21歳のわたし ー真夏の蜃気楼ー

深町珠

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寝台特急ゆうづる2号 上野ゆき

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ディーゼル機関車に、無線で
リサのおじさんの、のどかな声。

「回2レッサ、はっさー、すんべか?」


「ほな、いくべ」リサにそう促すと
白髪の運転士さんは、ギアを変速段に入れた。


20時30分。


編成全体にブレーキが効いているので、列車は動かない。機関車だけのブレーキを緩めて
そのあと、編成全体のブレーキを外す。



電磁直通ブレーキなので、編成全体がブレーキ緩め。


その間に、僅かに機関車のエンジン回転を上げると


じりじりと機関車が進む。

機関車と客車の間の連結器に挟まっているバネが伸び、1cm程の隙間が埋まる。


「こうすっと、静かに走り出せるだべ」と
リサに、お手本を見せてくれた。


とはいえ、80tほどもある機関車を
ゆっくり走り出させるのは難しい。


力がとても大きいから、である。


それなので、機関車だけに効くブレーキを
緩めながら走り出す。


走り出したら、完全に緩めて。



客車全体の連結器が延びるまで、そろそろと。



「伸びたのは、どうやって知るんですか?」リサは尋ねる。




「わかんね」運転士さんはにこにこ。



リサも笑った。



機関車の行く手は、暗い夜にレールの光。


黄色い光のヘッドライト。







しっかりと、行く手を照らし



リサのこれからの人生のように、真っ直ぐのレールを輝かす。




最後尾、本務機関車のミシェルは
バック運転していくので、なんとなく変な感じだけれども

機関車が動くのを、興味津々に見つめていた。


「先頭じゃ、お姉さんが運転してるのかな」と
機関車乗りさんが言うと、まさか、と

ミシェルは笑った。




機関車乗りさんの、長年の経験で


引っ張っている機関車の引き方が、なんとなく
ベテランじゃなさそうな?



そんな印象を受けたのだった。











ディーゼル機関車では、変速段から
ギアを固定した。1速。


その度に、レバーで切り替えて
トルクコンバーターを切り替える。


油圧を落として、動力を切り替えるのだけれど


その作業を、リサにさせてみた機関士さん(笑)。



エンジン回転が落ちないうちに、ギアを
外すので、少し機関車が揺れ。




2段目レバーを切り換える時、燃料噴射を
下げておかなかったので
回転が上がってて、少し衝撃。






「落ち着いてすれば、だいじょぶ」と

白髪の機関車乗りさんは、にこにこ。




リサにしてみれば、掌のレバーに伝わるエンジンの鼓動や
足元からの、猛獣のようなエンジン音に

すっかり圧倒されてしまった。




蒸気機関車は、静かだったけど。
なんて、思い出してるリサだった。











14号車では、Naomiがラジオを聞いていた。

昼間と同じAFNのインターネットラジオ。



そのニュースでは、ちょっと変わった話題が流れていた。



遠い日本で起こったSTAP研究の不正が
実は、思いやりから起きた、と言うニュース。


研究施設のひとが、ベンチャー企業を興したけれど
倒産寸前。そこで、国がどうにかしようと
して。

研究途中のものを、論文発表させて。


潰れそうな会社の融資を奨める材料にして。



倒産をこの会社は免れた。



当然、株式が値上がりするので
それでこの会社は利益を得た。




そんな話だった。





めぐは、思う。



思いやりだけで、うまくいかない事もあるんだ。





ちょっと、複雑な話だった。




先頭のディーゼル機関車で、リサは
燃料噴射弁を動かして。

パワーの違いを感じ取っていた。



「どうだ、面白いだろ」と言いたそうに
白髪の機関車は、微笑みを浮かべた。


日焼けの顔を、電球の明かりが浮かび上がらせる。



前方、黄青信号!



「構内進行!、よし。」




やがて、回送列車は終点だ。









同じ時、ミシェルは
最後尾の電気機関車に乗って。



「すみません、わがまま言って。僕は、」と
そこまで言って、でも、


好きな女の子に認められたいから国鉄に
入る、とは言えずに

恥ずかしい気持ちで、涙が滲んだ。



みんなが真剣に働いているのに、僕は
自分の事しか考えてない。


そう言いたかったけど、言えなかった。





電気機関車乗りは、男らしく笑って

ミシェルに優しく言った。


「俺はさ、ミュージシャンだったんだ。
やっぱり、モテたかったからさ。
でも、モテなかった。
みんな、モテようと思っていたからさ。ははは。

俺の才能は無かったんだ。


俺が苦労して楽器弾くより、いい音楽を
残せるやつは、向いてるんだ。


フランツ・リストみたいに、モテたいだけで
やってた奴みたいにね。



動機はなんでもいいんだ。才能がある奴は
やっぱり結果を残せるんだ。


向き、不向きがあるんだよ。


無理しなくていいさ、じっくり、向いてる
フィールドで働けば。

簡単に結果が出る。本当さ。



君は才能あるさ。じ様の孫なんだ」と



優しく、彼は告げた。

ミシェルは、そう言われて
もっと恥ずかしい気持ちになって、つい

「本当は、仕事なんてどうでもいいんです。
好きな人に、認めてもらいたくて!」珍しく、感情的になったのは

家族ではない、人だったから。


それまで、病弱な末っ子で

周りからお膳立てして、指図されて
良い子でいるように、自分を抑えていたミシェル。

それも、周りへの思いやり。


だけど。



リサ姉ちゃんや、母さんは、やっぱり女だから

ミシェルの、男の子としての自尊心を
思いやるよりも、病弱な彼を

鬱陶しい程に保護する事が正しいと
母性的に思っていただろう。


それも思いやりだ。



だから、いつも自分を抑えていたのも
ミシェルの思いやり。



それを聞いてもらえそうな人に出逢って

ミシェルは解放された。





「いいさ。ははは。君は素直だなぁ。
俺だって、最初はミュージシャンだったって言っても
本当は、働きたくなかっただけさ。

会社員って、なんか、窮屈でさ。


嫌いな奴に頭下げたりさ」と、そういう電気機関車乗りに
ミシェルは同感した。


なんだか、わからないけど
サッパリした。




思いやり、つまり
行動する時の範囲に、別の人の意思を配慮すると言う事だから


行動を1次元モデルとするなら


model selfish;

import modelica.SIunits;

parameter real my_f=[3];


end selfish;



で、いいのだが(笑)


そこに、他人の意思を入れるとなると




equation;

force = my_f + your_f;



てな感じに、誰かの意思を足した結果が行動力になる。

けれども、面倒な事に

他人の意思は、見えないから




parameter protected real your_f=[4];




厄介な事に、他人の意思はイメージだから
4次元、と言うか
3次元の積分値である。



そこをマッチングさせるもの大変だし



protectedだから、ひとからは見えない。
(神様以外には。)




さらに、相手はひとりではないとなると
それは、大変面倒臭いだろう(笑)


なんて、神様も考えた(笑)。



思いやりモデルベースデザインも大変だ(笑)。


ミシェルは、居場所が見つかったような気がした。


この人なら、何でも話せる。



そういう気持ちになった。



「まあ、わかるけどさ。君は君だよ。
誰が何を言ったって、君は変わらないさ。
気にしなくていーのさ。いつか、国鉄に来いよ。みんな、いい奴ばかりさ」


電気機関車乗りは、そう言って。

窓から後を見た。


出発信号機が赤く点っていて。


ミシェルは、その滲んだ赤を美しく思った。



「はい!国鉄に、ここの機関区に来ていいですか?」




中学生の夢、だけれども。




機関車乗りは、笑顔で頷いた。







先頭では、ディーゼル機関車のリサは

そろそろ、ホームが見えてきて。



もちろん、ブレーキ扱いはしない(笑)。

そこまではできない。



「静かに停めはんで、連結器さ伸ばすだ」と

白髪の機関車乗りは、編成だけにブレーキをかけて
機関車は惰性で転がした。

ギア解放、ニュートラル。


「こうすっと、バネ延びるだ。連結器の隙間もな」



連結器の隙間を伸ばしておけば、出発の時に
衝撃がない。




寝台のお客は、寝てたりするから。

夜は難しい、と




かつての仕事を思い返すように、ベテランの
機関車乗りは、慣れた手つきでブレーキを操作した。



最後に、機関車のブレーキを操作して
停止位置に停める。


重い機関車を操るのは難しい。



機関車だけでなく、編成全体にも慣性があり
それは、重さによって増す。



単純な物理式でよく出てくるF=maの通りだけれど
m、つまり質量が80000kgである(笑)。

微妙な摩擦ブレーキで停止位置を決めるには
予測が必要である事はリサにもよくわかった。

神様の思う通り、人間の心は
記憶の積み重ねで

記憶は、脳細胞が死ぬ時に
新しい脳細胞に転写されたい、そういう意思が
遺伝子にあるので、何か、始終人間というのは

何かを考えていて


その転写が、眠っている時の夢、であり


よく、心が疲れた人をリラックスさせる治療に
仮眠させて、医師が話す、なんて方法が
あったりするところを見ると、それは
わりと信用できそうなお話、で



つまり、めぐが夢にお邪魔できるという
魔法は、結構有用なものだったりする。



ふつう、誰かの夢にはなかなか入れないけれど
それは、夢のイメージフィールドが
他の人にわからないからで(笑)

医師ですら、誘導はできても

寝ている人の夢は見る事ができない。


つまり、めぐの魔法は



model dream.field;

import field.geometry;

parameter real protected dream.field=[4];



とある、この、誰かのdream.field の
protectedのまま、共有できるという事だし


それを、誰かの夢と接続できる、と
いう魔法であったりもするから


リサを、天国のおじいちゃんに逢わせるたり。


そんな事もできたりする。



そういう才能は、神様にはないので


時折、用事を頼まれる(笑)と、そんな訳だったりする。
煉瓦色のディーゼル機関車は、編成から
切り離される。


「さ、お嬢さん、降りなされ」と、白髪の機関車乗りは
リサを促す。


紺色の制服に、帽子。


その格好を見ていると、リサは
おじいちゃんを思い出して懐かしくなる。




「はい。」と、言葉少なに助手席から立ち上がったのは

泣いてしまいそうだったから。



懐かしいここ、やっぱり

国鉄はわたしの職場だわ。



と、リサは思う。みんないい人ばかりで
鉄道のために生きている人達。



ここに、戻って来よう。




そう思い、リサは
運転室から出て、機関車のフレームの上を歩いて
プラットフォームに降りた。


黄色いヘルメットの駅員が、連結を解いていた。


解放てこを動かし、エアホースや
電気ケーブルを外す。



それぞれが、とても大きくて重い。


握手をしていたような連結器が、掌を開くように
離れて行く。



ディーゼル機関車は、少し前に出て



連結器を閉じる。




汽笛が、短く吹鳴されて

軽々と、煉瓦色の機関車は

引き上げ線に進んで行く。



エンジンの音が轟き、煙りがたなびく。





ふと、リサは気づくと

引き上げ線の他に、滞留線がいっぱいあって
貨車や客車、電車、ディーゼルカーが

海の方に向かって止まっていた。




大きな始発駅。





その、大きな場所にいること、これからその
一員になれることに


リサは嬉しさを覚える。


先頭の電気機関車にいた、ミシェルは

階段の側、駅のはじっこに止まった
赤い電気機関車の中に座っていた。


機関車乗りは、その間に
運転席で、テールランプを消し
ヘッドライトを点け。



ブレーキハンドルを差し替えて、キーを入れた。


メーター、インジケータ、ランプ。


空気圧、架線電圧、編成電圧。
ドア、ブレーキ圧力、釣り合い圧力。

点検を行っていた。




プラットフォームに下りようと、席を立つミシェルに「次の駅まで乗って行くか?本線は速いぞー。」と、機関車乗りはにこり。



暗い電球の明かりに笑顔が映える。



ミシェルは、大きく頷いて「はい!」。






たとえばリサは、神様のおかげで鉄道で働く事ができる。
たぶん、ルーフィもめぐや神様のおかげで生きていられるし
めぐは、天使さんのおかげで生きてこれた。

そんなふうに、誰かのおかげで生きてこられる、と言う事も
思いやりのひとつだ。


そうやって、思いやられたから生きて来れたから。


そのひとたちのためにも生きて、いかないと。



そう思う気持で、たとえば機関車乗りさんたちは
鉄道を動かしているし


バスの運転手さんも、事故のないようにと
バスを動かしている。


駅のお弁当屋さんも、旅が楽しくなるようにと
お弁当を作っている。


そんなふうに、みんなはつながって生きているのが
人間の社会。




「それは思いやりだろうなぁ」と、めぐの国の神様は思う(笑)。









プラットホームに下りたリサは、レンガ色のディーゼル機関車を見送って。


機関車は、引き上げ線を上り、無線連絡。「回2レッサ、引き上げ終着。」
ポイントを切り替えてもらって、次の仕事に向かう。



ちょっと暗いホームには、アナウンスが流れる。

15号車からホームを見渡し、リサのおじさんは
ドアを開く。


オフシーズンだから、のんびりした旅行者が

夜行列車に乗り込む。


いろんな人がいるけれど、寝ながら旅をするのは
結構楽だ。


SuperExpressが早いと言っても、3時間を越えて
座っているのは結構辛いし

旅として楽しむには、ちょっと味気ない感じもする。


それに、夜に移動するのは、なんとなくワクワクすると
リサも思う。


手ぶらでホームを歩きながら、青い編成を眺めて。
楽しむ旅には、寝台もいいんだけどな、とか
リサは、おじさんの苦労を忘れてそう思ったりする(笑)けれど
そんなものだ。


夜行列車の車掌が大変なら、2時間交代にすればいいとリサは思ったりする。



14号車のめぐは、そんなミシェルやリサたちの
輝く星座のような希望を
なんとなく、共感したのと
旅の終わりで、ちょっとペーソスに
なっていたり。



センシティブになっていた。





気持ちが不安定になると、どこかに飛んで行って
しまいそうになるのは

もうひとりの魔法使いと同じだ。


model power.magic.megu;


import modelica.SIunits;


parameter real SIunit F;
parameter real SIunit m;
parameter real SIunit a;
parameter real SIunit E;
parameter real SIunit c;


equation;

F=ma;
E=mc^2;


end power.magic.meg;



魔法の呪文は、極めて論理的である。


0次元モデルとして解放されると、質量が
無くなるから


E=mc^2と
F=maの連立解から、力Fと加速度aが得られる。

つまり、ヒッグス
環境から解放された素粒子が光速を取り戻すように


そんな速度と力を得られる。


つまり、質量mを0に近づけるほど
速度は光速に近づく。

すべてのエネルギーEは、その関係性の下に
成立する。

同じく、総力Fで運動している物体mは
そのエネルギーによって、変動する加速度を得られる。




ーーーなんて理屈を、めぐが知っている訳でもなく(笑)


コンピュータプログラムを書けなくても
インターネットが使えるように

めぐは、魔法を使える体質になっている。


ある日突然、ひょい、と
自転車に乗れるみたいに使えるのだけれど。



この時のめぐは、さっきのニュースの話が

思いやりで、ひとりの研究家が死んでしまったと
言う話が


どうも、嫌だったのだった。


そんな気持ちで、めぐは

その研究家の心へと、飛んだ。



model magic.imagefield.dream.megu;

input human.imagefield.dream.albiter;


parameter real field.megu=[4];
parameter real field.albiter=[4];


equation;

megu=albiter;





その研究家の意識は、遠かったけれど
めぐには感じ取れた。



時間軸は不明だけれども[4]の範囲だった。


感じ取れた彼の意識は、閉ざされていたけれど
めぐは、語り掛けた。





「思いやりで死ぬなんて、変!」



それだけだった、言いたい事は(笑)。



奥さんや子供もいるんでしょうに、って
そんな事も思ったけど


おばさんみたいだから、言うのは止めた(笑)。





研究家の夢の中に、そのメッセージは
書き込まれる。



記憶は、眠ってる時に
夢を見ながらコピーされる。



ーーーその
研究家は、告げる。


「思いやりじゃない」



それだけだった。




「めぐぅ」れーみぃが呼んで


めぐは、こちら、地上へと意識を戻す。



「あ、ごめんねれーみぃ。」と、めぐはにっkりと笑って。




「うん。そろそろ汽車出るね」停車時間は
20分くらいだから


広い、寝台列車の窓越しに

風情のある、出発駅の情景が見える。




「リサは?」と、Naomiが気づく。



「機関車乗りに行ったっきりだね」と、めぐは淡々と(笑)。




「ミシェルも」と、れーみぃも気づく。




「ミシェルも、機関車でしょ。そのまま乗ってるんじゃない?」と、めぐ。




「素っ気ないなぁ」と、Naomi。
笑ってる。





「素っ気ないって?」めぐは、訳解らない。




「だって、婚約したいとまで言われて、何とも思わないってさ」と、Naomi。



そういわれて、めぐは思う。


「なんか、ミシェルって弟みたいなのよね」と、めぐは本心。




わー、かわいそー、って
れーみぃが笑う。


本気にしてないからなんだけど、でも
めぐは思う。


ホントに、弟みたいなんだもの(笑)。



めぐは、魔法使いだから
ひとの記憶ってイメージで
覚えてる事が、本当とは限らない事も
よくわかっている。


なにせ、夢の中にお邪魔しまーす(笑)して

記憶が書き換えられてしまう事も体験している。



なので、ミシェルが弟みたいなんだもの、と言う
言葉も



ひょっとしてホントにそうかも、と言う
気持ちでそう言った。

ミシェルがリサの弟として生まれたって
記憶が、本当でなかったりって
そんなことも、有り得ないことじゃない。


でも。



みんなには、そうは聞こえない。








その頃、先頭の機関車では
楽しそうなミシェルと、電気機関車乗りの

語らいが続いていた。



「うん、俺はまあ、いい加減だから
中学生の頃にも、そんなに女の子を好きって
思った事ないなぁ。エッチな事には興味あったけど。ははは。」と、機関車乗りは
明け透けだ。(笑)。




ミシェルは「僕もそうです。したことないし」と、言う(笑)。


機関車乗りは、そりゃそうだよ。中学生じゃなー、機会ないし、あんまり。と、笑った。




襲われたりはするけど、と面白い話をした。

「襲われた?!」と、ミシェルは驚いて。

大きな瞳がこぼれそうに

電球の明かりに映えた(笑)。



機関車乗りは、笑って。


「うん、俺、目立ってたんだ。ギター、学校に持ち込んでたし。そしたら。昼休みのクラスでね。水泳の授業で、男女別れるんだ。着替えで。そん時に、女子クラスに引き込まれて。。

君もこれから、そんな事ありそうだな。まあ、気にするな」と、機関車乗りは笑った。


その時、無線が入って「こちら指令、2列車機関車応答せよ」


訛ってない言葉を聞いて、ミシェルは
なんとなく新鮮だった。



ホームを歩いていたリサは、出発時間が近づいたので
途中の車両に入ろうか、と。


お弁当の屋台を引いているおじさんに出会う。

夜21時なのに。


そう思うと、自然に頭が下がる。

「おつかれさまです。」と、リサが言うと

そのおじさんは、日焼けした顔で
つばの小さい帽子、地味なジャンパーで「おお、じ様のとこの」と
笑顔になった。


リサは、それに驚き「わたし、似てますか?」と言う。



おじさんは「んだんだ。こまいころから来てたべ。」と

リサがとても幼い頃から、おじいちゃんの機関車を見に
ここに来ていた事を覚えていた、と言う。

おじさんのカメラを借りて、汽車の写真を撮ってた、とか
レンズフードを曲げて、歯で直してたとか(笑)


いろんな事を話すので、ちょっとリサは恥ずかしくなったくらい。



「リッパになったのぉ。べっぴんさんだぁ。いつ来る?」と、弁当のおじさんは
リサが近所に住んでいると思ったらしい。


「これから大学なので、その後かしら」と、リサが言うと


「ほぉ。それはそれは。」と、言ったところで
おじさんは


「そろそろ乗るだべ?」と、駅のホームに吊るされている
時計、それと
針金で吊るされている時刻表示板を見比べた。


「2列車機関士、どうぞ」と、機関車乗りは真面目な声で返事をした。
ハンディ・トーキーのような無線機である。

「こちら指令。対向列車遅延、どうぞ」


またかよ、と、苦笑いしながら機関車乗りは「2列車機関、了解」

次いで、リサのおじさんが間延びした声で「2レッササソー、傍受。」


いつもなんだよ、と言いながら「単線だから、向かいの列車が遅れると、信号が
青にならないのさ。」



ミシェルは「精密なんですね」と、感想。


「無理に走らせようとしても、ブレーキで停まるんだ」と、安全装置のことを
機関車乗りは話した。



なるほど、と、ミシェルは腕時計を見ると

まだ出発には間がある。


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