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回2列車
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「わかりました。おじさん、僕は国鉄に行きます」ミシェルは、その優しげな表情のまま
決意を言葉にした。
湯舟のおじさんは、にこにこして。
両手のひらで、メガホンを作り
「おーい、リサ坊、聞いたかけ?ミシェルさ
釜焚きになるっペな。」と、喜びを言葉にした。
釜焚きは、昔ふうに言う機関助手の事だ。
蒸気機関車の石炭を焼べるのが仕事なので、
そう呼ばれた。
ミシェル自身は、さっきのめぐの言葉を聞いて
国鉄職員の仕事に共感が持てる、と
めぐが心を寄せたせいで(笑)
めぐの、心惹かれる存在でありたいと
そんなふうに、軽く思ったりする(笑)。
女の子たちは、その、おじさんの叫びを聞いて
「ミシェル、良かったねぇ」とはいいながら。
「でも、図書館の司書になって、めぐお姉さんのそばで働くとかって」
などとも言われたが(笑)。
でもまあ、おじさんの願いを聞いて
国鉄に来るって言うのも、ステキな生き方だと
そういう評価もあった(笑)。
やっぱり、家族の願いを守るのは
男らしい生き方だし、女の子としては
信頼感があって。
いい、って思うのだろう。
めぐは、まあ、どうでもいいのだけれど(笑)。
「就職前祝いだべ」と、おじさんは
乗務員宿泊所の食堂へ(笑)
乗務前だし、お酒は勘弁(笑)と言う
訳で。
「食堂長、なんか持って来へ」と、おじさん。
「どーかしたべさ」と、丸いおなかの食堂長は
茶色の瓶に入った、スパークリングな飲み物を
持ってきた。
仄かに炭酸っぽい。
「ガラナとクワスのちゃんぽんだべさ」と
食堂長にこにこ。
食堂の高いところに吊された、白黒のテレビでは
オルゴールの音楽と、絵画のコマーシャル。
どこか国境に近い町では、隣国のようだ。
ネプチューンファイズ、と
商品名が描かれていて。
18時55分。
懐かしい5分間アニメが流れていて
リサも感慨に耽る。
乾杯、と
その茶色の瓶を飲むと、酩酊したような気がした。
「ミシェル、高校へ行かないで国鉄に行く?」と、お姉さんリサはちょっと心配する。
ミシェルは、やや凛々しく「国鉄高専に行きます」
国鉄高専とは、鉄道技術専門学校で
高校卒業の資格も取れる学校。
工業経験を積んで、整備士から経験を積むのは運転系の職場として同じだが
在学中に、機関車の運転免許を取れる。
「ミシェルは車掌さんになるのかと思ってたわ」と、リサお姉さん。
少年らしく、ミシェルは「それはイメージでしょ。僕は、イメージじゃないもの」と自負を見せた。
そういえばそうで、ひとはそれぞれの希望、つまり未来の想像図に沿って自分を進めていくものだ。
リサお姉さんの想像は、ミシェルの想像と違うのは当然である。
「でも、大学を出てから上級職になっても」と
ミシェルの身を、リサは案ずる。
中卒就職で、高専に行く適性は、やっぱりあったりする。
身体が頑健で、どちらかと言うと現場思考の
子、スポーツ系のひとに似合いのコースで
思索型でおとなしいミシェル少年には、ちょっと
似合わない感じもあったり。
それは、めぐから見てもそう見えた。
食堂長は、じゃ、お祝いに、と
生クリームをかけたボルシチを持ってきた。
こんなものしかないけど、と
いいながらのその一皿は、とっても美味だった。
隣国が近いので、どことなく
食べ物も似たものが増えてたりする。
こってりとした煮物、気温の低い土地の
郷土料理。
それだけに、10月のこの北の土地では
とても美味に感じられた。
「Northstarが無くなる前に、おじさんの
後継ぎになりたいんです」と、ミシェル。
おじさんは、にこにこうなづく。
でも、現実的に
特急の車掌になるのは、いきなりは無理だ。
ある意味、運転士より難しいのは
それが、人間相手の仕事だから。
人間の気持ちを、うまく宥めたりする能力も
必要なので、やはり、それは
ある程度の年齢も必要。
お客さんが信頼感を感じられるくらいの
見た目と、雰囲気。
それは、やっぱりおじさんくらいの年齢が必要だし。
ある程度、一歩引いて受け止めるくらいの
姿勢、それは
人生の盛りを過ぎて、相手を立てる事を
自然に出来るくらいの人物でないと、難しい。
若いうちはどうしても、自分の行動力が
余ってしまって。
お客さんの気持ちを受け止めるより、
お客さんを誘導しよう、とか思ったりする。
それが、結局お客さんの気持ちとしては
高級感につながらなかったりする。
寝台特急の車掌は、高級感が必要なのである。
それを、おじさんは知っているし
いきなり特急の車掌になった頃、苦労した
事も知っている。
でも、それを言うよりは
ミシェルの気持ちを大切にして。
今、否定するよりも
経験して感じ取った方がいいし
現場で感じ取って覚えた事は
見聞きした事より、貴重だ。
当然だけれど、体験は3次元であるけれど
書物は0次元だし、絵で書いても2次元だ。
だから、経験したい、と言う気持ちが大切。
それを、車掌経験で体感したので
ミシェルに「んだ」としか言わない(笑)。
リサとミシェルのふたりや
おじさん、おじいちゃん。
食堂車乗務員さん。駅員さん。
みんなが集う国鉄を、守ってくれた
神様は、やっぱりすごいって
めぐは感激した。
めぐ自身も、そのお手伝いが出来た
事は、ちょっとした自慢(笑)だったりもする。
魔法使いめぐとしては、ミシェルの未来も
リサの未来も気になる。
こんなふうに人間らしく、時間に沿って
毎日を暮らして行くのが
やっぱりステキなのね、って
ボルシチを頂きながら、思ったりする(笑)。
ちょっとだけ、未来を覗いて見たくなって
魔法をイメージした。
model zero_d;
parameter model.SIunits F;
parameter model.SIunits m;
parameter model.SIunits a;
der(a)=start(9.8);
equation;
F=m*a;
end model zer_d;
そうして、0次元モデルになって
光子の波に押されて。
ここの一瞬のうちに、未来を少し見てくる。
と言うか、6時間くらい先の夜の闇に紛れて
リサや、ミシェルの夢が
おじいちゃんの居る天国へつながるように、と
計らった。
いまのふたりが、誰よりも会いたいのは
おじいちゃんだろう、と
めぐは思ったりして。
そこで、質量を零にして
飛び立とうとしていためぐ。
parameter model.SIunits m:= 0;
その瞬間、めぐは驚きの声で
急ブレーキ!
parameter real model.SIunits m = start();
めぐの目の前に、ミシェル少年が立っていて
どよめきを以て、みんなが見つめていた。
「え?」めぐは、理解できない。
それは、時間旅行をしようとしていたので
当然だ(笑)。
ミシェルは、真面目な表情をして
「もう一度言います。婚約してください。」
みんなが見てる、そんなところで。と
めぐは、恥ずかしくなって頬を両手で押さえた。
「どうして?」と、意外に気の利いた返事なんて
できない、って思ってたけど
やっぱりそういうものね、と
めぐは思った。
「それは、あの。高専は寮だし、westbarryを
離れないといけないし」ミシェルは一生懸命だ。
でも、そんな。突然に言われても。
めぐは困ってしまった。
まだ早いわよ、とも言えず(笑)
リサは「ミシェル、何言ってるの?
めぐの気持ちも知らないで」と
言おうかと思った。
けれど、その前にミシェルは
「ごめんなさい、僕の勝手です。
返事なんていつでもいいです。
でも、言いたかった。」そう、さらりと。
恥ずかしくなったのか、白い頬を赤らめて
食堂から出て行った。
「がらなが効いたかの」まるいおなかの食堂長は、のどかに。
「がらなって?」れーみぃはきょとん、と聞く。
「ほれ、あれだな。ハッスルするんだな」と
食堂長が言うので
「それじゃ、少年はたまんないね」と、Naomiは言った。
めぐは思う。
ミシェル、頑張ったね。
model love;
import model.human.love
parameter real michelle := +1;
equation;
めぐには、愛を割り切る方程式は
作れそうにないけれど
でも、ミシェルは少し、大人になったのかな、
なんて思ったりした。
ミシェルの愛は、どちらかと言うと
少年的でない。
それは、幼い頃の病気のせいで
ふつうの男の子よりも、バイタリティーが低いから。
模式にすると
within model.human.love;
parameter real vital=50;
parameter real desire=50;
だったとする(笑)
でも、ミシェルの場合は
model michelle_love;
parameter real vital=20;
parameter real desire=20;
equation;
love=vital + desire;
end model michelle_love;
のような感じで、ひとからみると控えめで
欲の少ない少年に見えても
それは、表面に見えるところだけで
本人にとっては、心はいっぱいだったりするし
それでいいのだろう。
「ルーフィさんとは違うけど、僕は
めぐお姉さんを好きです。誰にも渡したくない」
と、言いたかったのだけど、とっさに
そんな事は言えない。
なので、婚約、って言うような
契約用語(?)を使って
客観的に表現して、大人っぽいつもりだった
ミシェル。まだ中学生である。
でも、それだけに愛おしいと
リサも思ったし
めぐも、そんなに困っても居なかった。
めぐ自身、魔法使いで生きていくのか
人間として、地に足をつけて生きていくのか?
そういう決断を迫られているような、そんな気がしていた。
「こんにゃくってなーに?」と、れーみぃは
のんびり。
みんな、微笑む。
料理長は、まるいお腹を抱えて笑い「アジアの食べ物さ。ふるふるしててね。お芋を摺って、茹でるんだよ」と、料理のお話に、つい、なってしまう。
ふーん、お芋かぁ、と
れーみぃはアジアンっぽいけれど
故郷にはこんにゃくはないらしい。
れーみぃが居てくれたから、深刻な気持ちに
ならずに済んだけど。
結構、ミシェルの言葉は重量感があった。
その性急さは、やっぱり
穏やかと言っても少年だね、と
めぐは微笑む。
「じゃ、列車にもどろ?料理長、ありがとうございました」と、リサは
なんとなくお姉さん。
弟の気持ちもわかるけど、親友めぐの気持ちも
大切にしたいから。
親友が困るような弟の行動力には閉口(笑)。
でも、なんとなく一歩進んだような気もしている
リサだったりして(笑)。
ミシェルは、ひとりで
列車の方へ歩きながら、告白を
少し後悔していたりして(笑)。
そんな事を言ったって、まだ
中学生なのだ。
婚約って言ったって、何をどうすれば
いいのかなんて解らないけれど
ただ、好きな人から離れて暮らすと
心配だ。
心配って言うか、他の人を好きにならないで
欲しいって思うだけで。
そこまで考えて、ミシェルは気づく。
「めぐお姉さんは、あのルーフィーが好き、なんだよね、たぶん。」
気づいては居たのだけど、認めたくなかった。
それが本心。
めぐは、忘れているけれども
めぐ自身の人生は、2回めのもの。
知っているのは、魔法使いルーフィーや
神様、それと天使クリスタさんくらいだ。
覚えている経験が、人生。
それと、覚えていないけれど
記憶に残っている、なんて事もある。
ミシェルが、もしかして
幼い頃に、めぐの世界に
どこからかやって来た、なんて空想も
ひょっとして、めぐの
1回めの人生の記憶、だったのかもしれないけれど
それは、めぐ自身は知らない事で
ミシェルがなぜか、めぐに惹かれるのも
そのあたりが原因かもしれない。
およそ自然科学的な、ひとの愛は
基準が、やはり生物学的な
生きる為の共存、である。
model human.love;
criteria modelica.human.biology;
parameter boolean love;
parameter real desire;
parameter real affairs;
equation;
love= affairs + desire;
end model love;
窮屈に思える事もある。
結局、婚姻みたいなものに落ち着くから
ヒッグス
環境に纏わり付かれて自由を失った素粒子のように
光子を羨むような気持ちで、自由な恋愛感覚でいたい、そんなふうに
婚姻を済ませてしまった人が思ったとしても
別に、構わない。
ヒッグス環境を破壊すると
大きなエネルギーが得られるように
それは、破壊的な事だ。
人間の愛が、生物として生きるための機能なので
家族と言う原子を破壊して、素粒子になる事は
人間としてではなく、別の生き物になってしまうと言う事だし
或は、魔法使いや神様、または天使さんか
悪魔くんになってしまう、そういう事だろうけれど。
「まったく、ミシェルったら」と、ひとりごとを言う少女セシルは
中学の教室。
姉を追って失踪(笑?)してしまったミシェルの
空席を斜め視線で追いながら
退屈な数学の授業を聞いている。
代数微分方程式とか、積分とか。
もともとあんまり好きじゃないので(笑)
セシルは、短く揃った栗色の髪を
鉛筆で撫でたりして
まるい頬を、掌で押さえて。
ミシェル、恋しい彼の事を想っている。
夏の日に、プールで遊んだ事。
「追い払われちゃったけど」と(笑)
ミシェルの視線の彼方には、いつも
あの、めぐさんが居る。
たぶん、てゆーか、あの人が好きなのね、ミシェル。
でも。それでもいいの。
あたしは、好きなままで。
こういう気持ちって、どうしようもないんだもの。
セシルは、お父さんが音楽家のせいか
ちょっと、気持ちもふんわりな子だった。
そういうところは、人には見えないけど。
ミシェルでなくてもよければ。
ボーイフレンドになりたい男の子は
いっぱいいる、セシルだったけれど
誰も、好きになれない。
それは、ふつうの女の子の恋。
モデルにすると、こんな感じ。
model cecile.love;
//セシルの中の愛の模式図
import modelica.human.ordinaly;
//ふつうの人間的感性
parameter boolean love ;
//愛は、真摯である。2極的に
parameter real memolies;
//記憶、ふつうの数値
parameter real x;
//変数x
equation;
//方程式
x=sum(love.memolies);
//愛しかった記憶がxに入ります(いつでも、リアルタイムで)
love= x>turning.point;
//突然、愛しいと思います。愛しい気持ちがある点を超えると
end cecile.love;
つまり、愛しい、と思う基準は
セシルの勝手である(笑)けれど
それでいい。
ミシェルにとって迷惑だろうが、なんだろうが(笑)
求めるのがふつうの愛、だけど
もちろん、生き物の愛(modelica.human.ordinaly)なので
共に生きていくパートナーを得る、と言う
有史以来の生物が生きてきた記憶、それが
基本。
。
でも、ミシェルはその生物的エネルギーが少し欠けていて
そのあたりは、魔法使いルーフィのようだし
魔法を長く使っていると、そうなってしまうから
めぐもそうなるだろうし。
ひとの望みの模式図
ミシェルは、なぜか
人間なのに、ちょっとバイタリティーが低いから
そのあたりが、セシルを鬱陶し感じる所以なのだろう。
少し、歳を取って
セシルが落ち着けば、釣り合いが取れるのだろう。
何と言っても
model michelle.love;
import modelica.human.ordinaly;
と、ミシェルも同じ人間なのだから。
modelica.human.ordinaly
の定義を開けば
同じ、人間の生物モデルが数式で表されている。
でも、魔法使いはその定義に当たらない。
package modelica.magician.ordinaly
と言う定義があれば、そこに魔法使いは
魔法で何を書くだろう?
(笑この設定は、シミュレーションモデル言語openmodelicaに基づいていますが、もちろん
愛に関するパッケージは協会にはありません。
www.modelica.org (笑))
そう、思いやりを持って生きるとしても
一番原始的なところ、子供を作って育てる
なんてところ(笑)
その前に、一緒に育てる相手を選ぶ、なんて
ところは
どうしても排他的であるのは仕方ない。
コネクターが1個しかないからである(笑)
それは人間の話、と言うか
哺乳類は身体の中で子供をある程度育てるから
そういう記録を以て生きてきた、つまり
めぐが鬱陶しく思ったみたいに
人間はもう知的な生命体なのに、動物として
子供を宿すところだけが旧来のままなので
セシルみたいに、ふつうに愛らしい女の子は
男の子と特別契約
(笑)を得ようとするし
男の子も、そうするだろう。
でも、セシルにとってちょっと不幸なのは
ミシェルがちょっと、生い立ちが変わってたと
そういうあたり。
「早く、帰って来てね、ミシェル」と
セシルは願う。
もちろん、帰って来たとしても
ミシェルは、セシルを選ぶとは限らないのだけれども
そこは、希望である。
一方、北の果てでは
そろそろ、寝台特急Northstarの
発車準備をする時刻。
行き止まりホームに、レンガ色のディーゼル機関車が引っ張って行くので
編成で言う最後尾に、連結される。
記憶の次元
車両は、長い。
かつては、それだけの編成を
必要としていて。
人が乗って、どこかに向かう用事が
あったのだろう。
今は、その代役をSuperExpressが担っているから
旧い夜行列車は、ノスタルジアを楽しむ
趣味の存在になりつつあったりする。
車両に向かう、リサの心のイメージには
さっきの、隣国のコマーシャルフィルムに
使われた音楽、オルゴールの響きが
快く遺る。
ラジオで、今でも聞ける
モスクワ放送の、番組の間に流れる音楽。
それは、快く、心の空間にある
かつての思い出の空間に流れていた音楽。
思い出の音楽は、もちろん時間の概念がないから
聞いた時の感動が記憶されているのだろう。
音楽家なら、時間を追って再生する事も
心の中で可能で
さっき、みんなでケータイDAWをしたみたいに
そういう事も出来たりする。
つまり、記憶の空間と言うのは3次元で
音楽を記憶するなら、それが空間に響く音を
時間微分で記憶している、と言う事だろう。
model memory.music;
import memory.field;
protected real music=[3];
めぐは、その同じオルゴールの音を聞いて
懐かしい、リチャード・ティーの
エレクトリカルピアノの音を思い出していた。
そういえば、空間に響く彼の音は
どことなく、オルゴールにも似ていて。
めぐは音楽好きだから、そのオルゴールの音で
ジョージ・ベンソンの”ブリージン”の
エレクトリカルピアノの音を思い出したりして。
その、ふたつの曲がアンサンブルすると
めぐの意識の中で、また、新しい音楽が生まれる。
強いて言えばそれは、記憶の中にある
類推が
音で行われている、と言う事で(笑)
インターネット検索を、音でしているようなものだろう。
model music.find;
music.field=[3];
parameter real rc[3];=memory.field.richard.tee.piano[3];
parameterreal gb[3]=memory.field.george.benson.synth[3];
equation;
find rc = gb ;
end music.find;
のように。
好きな事の経験は、多いはずなので
その用途に合った形に、人間は順応すると
そういう事なのだろう。
好きな事か、それに似た能力は
誰でも長けているはずである。
青い編成に連結されたディーゼル機関車は
ゆらゆらと熱を発しながら
エンジンの上にある、風車が
くるくると周り、そこに熱源があると
知らせてくれているかのようだ。
16リットルの12シリンダエンジンがふたつ。
物量の時代を象徴するような存在である。
ミシェルは、気まずいのか
どこかに消えてしまっていた(笑)。
「どこいったんだろ、ミシェール」と、れーみぃは
間延びした話し方で
なんとなくユーモラス。
「みしぇーる、って言うとフランス語みたい」と、めぐもにこにこ。
「フランス語じゃないの??」と、Naomi。
「わたし、フランス人じゃないのよ、マダム」と、リサはおどけて「Naomiってのも聖書からだけど。日本人みたいね」と、にこにこ。
マダムは酷いわね、と、Naomiは言いながら
「お父さんが好きだったんだって。この名前」とか、にこにこ。
旅が始まる。
帰りの旅はペーソスだけど、でも
みんな一緒だと、そうでもない。
「ずっと旅していたいなぁ、いいねリサは
機関車乗りだったら毎日旅暮らしだもん」と、めぐ(笑)。
電灯のついている編成は、なんとなく
頼もしいと、めぐは感じながら
足場の階段を昇って、とりあえず自分たちの寝台、コンパートメント、4人部屋。
「でも、毎日旅っていうか、嫌でも
行かないとならないし」と、リサは言う。
おじいちゃんが、機関車に乗るのを
見ていての実感だろうけれど
もちろん、それは傍観だから
おじいちゃんの心の中までは判らない。
照れの表現で、使命感に燃えていても
顔に出すのは恥ずかしい、そういう
おじいちゃんも居てもいい訳で
機関車を運転するのに、顔の演技は不要である(笑)。
それを、リサが見ていて
仕事が辛いと見えたりする事もあるだろう。
なので、「旅みたいに楽しくはない事もある」なんて思っても別にいい。
それは、いずれリサが機関車乗りになった時に
感じ取ればいい事だ。
「おお、リサ坊」おじさんは、のんびりと
迎える。
「食堂車のクルーって、駅のホームで乗るの?ほら、列車に礼したりするでしょ?」って
れーみぃは、のどかに喋る。
そのペースは、なんとなくおじさんに近い。
「わえは。それは私鉄。これは国鉄。
列車に礼はしない。国の、みんなのための仕事だ。」と、おじさんは、誇り高い
国有鉄道の職員らしい使命感を見せた。
地震が起きても、そういえば
平静に仕事を進めていた。
お金の為でも、サービスでもなくて
国のみんなの為に列車を動かしている、そういう
感覚は、やっぱり素晴らしいと
めぐは思う。
こういう人達を、お金儲けの為に
使うのは難しいんじゃないかしら、なんて
ふうにも思ったし
神様の言うように、お金儲けの為に
この国鉄を買収したとしても、たぶん
失敗したかな?なんてふうにも
思った。
使命感と損得感覚は、うまく整合は
取れないだろうとも思うし。
少年ミシェルは、乗務員じゃないけれど
なぜか、車庫から列車に乗り込む(笑)
国鉄はのんびりしているので、そんな事もある。
乗る方も、別にそれを咎めたりはしないし
元々指定席である。
ひとりで、個室寝台に収まっていると
なんとなく、動きたくなるのは
少年らしいエネルギー。
ミシェルは、エネルギーが少し不足気味なので
おとなしい。
こういう時、体感時間は長く延びるので
何か、勉強をしたりするといいのだ(笑)。
動きたい、と言う欲望がない時は
考えるのも良い。
でも、恋心を持つ少年ミシェルは、偶像
めぐを回想する。
「誰かの恋人になってほしくない」
とか思う。
でも、偶像でない本物のめぐが
誰かを好きなら、それが幸せなら。
そうしてほしいとも思う。
好きな人が笑顔でいてほしい、それだけを
思うと、いまのミシェルは
自身が、めぐを笑顔にさせられるだろうか、と
不能感覚が、不安に駆り立てたり(笑)。
めぐたちは、食堂車に寄って
列車食堂長さんに、ごあいさつ。
明日は5時から仕事、とか言う事で
「ひえ~」と、れーみぃが言うと
みんな笑った。
「だって、21時に寝たら
、4時に起きたって7時間しか寝られない」と
れーみぃが笑う。
「乗務員はそうだよ」と、リサは
おじいちゃんの事を思い出したりして、そう言った。
機関車乗りでも、列車の運転時刻に合わせるから
特急みたいに2時間連続、って仕事でも
やっぱり、寝る時間は不規則になったりする。
朝早く、始発を運転して
お昼まで4時間。
お昼休みを取って、午後の列車。
夕方までには帰る。
それは安全の為に、そうしていて。
でも、運転ができる人は限られているから
臨時列車があったりすると、どうしても
休めなかったりする。
そんな時、寝られない事があったりもして。
おじさんは夜行列車の車掌だから、もっと大変で
夜、起きていなければならないし
列車が終着するまで、勤務時間だ。
乗務員は大変なのである。
国鉄は、国の仕事なので
お金が掛かっても、安全のために
人を雇っていた。
それなので、事故もなかったりする。
お金儲けを第一に考える人達が
鉄道を運営すると、やっぱり
事故も増える。
国鉄なら、そんな事もない。
そんな時、遊びたいとか
お酒飲みたいとか、本を読みたい、あるいは
文章を書きたい(笑)とか
そういう、人間としての欲望を抑えて
鉄道乗務員としての安全を第一に考えて
休息を取る。
なかなか、できない事で
つまり、自分の欲望より社会の安全を考える。
神様に近づく事なので、リサのおじいちゃんなどは
どことなく、神様のような崇高な表情をしていたし
おじさんは、温厚な出雲神のような(笑)
職員に向いてる人達は、なんとなく
家族でもそうで
経験を、遺伝的に記録されているからだし
適性が、その遺伝子にあるから。
なので、おじいちゃんとリサ、は
国鉄で信頼されていたりする。
一族から、国鉄職員が多く出ていて
事故もなかったりすると、適性があるって
思われる。
それは、自分を抑制する能力の
評価だったりして。
一重に、適性、って
そんなところだったりする。
コンピュータならプログラムで変えられるけど
人間は、自分では書き換えられないから。
block.feedback;
parameter real gain=feedback.gain(start=90);
のように、初期値が最初から高いモデルが
国鉄職員のような仕事に向いている、と
言う事であったりもする。
お金儲けになる仕事ではないし、危険な事もあるけれど
なぜ、そんな仕事を選ぶか、と言うと
やっぱり、それが好きだから。
リサは、そう思う。
好きな事なら、苦労しても気にならない。
「リサ坊、機関車乗るか?」と、おじさんは、
にこにこしながら、告げに来た14号車。
Quartet、4人部屋個室。
駅じゃないから、誰もいない。
なので、駅までバック運転する
ディーゼル機関車に乗せてあげよう、と言う
サービス。
「はい、行きます!あ、じゃ、ミシェルも」と
リサは言った。
おじさんは、にこにこ。「んだな。ディーゼルは運転席狭いから、ミシェルは電気に乗せるか」
本線を引っ張って走る機関車を、先頭につないだまま
最後尾にディーゼル機関車をつないで、バック運転で始発駅に向かう。
こうすると、徐行しなくていい。
当然だけれども、最後尾で運転しているからである。
Upperfieldのような行き止まり駅だと、この方法は使えないので
最後尾でブレーキだけを扱う。
だから、徐行運転になってしまう。
Bluemorrまでは遠いので、それじゃ遅い(笑)と言う訳だ。
「あたしも見たーい」と、れーみぃは言ったけど
ディーゼル機関車の運転席は狭いから、ふたりが精一杯。
「んだか、じゃ、出発してからミシェルと
交代すれば」と。
本線上で乗り換え、って事になった。
ディーゼル機関車は、1号車のその向こうだから
また、ずーっと歩いて行かなくてはならない(笑)けど。
それでも、機関車に乗れるって
楽しい事だから、あんまり苦を厭わない
リサだったりする。
女の子としては、ちょっと変わったリサだけど
でも、なんて言われても別にいい、好きな事だもの、って
そんなふう(笑)。
リサのたどり着いた1号車の向こう、機関車は
やっぱり見上げると、恐ろしく大きい。
にこにこするおじさんは、本線機関車としてのディーゼル機関士さんに、リサを託した。
梯子で、機関車の端っこに登り
そこから、エンジンの周りにある外廊下を
歩いて、運転室に登るのだ。
いかにも原始的な感じが、スマートな電気機関車と違って
有機的。そのあたりが
生き物のようで、おじいちゃんの乗っていた
蒸気機関車に似ている、と
リサは、懐かしく思った。
リサが3つくらいの時だろうか、たぶん
この車庫だろうと思うけれど
おじいちゃんの乗る、黒い大きな
蒸気機関車に乗せてもらった記憶があった。
と、思うのだけれど
幼い記憶なので、定かではなかったりする(笑)。
「お願いします」と、リサは
狭い機関車の運転席、助手席に乗せて貰った。
「あー、んだな。そこさ掛けてけへ」小柄で短髪の運転手さんは、にこにこと笑って。
照明が暗いので、運転席はメーターが明るく見える。
エンジンは、すでに回っているので
低い、回転音が聞こえる。
足元で回っているのだけれど、地面のどよめきのようで
とても大きな動物に乗っているような感じは
蒸気機関車と違い、猛獣のように感じられた。
「じさまに似とる」短髪、白髪の機関車乗りは
リサのおじいちゃんと近い年齢なのだろうか、
リサは、どことなく安らぎを感じた。
薄暗い運転席に、緑のランプ、赤いランプ。
速度計、圧力計。
ブレーキハンドル、 加減弁。
エンジン燃料噴射弁、ギア切替ハンドルとある。
「そろそろ行くかのぉ、お嬢さんは、大学?総合職?」と、老運転士は
事務職志望、管理職組だとリサを見たようだ。
そこで、はじめてリサは
「機関車職場を目指します」と、本音を
つい、話し出す。
白髪の機関車は、にこにこと笑い「それはいい。しかし、大変だ。まあ、女の子なら
夜勤はないが」と言う意味を
訛って話す(笑)。
「んだな、だども、おなごは大変だべ。
よなべなかどもの」と、こういう言葉でのんびり言われると
あまり、反論する気持ちにならないから
言葉は不思議だ(笑)。
のどかな風景が言葉になっているようで。
ミシェルは、おじさんに誘われて
15号車の後ろ、と言うか
先頭に連結された赤い電気機関車の
運転席の隣、助手席に招かれた。
とは言うものの、電気機関車は
想像以上に不気味な音がするところで
電気設備を冷やす冷却ファンが
とても騒々しいし
背中のあたりで、変圧器の
唸る音がしたり。
旧式の電気機関車なので、インバータの
ノイズが聞こえないあたりも、どことなく
殺風景な感じ。
時折、空気圧縮の音がするのも
中学生のミシェルには、怖い、と言う印象を持たせた。
オリーブ色の室内は、意外に広かったけれど
思っていたよりも高い運転台は、ちょっと
足元がすくむくらいな感じだった。
これは、衝突事故の時
機関車乗りを守るために、高くなっているとの
事で
そんな事を聞くと、やっぱり車掌さんの
方がいいかな、なんて思う
ミシェルだったりもする(笑)。
バック運転なので、最後尾に居ても
する事はないが(笑)。
とりあえず、無線で
牽引する機関車と連絡をするくらい、である。
貨物列車じゃないから、後押しの必要はない。
オリーブの壁、メタリックなフレーム。
赤い機関車の窓。
ミシェルの対面した機関車乗りは、中年くらいの若々しい男子で
意外な事に、美形。すらりと長身で
髪は自然にさらりと伸ばしていて
機関車乗りの制服、それは
紺色の作業着っぽいものなのだけれども
それすら粋に見えるような人物で
ミシェルに微笑み「やぁ、中学生だってね。
じ様のお孫さんか。高校行くの?」と
綺麗な声の都会言葉で告げた。
ミシェルは、気軽に話すこの機関車乗りを
それらしく捉えながら「国鉄高専に行きます」と、さっきの思いつきを話した。
機関車乗りは、一瞬驚いて「いやぁー、ははは。あそこは厳しいぞ?じ様の孫が、なんだってあんなとこ」と言って、口をつぐんだ。
「みんな、そういうんだ。おじいちゃんが偉かったから。でも、僕はおじいちゃんじゃないから、自分の力で生きて行きたいんです」と、ミシェルは 勢いでそう言ってしまった事を
少し後悔し「おじさんと、夜行列車がなくなる前に後継ぎになっておきたくで」と。付け加える。
機関車乗りは、少し考えながら
緑色の電源ランプを見ていた。
空気圧力は上がっている。
架線電圧は20k。
それを眺めながら「うん。でも、君のしたい事じゃなかったら、かえっておじさんの負担になるよ、それは。君の人生なんだから。
君は賢そうだから、大学を出てから国鉄に入っても?夜行列車なんてなくなりゃしないさ。
第一、機関車乗りになるなら絶対に夜行はある。
貨物列車でね」
機関士さんは、別に深い意味があっての言葉で
ミシェルに告げた訳ではなかったけれど
ミシェル自身が、思いつきで国鉄高専に行くと言ってしまったのを
機関士さんに見透かされたような、そんな気がして。
つい、ミシェルは反発してしまうけれどそれも若さ故。
ほんとうは、ミシェルも判っている。
めぐお姉さんが好きなので、つい、リサ姉ちゃんみたいに
評価されたくて。
国鉄に行く、と言ってしまったけど。
ほんとうは、めぐお姉さんに認められれば
なんでもいいのだった。仕事なんて。
だいたい、同じ高校に行って
同じ図書館でバイトしたい、そんなことを言っていた
かわいい少年ミシェル。
ふつうの少年は、そんなものだし
中学生である、ミシェルは。
そんなところを、機関士さんはまあ、感じ取っていたし
中学生くらいの気持を覚えていたのだろう。
特に、ミシェルを突き放すでもなく、でも
いきなり中学卒で高専に来ると、きついから
考えた方がいい、と
アドバイスをしたのだった。
工業高専、どちらかと言うと整備士になりたい人が
行く学校だったし
金属加工とか、そういう手作業の訓練もあるので
結構、適性を問われるところもあった。
優劣ではなくて、適性である。
工具を持って金属を、筋力と感覚で加工するのに
向いている人と
思考を持って判断し、操作や対応をするのには
それぞれに適性がある。
ミシェルが、あまり筋力のある方でないことは
見てわかる。
そういうあたりも、やっぱり思いやりである。年若い者への。
ミシェルが、ひとりの人を好きになって
一途になってしまって、排他的に勢い余る
そんなことは、まあ、あるかもしれない(笑)。
それと、あまりひとに乗られなくなった夜行列車が廃止になる、なんて事は
思いやりを以って考えても、起こる事だ。
少年ミシェルは、思い通りにならない環境を
鬱陶しいと思う事もあったりもする(笑)。
若々しさ故の事で、認識の相違である。
20年も経てば、その環境のおかげで
自分が生きてる部分もある事に気づくし
その環境を、自分が使うようになる訳であるから
例えば、国鉄に入って20年後
今度は、おじいちゃん、おじさんの築いた
環境が、自分の信用になる訳である。
ひとは、誰でもそんな環境に生きていて
例えばそれは、万物が宇宙の素粒子だったところを
higgs.environに纏わり付かれて
減速したところが、質量を持ったと
見なされているのとよく似ている。
その環境を、上手く使うと
大きなパワーを得る事もできる。
化学反応もそのひとつだ。
まあ、めぐのように
魔法で素粒子を解放すると、とてつもない
パワーを得る事もできて
それは比喩的に言えば、ミシェルが
自分で規制している、環境への配慮が
ミシェル自身のパワーをセーブしていると
そういう事にもなる、訳だけど。
「ぼちぼち、行くっぺか」ディーゼル機関車では
リサお姉さんと、機関車のおじさんが
こちらは和やかに、機関車の話しをしていた。
機関車乗りのおじさんは、おじいちゃんくらいの年齢だから
穏やかで、リサの言う言葉を
否定するような事は言わない。
人間としてのエネルギーが減って来ると
いい事もある(笑)。
細かい事が気にならなくなるから、である。
機関車を運転していても、必要ない事を考えなくなるので
安全になるのだ。
例えば、列車が遅れると昇進に響くとか
そういう理由で無理な運転をしない、そういう
事である。
無理をして脱線でもしたら、昇進どころでは
なくなるから、である。
故に、特急の運転士は、割と高齢の人が多い。
決意を言葉にした。
湯舟のおじさんは、にこにこして。
両手のひらで、メガホンを作り
「おーい、リサ坊、聞いたかけ?ミシェルさ
釜焚きになるっペな。」と、喜びを言葉にした。
釜焚きは、昔ふうに言う機関助手の事だ。
蒸気機関車の石炭を焼べるのが仕事なので、
そう呼ばれた。
ミシェル自身は、さっきのめぐの言葉を聞いて
国鉄職員の仕事に共感が持てる、と
めぐが心を寄せたせいで(笑)
めぐの、心惹かれる存在でありたいと
そんなふうに、軽く思ったりする(笑)。
女の子たちは、その、おじさんの叫びを聞いて
「ミシェル、良かったねぇ」とはいいながら。
「でも、図書館の司書になって、めぐお姉さんのそばで働くとかって」
などとも言われたが(笑)。
でもまあ、おじさんの願いを聞いて
国鉄に来るって言うのも、ステキな生き方だと
そういう評価もあった(笑)。
やっぱり、家族の願いを守るのは
男らしい生き方だし、女の子としては
信頼感があって。
いい、って思うのだろう。
めぐは、まあ、どうでもいいのだけれど(笑)。
「就職前祝いだべ」と、おじさんは
乗務員宿泊所の食堂へ(笑)
乗務前だし、お酒は勘弁(笑)と言う
訳で。
「食堂長、なんか持って来へ」と、おじさん。
「どーかしたべさ」と、丸いおなかの食堂長は
茶色の瓶に入った、スパークリングな飲み物を
持ってきた。
仄かに炭酸っぽい。
「ガラナとクワスのちゃんぽんだべさ」と
食堂長にこにこ。
食堂の高いところに吊された、白黒のテレビでは
オルゴールの音楽と、絵画のコマーシャル。
どこか国境に近い町では、隣国のようだ。
ネプチューンファイズ、と
商品名が描かれていて。
18時55分。
懐かしい5分間アニメが流れていて
リサも感慨に耽る。
乾杯、と
その茶色の瓶を飲むと、酩酊したような気がした。
「ミシェル、高校へ行かないで国鉄に行く?」と、お姉さんリサはちょっと心配する。
ミシェルは、やや凛々しく「国鉄高専に行きます」
国鉄高専とは、鉄道技術専門学校で
高校卒業の資格も取れる学校。
工業経験を積んで、整備士から経験を積むのは運転系の職場として同じだが
在学中に、機関車の運転免許を取れる。
「ミシェルは車掌さんになるのかと思ってたわ」と、リサお姉さん。
少年らしく、ミシェルは「それはイメージでしょ。僕は、イメージじゃないもの」と自負を見せた。
そういえばそうで、ひとはそれぞれの希望、つまり未来の想像図に沿って自分を進めていくものだ。
リサお姉さんの想像は、ミシェルの想像と違うのは当然である。
「でも、大学を出てから上級職になっても」と
ミシェルの身を、リサは案ずる。
中卒就職で、高専に行く適性は、やっぱりあったりする。
身体が頑健で、どちらかと言うと現場思考の
子、スポーツ系のひとに似合いのコースで
思索型でおとなしいミシェル少年には、ちょっと
似合わない感じもあったり。
それは、めぐから見てもそう見えた。
食堂長は、じゃ、お祝いに、と
生クリームをかけたボルシチを持ってきた。
こんなものしかないけど、と
いいながらのその一皿は、とっても美味だった。
隣国が近いので、どことなく
食べ物も似たものが増えてたりする。
こってりとした煮物、気温の低い土地の
郷土料理。
それだけに、10月のこの北の土地では
とても美味に感じられた。
「Northstarが無くなる前に、おじさんの
後継ぎになりたいんです」と、ミシェル。
おじさんは、にこにこうなづく。
でも、現実的に
特急の車掌になるのは、いきなりは無理だ。
ある意味、運転士より難しいのは
それが、人間相手の仕事だから。
人間の気持ちを、うまく宥めたりする能力も
必要なので、やはり、それは
ある程度の年齢も必要。
お客さんが信頼感を感じられるくらいの
見た目と、雰囲気。
それは、やっぱりおじさんくらいの年齢が必要だし。
ある程度、一歩引いて受け止めるくらいの
姿勢、それは
人生の盛りを過ぎて、相手を立てる事を
自然に出来るくらいの人物でないと、難しい。
若いうちはどうしても、自分の行動力が
余ってしまって。
お客さんの気持ちを受け止めるより、
お客さんを誘導しよう、とか思ったりする。
それが、結局お客さんの気持ちとしては
高級感につながらなかったりする。
寝台特急の車掌は、高級感が必要なのである。
それを、おじさんは知っているし
いきなり特急の車掌になった頃、苦労した
事も知っている。
でも、それを言うよりは
ミシェルの気持ちを大切にして。
今、否定するよりも
経験して感じ取った方がいいし
現場で感じ取って覚えた事は
見聞きした事より、貴重だ。
当然だけれど、体験は3次元であるけれど
書物は0次元だし、絵で書いても2次元だ。
だから、経験したい、と言う気持ちが大切。
それを、車掌経験で体感したので
ミシェルに「んだ」としか言わない(笑)。
リサとミシェルのふたりや
おじさん、おじいちゃん。
食堂車乗務員さん。駅員さん。
みんなが集う国鉄を、守ってくれた
神様は、やっぱりすごいって
めぐは感激した。
めぐ自身も、そのお手伝いが出来た
事は、ちょっとした自慢(笑)だったりもする。
魔法使いめぐとしては、ミシェルの未来も
リサの未来も気になる。
こんなふうに人間らしく、時間に沿って
毎日を暮らして行くのが
やっぱりステキなのね、って
ボルシチを頂きながら、思ったりする(笑)。
ちょっとだけ、未来を覗いて見たくなって
魔法をイメージした。
model zero_d;
parameter model.SIunits F;
parameter model.SIunits m;
parameter model.SIunits a;
der(a)=start(9.8);
equation;
F=m*a;
end model zer_d;
そうして、0次元モデルになって
光子の波に押されて。
ここの一瞬のうちに、未来を少し見てくる。
と言うか、6時間くらい先の夜の闇に紛れて
リサや、ミシェルの夢が
おじいちゃんの居る天国へつながるように、と
計らった。
いまのふたりが、誰よりも会いたいのは
おじいちゃんだろう、と
めぐは思ったりして。
そこで、質量を零にして
飛び立とうとしていためぐ。
parameter model.SIunits m:= 0;
その瞬間、めぐは驚きの声で
急ブレーキ!
parameter real model.SIunits m = start();
めぐの目の前に、ミシェル少年が立っていて
どよめきを以て、みんなが見つめていた。
「え?」めぐは、理解できない。
それは、時間旅行をしようとしていたので
当然だ(笑)。
ミシェルは、真面目な表情をして
「もう一度言います。婚約してください。」
みんなが見てる、そんなところで。と
めぐは、恥ずかしくなって頬を両手で押さえた。
「どうして?」と、意外に気の利いた返事なんて
できない、って思ってたけど
やっぱりそういうものね、と
めぐは思った。
「それは、あの。高専は寮だし、westbarryを
離れないといけないし」ミシェルは一生懸命だ。
でも、そんな。突然に言われても。
めぐは困ってしまった。
まだ早いわよ、とも言えず(笑)
リサは「ミシェル、何言ってるの?
めぐの気持ちも知らないで」と
言おうかと思った。
けれど、その前にミシェルは
「ごめんなさい、僕の勝手です。
返事なんていつでもいいです。
でも、言いたかった。」そう、さらりと。
恥ずかしくなったのか、白い頬を赤らめて
食堂から出て行った。
「がらなが効いたかの」まるいおなかの食堂長は、のどかに。
「がらなって?」れーみぃはきょとん、と聞く。
「ほれ、あれだな。ハッスルするんだな」と
食堂長が言うので
「それじゃ、少年はたまんないね」と、Naomiは言った。
めぐは思う。
ミシェル、頑張ったね。
model love;
import model.human.love
parameter real michelle := +1;
equation;
めぐには、愛を割り切る方程式は
作れそうにないけれど
でも、ミシェルは少し、大人になったのかな、
なんて思ったりした。
ミシェルの愛は、どちらかと言うと
少年的でない。
それは、幼い頃の病気のせいで
ふつうの男の子よりも、バイタリティーが低いから。
模式にすると
within model.human.love;
parameter real vital=50;
parameter real desire=50;
だったとする(笑)
でも、ミシェルの場合は
model michelle_love;
parameter real vital=20;
parameter real desire=20;
equation;
love=vital + desire;
end model michelle_love;
のような感じで、ひとからみると控えめで
欲の少ない少年に見えても
それは、表面に見えるところだけで
本人にとっては、心はいっぱいだったりするし
それでいいのだろう。
「ルーフィさんとは違うけど、僕は
めぐお姉さんを好きです。誰にも渡したくない」
と、言いたかったのだけど、とっさに
そんな事は言えない。
なので、婚約、って言うような
契約用語(?)を使って
客観的に表現して、大人っぽいつもりだった
ミシェル。まだ中学生である。
でも、それだけに愛おしいと
リサも思ったし
めぐも、そんなに困っても居なかった。
めぐ自身、魔法使いで生きていくのか
人間として、地に足をつけて生きていくのか?
そういう決断を迫られているような、そんな気がしていた。
「こんにゃくってなーに?」と、れーみぃは
のんびり。
みんな、微笑む。
料理長は、まるいお腹を抱えて笑い「アジアの食べ物さ。ふるふるしててね。お芋を摺って、茹でるんだよ」と、料理のお話に、つい、なってしまう。
ふーん、お芋かぁ、と
れーみぃはアジアンっぽいけれど
故郷にはこんにゃくはないらしい。
れーみぃが居てくれたから、深刻な気持ちに
ならずに済んだけど。
結構、ミシェルの言葉は重量感があった。
その性急さは、やっぱり
穏やかと言っても少年だね、と
めぐは微笑む。
「じゃ、列車にもどろ?料理長、ありがとうございました」と、リサは
なんとなくお姉さん。
弟の気持ちもわかるけど、親友めぐの気持ちも
大切にしたいから。
親友が困るような弟の行動力には閉口(笑)。
でも、なんとなく一歩進んだような気もしている
リサだったりして(笑)。
ミシェルは、ひとりで
列車の方へ歩きながら、告白を
少し後悔していたりして(笑)。
そんな事を言ったって、まだ
中学生なのだ。
婚約って言ったって、何をどうすれば
いいのかなんて解らないけれど
ただ、好きな人から離れて暮らすと
心配だ。
心配って言うか、他の人を好きにならないで
欲しいって思うだけで。
そこまで考えて、ミシェルは気づく。
「めぐお姉さんは、あのルーフィーが好き、なんだよね、たぶん。」
気づいては居たのだけど、認めたくなかった。
それが本心。
めぐは、忘れているけれども
めぐ自身の人生は、2回めのもの。
知っているのは、魔法使いルーフィーや
神様、それと天使クリスタさんくらいだ。
覚えている経験が、人生。
それと、覚えていないけれど
記憶に残っている、なんて事もある。
ミシェルが、もしかして
幼い頃に、めぐの世界に
どこからかやって来た、なんて空想も
ひょっとして、めぐの
1回めの人生の記憶、だったのかもしれないけれど
それは、めぐ自身は知らない事で
ミシェルがなぜか、めぐに惹かれるのも
そのあたりが原因かもしれない。
およそ自然科学的な、ひとの愛は
基準が、やはり生物学的な
生きる為の共存、である。
model human.love;
criteria modelica.human.biology;
parameter boolean love;
parameter real desire;
parameter real affairs;
equation;
love= affairs + desire;
end model love;
窮屈に思える事もある。
結局、婚姻みたいなものに落ち着くから
ヒッグス
環境に纏わり付かれて自由を失った素粒子のように
光子を羨むような気持ちで、自由な恋愛感覚でいたい、そんなふうに
婚姻を済ませてしまった人が思ったとしても
別に、構わない。
ヒッグス環境を破壊すると
大きなエネルギーが得られるように
それは、破壊的な事だ。
人間の愛が、生物として生きるための機能なので
家族と言う原子を破壊して、素粒子になる事は
人間としてではなく、別の生き物になってしまうと言う事だし
或は、魔法使いや神様、または天使さんか
悪魔くんになってしまう、そういう事だろうけれど。
「まったく、ミシェルったら」と、ひとりごとを言う少女セシルは
中学の教室。
姉を追って失踪(笑?)してしまったミシェルの
空席を斜め視線で追いながら
退屈な数学の授業を聞いている。
代数微分方程式とか、積分とか。
もともとあんまり好きじゃないので(笑)
セシルは、短く揃った栗色の髪を
鉛筆で撫でたりして
まるい頬を、掌で押さえて。
ミシェル、恋しい彼の事を想っている。
夏の日に、プールで遊んだ事。
「追い払われちゃったけど」と(笑)
ミシェルの視線の彼方には、いつも
あの、めぐさんが居る。
たぶん、てゆーか、あの人が好きなのね、ミシェル。
でも。それでもいいの。
あたしは、好きなままで。
こういう気持ちって、どうしようもないんだもの。
セシルは、お父さんが音楽家のせいか
ちょっと、気持ちもふんわりな子だった。
そういうところは、人には見えないけど。
ミシェルでなくてもよければ。
ボーイフレンドになりたい男の子は
いっぱいいる、セシルだったけれど
誰も、好きになれない。
それは、ふつうの女の子の恋。
モデルにすると、こんな感じ。
model cecile.love;
//セシルの中の愛の模式図
import modelica.human.ordinaly;
//ふつうの人間的感性
parameter boolean love ;
//愛は、真摯である。2極的に
parameter real memolies;
//記憶、ふつうの数値
parameter real x;
//変数x
equation;
//方程式
x=sum(love.memolies);
//愛しかった記憶がxに入ります(いつでも、リアルタイムで)
love= x>turning.point;
//突然、愛しいと思います。愛しい気持ちがある点を超えると
end cecile.love;
つまり、愛しい、と思う基準は
セシルの勝手である(笑)けれど
それでいい。
ミシェルにとって迷惑だろうが、なんだろうが(笑)
求めるのがふつうの愛、だけど
もちろん、生き物の愛(modelica.human.ordinaly)なので
共に生きていくパートナーを得る、と言う
有史以来の生物が生きてきた記憶、それが
基本。
。
でも、ミシェルはその生物的エネルギーが少し欠けていて
そのあたりは、魔法使いルーフィのようだし
魔法を長く使っていると、そうなってしまうから
めぐもそうなるだろうし。
ひとの望みの模式図
ミシェルは、なぜか
人間なのに、ちょっとバイタリティーが低いから
そのあたりが、セシルを鬱陶し感じる所以なのだろう。
少し、歳を取って
セシルが落ち着けば、釣り合いが取れるのだろう。
何と言っても
model michelle.love;
import modelica.human.ordinaly;
と、ミシェルも同じ人間なのだから。
modelica.human.ordinaly
の定義を開けば
同じ、人間の生物モデルが数式で表されている。
でも、魔法使いはその定義に当たらない。
package modelica.magician.ordinaly
と言う定義があれば、そこに魔法使いは
魔法で何を書くだろう?
(笑この設定は、シミュレーションモデル言語openmodelicaに基づいていますが、もちろん
愛に関するパッケージは協会にはありません。
www.modelica.org (笑))
そう、思いやりを持って生きるとしても
一番原始的なところ、子供を作って育てる
なんてところ(笑)
その前に、一緒に育てる相手を選ぶ、なんて
ところは
どうしても排他的であるのは仕方ない。
コネクターが1個しかないからである(笑)
それは人間の話、と言うか
哺乳類は身体の中で子供をある程度育てるから
そういう記録を以て生きてきた、つまり
めぐが鬱陶しく思ったみたいに
人間はもう知的な生命体なのに、動物として
子供を宿すところだけが旧来のままなので
セシルみたいに、ふつうに愛らしい女の子は
男の子と特別契約
(笑)を得ようとするし
男の子も、そうするだろう。
でも、セシルにとってちょっと不幸なのは
ミシェルがちょっと、生い立ちが変わってたと
そういうあたり。
「早く、帰って来てね、ミシェル」と
セシルは願う。
もちろん、帰って来たとしても
ミシェルは、セシルを選ぶとは限らないのだけれども
そこは、希望である。
一方、北の果てでは
そろそろ、寝台特急Northstarの
発車準備をする時刻。
行き止まりホームに、レンガ色のディーゼル機関車が引っ張って行くので
編成で言う最後尾に、連結される。
記憶の次元
車両は、長い。
かつては、それだけの編成を
必要としていて。
人が乗って、どこかに向かう用事が
あったのだろう。
今は、その代役をSuperExpressが担っているから
旧い夜行列車は、ノスタルジアを楽しむ
趣味の存在になりつつあったりする。
車両に向かう、リサの心のイメージには
さっきの、隣国のコマーシャルフィルムに
使われた音楽、オルゴールの響きが
快く遺る。
ラジオで、今でも聞ける
モスクワ放送の、番組の間に流れる音楽。
それは、快く、心の空間にある
かつての思い出の空間に流れていた音楽。
思い出の音楽は、もちろん時間の概念がないから
聞いた時の感動が記憶されているのだろう。
音楽家なら、時間を追って再生する事も
心の中で可能で
さっき、みんなでケータイDAWをしたみたいに
そういう事も出来たりする。
つまり、記憶の空間と言うのは3次元で
音楽を記憶するなら、それが空間に響く音を
時間微分で記憶している、と言う事だろう。
model memory.music;
import memory.field;
protected real music=[3];
めぐは、その同じオルゴールの音を聞いて
懐かしい、リチャード・ティーの
エレクトリカルピアノの音を思い出していた。
そういえば、空間に響く彼の音は
どことなく、オルゴールにも似ていて。
めぐは音楽好きだから、そのオルゴールの音で
ジョージ・ベンソンの”ブリージン”の
エレクトリカルピアノの音を思い出したりして。
その、ふたつの曲がアンサンブルすると
めぐの意識の中で、また、新しい音楽が生まれる。
強いて言えばそれは、記憶の中にある
類推が
音で行われている、と言う事で(笑)
インターネット検索を、音でしているようなものだろう。
model music.find;
music.field=[3];
parameter real rc[3];=memory.field.richard.tee.piano[3];
parameterreal gb[3]=memory.field.george.benson.synth[3];
equation;
find rc = gb ;
end music.find;
のように。
好きな事の経験は、多いはずなので
その用途に合った形に、人間は順応すると
そういう事なのだろう。
好きな事か、それに似た能力は
誰でも長けているはずである。
青い編成に連結されたディーゼル機関車は
ゆらゆらと熱を発しながら
エンジンの上にある、風車が
くるくると周り、そこに熱源があると
知らせてくれているかのようだ。
16リットルの12シリンダエンジンがふたつ。
物量の時代を象徴するような存在である。
ミシェルは、気まずいのか
どこかに消えてしまっていた(笑)。
「どこいったんだろ、ミシェール」と、れーみぃは
間延びした話し方で
なんとなくユーモラス。
「みしぇーる、って言うとフランス語みたい」と、めぐもにこにこ。
「フランス語じゃないの??」と、Naomi。
「わたし、フランス人じゃないのよ、マダム」と、リサはおどけて「Naomiってのも聖書からだけど。日本人みたいね」と、にこにこ。
マダムは酷いわね、と、Naomiは言いながら
「お父さんが好きだったんだって。この名前」とか、にこにこ。
旅が始まる。
帰りの旅はペーソスだけど、でも
みんな一緒だと、そうでもない。
「ずっと旅していたいなぁ、いいねリサは
機関車乗りだったら毎日旅暮らしだもん」と、めぐ(笑)。
電灯のついている編成は、なんとなく
頼もしいと、めぐは感じながら
足場の階段を昇って、とりあえず自分たちの寝台、コンパートメント、4人部屋。
「でも、毎日旅っていうか、嫌でも
行かないとならないし」と、リサは言う。
おじいちゃんが、機関車に乗るのを
見ていての実感だろうけれど
もちろん、それは傍観だから
おじいちゃんの心の中までは判らない。
照れの表現で、使命感に燃えていても
顔に出すのは恥ずかしい、そういう
おじいちゃんも居てもいい訳で
機関車を運転するのに、顔の演技は不要である(笑)。
それを、リサが見ていて
仕事が辛いと見えたりする事もあるだろう。
なので、「旅みたいに楽しくはない事もある」なんて思っても別にいい。
それは、いずれリサが機関車乗りになった時に
感じ取ればいい事だ。
「おお、リサ坊」おじさんは、のんびりと
迎える。
「食堂車のクルーって、駅のホームで乗るの?ほら、列車に礼したりするでしょ?」って
れーみぃは、のどかに喋る。
そのペースは、なんとなくおじさんに近い。
「わえは。それは私鉄。これは国鉄。
列車に礼はしない。国の、みんなのための仕事だ。」と、おじさんは、誇り高い
国有鉄道の職員らしい使命感を見せた。
地震が起きても、そういえば
平静に仕事を進めていた。
お金の為でも、サービスでもなくて
国のみんなの為に列車を動かしている、そういう
感覚は、やっぱり素晴らしいと
めぐは思う。
こういう人達を、お金儲けの為に
使うのは難しいんじゃないかしら、なんて
ふうにも思ったし
神様の言うように、お金儲けの為に
この国鉄を買収したとしても、たぶん
失敗したかな?なんてふうにも
思った。
使命感と損得感覚は、うまく整合は
取れないだろうとも思うし。
少年ミシェルは、乗務員じゃないけれど
なぜか、車庫から列車に乗り込む(笑)
国鉄はのんびりしているので、そんな事もある。
乗る方も、別にそれを咎めたりはしないし
元々指定席である。
ひとりで、個室寝台に収まっていると
なんとなく、動きたくなるのは
少年らしいエネルギー。
ミシェルは、エネルギーが少し不足気味なので
おとなしい。
こういう時、体感時間は長く延びるので
何か、勉強をしたりするといいのだ(笑)。
動きたい、と言う欲望がない時は
考えるのも良い。
でも、恋心を持つ少年ミシェルは、偶像
めぐを回想する。
「誰かの恋人になってほしくない」
とか思う。
でも、偶像でない本物のめぐが
誰かを好きなら、それが幸せなら。
そうしてほしいとも思う。
好きな人が笑顔でいてほしい、それだけを
思うと、いまのミシェルは
自身が、めぐを笑顔にさせられるだろうか、と
不能感覚が、不安に駆り立てたり(笑)。
めぐたちは、食堂車に寄って
列車食堂長さんに、ごあいさつ。
明日は5時から仕事、とか言う事で
「ひえ~」と、れーみぃが言うと
みんな笑った。
「だって、21時に寝たら
、4時に起きたって7時間しか寝られない」と
れーみぃが笑う。
「乗務員はそうだよ」と、リサは
おじいちゃんの事を思い出したりして、そう言った。
機関車乗りでも、列車の運転時刻に合わせるから
特急みたいに2時間連続、って仕事でも
やっぱり、寝る時間は不規則になったりする。
朝早く、始発を運転して
お昼まで4時間。
お昼休みを取って、午後の列車。
夕方までには帰る。
それは安全の為に、そうしていて。
でも、運転ができる人は限られているから
臨時列車があったりすると、どうしても
休めなかったりする。
そんな時、寝られない事があったりもして。
おじさんは夜行列車の車掌だから、もっと大変で
夜、起きていなければならないし
列車が終着するまで、勤務時間だ。
乗務員は大変なのである。
国鉄は、国の仕事なので
お金が掛かっても、安全のために
人を雇っていた。
それなので、事故もなかったりする。
お金儲けを第一に考える人達が
鉄道を運営すると、やっぱり
事故も増える。
国鉄なら、そんな事もない。
そんな時、遊びたいとか
お酒飲みたいとか、本を読みたい、あるいは
文章を書きたい(笑)とか
そういう、人間としての欲望を抑えて
鉄道乗務員としての安全を第一に考えて
休息を取る。
なかなか、できない事で
つまり、自分の欲望より社会の安全を考える。
神様に近づく事なので、リサのおじいちゃんなどは
どことなく、神様のような崇高な表情をしていたし
おじさんは、温厚な出雲神のような(笑)
職員に向いてる人達は、なんとなく
家族でもそうで
経験を、遺伝的に記録されているからだし
適性が、その遺伝子にあるから。
なので、おじいちゃんとリサ、は
国鉄で信頼されていたりする。
一族から、国鉄職員が多く出ていて
事故もなかったりすると、適性があるって
思われる。
それは、自分を抑制する能力の
評価だったりして。
一重に、適性、って
そんなところだったりする。
コンピュータならプログラムで変えられるけど
人間は、自分では書き換えられないから。
block.feedback;
parameter real gain=feedback.gain(start=90);
のように、初期値が最初から高いモデルが
国鉄職員のような仕事に向いている、と
言う事であったりもする。
お金儲けになる仕事ではないし、危険な事もあるけれど
なぜ、そんな仕事を選ぶか、と言うと
やっぱり、それが好きだから。
リサは、そう思う。
好きな事なら、苦労しても気にならない。
「リサ坊、機関車乗るか?」と、おじさんは、
にこにこしながら、告げに来た14号車。
Quartet、4人部屋個室。
駅じゃないから、誰もいない。
なので、駅までバック運転する
ディーゼル機関車に乗せてあげよう、と言う
サービス。
「はい、行きます!あ、じゃ、ミシェルも」と
リサは言った。
おじさんは、にこにこ。「んだな。ディーゼルは運転席狭いから、ミシェルは電気に乗せるか」
本線を引っ張って走る機関車を、先頭につないだまま
最後尾にディーゼル機関車をつないで、バック運転で始発駅に向かう。
こうすると、徐行しなくていい。
当然だけれども、最後尾で運転しているからである。
Upperfieldのような行き止まり駅だと、この方法は使えないので
最後尾でブレーキだけを扱う。
だから、徐行運転になってしまう。
Bluemorrまでは遠いので、それじゃ遅い(笑)と言う訳だ。
「あたしも見たーい」と、れーみぃは言ったけど
ディーゼル機関車の運転席は狭いから、ふたりが精一杯。
「んだか、じゃ、出発してからミシェルと
交代すれば」と。
本線上で乗り換え、って事になった。
ディーゼル機関車は、1号車のその向こうだから
また、ずーっと歩いて行かなくてはならない(笑)けど。
それでも、機関車に乗れるって
楽しい事だから、あんまり苦を厭わない
リサだったりする。
女の子としては、ちょっと変わったリサだけど
でも、なんて言われても別にいい、好きな事だもの、って
そんなふう(笑)。
リサのたどり着いた1号車の向こう、機関車は
やっぱり見上げると、恐ろしく大きい。
にこにこするおじさんは、本線機関車としてのディーゼル機関士さんに、リサを託した。
梯子で、機関車の端っこに登り
そこから、エンジンの周りにある外廊下を
歩いて、運転室に登るのだ。
いかにも原始的な感じが、スマートな電気機関車と違って
有機的。そのあたりが
生き物のようで、おじいちゃんの乗っていた
蒸気機関車に似ている、と
リサは、懐かしく思った。
リサが3つくらいの時だろうか、たぶん
この車庫だろうと思うけれど
おじいちゃんの乗る、黒い大きな
蒸気機関車に乗せてもらった記憶があった。
と、思うのだけれど
幼い記憶なので、定かではなかったりする(笑)。
「お願いします」と、リサは
狭い機関車の運転席、助手席に乗せて貰った。
「あー、んだな。そこさ掛けてけへ」小柄で短髪の運転手さんは、にこにこと笑って。
照明が暗いので、運転席はメーターが明るく見える。
エンジンは、すでに回っているので
低い、回転音が聞こえる。
足元で回っているのだけれど、地面のどよめきのようで
とても大きな動物に乗っているような感じは
蒸気機関車と違い、猛獣のように感じられた。
「じさまに似とる」短髪、白髪の機関車乗りは
リサのおじいちゃんと近い年齢なのだろうか、
リサは、どことなく安らぎを感じた。
薄暗い運転席に、緑のランプ、赤いランプ。
速度計、圧力計。
ブレーキハンドル、 加減弁。
エンジン燃料噴射弁、ギア切替ハンドルとある。
「そろそろ行くかのぉ、お嬢さんは、大学?総合職?」と、老運転士は
事務職志望、管理職組だとリサを見たようだ。
そこで、はじめてリサは
「機関車職場を目指します」と、本音を
つい、話し出す。
白髪の機関車は、にこにこと笑い「それはいい。しかし、大変だ。まあ、女の子なら
夜勤はないが」と言う意味を
訛って話す(笑)。
「んだな、だども、おなごは大変だべ。
よなべなかどもの」と、こういう言葉でのんびり言われると
あまり、反論する気持ちにならないから
言葉は不思議だ(笑)。
のどかな風景が言葉になっているようで。
ミシェルは、おじさんに誘われて
15号車の後ろ、と言うか
先頭に連結された赤い電気機関車の
運転席の隣、助手席に招かれた。
とは言うものの、電気機関車は
想像以上に不気味な音がするところで
電気設備を冷やす冷却ファンが
とても騒々しいし
背中のあたりで、変圧器の
唸る音がしたり。
旧式の電気機関車なので、インバータの
ノイズが聞こえないあたりも、どことなく
殺風景な感じ。
時折、空気圧縮の音がするのも
中学生のミシェルには、怖い、と言う印象を持たせた。
オリーブ色の室内は、意外に広かったけれど
思っていたよりも高い運転台は、ちょっと
足元がすくむくらいな感じだった。
これは、衝突事故の時
機関車乗りを守るために、高くなっているとの
事で
そんな事を聞くと、やっぱり車掌さんの
方がいいかな、なんて思う
ミシェルだったりもする(笑)。
バック運転なので、最後尾に居ても
する事はないが(笑)。
とりあえず、無線で
牽引する機関車と連絡をするくらい、である。
貨物列車じゃないから、後押しの必要はない。
オリーブの壁、メタリックなフレーム。
赤い機関車の窓。
ミシェルの対面した機関車乗りは、中年くらいの若々しい男子で
意外な事に、美形。すらりと長身で
髪は自然にさらりと伸ばしていて
機関車乗りの制服、それは
紺色の作業着っぽいものなのだけれども
それすら粋に見えるような人物で
ミシェルに微笑み「やぁ、中学生だってね。
じ様のお孫さんか。高校行くの?」と
綺麗な声の都会言葉で告げた。
ミシェルは、気軽に話すこの機関車乗りを
それらしく捉えながら「国鉄高専に行きます」と、さっきの思いつきを話した。
機関車乗りは、一瞬驚いて「いやぁー、ははは。あそこは厳しいぞ?じ様の孫が、なんだってあんなとこ」と言って、口をつぐんだ。
「みんな、そういうんだ。おじいちゃんが偉かったから。でも、僕はおじいちゃんじゃないから、自分の力で生きて行きたいんです」と、ミシェルは 勢いでそう言ってしまった事を
少し後悔し「おじさんと、夜行列車がなくなる前に後継ぎになっておきたくで」と。付け加える。
機関車乗りは、少し考えながら
緑色の電源ランプを見ていた。
空気圧力は上がっている。
架線電圧は20k。
それを眺めながら「うん。でも、君のしたい事じゃなかったら、かえっておじさんの負担になるよ、それは。君の人生なんだから。
君は賢そうだから、大学を出てから国鉄に入っても?夜行列車なんてなくなりゃしないさ。
第一、機関車乗りになるなら絶対に夜行はある。
貨物列車でね」
機関士さんは、別に深い意味があっての言葉で
ミシェルに告げた訳ではなかったけれど
ミシェル自身が、思いつきで国鉄高専に行くと言ってしまったのを
機関士さんに見透かされたような、そんな気がして。
つい、ミシェルは反発してしまうけれどそれも若さ故。
ほんとうは、ミシェルも判っている。
めぐお姉さんが好きなので、つい、リサ姉ちゃんみたいに
評価されたくて。
国鉄に行く、と言ってしまったけど。
ほんとうは、めぐお姉さんに認められれば
なんでもいいのだった。仕事なんて。
だいたい、同じ高校に行って
同じ図書館でバイトしたい、そんなことを言っていた
かわいい少年ミシェル。
ふつうの少年は、そんなものだし
中学生である、ミシェルは。
そんなところを、機関士さんはまあ、感じ取っていたし
中学生くらいの気持を覚えていたのだろう。
特に、ミシェルを突き放すでもなく、でも
いきなり中学卒で高専に来ると、きついから
考えた方がいい、と
アドバイスをしたのだった。
工業高専、どちらかと言うと整備士になりたい人が
行く学校だったし
金属加工とか、そういう手作業の訓練もあるので
結構、適性を問われるところもあった。
優劣ではなくて、適性である。
工具を持って金属を、筋力と感覚で加工するのに
向いている人と
思考を持って判断し、操作や対応をするのには
それぞれに適性がある。
ミシェルが、あまり筋力のある方でないことは
見てわかる。
そういうあたりも、やっぱり思いやりである。年若い者への。
ミシェルが、ひとりの人を好きになって
一途になってしまって、排他的に勢い余る
そんなことは、まあ、あるかもしれない(笑)。
それと、あまりひとに乗られなくなった夜行列車が廃止になる、なんて事は
思いやりを以って考えても、起こる事だ。
少年ミシェルは、思い通りにならない環境を
鬱陶しいと思う事もあったりもする(笑)。
若々しさ故の事で、認識の相違である。
20年も経てば、その環境のおかげで
自分が生きてる部分もある事に気づくし
その環境を、自分が使うようになる訳であるから
例えば、国鉄に入って20年後
今度は、おじいちゃん、おじさんの築いた
環境が、自分の信用になる訳である。
ひとは、誰でもそんな環境に生きていて
例えばそれは、万物が宇宙の素粒子だったところを
higgs.environに纏わり付かれて
減速したところが、質量を持ったと
見なされているのとよく似ている。
その環境を、上手く使うと
大きなパワーを得る事もできる。
化学反応もそのひとつだ。
まあ、めぐのように
魔法で素粒子を解放すると、とてつもない
パワーを得る事もできて
それは比喩的に言えば、ミシェルが
自分で規制している、環境への配慮が
ミシェル自身のパワーをセーブしていると
そういう事にもなる、訳だけど。
「ぼちぼち、行くっぺか」ディーゼル機関車では
リサお姉さんと、機関車のおじさんが
こちらは和やかに、機関車の話しをしていた。
機関車乗りのおじさんは、おじいちゃんくらいの年齢だから
穏やかで、リサの言う言葉を
否定するような事は言わない。
人間としてのエネルギーが減って来ると
いい事もある(笑)。
細かい事が気にならなくなるから、である。
機関車を運転していても、必要ない事を考えなくなるので
安全になるのだ。
例えば、列車が遅れると昇進に響くとか
そういう理由で無理な運転をしない、そういう
事である。
無理をして脱線でもしたら、昇進どころでは
なくなるから、である。
故に、特急の運転士は、割と高齢の人が多い。
0
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