、わんこ似かしら」って
リサは、さっきのはいはいスタイルを思い出して、そんな事を言う
鉄道浴場。
「ひろっといでー」めぐは、ブーメランを投げる真似(笑)
「あん、あん、あん」れーみぃは、両手で
犬かきの真似(笑)。
Naomiは笑っている。「コミックバンドの方がいいかもね」
「名コンビだわ。ブルース・シスターズ」とかって名前にしたら?と、リサ。
「黒い眼鏡で、スーツで帽子」めぐは、お父さんが持ってたビデオを思い出す。
太ったお兄ちゃんと、痩せたのっぽの弟さん。
ゴスペルを歌うんだったけど。
ちょっと、リチャード・ティーたちの音楽にも
似ていて、好きだった。
映画じゃ、ふたりは孤児で、教会で育てられたんだけど
税金が払えなくて、教会が潰される。
それで、ライブでお金を集めたんだったっけ。
優しい気持ちになれるお話だった。
それも、平和だった頃のアメリカの映画だった。
アメリカンの神様が頑張らなくても、ブルース・ブラザーズみたいに
思いやりのある行動は、そのままだ。
粗雑だけども、ひとを傷つけない
優しいブルース・ブラザーズ。
だから、めぐの気持ちにも残ってるんだろう。
そう、優しい気持ちを持ってると
優しいものが好きだし、連想する。
そういうものを記憶でコレクションするのは
優しい気持ちになるのが好きだから。
リサたちの楽しそうな声が、仕切りの
向こうから聞こえてきて
ミシェルは、なんとなく
めぐの声を、そこから感じ取れて
恋しさを、また、心に思う。
この恋のためなら、命だって投げ出せると
少年らしく決意を秘める。
それは、ミシェル自身が
そう思っているからなのだけれども。
その状態が陶酔だから、なのであって
つまり、苦痛回避のエンドルフィンとか
空想励起のドーパミンとか。
そういうものに似た、ケミカルの効き目なので
それを好むように、人間のプログラムが
作られている(笑元々は種の保存プログラム)と言う事だけれども。
今は。そうではなくて
その気持ちを好むと言う仕組みだけが残った。
遊ぶ、と言う人間らしい行動である。
ホモ・ルーデンス、なんて言うまでもなく
人間は好む行動のために生きるのである。
嫌いな事はしたくない、それでいいので
好きな事をすればいいのである。
もし、(元)魔法使いルーフィと
めぐと、ミシェルとで
争いになったりしたとしたら。
平和な世の中が、神様の意思で
齎されたとしても、愛を巡る争いは起こる。
でも、お互いに思いやる気持があれば
争いと言っても、たぶん、しあわせに収まるだろう。
ミシェルも、ルーフィも
めぐを大切に思ってる。
もちろんミシェルのは、恋愛だし
ルーフィは、どちらかと言うと親愛。
ルーフィの恋人、Megの
3歳下の、異世界の過去。
それがめぐ。
なんだけど、可愛らしくて、懐かれると嬉しい、って言うのも
ルーフィとしては、ちょっと、どうしようもない気持だったりする。
でも、ルーフィには恋人が(自分の世界に)いるし
だから、こっちの異世界の平和を護ろうとして。
それが、ルーフィの愛だった。
ブルース・ブラザースが、ふるさとのために
争ったみたいに。
まわりに、いろんな迷惑は掛かるかも知れないけれど(笑)。
めぐは、お風呂場で
シャボンを付けながら、自分の
ささやかなお乳を持って
「そういえば、お猿さんはあんまり、膨らんでないね」なんて(笑)
となりのれーみぃは、もうすこし立派なので
「お猿さんって、時々立って歩くからかな。
重いでしょ、だって。あんまり大きいと」と(笑)。
Naomiも、そういえば均整はあるけれど
そんなに大きい訳でもない(笑)から
「重いかもね。お母さんなんて
肩凝ってるし」なんて、笑いながら言う。
「チャームポイント、のために
大きくなったなら、どうして隠しちゃんだろね」って、リサは冗談混じりに
湯舟のなかから。
「隠さないと、襲われちゃうからでしょ」と
Naomiが言うと
みんな笑う。
めぐは、でも、夢の中で
ルーフィに抱きしめられた事を思いだして
また、ドキドキしてたりした。
大きいお風呂場だから、声は響く。
そんな話してると、男湯のミシェルに聞かれちゃうぞ(笑)。
「でも、女って不便よね。子供産むために
できているみたい」って、めぐが言うと
確かにその通りで、生き物として生まれて来て種族があんまり増えすぎて、もう死に絶える
事がなくなって。
考える、っていう
生き物としてはそんなに大事じゃない機能が
そういう事を考える。(笑)でも、同じ
女の子としては、確かに同感できるのか
「そうだよねー。あたしなんかも女で機関車乗り目指すって言ったら、たぶん反対されると思うもの、国鉄でだって」と、リサ。
「言ってないんだ」と、Naomi。
それはそうだろう。せっかくの特待生なのに
大学を出たら機関車職場に入られたら(笑)。
と、誰でも官僚ならそう思う。
「高卒で受験したかったんだけどねー。
そうすると誰かが落ちるんだし。わたしは
国鉄家族だし」と、リサ。
学校からの推薦枠は埋まってて。
リサが割り込むと、誰かが外れるから
その、誰かだって国鉄に入りたいんだろうし。
そう、リサは連想していると、ある事を思い出した。
「あのね、寝台のNorthstarね、廃止になるかもしれないの。おじさんは、そうしたら引退するって」
その、生ものとしての女子校会話(笑)は
もちろん、男湯の少年ミシェルにも筒抜けである(笑)。
でも。
ミシェル少年の恋心にある、イメージの
めぐお姉さんは
実態とは違っていていいのである。
そう、もともと人間の恋心は
昔々の恋物語なんかが積み重なっているし
そのひとの経験もある。
なので、そのひとの恋しい気持ちが
イメージになっているだけで
実際の、めぐがどんなひとでもいいのである(笑)。
それを見聞きしても、イメージは変わらない。
変わった時に、恋は終わるのである。
愛になるかもしれないけれど。
「なくなっちゃうんだぁ」と、れーみぃは
寂しそうに言った。
さっきまで、おちゃらけてたのに、
優しい子。
めぐも思う「なんとかならないの?リサは
国鉄一家でしょ」と」無茶な事を言う。
リサも、もちろんそう思うし
おじさんが、田舎に引っ越して来れば
国鉄に入れる、とまで言った理由は
そこにあったらしく
おじさん自身が、リサの就職に
協力したい、そんな意味もあったのだろう。
いま、ミシェルを国鉄に引き寄せたがっているが(笑)。
「無理よ。まだ国鉄に入社してないし。
それに、列車の廃止って、国が決めるんだもの」と、リサは言う。
「国かぁ」めぐは、ちょっと壁に当たったような
そんな感じ。
子供の頃は、自由だと思ってたけど
いつか、どこかでそんな自分たちが
囲われているフィールドの中の自由だったって
思う事もあったりする。
もちろん、そのおかげで
安全を保障されていたりもするのだけど。
いまのめぐは、おじさんたちが愛している
列車が、なくなってしまうのが
淋しい、そんな気持ちで
壁
って気持ちになっている。
「うん、乗る人が減ってるの。SuperExpressがもうじき、ここまで来るでしょ?
元々、夜行列車って
速度が遅い時代のものだから。
昼間じゃ乗りきれないお客さんを、夜運んだのね。
せいぜい80km毎時くらいの列車だったから。
Superexpressなら、240km毎時くらいで
送れるから、3倍の人が乗れるわけ。
」って、リサは言って、付け加えて
「夜の乗務って大変なのね。うちのおじいちゃんだって、それが無ければ長生きできたと思う。
」と、リサが言うと
沈黙。
夜行列車に乗るのは楽しいけれど、運転してたり車掌さんをしてたりする人がいて。
駅にも人がいて。
もちろん、めぐたちみたいに食堂車乗務員も居て。
そういう人たちが、夜、寝ないで働いてるから
夜行列車は走っている。
それは、無くした方がいいって
国の言う事も、もっともな理屈だと
めぐも、納得させられてしまう。
「おじさんが若い頃はね、15往復してたんだって。夜行列車が」と、リサはさすがに良く知っている。
「今は、2往復だっけ」と、めぐ。
リサはうなづき、「でも、もう少し早ければ
おじいちゃんは死ななくても済んだかもしれない」
夜遅く起きたり、朝早く起きたり。
そういう生活は、体に悪いそうで
多くの鉄道職員が、だいたい40歳くらいで
夜行列車の乗務員を控える、らしい。
「でも、誰かが乗らないといけないし、
誇りある1列車にはね、やっぱりベテランが乗る、って不文律があるの」と、リサは続ける。
それも、終わりだけど、とも。
「でも。」めぐは、立ち上がって。
「それで、幸せだったんじゃないかな。だって、鉄道が好きだったんだもの。
あたしだったら、好きな事を一生やり続けて
居られたら、それだけで嬉しいし。
それで死んでもいい、って思う」と、めぐにしては
熱弁を振るった。
リサも、Naomiも、れーみぃも。「そうだよね。好きな事を
仕事に出来るだけでも嬉しいもの」 と
これから先、学校を卒業して
仕事につくだろう、自分の気持ちを
そこに重ねて想像した。
一生
、鉄道職員で居られるのって
それだけでいい。
そんなふうに、若々しさを持って
リサなどは思う。
めぐは、音楽を聞いて感動する自分に重ねて
[好き]って気持ちで、仕事を続けられたら
どんなにステキだろう、って
思ったり。
Naomiは、おじいちゃんの遺したオートバイやレコードを大切にするような子だから
同じように、おじいちゃんの
望む、仕事の後継ぎをしようとする
リサの境遇を理解する。
れーみぃは、お嬢さんだから
とりあえずは家系を守るんだろうけれど。
そういう使命感は理解できた。
親しいひとと一緒に、みんなの為に
働くのは
結構ステキだ。
でもまあ、軍隊みたいに威張るひとがいたりすると嫌(笑)だろうけど。
そういうひとは、ここの世界にはいない。
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